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6章 再会と神島

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 次の日は片手で食べられる朝食を自室でとりながら王太子との会合に備えることとなった。俺がここに到着した知らせを聞くと、なるべく早く俺に会いたいと言ってきたようだ。そこで朝食後にその場が設定された、と。いや、早いな。

 それでも、もともとの予定では朝食を急いでとる必要はなかった。だけどさすがに旅の疲れが出たのか寝坊してしまったのだ。起こしてくれたらよかったのにぎりぎりまで寝かせてくれていた、と。その影響で優雅に朝食をとる時間が無くなってしまったので、俺が起きるまでの時間で急遽この簡易的な朝食を作ってくれたよう。頭が上がらないよ……。

しかも、それを皇子にはふさわしくありませんが……。という言葉つきで持ってきてくれた。いやいや、十分豪華だったから。確かに片手でばくっと食べるのは皇族にはふさわしくないかもしれないが、俺は根が平民だから全く気にしない。きちんと料理長には感謝の言葉の伝言を頼みましたとも。

 そんな朝食を食べ終わった後は手伝ってもらいながら服を着替える。そしてそのまま会合の場となる部屋まで案内をしてもらった。まだ王太子は準備をしている途中、ということは聞いていたのでまだ時間があるだろう。カンペテルシア殿はもうこちらに向かっているようだ。

 とうとう、王太子に会える。その事実にどうやら緊張しているようだった。

 先に部屋に到着したのはカンペテルシア殿の方だった。王太子と会う前に昨日説明し忘れたけれど、と話しかけてきた。その内容は今回の同盟の内容だった。すでにカンペテルシア殿と王太子の間でほぼ決まっており、あとは互いに印を押すだけらしい。ざっと聞く限り本当に対等な同盟のようだ。

 その中には商売に関することも含まれており、締結後は国に認められた商会は専用の身分証明が発行されて国に入れることになるらしい。なら、サーグリア商会の皆ももしかしたら皇国に来るかもしれないのか。

 そして、ここまで話がまとまっているので本来なら俺がここに来る必要は全くなかった、と。だが、当初からの希望通り、王太子は俺と会うことを強く望んだためこうなったらしい。ずっと不思議に思っていたけれど、ようやくその理由がわかるのだ。

「キンベミラ殿下のお越しです」

 話が区切れたタイミングで侍従から声がかかる。カンペテルシア殿と顔を見合わせるとうなずく。そして、キンベミラ王太子が入ってきた。

 その姿を見たとき、思うところがあったわけではなかった。顔立ちは整ってはいる。だが、その顔に見覚えはない。なにか特別なものを感じることもない。緊張していた分なんだか拍子抜けだった。

「おはようございます、キンベミラ殿下。
 紹介しますね。
 こちらがアナベルク皇国のスーベルハーニ・アナベルク皇子です。
 そして、こちらがオースラン王国のキンベミラ・オースラン王太子です」

 カンペテルシア殿に互いを紹介してもらって握手を交わす。そして型通りの簡単な挨拶を交わした。ずっと俺に会いたがっていたのだ。何か言ってくるのかと思っていたが特にそれもない。カンペテルシア殿も不思議そうにしながら、この会合の最大の目的である同盟締結のための印をお互いが保管することになる書に押すことを進めていく。

 目の前に用意された書に二人とも話の内容と比べて相違がないか確認していく。俺、ここにいる必要あったか? 思わず遠い目をしそうになっているとふいにキンベミラ殿下が顔を上げた。

「内容に問題はありません」

「ええ、こちらも大丈夫です」

 そして互いの侍従が印を差し出してくる。あとは本当に押すだけ。そのタイミングでキンベミラ殿下が席を立ちあがった。なぜ? と周りの目を集める中、なんと王太子は俺の前に跪いたのだ。

「キンベミラ王太子!?」

「この同盟が、あなたの助けになることを願っています」

 ……は? いったい何を言っているのかわからない。それはカンペテルシア殿も同じようだ。今、この部屋には本当に限られた人しかおらず、オースラン王国側からきている2名に驚いた様子はない。ということは、この2人にはどうして殿下がこんな行動をとったのかわかっているということか。

 どう返せばいいのかわからずに固まっている間にキンベミラ殿下は何事もなかったかのように席へと戻っていった。って、ちょっと待ってよ。

「あの、今のは一体どういうことですか!?」

俺の言葉にキンベミラ殿下はこちらをじっと見た後、後ほど2人きりで話がしたいとだけ言った。さすがにこのままスルーというのは気持ち悪すぎるので俺はなんとかうなずいた。

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