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第7章 大陸編
リネア⑨ ランドリーフ1
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「改めまして、ようこそランドリーフ領へ」
「お忙しいところ申し訳ありません。お久しぶりですルイーネさん」
パラドイネをでて数日、ランドリーフ領へ入り数か所の町や村によりながらセナ達は中心地となるロックフェルの街で領主のルイーネと対面していた。
「なるほど、それでわざわざ遠くの我が領まで足を運んでくださったんですね」
「はい、ギルス様からブレイダー領の復興にランドリーフが優先的に資材をまわしてくれているとも聞いてましたし、なにより私自身が鉱石をちょっとほしかったもので…それで観光がてら皆にお願いしたというわけです」
「リネアとの同盟で帝国もランドリーフの良質な鉱物が手に入るようになり非常に感謝しておりますわ」
「帝国までの行程もランスロットやパラドイネが友好的なため治安もよく非常にスムーズに通れるのも要因の一つですが我が領としては販路がひろがり嬉しく思っております」
「帝国とてそれは同じことですわ。質のいい鉱物が手に入るようになり我が国の武器や防具の販路も広がっておりますからわが父、皇帝陛下もお喜びになられておりランドリーフ殿には感謝しておりました」
「こちらこそ感謝していると皇帝陛下にお伝えください」
セナ達の旅の理由をきき、ロックフェルでとれる鉱石などの話やそのほかの鉱物や植物などの話をし、学校建設が遅れてしまっていることやその間に行っている子供だけではなく時間をずらし希望する大人にも読み書きの習得を呼びかけ実行していることなどを聞き有意義な時間はそのままルイーネの言葉に甘え夕食と一泊の世話になることになった。
「んー!」
「随分お早いお目覚めでいらっしゃいますね。ゆっくりおくつろぎできませんでしたか?」
「あ、ルイーネ様、おはようございます。全然!最高でした!」
「最高ですか…」
「はい!空気も空も澄んでて綺麗だし昨日の夜に星を見て絶対今日は日の出をみようと早起きしたんですよ!」
「え?そうですか」
「はい!天気が良くてよかったですよ!すごく山からでるお日様が綺麗で今日一日いいことありそうな気分になりました!」
「そんな風におっしゃられたのは歌姫様が初めてですよ」
「えぇ!?そうなんですか?」
「はい。ここは山とそこでとれる山菜と鉱物だけが取り柄の領地ですから、てっきり皆様も退屈をしておられるかと思っておりました」
「えぇ!?退屈なんてとんでもない!きっとルイーネ様やここで暮らしている方々は毎日みているから綺麗さに慣れちゃってるんですよ!」
朝食前の時間、庭で朝日を浴びていたアリアに声をかけたルイーネはアリアの屈託のない言葉に驚きを隠せずにいた。
「やあ、アリアおはよう。ルイーネさんもおはようございます」
「セナ!おはよ!!」
「セナ様おはようございます。このような時間にお出かけなさっていたんですか?」
「日課の軽い運動ですこしこの辺を走ってきたんです」
「そうですか」
「お二人はここでなにを?」
「セナ!それがね!!…」
日課のランニングを終えたセナが声をかけるとアリアは先ほどのルイーネとの会話を説明した。
「ね?退屈なんかじゃないよね!?」
「もちろんだよ」
「だよね!」
「その話はのちほど朝食をとりながらしませんか?きっと皆さんお待ちになられておりますよ?」
熱弁したアリアをみながら苦笑ぎみにルイーネが切り出しセナとアリアを引き連れ食堂へ向かった。
「退屈なんてとんでもありませんわ」
「そうですよ!それに鉱物しかないなんてとんでもない話です!」
「そうだよね!」
「はい!良質な飼葉や澄み切ったお水と空気!最高の環境ですよ!グラニールも連れてきてあげたいくらいです!」
「さすがメディー…ブレませんわね」
朝食をとりながらアリアの話をきいたカトリーヌと相変わらずのメディーの会話を一行が苦笑気味に聞いていた。
「で、でも!お水は本当においしいよね!私今まで飲んだお水でこの時期にこんなに冷たくておいしいお水飲んだことないよ!」
