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62話

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 「セイジュ様、アンジェリーナ様ご足労おかけして申し訳ありません」

 「いえ、あのお招きいただきありがとうございます」

 「私までお招きいただき感謝いたします」

 グラドス家を代表しダンが二人に挨拶をしテンパるセイジュをよそにアンジェリーナが代表してあいさつを返した

 「では、お相手の方はあと3日後にこちらにお越しになられるのですね」

 「そうです、それと会場についてはエドワードとマチルダがご案内いたします」

 ==========================================

 「そうなんですか、闘技大会でエドワード様をご覧になって」

 「そうなのです!お姉さまになられるお方の家は代々強い方の元に嫁ぐのがお決まりのようです!」

 「そうなのですの」

 「はい、内戦などが長かったせいで家と子孫を残すため強さが基準となっているそうです」

 「それでしたらエドワード様にお目を奪われてもしかたありませんわね」

 「そうですね」

 「自分などまだまだです、家族が増えるのであれば益々精進しなければなりません」

 「エドワード様…さらにお強くなられるおつもりなのですわね……」

 信念のこもった目でいいきるエドワードにアンジェリーナはおののきながら言った。

 ======================================

 「ハンス様、セイちゃんのお体は大丈夫でしょうか」

 「アメリア急にどうしたんだい?」

 「エドワード様のご成婚の準備もそうですが私がお姉さまのこともおねがいしてしまっているので」

 「ああ、それは大丈夫なようだよ」

 「そうなんですの?」

 「ああ、アンジェとセルジュがセイのスケジュールを調整しているようでね」

 「まぁ!そうですのね!」

 「まぁそういうわけだから安心していてもいいんじゃないかな」

 「少し安心しましたわ、どうりで学園が終わってからアンジェちゃんとセルジュを見かけないと思っておりましたわ」

 「はっはっは!セルジュはアンジェを特にかわいがっているし、セイには恩を感じているからね」

 「え?たしかにアンジェちゃんのことは特別大事にしているようですがセイちゃんに恩とはなんなのかしら」

 「アンジェを守り切れなかったからさ」

 「え?」

 「アンジェがさらわれたとき彼は我が家の兵長でね身を挺して守ろうとしたが守り切れずアンジェがさらわれてしまったことに責任を感じ兵から執事になったのさ」

 「そ、そうでしたの」

 「ああ、だからアンジェを救ってくれ今のアンジェでいてくれる立役者のセイには恩を感じているのさ」

 「なるほど、そういうことだったんですわね…納得ですわ」

 「ああ、だから命あるかぎりアンジェにずっとついていくとお父様にも言っていたよ」

 「嫁ぎ先にも!?」

 「あっはっはっはっは!その気持ちと信念を昔からしっているお父様がセルジュにアンジェを最優先とするようにいってあるのさ」

 おどろくアメリアにハンスが声を上げて笑った。

 ============================================

 「おお!これは素晴らしい!!」

 「お気に召していただけましたでしょうか…ガングさんにお願いすることもできますが」

 「いえ、素晴らしい出来です。セイジュ様ありがとうございます!」
 
 「ええ、素晴らしすぎて逆にこれが私がいただいていいのかと思ってしまいますわ…」

 「お気に召していただけて本当に良かったです」

 セイジュとアンジェリーナがエドワードとその相手、ブランカがへ指輪を作り手渡した。

 「セイジュ様?私たちもいただいても本当によろしかったのかしら」

 セイジュはダンとケイシーにも作ってきており手渡されたケイシーが嬉しくも困惑した顔をしていた。

 「ケイシー様お受け取りください。エドワード様とブランカ様が教会で式をおあげになられるのですし、エドワード様はパラディンですものお二人も指輪をしていたほうがよろしいですわ」

 「何から何までお心遣い感謝いたします」

 「いっ!?ダン様おやめください!お気に召していただいただけで私はうれしく思っておりますので!」

 ダンがビシッと礼をするとセイジュは汗を噴出ししどろもどろになりながら両手を必死に振った。

 「闘技大会でのお姿とは違いすぎて驚いてしまいますわ」

 「セイジュ様は本当に謙虚で素晴らしい人柄です」

 「あのように素早く力強い攻撃をなさる方なのに日ごろは可愛らしい素敵なお方なのですわね」

 ブランカが柔らかな笑顔でエドワードと話をした。

 「お二人はすっかり仲がよろしいのですわね」

 「それは私がお慕い申し上げて是非にとお願いしたご縁ですから」

 「まぁ!」

 アンジェリーナの言葉にほほを真っ赤にしながらエドワードの腕に自信の腕をからめ嬉しそうにブランカがいった。

 「私の祖国は内戦が長く続いており、いつ愛する方がなくなってしまうかわからなかったせいか、お相手との時間と愛をものすごく大事にしておりますの」

 「そうなんですの素敵ですわ」

 「ふふっ、ありがとうございます!」

 「我が祖国は遠いので何度も行き来するのは大変だろうとダン様とエドワード様がおっしゃってくださり父や母がこちらに滞在する場所をご用意してくださったり式の準備をいそいでくださったりお優しい方々で本当に私は幸せですわ」

