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第3章 ―旅情初編―

新たな仲間と旧友

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 周りが今後の経路などを話し合う中、セナはサイスにレスターの処遇について質問した。

 「サイスさん?レスターさんは結局どうなったんですか?」

 「ん?あぁ、あいつはギルドマスターを解任された」

 「えっ!?」

 「自分で言いだしたことだ、冒険者の実力を見誤ったことが相当ショックだったらしい、今は冒険者に戻り、他国へ修行の旅にでる準備に追われてるだろうよ」

 「そ、そうですか…」

 「そんな顔するな。お前のせいじゃない、それにあいつも久しぶりに目標を持った強い目をしていた、かえって幸せになったのかもしれん」

 「なら…いいんですが」

 「まぁ、どこかであったら一緒に依頼でも受けてやってくれ」

 「……はい」

 サイスの言葉で多少、罪悪感が薄れたセナは、そのままエミルへ顔を向け声をかけた。

 「あの、エミル様?……」

 「レイファのことは心配いりませんわ、王都に返ったら、セナ様がお戻りになるまでの間、再びセバスの元で修業をしてもらおうと思っておりますわ」

 「えっ!?」

 「ふふふっ、次こそは英雄たるセナ様に、ふさわしいメイドとなっていると思いますわ?…まぁ、本人が望めばですが」

 「そ、そうですか…ありがとうございます」

 「ふふふっ、いえいえ」

 エミルの言葉にセナは心から嬉しそうな顔をした。

 「ところでセナ様?この後は、どのようなルートを取られるのですかな?」

 話がまとまったのを確認したかのように、セルジオがセナへと言ってきた。

 「はい、明日にでもエルの村に行き、知り合いに会って、他国へ向かう挨拶をしてから、予定通りジルネイ共和国へ向かおうと思っております」

 「ふむ、セナ様の意向でパレードなどは行わず、簡素な見送りとなるが、旅の無事をお祈りいたしますぞ?」

 「ありがとうございます」

 「それじゃ、我々は今日はこれで、明日は門前で落ち合おう」

 セナの回答に、セルジオが笑顔でいい、サイス達が宿へと帰っていった。

 そして、エミルを交えた夕食を終え、セナは与えられた部屋のベッドに横になり、ここ数日のことを思いだして、ため息を吐き、目をつぶり無理やり寝入ることにした。

  そして、翌日の朝、セルジオたちが見送る中、セナは迅風と共に街の出口へと向かおうとした時、セルジオたちと一緒に並んでいたレイファが、セナの元へ歩み寄り、声をかけてきた。

 「セナ様…この度は申し訳ありませんでした。旅のご無事をお祈りします」

 「レイファさんも、気を付けて帰ってください…こちらこそ、短い間でしたけど楽しかったです……また、いつか一緒に旅をしましょうね?」

 「っ!?は、はいっ!」

 「セナ様?そろそろ向かわんと、エルの村への到着がおくれてしまいますぞ?」

 レイファとセナの会話が途切れた瞬間、セルジオが声をかけ、セナが最後に挨拶をし、迅風を歩かせた。

 「セ、セナ様!きちんとご飯食べてくださいね!?夜更かしもだめですよ!?それと!それと!……」

 「ははっ、レイファさん?お母さんみたいになってますよ?……大丈夫です、ちゃんとやれます、それに、僕のほうが年上ですよ?……それでは、皆さんもありがとうございました!」