「ああ、それは僕もそう思うよ。それにこれだけ木々に囲まれているせいか空気も乾いてなくて澄んでておいしいしね」
「うんうん!夜もね?空がすごく澄んでて近く感じるからかもしれないけど星がすごく綺麗なんだよ!夕陽を見た時に楽しみにしてて夜になって感動したんだぁ、それでね?朝日もすごく綺麗だったんだぁ」
「僕もみたよ。この街の北にある森の中に広い大きな湖があってね、そこに映る朝日はとてつもなく綺麗だったよ」
「いいなぁ、ねぇ皆で夕陽と星をそこに見に行こうよ!」
「ああ、いいかも。ルイーネさんいいですか?」
「へ?え、ええ。あそこの湖は標高が高くわずかな動物しか生息できず比較的安全ですから夜も大丈夫だと思いますよ」
「やったぁ!」
セナとアリアの会話をきき、なぜ普通のものをこんなに喜んでいるのかわからず困惑していたルイーネが急に声をかけれられ焦りながら答えた。
「星も水もどこにでもあるものですのに、そのように感動するほどの物だとはいまいちわかりませんね」
ルイーネが赤いメガネをかけなおしながらつぶやいた。
「身近にありすぎると案外そういう風に思ってしまうものなのかもしれませんね」
「そうなのですかね。この街にくる方々は大抵鉱物の取引にくる方々ばかりですから景色のことなど言われたことがありませんから」
「そんな!もったいない!ああ~!!教会の皆にもここのすばらしさを教えてあげたいなぁ!!」
「あははは!暑い場所に住んでいる人には特に教えてあげたいね」
「うん!ここ涼しいもんね!」
「そうですわね。もう少し交通の便がよければお父様に養生の場としてお教えして差し上げたいくらいですわ」
「あははは、セナ様とアリアが気に入ってる場所に皇帝様まできてしまったら一大観光地になってしまいますよ」
「ふふふっそうですわね」
会話を聞いていたメディーの一言にカトリーヌもくすくすと笑いながら頷いた。
「どこの山岳部でもみられるものに観光などで人がくるとは思えませんが、そこまで我が領を気に入っていただけ大変うれしく思います」
「そんなことないのになぁ、すごく素敵なところなのに」
「アリアは随分ここを気に入りましたのね」
ルイーネの言葉に少しがっかりしながらつぶやいたアリアへカトリーヌが訪ねた。
「うん、なんか森も他のところと違う明るい感じがするし、なによりドワーフさんたちが可愛い!」
「へ?」
「大人のドワーフさん達は拘りの職人さんが多いんだけど、小さいのに力持ちだしあんなにごっつい手でモニュモニュすごく細かい細工もできるし!子供はほんと天使みたいだったよ!」
「そ、そうですわね」
アリアの言葉にルイーネが間抜けな声を上げ驚き固まってる間もアリアのドワーフ愛あふれる熱弁が続き止められないものを感じカトリーヌは頷くしかなかった。
「わかります!あの拘りはすごいです!同じモノづくりをするものとして尊敬に値します!」
「メディー…あなた職人じゃなく獣医ではなくって?…」
がっしりアリアの手をにぎり力いっぱい同意するメディーにカトリーヌはあきらめの境地に達しようとしていた。
「ドワーフの皆さんが作っていたのは家具や農具など金属加工も木工もありましたが日用品が多かったですね」
「はい。主に領内で流通するものを作ってますね。他との取引は主に鉱物が多いので」
「そうなんですね」
セナの問いに我に返ったルイーネが淡々と答えた。
「ねぇヤオさんとタオさんはどう思いますか?素敵ですよね?」
「そういえばここに来てからお二人とも随分おしずかになさってますわね」
食事をすませ静かに目を閉じていた二人にアリアが声をかけた。
「素晴らしい場所だと思いまする」
「そうですわね。心穏やかに目をとじれば、日の光の暖かさや森の爽やかな香り、川のせせらぎとそよ風にゆれる木葉のさざめきの中にわずかに聞こえる鎚をうつ音…素晴らしいと思いますわ」
「うっ!うるさくしてすいませんでした…」
「いえいえ、何もないように見えるからこそ、人それぞれの楽しみがあることを見つけれるものにございまする」
目を閉じたまま優しく微笑んでいったヤオとタオにルイーネは見惚れ言葉をうしなった。
「歌姫様はこの場をどのようにしたいとお考えか」
