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第7章 大陸編

ストラトス②

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 「ふっ、つたないながらもいい演説でしたな」

 「そうですわね」

 カトリーヌの言葉をききヤオとタオは敵を切り伏せながら言い合った。

 「そんな女二人にいつまでやられてんだ!」

 「うっせぇ!だったらてめぇがやれよ!」

 ヤオとタオを取り囲んではいるものの次々と切り伏せられ陣頭指揮をしていたものが激怒すると二人に対峙している兵がキレぎみに怒鳴り返した。

 「品のない者たちですなぁ」

 「てめぇらどけ!ぐっへっへっへ!上玉じゃねぇか!生け捕りにして俺のもんにして可愛がってやるぜぇ」

 「ほんとですわね…まるで盗賊ですわ」

 取り囲む兵をかきわけあらわれたひときわ大きい男が下衆な笑いをうかべ二人をなめるようにみるとタオはゲンナリしたように言い切ると同時にその男の首を斬り飛ばした。

 「このままでは埒があきませんな」

 「そうですわね、さっさと終わらせてセナ様の元へいかなければなりませんのに」

 ため息交じりにいったヤオに一応は困った顔をしたタオが答えた。

 「ふぅ~しかたないやりますか…」

 「もったいないですが、そうですわね」

 ヤオが闇の燐気をまとうとタオもしかたなしに闇の龍気をまとった。

 「あぁ?なんだ?女の雰囲気がかわったぞ」

 「うわぁ!もえるぅ!?きえねぇ!きえねぇよぉ!!」

 「いてっ!凍ってる!?なんだこれ!!体がどんどんこおっていきやが…」

 ヤオに切られたところからどんどん削り取られるように燃えて行った兵とタオにきられどんどん体が凍って息絶えて行った兵をみてジリジリと二人から敵が距離を取り始めた。

 「ふむ。むかってこぬのは少々予想外でしたな」

 「ええ、かえって時間がかかってしまいますわね」

 敵を見ながら世間話をするように二人がいい腰につけた小さなマジックバッグから数枚の札をとりだした。

 「こんどはなんだ!?」

 「紙切れが俺らを囲って浮いてるぞ!」

 ヤオとタオが敵を挟むように陣取り札を空に投げ上げると札は敵を円を描くように囲った。

 「では」

 「ごきげんよう」

 「「 呪爆殺 」」

 2人が同時に印のようなものを結びいうと札で囲われた内側が大爆発をおこし中に閉じ込められていた敵は跡形もなく吹っ飛んだ。

 「少々札がおおすぎましたかな?」

 「そうですわね。思った以上に柔らかな方々でしたのね」

 跡形もなく吹き飛んだ場所を興味なさそうに見ながら二人がいい、そのままセナの元へとかけて行った。

 ====================================

 「すごいですねそれ」

 「ええ、さすがセナ様がお作りになられただけはあるわ、使うのが怖いくらいよ。エリスは使わないの?」

 セナからもらった深紅の小手とすね当てを装備し攻撃を防ごうとする剣や盾ごと破壊し殴り飛ばしていくスカーレットをみながらエリスがいうとスカーレットはエリスの腰にある鞘におさまったままの刀を見てたずねた。

 「はい。師匠から使といわれているんです」

 「へぇ」

 「師匠も日頃は愛刀を使ってないですからね」

 「え?あのいつもつかってる剣ってちがうの?」

 「あれはドラニスタの武器屋で売ってる数打ちの安物ですよ」

 「そんな剣であれなの!?」

 「はい。皆さん勘違いされてますけど師匠の剣技に力任せのものは何一つありませんよ」

 「そうだったんだ」

 「ええ、そうです」

 どこか自慢げにエイケンの話をするエリスだったがはたから見ると次々と敵が切られまたは殴り飛ばされる中、世間話をしているようにみえる違和感を感じていた。

 「二人とも邪魔ですよー!無駄話をしててよけないと焼け死んでしまいますよ?」

 「え!?あぶなっ!」

 「ちょっとコニー!!」

 右目に眼帯をしたコニーがセナからもらった杖を高々とかかげ振り下ろすと杖の先から高速回転をする直径2メートルを超える火の玉が一直線に飛んでいき、声をかけられたスカーレットとエリスが紙一重でかわした。

 「かわせたんだったらいいじゃないですか。あっ、それ着弾すると爆発するんで」

 「え!?」

 「コニーーー!!!」

 敵もろとも爆風に巻き込まれたスカーレットとエリスが獣気をまとい耐えながらコニーに怒鳴りつけた。

 ===============================

 「右陣!左陣!ともに敵部隊殲滅!」

 「抑えた陣地に兵を!せっかく皆さんが倒した場所にまた流れてこないようにしなければなりません!え?グラニールなにを?きゃっ!!」

 「グルワーーーーー!!!」

 騎士の報告を聞いたカトリーヌが指示をだしたが帝国にはさける兵があまりおらず再び後手にまわりかけたときグラニールがスカーレットとアリアを手に抱きながら空高く舞い上がると咆哮とともに無数の雷とブレスをヤオとタオ、エリスたちが抑え込んだ場所に撃ちこんだ。