 レイファの言葉にセナは苦笑気味に答え、礼を言った後、街の出口へ向かった。

 「あっ!きた!!おぅーい!セナ様ぁ~!」

 「すいません、またせてしまいましたか?」

 街の出口で待っていたメディーがセナを見つけ、手を振りながら迎えた。

 「いえ、私達もさきほどついたばかりです」

 「おはようございます、セナ様。改めまして、しばらくの間お世話になります」

 セナの言葉にエリスが答え、マインが一礼してきた。

 「おはようございます。えっと、こちらこそ、よろしくお願いします」

 セナが皆に挨拶をし、一礼し終えると、コニーがセナ達の元へ小走りでかけてきた。

 「はい、皆のカードを返しますね?手続きは終わってますので、いつでも出発できますよ!」

 「あ、じゃぁ、僕もすぐ手続きしてきます、すいませんが、メディーとコニーさんは馬車へ乗っててください」

 コニーの言葉にセナが、自身の手続きをしてこようとすると、コニーが声をかけた。

 「え?セナ様は必要ありませんよ?マルンの街はもう顔パスでOKだそうです」

 「え?そ、そうなんですか?」

 「この国の英雄ですからね、多分、王都でもそうだと思いますよ?」

 「……言われてみれば……しばらく王都ではカードを提出してなかったです……」

 セナが理由をきいて、呆けたようにいうと、ほかのメンバーは苦笑した。そして、馬車に乗るもの、馬に乗る者の準備が整い、セナ達はライズの住むエル村へと向かった。

 なお、その際、騎士たちが整列し敬礼で見送り、セナは恥ずかしそうに顔をあかくしていた。

 「順調だねぇ!」

 「順調というか……そうとう早いペースですよ?」

 馬車の馭者を務めるメディーと隣に座っているコニーの声がきこえ、馬車の中からセナが顔をだし、その声に答えた。

 「あの?疲れたら言ってください、いつでも変わりますので」

 「いやぁ~、全然大丈夫ですよ!」

 「はい、こんなに快適な馬車に乗ったのは生まれて初めてです」

 セナの言葉に、メディーとコニーが笑顔で答えた。

 「ふふふっ!マーカス工房の技術の粋を集めて作られた馬車ですからね!…それに!迅風と一緒に旅してるなんて夢のようですよ!もうこの席は誰にも譲りたくないくらい!」

 「ブルルルル」

 コニーの言葉にメディーが胸をはり答え、楽しそうにセナへと言葉を返すと、話を聞いていた迅風が、嬉しそうに鼻をならした。

 「そ、そこまで……?まぁ…無理してないならいいんですが、それで?あとどれくらいでつきますかね?」

 セナがメディーのテンションに少し引き気味に質問すると、前を走っていたマインが馬車と並走するように近寄り話しかけてきた。

 「セナ様?このままいけば、今日の夕方にはエルの村へと着くかと思われます」

 「え?半日たらずでつくんですか?」

 「はい、迅風は当然として、私達が乗ってる馬もそうとういい馬ですからね」

 「はぁ~、すごいんですね」

 「えぇ、ブレイダー家が用意してくれた馬です」

 「え!?そうなんですか?」

 マインの言葉に驚いたセナに、メディーが胸を張り話し出した。

 「ふっふっふ、この子たちも実はバトルホースなんですよ!……今まではバトルホースは、なかなか人に慣れてくれず、たまに売りにでていても誰も買えなかったんですけどね?……」