「え?私?私は…うん!このまま素敵な場所であってほしいです!けど住んでいる人たちもそうだけど鉱物だけしかないなんて考えを変えたい!他にもここは素晴らしい場所だって知ってほしい!」
「そうにございますか…では…セナ様」
「はい?」
「歌姫様と我らの思いにどうぞお知恵とお力をお貸ししてはくださいませぬか」
「へ?」
「うん!セナお願い!ここのすばらしさを住んでいる人も見たことないのに決めつけちゃってる人たちにも知ってもらって足を運んでもらう方法を教えてほしい!お願いします!」
アリアの気持ちを確かめたヤオが深く頷いたあとゆっくりと目をあけセナをみつめ深々と頭をさげて願うとアリアも便乗する形に勢いよく頭をさげた。
「え?えぇぇぇ!?」
「歌姫様、それに皆様のお気持ちは嬉しく思いますが、さすがのセナ様にもできることできないことがあると思いますし、なにより急にそのようなことをおっしゃられてもお困りになられますよ?」
「むっ!?…失礼ですがセナ様ならお出来になられますわ!セナ様、私からもお願いいたしますわ!」
「えぇ?カトリーヌまで何を!?」
ルイーネのあきらめたような表情とセナでもできないといわれ、一瞬むっとした顔をしたカトリーヌが帝国魂に火が付き立ち上がり胸に手を当て自信満々で宣言した。
「お気をわるくなさってしまったら申し訳ありませんですが…」
「あのぉ、ルイーネ様。申し訳ありませんがおいしいお茶とそれに合うあまーいお茶請けってありませんか?」
「え?ええぇあります。気がつかず申し訳ありません、すぐにお出しいたしますので少々お待ちください」
「あっ!私にではありません。セナ様にお持ちくださいませんか?ああ、やっぱり私にも下さい」
「へ?セ、セナ様にでございますか?わかりました」
カトリーヌの態度を見てルイーネが失言をみとめ謝罪したが自身の考えは間違っていないと伝えようとしたのをメディーが遮り戸惑いながらもルイーネはメイドに指示を出した。
「ちょっとメディー、今は邪魔しないでほしかったかな!」
「そうですわ!セナ様の名誉が…」
「邪魔してないですよ?むしろお手伝いをしましたよ?」
「どういうことですの?」
アリアとカトリーヌの言葉にメディーはシレっと答えた。
「お茶をお飲みになって甘いものを食べればお気持ちも落ち着きますし、ゆったりお考えをおまとめになる時間ができますから」
「え?」
「セナ様は皆さんのお考えやお気持ちを無下になさるお方ではないですからね。ここまでの皆さんのお言葉をまとめご自身のお考えをおまとめになられる時間とお気持ちが必要なんですよ…うわぁ!セナ様これおいしそうですよ!早速いただきましょう!」
「…付き合いが長くなればなるほど、ほんに謎な子よな」
「そうですわね…ブレイダーがおっしゃるとおりメディーだからが、よく心にしみますわ…」
淡々と自身の考えと圧倒的なセナへの信頼感を口にしたメディーはセナへ満面の笑みで焼き菓子とケーキを進め
あまりの切り替わりに他のメンバーはついていけなかった。
「やっぱりメディーはすごいなぁ…そう思ってることが普通すぎて特別なことだと思ってないんだね」
「そうですわね…そしてセナ様のことを一番理解してらっしゃるのかもしれませんわ」
アリアとカトリーヌがかなわないとメディーをみながらつぶやきあった。
それから皆はお茶を一口のみ幸せそうに焼き菓子やケーキをメディーと微笑みあいながら食べる姿をみて、体の力みがきえそれぞれもゆったりと食後のお茶を飲んだ。
「おいしかったですねぇ」
「うん。朝からこんな美味しいものを食べれて幸せだよ」
食べ終わったメディーが満面の笑みでたずねるとセナも丁度たべおわり至福の顔をして答えた。
「では、セナ様そろそろお考えを皆さんに教えて差し上げてください」
「ん?うん。ただ結局はまた他の方々の許可やお力添えが必要になってしまうけど僕が思いついたのはこれで世いっぱいだけどいいかな?」
「もちろんですよ!いつもどおりセナ様のお知恵をお聞きしそのあと皆さんの意見をききましょう!」
「うん。そうだね。じゃあ、皆さんもうしわけないけど僕の考えを少しだけ聞いてもらえますか?」
