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第5章 ストラトス帝国編

更なる援軍

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 セナ達とギルス・セルジオ軍が攻撃をはじめた。

 「正義は我等にあり!命惜しくば武器を捨てろ!」

 ガルハルトが大剣を横なぎし数名の敵兵を切り飛ばしながらこえをあげた。

 「まだ数ではこちらが上だ!落ち着け!陣を立て直すのだ!」

 敵兵の後方で白馬にのりほかの兵たちより上等な鎧をまとった男が檄をとばすが不定期にグラニールがうなり声をあげるのでブレスを警戒し敵兵の動きは散漫していた。

 「ヒヒーーーン!」

 バン!

 「グギャー」

 一方スタンピードのほうでは風の魔力を爆発させたかのように迅風が無数の小さな魔物を弾き飛ばし、中型や大型の魔物をセナが刀でどんどん切り伏せながら進んでいた。

 「見事なものだな」

 「うむ。人馬一体とはまさにあれのことですわ」

 魔物を切り伏せながらヤオが感心すると、こころなしかうっとりしながらタオが同意を示した。

 「あいつまた強くなってんなぁ…おっ?やべっ!よっと!」

 最後尾を懸命に追いかけていたライズが呆れたようにセナをみていたが空から鳥型の魔物がセナを襲いそうになっているのを見つけると、小型の弓をかまえそれを撃ち落とした。

 「げっ!なんだこの弓!ちっせぇのにむちゃくちゃな威力じゃねぇかっ!」

 セナの作った弓の性能に驚いたライズはほかの武器も試してみることにした…結果、セナの作ったすべての武器は彼の予想以上の威力を発揮しライズは驚きと焦りと少しの恐怖をいだいた。

 「さすがに…本当のスタンピードは数がすごい…」

 セナは魔物を切り伏せながら未だ終わりの見えないスタンピードの先をみながら言った。

 それから2時間ほどセナやギルスたちは優勢のまま戦いを進めていた。

 「ギルス様!マルンに新たな飛竜がっ!」

 「なにっ!?あれはっ!安心しろ!援軍だ!」

 後方から報告を受けた騎士がギルスへ伝えギルスが焦りながらマルン上空をみると、そこにはエルシーダが数人の人をのせてグラニールのよこへ降り立ったところだった。

 「グルワーーー!!」

 「グルルル…ワァーーー!」

 アディオンが借りているエルシーダが空に咆哮をあげると答える様にグラニールも咆哮をあげ、それをきいた魔物や敵兵が再度混乱した。

 「またしてもブレイダーへ龍が!」

 「くそっ!ブレイダーはいったい何体りゅうをもっているのだ!」

 エルシーダをみた敵兵が焦りながら憎々し気声を荒らげた。

 「おーおー混乱しておりますな」

 「ひどいですね」

 一方セナたちの目の前ではグラニールとエルシーダから逃げようとした魔物が後ろから向かってくる魔物とぶつかり魔物どうしの争いなどが起こりはじめていた。

 「でもエルシーダがなぜここにきたんですかね?」

 「帝国にいた冒険者数名が乗っておられるようにみえましたが」

 「え?カイン達もきちゃったの?」

 セナがマルンの方角をみながら訪ねるとヤオが答えるとセナは目を丸くし驚いた。

 「おい!セナあの龍もおめぇのかよ?」

 「いやエルシーダはアディオンさんが借りている飛竜だよ」

 魔物同士の混戦に便乗しライズがセナの元へおとずれた。
 そのころマルンの街ではグラニールにつづいて降り立ったエルシーダに驚きの声があちこちからあがっていたが
セバスや街の守備をしていた騎士たちがセナの仲間だと混乱をおさえていた。

 「アリアー!」

 「コニーさん!みんなも!?」

 「アリア!無事だった!?」

 「スターシャさん!!」

 エルシーダから飛び降りたコニーがアリアをみつけると叫びながらアリアの元へと走り寄り、エリス、マイン、メディーをみて驚くアリアだったが最後に現れたスターシャをみつけると駆け寄り抱き着いた。

 「無事でよかった!アリア!ほんとうによかった!」

 「スターシャさん…皆がたすけてくれたんだよ…けど…怖かった!寂しかった!またみたいになるのかと思った!」

 「アリア…」

 アリアが涙を流しスターシャへ訴える様に言うとスターシャはアリアを力の限り抱きしめた。

 「この龍もセナ様のものですの?!」

 そこへ一度街の中へ戻ったエミルがエルシーダを見ながら近寄ってきた。

 「エミル様!」

 「あらスターシャ?どうしてここに?」

 近づくエミルに気づいたスターシャがアリアをそっと離しセナの後をおってきたエリス達がスターシャを回収してきたことを説明した。

 「ブレイダー公爵夫人様、お初にお目にかかります。私はジルネイ共和国で英雄の称号を賜っておりますスカーレットと申します。同国首相の命により微力ながら手助けになればと参じました」

