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第6章 エターニャ神皇国編

王と王と天才

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 「英雄セナになにかあればこの国はなくなると思え!」

 「おっ!おいっ!!」

 エイコが魔力をたぎらせ宣言し転移したため、エイケンが焦って声をあげた。

 「おつかれ」

 「ふぅ~さすがに疲れたわ。ねぇコーヒー1つね」

 「ああ、悪いけど僕にも一つたのむよ」

 「へ?あれ?え?しょ、少々おまちください!」

 転移したエイコが元居た店の席に現れると驚く店員にアキラと一緒にコーヒーを注文した。

 「おいっ!ここにかよっ!!」

 「うるさいわねぇ…バレるとかっこ悪いでしょ、静かにしなさいよ」

 上空を見て叫んだエイケンの目線にエイコが映りツッコみをいれた。

 「あの場面じゃ転移するしかないね」

 「そうよねぇ。普通に下りてきたらバカみたいじゃない、それよりあんたは自分の指示で動かした子たちを集めてきなさいよ。転移できないじゃない」

 「このクソ野郎が」

 「私は野郎じゃないわ。いいからさっさとしなさいよ」

 シッシとまるで野良犬でも追い払うかのように手を振ったエイコに顔を真っ赤にし激怒しながらもエイケンがメディーにエリス達を呼びに向かわせた。

 「魔王ってやっぱ、おっかねぇなぁ…」

 「ああ、迫力がちがったぜ…殺されるかと思ったぜ」

 「けど、美人だったな…」

 「ああ、えれぇベッピンだったな…ここいらでもそうそう見れるレベルじゃなかったぜ」

 興奮さめやらぬリストニアの男たちがエイコのことを思い出し話していた。

 「フフン♪」

 「なに勝ち誇った顔してんだよ…ったくリネアの男どもは見る目がねぇぜ」

 「あ゛ぁ?」

 男たちの言葉を聞き嬉しそうに鼻を鳴らしエイケンに勝ち誇ったような顔をしたエイコだったが深いため息交じりのエイケンの言葉に額に血管を浮かび上がらせ、下からえぐるように睨みつけた。

 「ふふふ…それは僕も含まれているのかな?…その辺についてゆっくり聞かせてくれたまえ」

 「げっ!いや、アキラさん…それはその…」

 眼鏡の奥が笑っていない笑顔をうかべたアキラが悪態をついているエイケンの肩に手を置いた。

 「遅くなり申し訳ありません!」

 「おぉ!エリス!!ナイスタイミングだ!!」

 焦るエイケンにエリス達が息を切らし声をかけた。

 「ん?1人増えてるね」

 「はじめまして、私はセナ様の影…コルネと申します」

 エリス達に交じり、シルティアからリストニアまで帝国経由で護衛を務めたコルネがエリス達から事情を聴いて合流した。

 「セナ君の影?」

 「はい。私はセナ様のために生き、セナ様のために死ぬ影にございます」

 「セナはんなもん望まねぇと思うぞ?まぁいいけどよ!それで、コルネもドラニスタまで行きてぇってことか?」

 「いえ、セナ様のもとまでです」

 アキラやエイケンの言葉に無表情でコルネが答えた。

 「んー…まず転移の人数については魔王次第ってことと、基本的に大陸やドラニスタに住む人々が魔大陸に上陸する許可をドラニスタの姫にもらわなければならないんだよ」

 「知っています。しかし私は魔大陸に師匠に連れられ何度か行っておりますので魔素の問題はありません」

 アキラの言葉にコルネが淡々と答えた。

 「師匠?」

 「ナンバーズのシャドウがこいつの師匠だ」

 「なるほど…不法侵入してたってことだね」

 「…はい」

 悪びれもせずコルネが魔大陸に不法に上陸したことを認めた。

 「エイコどうする?」

 「かまわないわ。その子が来てるのは何度かから」

 「ありがとうございます」

 エイコがあっさり魔大陸への上陸を認めた。

 「驚かないのね」

 「常に視られている気配とプレッシャーを感じていたので」

 「そっ。ん?あらほんとにおいしいわねこれ」

 「ん?本当かい?どれどれ…うん!美味いね」

 「ありがとうございます!光栄です!」

 コルネの言葉に興味なさそうにエイコが答え、アキラとコーヒーとともに出された焼き菓子を食べ褒めると店員は魔王でセナの身内に褒められたことに輝くような満面の笑みで礼を伝えた。