お茶を最後の一口のんでカップがおかれ一息吐いたセナにメディーが優しくたずねると周囲が驚き中、セナは不安げながらもメディーの笑顔に後押しされ自身が考え付いたことをいいはじめた。
「お忙しいところ申し訳ありません。お久しぶりですルイーネさん」
パラドイネをでて数日、ランドリーフ領へ入り数か所の町や村によりながらセナ達は中心地となるロックフェルの街で領主のルイーネと対面していた。
「なるほど、それでわざわざ遠くの我が領まで足を運んでくださったんですね」
「はい、ギルス様からブレイダー領の復興にランドリーフが優先的に資材をまわしてくれているとも聞いてましたし、なにより私自身が鉱石をちょっとほしかったもので…それで観光がてら皆にお願いしたというわけです」
「リネアとの同盟で帝国もランドリーフの良質な鉱物が手に入るようになり非常に感謝しておりますわ」
「帝国までの行程もランスロットやパラドイネが友好的なため治安もよく非常にスムーズに通れるのも要因の一つですが我が領としては販路がひろがり嬉しく思っております」
「帝国とてそれは同じことですわ。質のいい鉱物が手に入るようになり我が国の武器や防具の販路も広がっておりますからわが父、皇帝陛下もお喜びになられておりランドリーフ殿には感謝しておりました」
「こちらこそ感謝していると皇帝陛下にお伝えください」
セナ達の旅の理由をきき、ロックフェルでとれる鉱石などの話やそのほかの鉱物や植物などの話をし、学校建設が遅れてしまっていることやその間に行っている子供だけではなく時間をずらし希望する大人にも読み書きの習得を呼びかけ実行していることなどを聞き有意義な時間はそのままルイーネの言葉に甘え夕食と一泊の世話になることになった。
「んー!」
「随分お早いお目覚めでいらっしゃいますね。ゆっくりおくつろぎできませんでしたか?」
「あ、ルイーネ様、おはようございます。全然!最高でした!」
「最高ですか…」
「はい!空気も空も澄んでて綺麗だし昨日の夜に星を見て絶対今日は日の出をみようと早起きしたんですよ!」
「え?そうですか」
「はい!天気が良くてよかったですよ!すごく山からでるお日様が綺麗で今日一日いいことありそうな気分になりました!」
「そんな風におっしゃられたのは歌姫様が初めてですよ」
「えぇ!?そうなんですか?」
「はい。ここは山とそこでとれる山菜と鉱物だけが取り柄の領地ですから、てっきり皆様も退屈をしておられるかと思っておりました」
「えぇ!?退屈なんてとんでもない!きっとルイーネ様やここで暮らしている方々は毎日みているから綺麗さに慣れちゃってるんですよ!」
朝食前の時間、庭で朝日を浴びていたアリアに声をかけたルイーネはアリアの屈託のない言葉に驚きを隠せずにいた。
「やあ、アリアおはよう。ルイーネさんもおはようございます」
「セナ!おはよ!!」
「セナ様おはようございます。このような時間にお出かけなさっていたんですか?」
「日課の軽い運動ですこしこの辺を走ってきたんです」
「そうですか」
「お二人はここでなにを?」
「セナ!それがね!!…」
日課のランニングを終えたセナが声をかけるとアリアは先ほどのルイーネとの会話を説明した。
「ね?退屈なんかじゃないよね!?」
「もちろんだよ」
「だよね!」
「その話はのちほど朝食をとりながらしませんか?きっと皆さんお待ちになられておりますよ?」
熱弁したアリアをみながら苦笑ぎみにルイーネが切り出しセナとアリアを引き連れ食堂へ向かった。
「退屈なんてとんでもありませんわ」
「そうですよ!それに鉱物しかないなんてとんでもない話です!」
「そうだよね!」
「はい!良質な飼葉や澄み切ったお水と空気!最高の環境ですよ!グラニールも連れてきてあげたいくらいです!」
「さすがメディー…ブレませんわね」
朝食をとりながらアリアの話をきいたカトリーヌと相変わらずのメディーの会話を一行が苦笑気味に聞いていた。
「で、でも!お水は本当においしいよね!私今まで飲んだお水でこの時期にこんなに冷たくておいしいお水飲んだことないよ!」
「ああ、それは僕もそう思うよ。それにこれだけ木々に囲まれているせいか空気も乾いてなくて澄んでておいしいしね」