 「え?でも、すごくおとなしくて、いい子達に見えますよ?」

 メディーの言葉に、セナが驚いて馬達を見ていた。

 「ふっふっふ!そうでしょう!そうでしょう!これは迅風のおかげなんです!」

 「ブルルルル」

 「へっ!?迅風の?」

 驚くセナにメディー、嬉しそうに話し出した。

 「はい!迅風がこの子たちのボスになったので、この子たちは言うことを聞いてくれているというわけです!」

 「へっ!?い、いつのまに……」

 「ん?セナ様が旅の準備をしている間に?」

 首をかしげるセナに、おなじようにかしげてメディーが答えた。

 その後、昼食のため一度休憩をとり、予定通り夕方にはエルの村を目で確認することが出来た。

 「セナ様?もうすぐエルの村へ到着いたします」

 「あっ、はい!ありがとうございます」

 エリスの言葉にセナが答え、それから数分後、無事にエルの村へとたどり着いた。

 「おっと!お嬢さんたち?こんな村になんのようだ?」

 村の入口に立つ、ガタイのいい男がエリス達に声をかけてきた。

 「ん?我々は王都からマルンを通ってやってきました。ここには友人が住んでいて、ライズという方なんですが?」

 「んぁ?嬢ちゃん達、ライズの知り合いか!なら問題ねぇ!中に入ってくれ!ようこそエル村へ!っつってもなんもねぇけどな!」

 エリスの言葉に、驚きながらも笑顔で村へ入れてくれた男に礼をし、セナ達は村の中へはいった。

 「さて?ライズさんって方はどこにいるのですかね?」

 「誰かにきいてみましょう」

 「すいませんマインさん、お願いします」

 メディーの言葉に、馬から降りたマインが答え、セナの礼に笑顔で答えたまま、たまたま通りかかった、小さな子供を抱いた女性に声をかけた。

 「あの…すいません、この村にお住いのライズさんの家を知りたいのですが?」

 「ん?ライズ?ライズは私の夫ですが…失礼ですけど、あなたは誰ですか?」

 「えっ!?ライズさんの奥様ですかっ!?」

 マインが声をかけた女性がたまたまライズの妻で、驚きの声をあげると、馬車の中からセナが何事かと顔を出した。

 「ど、どうしました?マインさん!?って…あれ?リズさん?それにココちゃんも?」

 「へっ!?セ、セナ様?なんでこんなとこに!?」

 リズをみたセナが驚くと、それ以上にリズが驚きの声をあげた。

 「えっと、あっ!お久しぶりです、旅で国を離れることになったので、その前にライズに会いにきたんですが?」

 「え?た、旅!?あ、はい!ライズはさっき森から帰ってきて家にいるんで案内いたします、こちらです!」

 セナの理由をきき、リズが焦りながらもセナ達を自身の家へと案内した。

 「あ、あんたぁ~!た、大変だよぅ~!!」

 「な、なにごとだリズ!?」

 案内をしていたリズが、ライズの姿を見つけ、叫びながら走り寄ると、ライズが驚きながらリズをみた。

 「セ、セナ様が!あんたに会いに来たんだよ!!」

 「はぁ?」

 「ライズ!元気だった?」

 「えっ!?セ、セナ?本当にきたんかよ!お前!」

 リズの言葉に、ライズは、何を言ってるんだと言わんばかりの顔をしたが、セナが声をかけると、驚きながらも笑顔を向けた。

 「一度村に遊びに来るって約束したからね」

 「ぶっ!だからってお前なぁ、英雄様がくるようなとこじゃねぇぞ?」

 セナの言葉に吹き出しながら答えるライズを、エリス達が、柔らかい笑顔をむけ見守っていた。

 「まぁいい!とりあえず、中にはいれよ!迅風も疲れたろ?せめぇが裏の庭でやすんでくれ!」

 「ブルルルル」

 ライズの言葉で、メディーが迅風から馬車や馬具をはずしてやると、迅風は、ライズに向かって鼻を鳴らし頭をさげた。

 「いいって!気にすんな!ほかの奴らも裏にいって休ませてやってくれ」

 「ブルルル」

 ライズが迅風に声をかけ、ほかの二頭の馬達を引き連れ、家の裏へと向かっていった。

 「あいかわらず、賢くてすげぇな!」

 「うん、王都じゃ子供たちにも大人気だからね」

 ライズが嬉しそうにセナに声をかけると、セナはめずらしく自慢げな顔をして笑顔をむけた。

 「メディー?ライズさんは…その、迅風と話ができるの?」

 「わかんない…けど…前に会った時からあんな感じだったんだよ…」

 ライズと迅風のやり取りを見ていたエリスが、メディーに問うと、メディーは少し悔しそうな顔でそう答えた。

 「んじゃ、せまっくるしい家だけど入ってくれ!あぁ!みんなもな!」

 「急にきて悪いね?ありがとライズ」

 「ぷっ!俺とお前で、何をいまさら。んなこと、気にすんなよ!」

 セナとライズが笑顔で言いあい、皆が嬉しそうにライズの家へと入っていった。


 
 
 

 

 
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