上 下
218 / 261
十二章 学園生活2

217

しおりを挟む
 ぱっと私の頭に浮かんだのは、お父様に言われたから、という言葉だった。でも、なんとなくそれをその天m口にしてはいけない。そう思った。理由なんてものがあるわけではないけれど、それでは足りないとそう思ったのだ。

「どうした、言えないのか」

「きっかけは、お父様に言われたからです」

 ならば、そう口にしようとした陛下に続きを言わせないようにですが、と言葉をかぶせる。もちろんマナー違反なのは重々承知だ。でも、この続きを言わせてはならない、そう思ったのだ。

「そのために魔法陣を学んでいき、お母様の診療所で治療をすることもありました。
 その中で、自分の意思でこの資格を取りたいと望みました。
 純粋に魔法を知るのは楽しいですし、それで誰かを助けられるのならば、と思ったのです。
 私は特に、お父様の力になりたい」

 陛下の目を見てそう言い切る。すると、今度はすぐに何かを言うことなく、考え込んでしまった。

「陛下も、ご存じでしょう?
 ニタの動きも、我々が何を心配しているのかも」

 今までずっと黙っていた先生は、急にそんなことを口にした。ニタ、ってあの人だよね。えっと、神官長! かかわりがあったなんて知らなかった。なんだか強く注意はされたけれど、結局何か言ってくることもなかったし。

「ああ……。
 アーネミリア嬢。
 もしも資格を得ることができても、魔術師としての仕事をすることは許可しない。
 そういっても、目指すか?」

 それはつまりどういうことだ? 資格はあげるけれど、活動は認めない、ってことかな。それは資格を持つ意味はあるのか?

「それでよいのですか?」

 先ほどまでの雰囲気が消えた先生がそう口にする。それでよいのですか、とはどういうことだ? 大人同士の会話過ぎて理解できないことが多い。自分のことなんだけれど、おいて行かれている感じ。

「それが一番良い手ではあるだろう。
 どのみち、まともに試験を受ければ受かるのであろうし」

 ああ、陛下は頭を抱えてしまわれた。というか、魔術師の試験ってそんなに簡単なのですか? もしかしたら受からないかもしれないのに。これで普通に落ちたらめちゃくちゃ恥ずかしいやつ。

「あの?
 私には全く話が見えてこないのですが……」

 もう我慢できない、とそう口にする。すると、何かを言おうとしてか開いた口を、結局先生は閉じてしまった。

「魔術師の資格を得れば、そなたの所属ははっきりする。
 だが、いきなり幼いそなたが活動をしてみろ。
 それを受け入れろという方が無理がある。
 それに、魔術師の資格に関して年齢制限は設けていない、つまり現状そなたの受験を拒否する理由はない」

 うーん、なんとなくわかった気がする。うん、なるほど。私は受験資格はあるし受かるだろうけれど、それに伴ういろいろな不都合の話をしていたのね。なるほど。

「だが何か、そなたの力が必要となるときのことを考えると、資格は持っていた方がいいとも思う。
 そこが、な……」

 はぁ、ともう一度ため息をつかれる陛下。何も悪いことはしていないのに、なんだか申し訳なくなってきました。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

やさぐれ令嬢

龍槍 椀 
ファンタジー
ベルダンディー=ファーリエ=クリストバーグは、グスターボ国の侯爵令嬢 五歳の時から、聖王太子の婚約者と遇され、御妃教育に頑張っていた。 18歳になり、マリューシュ帝国学院の最終学年。そして、最後の舞踏会。 舞踏会の後は、後宮に入り聖王太子の妻としての教育をさらに重ねる事に成っていた。  しかし、彼女は極めて冷めている。 実母が亡くなってから、この国に不満しかなく、やさぐれお嬢様になってしまった。 モチロン表面上(ねこかぶり)は大変お上手。 夢はこの国から出て行くこと。 何もかも投げ捨てて。  ベルダンディーに、望みの明日は来るのでしょうか?

冷宮の人形姫

りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。 幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。 ※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。 ※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので) そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。

公爵令嬢はだまっていられない!

西藤島 みや
ファンタジー
目が覚めたら異世界だった、じゃあ王子様と結婚目指して…なんてのんびり構えていられない!? 次々起きる難事件、結局最後は名推理?巻き込まれ型の元刑事…現悪役令嬢、攻略対象そっちのけで事件解決に乗り出します! 転生ものですが、どちらかといえばなんちゃってミステリーです。出だしは普通の転生物、に見えないこともないですが、殺人や詐欺といった犯罪がおきます。苦手なかたはご注意ください。

〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。 了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。 テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。 それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。 やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには? 100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。 200話で完結しました。 今回はあとがきは無しです。

転生令息は攻略拒否!?~前世の記憶持ってます!~

深郷由希菜
ファンタジー
前世の記憶持ちの令息、ジョーン・マレットスは悩んでいた。 ここの世界は、前世で妹がやっていたR15のゲームで、自分が攻略対象の貴族であることを知っている。 それはまだいいが、攻略されることに抵抗のある『ある理由』があって・・・?! (追記.2018.06.24) 物語を書く上で、特に知識不足なところはネットで調べて書いております。 もし違っていた場合は修正しますので、遠慮なくお伝えください。 (追記2018.07.02) お気に入り400超え、驚きで声が出なくなっています。 どんどん上がる順位に不審者になりそうで怖いです。 (追記2018.07.24) お気に入りが最高634まできましたが、600超えた今も嬉しく思います。 今更ですが1日1エピソードは書きたいと思ってますが、かなりマイペースで進行しています。 ちなみに不審者は通り越しました。 (追記2018.07.26) 完結しました。要らないとタイトルに書いておきながらかなり使っていたので、サブタイトルを要りませんから持ってます、に変更しました。 お気に入りしてくださった方、見てくださった方、ありがとうございました!

【完結】番を監禁して早5年、愚かな獣王はようやく運命を知る

恋愛
獣人国の王バレインは明日の婚儀に胸踊らせていた。相手は長年愛し合った美しい獣人の恋人、信頼する家臣たちに祝われながらある女の存在を思い出す。 父が他国より勝手に連れてきた自称"番(つがい)"である少女。 5年間、古びた離れに監禁していた彼女に最後の別れでも伝えようと出向くと、そこには誰よりも美しく成長した番が待ち構えていた。 基本ざまぁ対象目線。ほんのり恋愛。

あなたの子ですが、内緒で育てます

椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」  突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。  夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。  私は強くなることを決意する。 「この子は私が育てます!」  お腹にいる子供は王の子。  王の子だけが不思議な力を持つ。  私は育った子供を連れて王宮へ戻る。  ――そして、私を追い出したことを後悔してください。 ※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ ※他サイト様でも掲載しております。 ※hotランキング1位&エールありがとうございます!

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

処理中です...