「うんうん!夜もね?空がすごく澄んでて近く感じるからかもしれないけど星がすごく綺麗なんだよ!夕陽を見た時に楽しみにしてて夜になって感動したんだぁ、それでね?朝日もすごく綺麗だったんだぁ」
「僕もみたよ。この街の北にある森の中に広い大きな湖があってね、そこに映る朝日はとてつもなく綺麗だったよ」
「いいなぁ、ねぇ皆で夕陽と星をそこに見に行こうよ!」
「ああ、いいかも。ルイーネさんいいですか?」
「へ?え、ええ。あそこの湖は標高が高くわずかな動物しか生息できず比較的安全ですから夜も大丈夫だと思いますよ」
「やったぁ!」
セナとアリアの会話をきき、なぜ普通のものをこんなに喜んでいるのかわからず困惑していたルイーネが急に声をかけれられ焦りながら答えた。
「星も水もどこにでもあるものですのに、そのように感動するほどの物だとはいまいちわかりませんね」
ルイーネが赤いメガネをかけなおしながらつぶやいた。
「身近にありすぎると案外そういう風に思ってしまうものなのかもしれませんね」
「そうなのですかね。この街にくる方々は大抵鉱物の取引にくる方々ばかりですから景色のことなど言われたことがありませんから」
「そんな!もったいない!ああ~!!教会の皆にもここのすばらしさを教えてあげたいなぁ!!」
「あははは!暑い場所に住んでいる人には特に教えてあげたいね」
「うん!ここ涼しいもんね!」
「そうですわね。もう少し交通の便がよければお父様に養生の場としてお教えして差し上げたいくらいですわ」
「あははは、セナ様とアリアが気に入ってる場所に皇帝様まできてしまったら一大観光地になってしまいますよ」
「ふふふっそうですわね」
会話を聞いていたメディーの一言にカトリーヌもくすくすと笑いながら頷いた。
「どこの山岳部でもみられるものに観光などで人がくるとは思えませんが、そこまで我が領を気に入っていただけ大変うれしく思います」
「そんなことないのになぁ、すごく素敵なところなのに」
「アリアは随分ここを気に入りましたのね」
ルイーネの言葉に少しがっかりしながらつぶやいたアリアへカトリーヌが訪ねた。
「うん、なんか森も他のところと違う明るい感じがするし、なによりドワーフさんたちが可愛い!」
「へ?」
「大人のドワーフさん達は拘りの職人さんが多いんだけど、小さいのに力持ちだしあんなにごっつい手でモニュモニュすごく細かい細工もできるし!子供はほんと天使みたいだったよ!」
「そ、そうですわね」
アリアの言葉にルイーネが間抜けな声を上げ驚き固まってる間もアリアのドワーフ愛あふれる熱弁が続き止められないものを感じカトリーヌは頷くしかなかった。
「わかります!あの拘りはすごいです!同じモノづくりをするものとして尊敬に値します!」
「メディー…あなた職人じゃなく獣医ではなくって?…」
がっしりアリアの手をにぎり力いっぱい同意するメディーにカトリーヌはあきらめの境地に達しようとしていた。
「ドワーフの皆さんが作っていたのは家具や農具など金属加工も木工もありましたが日用品が多かったですね」
「はい。主に領内で流通するものを作ってますね。他との取引は主に鉱物が多いので」
「そうなんですね」
セナの問いに我に返ったルイーネが淡々と答えた。
「ねぇヤオさんとタオさんはどう思いますか?素敵ですよね?」
「そういえばここに来てからお二人とも随分おしずかになさってますわね」
食事をすませ静かに目を閉じていた二人にアリアが声をかけた。
「素晴らしい場所だと思いまする」
「そうですわね。心穏やかに目をとじれば、日の光の暖かさや森の爽やかな香り、川のせせらぎとそよ風にゆれる木葉のさざめきの中にわずかに聞こえる鎚をうつ音…素晴らしいと思いますわ」
「うっ!うるさくしてすいませんでした…」
「いえいえ、何もないように見えるからこそ、人それぞれの楽しみがあることを見つけれるものにございまする」
目を閉じたまま優しく微笑んでいったヤオとタオにルイーネは見惚れ言葉をうしなった。
「歌姫様はこの場をどのようにしたいとお考えか」
「え?私?私は…うん!このまま素敵な場所であってほしいです!けど住んでいる人たちもそうだけど鉱物だけしかないなんて考えを変えたい!他にもここは素晴らしい場所だって知ってほしい!」
「そうにございますか…では…セナ様」
「はい?」
