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第2章 リネア王国 ― 【王都リストニア編】

君の手を握り

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 セナの治療も大詰めを迎えてはじめた。

 「輸血の準備できました!」

 「まだ、待ってて!スターシャ、そこの止血と縫合終わらせて!」

 治療士の言葉にアディオンが答え、指示をうけたスターシャが、必死に縫合を終わらせた。

 「血管からのにじみなし!……縫合よし!師匠!」

 「ん。輸血をはじめて。液下は標準で!」

 「承知しました!」

 解毒や、大きい傷の処置を終え、輸血を開始したが、セナの容態は衰弱の一途をたどった。

 「くっ!なんとか盛り返してくれ…」

 「あ、あの!足りなければ、ギリギリまで私の血を使ってください!」

 アディオンが、回復しない容態に祈るようにつぶやいてると、入り口からエリスが顔を出し、声をかけてきた。

 「ありがとう…必要ならそうさせてもらうよ。だから、今は君も、安静にしててくれないかい?」

 アディオンがエリスにいうと、エリスは頷き、部屋を後にした。

 「し、師匠…もう、私がやれることはすべてやりました…なのに…」

 「あきらめちゃだめだよ?治療士があきらめたら…ほんとの終わりだ…。容態が安定してくれさえしたら、もうすぐ届くはずの、あのポーションが使えるんだ…」

 スターシャが、絶望を口にしようとしたのを、アディオンが遮り、励ました。

 「きゃぁ!なにやってるんですかっ!」

 バン!

 「スターシャ様!アリアさんが!!」

 「えっ!?」

 治療室で二人が、容態を見守り始めた時、廊下から悲鳴があがり、勢いよくドアがあけられ、治療士に呼ばれたスターシャが、廊下に出た。

 「なっ!?アリア?なんでここにっ!?それに、その怪我は!?」

 廊下に出たスターシャが、見たものは、顔と腕に薄っすら青あざと擦りむいたような怪我を負いながらも、必死に歯を食いしばり、治療室に、はってきていたアリアだった。

 病室を抜け出したアリアは、第1治療室を探し、階段を転げ落ちつつも、這いおり、やっとここまでたどり着いていた。

 「なにしてるのよ!あなたはっ!!」

 スターシャは、アリアに駆け寄り、怒鳴るように声をかけた後、一人の治療士にお願いして、いすを用意させそこにアリアを座らせた。

 椅子に座ったアリアは、身振り手振りでスターシャにメモとペンをよこすように伝え、手渡されると何かを書き始めた。

 【セナがここにいるの?なにがあったの?無事なの?】

 アリアが焦りながらも、必死に書いた3つの質問に目を通したスターシャは、セナが手を握り祈ることでアリアが目を覚ましたことを鮮明に思いだし、やはり二人は、どこかで引き付けあっているのか、アリアがここにきたことで、そう強く思えた。

 「セナ様は、依頼を受け、その最中、巻き込まれた冒険者を逃がすため、一人でスタンピートを止め、ここに運ばれてきたの…。それで…今は…非常に危険な状態よ」

 セナとアリアの繋がりを思い、正直に伝えたスターシャの言葉に、アリアは、メモとペンを床に落とし、顔を真青にして小刻みにふるえた。

 バタン!

 そして、椅子から倒れ落ち、セナが居る病室へと這おうとしだし、スターシャは驚きながらも、手をかしてアリアを起こした。

 「あなたが怪我したら、セナ様が目を覚ました時、責任かんじちゃうでしょ!」

 「っ!!………」
 
 スターシャの言葉をきき、アリアは涙をボロボロと流し、口を大きく開け、喉がつぶれ、出ない声をあげ、静かに、そして激しく泣いた。

 「いきましょう?セナ様を…呼び戻して!」

 泣き崩れたアリアの、背中と肩を優しく抱き、スターシャがいうと、アリアは、目を見開き驚いた後、覚悟をきめたかのような目つきで、力強く頷いた。

 そして、二人で病室に入った。

 「なにがあったんだい?って…誰だい?その子は」

 「はい。この子はアリアといいます。少しの間だけでもセナ様のそばにいさせてあげていいですか?」

 アディオンが治療室に入ってきたスターシャに言葉をかけ、隣にいたアリアをみていうと、スターシャが願い出た。

 「そっか…君が…あぁ、もちろんいいとも!残念ながら、我々治療士も、あとは祈るしかないからね」

 アディオンが、力なく笑い、セナのベッドの近くに椅子を用意した。そして、スターシャとアディオンの肩をかり、アリアが椅子に座り、セナを見た。

 「っ!!!」

 アリアの目に映ったセナは、パンツ1丁の姿だったが、全身を包帯で巻かれ、包帯の至ることろに血がにじんでいた。そして、薄っすらと青紫に変色しているセナの顔や、包帯の隙間から見える肌に、アリアは驚き、そして涙を浮かべた。

 「悲しむのではなく、君には……セナ君を励ましてもらいたいんだがね?」

 小刻みに揺れ泣くアリアに、アディオンが、困ったかのような笑顔を浮かべ言った。

 すると、アリアは目に力を宿し、ゴシゴシと涙を拭いた後、アディオンとスターシャを見て頷いた。そして、前かがみになり、両肘をベッドに置き、セナの左手を両手でにぎり、自身の額につけた。

 「なにを?」

 「しっ!いいから見守っててみよう」

 スターシャが疑問を口にしようとしたが、アディオンに遮られ、二人はアリアを見守った。

 フワァ!!!

 二人が見守る中、深い深呼吸を一つし、集中して祈りはじめたアリアから、澄んだ水色をした、オーラのような物が、きらめき沸いてきた。

 「「 !? 」」

 アリアをみて、アディオンとスターシャが声にならない驚きをあらわにした。

 『セナ?死んじゃだめだよ?皆がセナを待ってるよ?だから…私の手を握り返して!』

 アリアが想いを乗せ、口をあけ何かを言いだしたが、喉が完全につぶれてしまっていて、声がでていなく、見守る2人には、ただ口をパクパクと呟くように動かし始めたとしか見えなかった。

 しかし、アリアからでた光は一層強くなり、握られた手からセナへと伝わり、やがて二人を包み込んだ。

 すると、様子をみていたアディオンが、セナの容態が持ち直し始めたことに気づき、呆けたように声をだした。

 「あぁ、治療士としては…言いたくないけど……これはまさしく……奇跡だよ…」

 アリアとセナを見守っていたスターシャは、アリアが目を覚ました光景を重ね、目に涙を浮かべた。

 

 
 

 

 
 
 
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