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6章 再会と神島

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 しかし、アナベルクだけが足並みそろわないことが多々ありました。そのような国をなくしてしまおう、という声がなかったわけではありません。しかし、かの国は武力も魔力も他に引けを取りません。それだけでなく、精霊にも好かれる方が多い地でもありました。頭を抱える中でも、結局確かな対応も取れないまま、日々が過ぎていきました。

 そのような日々の中で急に世界が揺れました。ずっと思い通りにならなかったアナベルクの王が、その力を暴走させたのです。当時はそこかしこにいた精霊も力を貸し、とても人の力で止められるものではありません。しかし、このままではまた大陸は安寧などない時代にさかのぼりするであろうことは皆漠然と理解していました。

アナベルクと地を同じくする民はおそらく無事ではすまないであろう。それでも自然と収まるまで待つしかない。そのような状況で大勢のものがミベラ神に祈りました。どうか、と。祈りが力となることはすでに皆理解しておりましたから。

その中でリンカ様はミベラ神と最もつながるところができるとおっしゃっていた洞窟へと走りこみました。その場はごく一部の限られたもの以外は立ち入りを禁じられた洞窟です。そこでリンカ様はただひたすらに祈ったといいます。地上で最もミベラ神に親和性を持つリンカ様の祈りは、ほかの方のものとは力が異なります。

ミベラ神がその力を受け取る代わりに、リンカ様はその命を削ることとなりました。シャリラント様はその行動を止めようとされたそうです。その結果、リンカ様はその命を失う前に氷の中へと閉じ込められることとなりました。

リンカ様、そして多くの民からの祈りを受け取ったミベラ神は精霊の暴走を止めるために力を尽くしました。その結果、大陸が終わりを迎える前に暴走は収まりました。また、姿を形作れるほど力を持つ精霊は大陸から姿を消し、リンカ様の眠る洞窟へと集ったそうです。

 そして世界は少し変わりました。特にアナベルクが。力のある精霊が姿を消し、さらにアナベルクはミベラ神から見放されることとなりました。そこは今も大陸にとどまる力の弱い精霊が住まうことができない地となり、精霊に声をかけても聞き入れられることはありません。魔法を放つ際の威力も小さくなりました。とはいえ、もともとの保有魔力量が大きいため、それでも魔法を扱うのには困らなかったようですが。

 リンカ様は精霊の力添えもあり、その一命をとりとめることとなりましたが、目覚めることはありません。それは、今も。……シャリラント様は氷に包まれたリンカ様の前に長い間留まっていたそうです。

 また、リンカ様が眠る洞窟では次第に変化が訪れました。資源に乏しい場であったにも関わらず、様々な資源がみられるようになったのです。そして、そこからミベラ神は考えられたのです。魂をもとに資源を生み出せはしないかと。

 そうして天に上った罪人の魂をもととした資源が生み出されました。それが今ダンジョンと言われ、攻略されているものです。そこでは考えの通り、多様な資源が生み出されました。しかし、一点予想外のことが起きました。それが魔獣の発生です。とはいえ、資源は限りがあるもの。それを守るものとして放置されることになりましたが。

 こうして、今の世の形ができました。

―――――――――――――――――――――――

「なあ、シャリラント」

 俺は自分に割り振られた部屋でとあることを考えていた。それを確かめるためにシャリラントに呼びかける。シャリラントもティアナ様からの話を聞いていたのだろう。いつも以上にその登場は静かだった。

「なんでしょうか」

「シャリラントがさ、俺に始まりのダンジョンに行ってほしいといったのはリンカ様に関係することか?」

「……ええ、そうです。
 あなたなら、あの方を救うことができるかもしれない。
 私が力及ばなかったために動かなくなってしまった、あの方を」

「そっか。
 ……俺に何ができるのかはわからない。
 シャリラントが期待しているようなことは何一つできないかもしれない。
 それでもいいのなら。
 俺はシャリラントの力になるよ。
 今までずっとシャリラントが俺に力を貸してくれてたように」

 そんなにうまくはできないかもだけど。
 つい、そんな一言を付け足す。そんな俺にシャリラントは一瞬きょとんとした後、優しく微笑んだ。

「ありがとうございます。
 私の主が、あなたでよかった」

「え……?」

 今なんて、そう聞き返す前にシャリラントは姿を消していた。

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