「歌姫様と我らの思いにどうぞお知恵とお力をお貸ししてはくださいませぬか」
「へ?」
「うん!セナお願い!ここのすばらしさを住んでいる人も見たことないのに決めつけちゃってる人たちにも知ってもらって足を運んでもらう方法を教えてほしい!お願いします!」
アリアの気持ちを確かめたヤオが深く頷いたあとゆっくりと目をあけセナをみつめ深々と頭をさげて願うとアリアも便乗する形に勢いよく頭をさげた。
「え?えぇぇぇ!?」
「歌姫様、それに皆様のお気持ちは嬉しく思いますが、さすがのセナ様にもできることできないことがあると思いますし、なにより急にそのようなことをおっしゃられてもお困りになられますよ?」
「むっ!?…失礼ですがセナ様ならお出来になられますわ!セナ様、私からもお願いいたしますわ!」
「えぇ?カトリーヌまで何を!?」
ルイーネのあきらめたような表情とセナでもできないといわれ、一瞬むっとした顔をしたカトリーヌが帝国魂に火が付き立ち上がり胸に手を当て自信満々で宣言した。
「お気をわるくなさってしまったら申し訳ありませんですが…」
「あのぉ、ルイーネ様。申し訳ありませんがおいしいお茶とそれに合うあまーいお茶請けってありませんか?」
「え?ええぇあります。気がつかず申し訳ありません、すぐにお出しいたしますので少々お待ちください」
「あっ!私にではありません。セナ様にお持ちくださいませんか?ああ、やっぱり私にも下さい」
「へ?セ、セナ様にでございますか?わかりました」
カトリーヌの態度を見てルイーネが失言をみとめ謝罪したが自身の考えは間違っていないと伝えようとしたのをメディーが遮り戸惑いながらもルイーネはメイドに指示を出した。
「ちょっとメディー、今は邪魔しないでほしかったかな!」
「そうですわ!セナ様の名誉が…」
「邪魔してないですよ?むしろお手伝いをしましたよ?」
「どういうことですの?」
アリアとカトリーヌの言葉にメディーはシレっと答えた。
「お茶をお飲みになって甘いものを食べればお気持ちも落ち着きますし、ゆったりお考えをおまとめになる時間ができますから」
「え?」
「セナ様は皆さんのお考えやお気持ちを無下になさるお方ではないですからね。ここまでの皆さんのお言葉をまとめご自身のお考えをおまとめになられる時間とお気持ちが必要なんですよ…うわぁ!セナ様これおいしそうですよ!早速いただきましょう!」
「…付き合いが長くなればなるほど、ほんに謎な子よな」
「そうですわね…ブレイダーがおっしゃるとおりメディーだからが、よく心にしみますわ…」
淡々と自身の考えと圧倒的なセナへの信頼感を口にしたメディーはセナへ満面の笑みで焼き菓子とケーキを進め
あまりの切り替わりに他のメンバーはついていけなかった。
「やっぱりメディーはすごいなぁ…そう思ってることが普通すぎて特別なことだと思ってないんだね」
「そうですわね…そしてセナ様のことを一番理解してらっしゃるのかもしれませんわ」
アリアとカトリーヌがかなわないとメディーをみながらつぶやきあった。
それから皆はお茶を一口のみ幸せそうに焼き菓子やケーキをメディーと微笑みあいながら食べる姿をみて、体の力みがきえそれぞれもゆったりと食後のお茶を飲んだ。
「おいしかったですねぇ」
「うん。朝からこんな美味しいものを食べれて幸せだよ」
食べ終わったメディーが満面の笑みでたずねるとセナも丁度たべおわり至福の顔をして答えた。
「では、セナ様そろそろお考えを皆さんに教えて差し上げてください」
「ん?うん。ただ結局はまた他の方々の許可やお力添えが必要になってしまうけど僕が思いついたのはこれで世いっぱいだけどいいかな?」
「もちろんですよ!いつもどおりセナ様のお知恵をお聞きしそのあと皆さんの意見をききましょう!」
「うん。そうだね。じゃあ、皆さんもうしわけないけど僕の考えを少しだけ聞いてもらえますか?」
お茶を最後の一口のんでカップがおかれ一息吐いたセナにメディーが優しくたずねると周囲が驚き中、セナは不安げながらもメディーの笑顔に後押しされ自身が考え付いたことをいいはじめた。
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