 満面の笑みで嬉しそうに言うブランカの言葉にその場の全員が心暖かくなった。

 「明るくお優しい方でよかったですわね」

 「はい!太陽のように明るく元気でお優しいお姉さまができて私も幸せです!」

 「マチルダ様ありがとうございます」

 マチルダの嬉しそうな顔を見てブランカも笑顔を浮かべやさしくマチルダを抱きしめた。

 ====================================

 「この度は多大なるご助力まことに感謝いたします」

 「ダン殿われらの仲ではないかそのような硬いことを」

 「いえ、すばらしい式をあげさせていただき感謝の言葉で言い表せません」

 無事に教会での式とその後の披露宴をおえ数日後、グラドス家の一行がホルマトロ家へと挨拶に来ていた。

 「壮観できれいな見事な式と披露宴でしたわねぇ」

 「ああ、素晴らしかった」

 「ありがとうございます」

 思い出しうっとりするアメリアにハンスが笑顔でうなずくのをみてエドワードとブランカも柔らかい笑顔で礼をいった。

 「グラドス家に来てから驚くことばかりで…あのように綺麗で素敵な召し物をご用意していただき夢のようですわ」

 「ブランカ様!そのお気持ちわかりますわ!日に日に自分の肌はつやつやすべすべに!髪もふんわりつやつやになり目を移せば綺麗な庭園に食したこともないものたち!まるで自分がおとぎ話の姫になったかのような気分でしたわ!」

 「やはりアメリア様もそうだったのですね!」

 「ええ!私毎日幸せすぎですもの!」

 「私もです!!」

 他国から嫁いできた先輩のアメリアの言葉を聞きブランカはアメリアの両手を取り同じだと二人は意気投合した。

 「あっはっは!二人が仲良くなってくれてよかったよ」

 「そうですね、感謝の念ばかり増える一方です」

 ハンスのことばに嬉しそうにエドワードもうなずいた。

 「セイジュ様をお連れいたしました」

 「おお、通してくれ」

 仕事でかえってきたばかりのセイジュがそのままホルマトロ家に呼び出され顔を出した。

 ==========================================

 「多少なりとも満足していただけたのであれば私も非常にうれしいです!この度の大役をあたえてくださりありがとうございました」

 感謝の言葉を聞いたセイジュは満面の笑みで深々と頭を下げた。

 「まぁグラドス家の強さをまざまざと見せつけるいい式と披露宴だったよ」

 「あれはグラドス家の一番つよい部分を象徴できればと考えたものです」

 「一番の強さですか?武力ではないとおっしゃられるのであればそれは?」

 「ブランカ様、私が感じているグラドス家の一番の強さは信念です」

 「信念でございますか…」

 「はい、国を守る、自分の家族を守るそういった自分の大事なものを必ず守り切るという信念それをなすため折れないそれがグラドス家が最強と言われているもっとも根底の部分だと私はおもっており尊敬している部分です」

 ハンスの言葉にかえしたセイジュに不思議そうに尋ねたブランカへセイジュは日ごろ感じていたグラドスの強さについて照れながらもしっかりと述べた。

 「セイジュ様……くっ!」

 セイジュの嘘偽りのない言葉に心打たれたダンが上を向き目頭を押さえ感動にたえ、みるとケイシー、マチルダはうるうると涙をいまにもこぼしそうになっており、エドワードは小刻みに震え必死に感動に耐えていた。

 「信念……すばらしいですわ……セイジュ様ありがとうございます。そしてエドワード様、私誇り高きグラドス家に嫁いで本当に幸せですわ!」

 ポロポロと涙をながし嬉しそうに笑ったブランカがエドワードに強く抱き着きエドワードは驚きながらも軽々とそれを受け止めた。

 「ハンス様なんだか私たちまで感動してしまいますわ」

 「そうだね」

 腕を絡めてきたアメリアにハンスも優しい笑顔でうなずき二人頭をくっつけあいハスクとカリーナも手を握りあい優しく満足げにその光景を見ていた。

 「あ、あの…」

 「失礼いたします……なんですの?この光景は……」

 そんな中どうしていいかわらかず固まっていたセイジュと学園からもどり入室したアンジェリーナが困惑した。

 「というわけさ」

 「そうですの…それはしかたありませんわね。ダン様もエドワード様にもこの国の男で憧れをもたないものはいらっしゃいませんもの、それは単純なおつよさだからというお話ではありませんものね」

 「アンジェリーナ様ありがとうございます」

 話を聞いたアンジェリーナが何を当然のことをいっているのだという感じでいうとあまりにも当然という雰囲気にダンとエドワードは苦笑しながらうれしそうにしていた。

 「それにマチルダ様は2度も私をご自身のみを顧みずたすけようとしてくださった心優しくすばらしい方ですものマチルダ様の笑顔でいつもどれほど私が救われているかいくら感謝しても足りないくらいですわ」

 「え!アンジェリーナ様ありがとうございます!そのように思っていただけているなんて本当にうれしいです!」

 「なにをおっしゃってるの?私たちは大の親友ではありませんかそのように思っているのなど当然ですわ!」

 感激するマチルダに勢いよく立ち上がりドーンと胸を張ってアンジェリーナがこたえた。

 「さすがアンジェちゃんね」

 「ああ、我が家の女神は今日もご健在のようだね!くっくっく」

 「もう!お兄様!また私をからかいになられて!!」

 あまりの堂々としたアンジェリーナに一同が目を天にするなか、感心するアメリアとニヤニヤするハンスの言葉にアンジェリーナは今日も顔を真っ赤にし憤慨した。
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