 「決めたわ。あなたの店、今日この時から魔王と英雄御用達の店と名乗るのを認めるわ」

 「えぇぇ!?」

 「その地位に甘んじることなく精進しなさいよ?」

 「は、はい!がんばります!ありがとうございます!!」

 「あとで証明するものを届けさせるからちゃんと飾りなさい?」

 「え?!そんな有難いものをいただけるなんて…ありがとうございます!!家宝として大事にあつかわせていただきます!!」

 「うんうん…さてと、そろそろドラニスタへ行くわよ?」

 店員の態度に満足したエイコがコーヒーを飲み干すと立ち上がった。

 「じゃあそろそろ行くわ!セナのことは任せてくれ」

 「ん!?ああ!エイケン殿、よろしくたのむ!!」

 エイコを囲うように全員の準備ができるとエイケンがギルスへと声をかけた。

 「さて、義理母さんとセナ君への手土産もあることだしいこうか」

 「そうね」

 先ほどの店から菓子を色々手渡され満足げに笑うアキラの言葉にエイコが答えると同時に、いまだ盛り上がるリストニアから転移した。

 ===============================
 
 「なにやつだ!ん?エイケン殿!!それに魔王様とアキラ様!?」

 「おう!ゲイリー。姫はいるか?」

 「はい、サイ様たちからの報告をお待ちしておられます」

 「案内してくれ、あぁ!そうそう!こいつらはセナの身内だから入国の手続きをさせてやってくれ」

 「セナ様の?」

 「はい。セナ様のもとにお世話になっているエリスと申します。ほかはコニー、マイン、コルネ。それとメディーとセナ様の愛馬の迅風です。お手数をおかけしますがよろしくお願いいたします」

 エリスが代表してゲイリーに挨拶をした。

 「これはご丁寧に…」

 「ゲイリーそいつら今はセナのことで頭いっぱいでおめぇのことなんて気にしてねぇぞ?」

 「師匠失礼なことを言わないでください!」

 エイコとアキラをつれエイシャのもとへ向かいながらエイケンがいうと、心外だとばかりにエリスが声を荒らげ答えた。

 「師匠?エイケン様がですか?」

 「はい。私はエイケン様から剣を習いサイ様から獣気のほどこしをうけております」

 「なんと…」

 「なんだかんだエリスが一番の出世頭ですよね」

 「そうね、でもメディーだってリレイ様やメイ様からの信頼は厚いわよ?」

 「ああ、妹あつかいですもんね」

 「ほぉ!」

 おどろくゲイリーと気さくに話しながら手続きの場所へとエリス達が向かっていった。

 「おう!オフクロ帰ったぜ!」

 玉座の間へ入った瞬間エイコが遮断の魔法をかけるとエイケンがエイシャへと右手を挙げて挨拶をした。

 「ひさしぶりね、お母さん」

 「おひさしぶりです義理母さん」

 めんどくさそうにエイコが挨拶をするとアキラは朗らかに笑いながらエイシャへと挨拶をした。

 「アキラさん、エイコがいつもお世話になってごめんなさいね。それで?セナちゃんは?」

 「相変わらずね!アキラさんが治したわよ!」

 「そう…よかったわ。アキラさんありがとう」

 イラついたエイコの言葉にエイシャはアキラを見て頭をさげた。

 「義理母さん、よりによってアカシカの眼はびっくりしましたよ…」

 苦笑いするアキラとエイコやエイケンからこれまでのことを説明された。

 「ビルバーンの眼に眼でセナちゃんとの相性をかんがえて選んだんだけど…アキラさんにもセナちゃんにも申し訳ないことをしたわ」

 目を伏せエイシャが弱弱しく言った。

 「申し訳ない?…それだけ?…セナちゃんは強いわ…けどそれ以上に優しいの…お母さんならわかってたことでしょ…」

 「姉貴…オフクロだって色々…」

 「一番側にいたあんたが何言ってるのよっ!!」

 エイケンの言葉に抑えていたエイコの怒りが爆発した。

 「…確かにセナちゃんの強さに慢心していたことは認めるわ…けど」

 「けど?けどなによ!」

 「私は…セナちゃんは自分で選んで作った道を歩いていたの…」

 「だから!?その結果、死んでも仕方ないって!?」

 「そうはいってないわ」

 「じゃあなによっ!」

 エイシャの一言一言がエイコの怒りを大きくしそれに比例するようにあふれ出る魔力も爆発的にあがってきていた。

 「エイコ…わかるでしょ?自分で決めて選んだことは自分で責任を負わなきゃいけないの…その覚悟があるセナちゃんに、私たちは手助けはできるけどそれを邪魔しちゃいけないの」