 「て、敵沈黙!侵攻はありません!」

 「グラニール!ありがとうございます」

 着地と同時にグラニールの胸にとびこんだカトリーヌをグラニールは少しあせりながらも嬉しそうに受け止めた。

 「これだとあと少しで終わりそうですねぇ。カトリーヌ、兵の皆さんをすこし後退させてもいいんじゃないですか?」

 「え?でもまだ戦いは」

 「セナ様が先陣きってますから巻き添え食らう前にすこしさげたほうがいいともいますよ?ほらセナ様、結構おいかりになられてましたし」

 「え゛…いますぐ全軍をさげなさない!!」

 「は、はっ!!」

 メディーの言葉をききキレたセナの話を思い出したカトリーヌは顔を真っ青にし焦ったように指示を出した。

 ===============================

 「みんな派手にやってるなぁ」

 「ブルルルル」

 「うん、そうだね。せっかく落ち着きをとりもどしてきてたのに…ゆるせないよね」

 「ブルルルルル!!」

 「ああ、やろう!迅風!」

 「ヒヒィーーン!!」

 左右の後方からきこえた爆音に苦笑していたセナだが迅風の言いたいことが伝わったのか剣呑な目つきにかわり敵に刀の切っ先を向けた。

 「本陣まで一気に切り飛ばすから飛び込んでもらえるかい?」

 「ヒヒィーーン!」

 セナが優しく迅風の首をなでいい、迅風が気合を入れると魔力、龍気・燐気をまといその力を鞘に一度おさめた刀へとため込んでいった。

 「びびって武器をしまったぞ!いまだやれー!!」

 「おー!!」

 再三セナ一人に押されまくっていた敵陣がセナが刀を鞘におさめるのをみて一斉に襲い掛かってきた。

 「おまえらに慈悲はないよ…疾風波斬」

 セナが底冷えするような声でいい刀を鞘から引き抜き横一線にふると水面に石をなげすてた時のような徐々にひろがる波紋のごとく風の刃が広範囲に広がっていき中央をせめてきていた敵兵の大半を切り捨てた。

 「なんだいまの!」

 「一振りで味方がごっそりいかれたぞ!」

 「やべぇっ!つっこんできやがる!!」

 セナの斬撃が飛んだ瞬間、それを追うように迅風が走り出し目の前の味方が上半身と下半身が綺麗に分かれていくのをみた敵兵たちが恐怖におののき、中には背中を向け逃げ出そうとしたものもいた。

 「ブルルルル」

 「ん?たしかに逃げられるのは後々面倒だね」

 迅風がなにか言いたげに鼻を鳴らすと理解したのかセナがうなずき敵陣中央の上空に転移した。

 「おもったより広範囲だなぁ…」

 敵陣の全体をみわたしマジックバッグからいくつかの手のひらサイズの球体を1つ取り出しては投げつけを数回くりかえした。

 「こんなものかな?ふん!!」

 セナが投げつけ地面に少しめり込んだ球全体に右手を掲げ雷の力を注ぐと球同士が雷の魔力でつながりさながら雷の檻のようなものができあがると、セナは再び転移した。

 「メディー、アイリーンさんアレをやります」

 「ですか!わっかりました!」

 「では一度もどります。メディーよろしくお願いいたしますわ」

 セナが転移してきて声をかけるとメディーがやる気を爆発させアイリーンは魔界に戻っていった。

 「カトリーヌ無事でよかった。ああ、そうだ兵を全体的にもっとさげてもらえるかい?」

 「へ?え、ええ了解しましたわ」

 「じゃ、よろしく。グラニールみんなを頼むよ」

 「グルワァ」

 セナが言い切ると同時に転移していった。

 「ヤオさん、タオさん!とうとうアレを披露するときが来ましたよ!!」

 「ふむ。心得た」

 「では、セナ様よろしくお願いいたします」

 次にセナとメディーがヤオとタオのもとへ転移し二人をつれ再び転移をした。

 「東はお任せくだされ」

 「西は私にお任せ願いますわ」

 「アイリーンさん!簡易結界起動しましたよ!」

 「メディー感謝いたしますわ。セナ様北はわたくしにおまかせを」

 「よいしょ!南も準備万端です!いつでも!!」

 
  次々と敵陣を東西南北で取り囲むようにヤオ達を転移で配置させるとセナは合図をおくるかのように雷球を上空にうちあげた。

 「なにがはじまるのかな?」

 「わかりませんが…おそろしいものが見れそうですわ」

 グラニールに乗りながらセナたちをみてアリアとカトリーヌが言い合った。

 「エリス!コニー!なにかヤバい気がします!離れましょう!!」

 「コニー!つかまって!!」

 「ふぇ!?」

 セナの元へ向かっていたスカーレットたちがヤオ達とセナの行動を見るとなにやら危険な気配を感じ焦って盛大に距離を取った。

 「合図があがりましたな」

 「やりますわよ?」

 「いつでも…ふふふふ」

 「さぁ!皆さん!息を合わせてやりますよぉーー!!」

 セナの合図を確認した4人が地面に両手を付け、まるで連絡をとりあっているかのようにぴったり息を合わせ力をこめると4人を結ぶ巨大な魔方陣のようなものが敵陣に浮かび上がった。

 「なんだこれ!」

 「地面がひかってやがる!!」

 魔方陣を見て敵兵たちは混乱し逃げ戸惑いもはや陣形などは崩れ去っていた。


 「何をあいつらはやってるんだ!そんなもんただのコケおどしだろうが!!」

 高台からみていた総指揮をとっている男が苦々しく声をあららげた。

 「きたきたきたぁ!!!いきますよぉーーー!!!」 

 魔方陣が徐々に光を強く発し点滅するのを見てメディーがテンションをあげセナからもらったグローブに装着した道具を発動させた。

 「「「「  四陣四界結界!!  」」」」

 4人が声を揃えいうと敵陣が真っ暗な空間にとじこめられた。

 
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