 「まぁ!これはご丁寧に!私はギルス=ブレイダーが妻、エミル=ブレイダーと申します。此度のご助力ブレイダーは生涯忘れませんわ!ありがとうございます」

 エルシーダを休ませていたスカーレットがエミルに気づき駆け寄ると自信がきた経緯を話し、エミルは思いもよらぬ援軍に笑顔をうかべ感謝した。

 「エミル様?私は怪我人の元へ向かいますが彼女たちはどうしますか?」

 「冒険者の方々を戦争利用はできませんわ…」

 「では、奥様からのご依頼としてアリア様の護衛をお願いしてはいかがでしょう?」

 「そうね!お願いできますかしら?」

 「お任せください!」

 スターシャの言葉にエミルが少し考えこむといつの間にかエミルの後ろへ控えていたセバスが一つの案をあげると
エミルもエリス達も同意を示した。

 「では、私は…」

 「スカーレット様は…セナ様の元へ向かっていただけるかしら?」

 「セナ様は今どこに?」

 「北で従者の方とご友人の4名でスタンピードを止めてらっしゃいます」

 「なっ!4名で!?」

 「そうですか、では私はセナ様の元へ向かいます」

 「スカーレット様はおどろかれないのね」

 エミルにセナの居場所をきき、セバスの補足をきき驚くエリス達をよそにスカーレットが落ち着いていることにエミルは疑問を抱きつい尋ねた。

 「ふっ…実はセナ様と私は同門の士でして…セナ様の今の実力も従者の方々の実力も大体はわかっているので」

 「まぁ!そうなんですのね!ではよろしくお願いいたしますわ!」

 「賜りました」

 スカーレットの言葉にエミルが驚いたが笑顔を浮かべいうとスカーレットは言葉身近にセナの居る北へと走り出した。

 「…………」

 「なんですか?アリアさん…もしかしてヤキモチですかぁ?」

 「なっ!?何言ってるのメディー!ちがうわよ!」

 「ほぅ?」

 「セナと同じ場所で戦えてすごいし、少しうらやましいなぁと思っただけだよ」

 走り去るスカーレットをじっと見つめていたアリアにきづいたメディーがニヤ付きながらからかうと、アリア少し寂しそうな顔をした。

 「んー…役割はちがうけどアリアも同じ場所で戦ってると思うけど?」

 「うん…それに…ぶっちゃけセナ様と同じ強さで並んで戦える人なんて…3ケンオウしかいないと思いますよ?」

 「え?…さすがにそれは…え?ほんとに?」

 「ほんとに…」

 コニーがアリアの背中を触りながらいうが納得できないような表情を浮かべ、続くメディーの話に驚くアリアからメディーは少し目をそらし答えた。

 「と…とりあえず私たちはアリアの護衛をしよう」

 エリスが露骨に話題をかえると全員が頷いた。

 「グラニールの準備が整ったら飛んでもらって歌います」

 「では…我々はグラニール?とエルシーダに分かれていこう」

 アリアの言葉にエリスが答えると全員が頷きそれぞれの準備を始めた。

 「さて…これはどういたしますか?」

 「このように抜け出たものを狩っていては時間がかかりますな」

 魔物同士の混乱から抜け出た個体を切り伏せながらタオとヤオがセナへ尋ねた。

 「けどよぉ?混乱の中に入るのはちと危ないぜ?」

 「んー」

 ライズが二人の話を聞きセナを見ながら訪ねセナはどうしたものかと刀で魔物を切り伏せながら考えた。

 「ん?あれはスカーレットさん?」

 「ふむ。どうやらエルシーダでこちらにきたようでございますな」

 セナが向かってくる気配を感じそちらをみるとスカーレットが全速力でこちらにむかってきていた。

 「セナ様遅れましたがこれより合流します」

 「スカーレットさん、すいません助かります!」

 スカーレットの申し出にセナが笑顔で礼をいった。

 「ん?そちらの方は?」

 「あぁ!僕の親友のライズといいます。ライズ?ジルネイの英雄のスカーレットさんだよ」

 「へ?ジルネイの英雄様!?自分はライズと申します!よ…よろしくお願いします!」

 「あ…いえ。こちらこそよろしくお願いしますライズさん」

 ライズを目線に収めたスカーレットにセナが双方を紹介しあいガチガチに緊張したライズと苦笑気味にスカーレットが握手をした。

 「じゃぁスカーレットさんもきてくれましたし、僕が先陣を切りますのでヤオさん、タオさん、スカーレットさんは後に続いてください。ライズは抜け出た魔物をお願い」

 「御意」

 「かしこまりましたわ」

 「はい」

 「おう!」

 セナの申し出に全員が力強くうなずいた。

 「じゃぁ…こちらを早く終わらせれるように…全開で行きます!」

 「え?」

 「これに…まずは龍気を!」

 「っ!?」

 「次に…燐気!ふぬぅ!!!」

 「セナ様!この力は!?」
 
 いつものように雷属性の身体強化を全身にまとったセナだったがいつもよりも強いプレッシャーと体から放電される力にスカーレットは目を見開き、ヤオが驚きながらセナをみた。

 「やっぱまだきっつ!詳しくは後で説明します!とりあえず行きます!」

 驚く皆をしり目にセナがそういうと、バチっという音共にセナの姿が消えた。

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