 「だから死ぬのを指をくわえてみてろっていうのっ!」

 エイコの我慢がとうとう限界をむかえようとしていた。

 「おっとっと…」

 「うぉっ!?セナ!?」

 今にもすべてを破壊する勢いにまでエイコの魔力がたかまった瞬間、玉座の間の中心にヤオとタオをつれたセナが突如あらわれた。

 「セナ様、無事にドラニスタへとおつきになられたようでございますな」

 「セナ様、一度戻り次はジルネイあたりまで飛んでみましょう」

 「ジルネイかぁ魔力がもつかなぁ…あ、叔父さん。エイコお姉さんもアキラさんもドラニスタに来てたんですね」

 あたりを見渡し嬉しそうにいうヤオとタオの言葉に答えたセナが驚いたまま固まったエイケンをみつけると朗らかな顔で声をかけた。

 「あっ、叔父さんじゃねぇ!急にでてくんじゃねぇよ!!」

 「いたっ!ごめんごめん…おばあちゃんに眼の御礼をしたくて実験がてら…ついね」

 いままでの緊迫した雰囲気をぶちこわし朗らかに笑うセナに腹が立ったエイケンが頭に拳骨をおとした。

 「セナ君おどろいたよ…もう転移をものにしたのかい?」

 「アカシカさんのサポートとビルバーンさんが力を貸してくれたんです。慣れるまで何度か短い距離で実験して徐々に距離をのばしてみたんですよ」

 おどろくアキラにセナが照れくさそうに答えた。

 「セナちゃん!!」

 「あ、おばあちゃ…エイシャ様!」

 「セナ、姉貴が遮断してるから大丈夫だ」

 驚いたエイシャだったが我に返ると焦ったようにセナに声をかけた。

 「ん?そうなんだ…遮断してても転移できるんだね…って今はちがうちがう。おばあちゃん、貴重なアカシカさんの眼を僕なんかにくれてありがとう!おかげでケガする前より良く見えるし色々力を貸してもらってるよ!」

 「うん、うん!…もう体は大丈夫なのね?」

 「はい!ラミレス様にも御礼をしたいんですが、一度戻ってグラニールをつれてきてからにしたんですがいいですか?」

 「もちろんよ!まだ無理しちゃだめよ?気を付けてね?」

 「はい!」

 感激するエイシャにセナは元気な笑顔をで答えた。

 「セナ、アリアたちもここにきてるぞ。今入国の手続き中だ」

 「え?そうなの!?」

 「ああ、エイコがここまで連れてきたんだよ。いい子達じゃないか」

 エイケンの言葉に驚いたセナにアキラが笑顔で言った。

 「そうだったんだ…エイコお姉さん、色々たすけてくれて…ありがとう」

 「っ!?いいのよ!それくらいどうってことないわ!」

 「でも、エイコお姉さんは僕が小さいころからずっと優しくしてくれるのに、いつも甘えてばかりで申し訳ないよ」

 「はぁーん!そんなことないわっ!もっと甘えてくれてもいいくらいよ!」

 「そういってくれると嬉しいよ…ありがとう」

 「はふぅーーん!!」

 眉を下げ悲しそうに言うセナを感極まったエイコがやさしく抱きしめ蕩けながら言った。

 「さっきまでの…あれは夢だったのか?」

 「ふふふっ、セナ君は場の雰囲気をやわらげる天才なんだよ」

 余りにもさきほどと場の空気がかわりすぎてあきれたエイケンにアキラが苦笑しながらいった。

 「賢王と魔王を和ませる天才って…」

 笑顔のアキラと、エイコからセナを引き離し自身もだきしめたエイシャをみながらエイケンがつかれたようにつぶやいた。
 
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