5 / 5
5.
しおりを挟む
凰とうららが神殿から抜け出した頃。
王城では、勇者たちの謁見が執り行われようとしていた。
「もうじき陛下の居ります謁見の間に到着致します。出来うる範囲で構いませんので、失礼の無いようにお願い致します」
リエナの言葉に、4人の高校生は頷いた。
リエナと兵士たちと共に、赤い絨毯が敷かれた廊下を静かに歩く。周囲は人払いがされているのか、メイドの一人も見当たらない。
15分程歩き続けただろうか。華美な装飾が施された重厚な大扉の前に到着した。
「これはリエナ第1王女殿下」
大扉の側に立っている騎士が、リエナに向けて最敬礼をとる。
「勇者様方の召喚に成功いたしましたので、国王陛下へお知らせに参りました」
「おお!陛下はすでにお待ちです!お通りください!」
「────勇者たちよ。我が名はナキリセス王国国王、ギルグス・ロッテ・ナキリセスじゃ。突然このような世界に来て困惑していることじゃろう。召喚に関しては、本当に申し訳ない。我が国の、いや───この世界の事情を聞いてはくれぬか?」
国王が4人の高校生を見ると、1人の少女が手を挙げた。
「どうして事情を聞かないといけないんですか⁉私達を元の世界に帰らせてください!」
「まあまあ、緑里。話聞いてから考えようぜ」
緑里と呼ばれた少女の肩にポンポンと手を置く1人の少年。
「だって、さっきまでコンビニに居たんだよ?光太は良いかもしれないけど⁉『テンプレきたー!』って叫んでたもんね⁉」
肩にポンポンと手を置いた少年が光太と呼ばれる。
「そりゃそうだけどよ⁉この状況で何か打開策有るわけ⁉」
「ストーップ!言い合いしてる場合じゃないよー?ちゃんと王様の話聞こうよ!
」
もう1人の少女が止めに入ると、今まで口を開かなかった少年が、王様の方を見る。
「すみません。こんな世界初めてなので、礼儀がなっていませんが、お話をお願いします。自己紹介を忘れていました。自分は、南川宗と言います。宜しくお願いします」
「アタシはー、花木美空でーす!」
「俺は荒川光太です」
「………………渡来緑里よ」
各々頭を下げると、ナキリセスの国王は静かに頷いた。
「……うむ。此方こそ、手間をとらせて済まぬ。─────この世界の事情を聞いてほしいと言うのは、この世界の調査と魔獣の討伐と発生源となる場所の特定を頼みたいのだ。ここ20年のうちにマナが大幅に乱れ、魔獣の異常発生が各国で起きている。世界中の冒険者や貴族たちが調査・発見・殲滅や浄化を続けているにも関わらず、同じ速度で別の場所にマナの乱れと魔獣の群が発生する。この発生源となる場所の特定が、何故か我々では出来ない。
今回は我が国と同盟を組んでいる他国と連絡を取り合い、会議で吟味した結果、勇者召喚する方向で話が纏まったのだ。我が国は、召喚を担当することになった。我々の身勝手なのは承知しておる。本当に申し訳無い。許してくれとは言わぬ。世界各地の情勢や戦闘訓練等の出来うる限りの援助をするつもりじゃ。請け負ってはくれないだろうか?この通りだ」
ギルグスが、4人の少年少女に向けて頭を下げる。
4人は驚いて顔を見合わせ、頷いた。
「国王陛下、頭を上げてください。自分達が何処まで出来るか分かりませんけど……やってみます」
代表して言葉を発したのは、南川宗。
「そうだねー。私も頑張ってみるよー」
「俺も!」
「私は一緒に行動するけど、優先的に帰還方法探すんだから!」
各々の意気込みを聞きながら、ギルグスが安堵の表情を一瞬見せる。
「すまぬ…………感謝する。これから準備に───」
バタン!と大きな音とともに謁見の間の扉が勢い良く開く。
「無礼を承知で申し上げます!」
1人の神官が叫びながら飛び込んで来た。かなり急いで来たのか、息を切らせている。
「…………何事じゃ」
話の腰を折られたギルグスは、神官に冷ややかな視線を送る。
「もっ、申し上げます!先程の召喚についてですが、後2人一緒に召喚された者が居ます!」
「何!?真か!?」
「は、はい!リエナ第1王女殿下は緊張のあまり気付かなかったため、そのお二人は神殿の1室へと案内して休んでもらっています。どうやら召喚に巻き込まれたようなのです」
膝を付き、頭を垂れた神官が発した言葉に、驚愕の表情でギルグスは聞いていた。
「リエナよ…………。緊張しすぎだ。例え緊張していたとしても、全体の把握を冷静に行うように言っておる筈だ。何故、気付かなかった?」
「も、申し訳ありません!その…………存在する気配を感じ取れませんでした」
リエナが慌てて答えると、ギルグスが眉間にシワを寄せて深い溜め息を吐いた。
「────こうなっては仕方がない。それで、2人には会えそうか?」
「それは大丈夫かと。食事をされたらお休みになると言っておりましたし、6階に案内致しましたから」
神官の言葉に、ギルグスは少々不安を感じたが、頷いた。
「何もなければ良いが。逃げていたとしても責は問わぬ。6階から抜けるのは無理だろう?」
「はい。窓から出ない限りは……。扉は見張りを付けてありますので」
「うむ。では、これより、勇者達を部屋に案内せよ。明日から訓練等の準備にかかってくれ」
「かしこまりました。神殿におります2人はどうなさいますか?」
「……フム。では、明日の朝にでも神殿へ向かおう」
「────かしこまりました」
神官が膝を付き頭を垂れた。
既に逃走していると気付くのは、翌朝。
──────神官の叫びと共に。
王城では、勇者たちの謁見が執り行われようとしていた。
「もうじき陛下の居ります謁見の間に到着致します。出来うる範囲で構いませんので、失礼の無いようにお願い致します」
リエナの言葉に、4人の高校生は頷いた。
リエナと兵士たちと共に、赤い絨毯が敷かれた廊下を静かに歩く。周囲は人払いがされているのか、メイドの一人も見当たらない。
15分程歩き続けただろうか。華美な装飾が施された重厚な大扉の前に到着した。
「これはリエナ第1王女殿下」
大扉の側に立っている騎士が、リエナに向けて最敬礼をとる。
「勇者様方の召喚に成功いたしましたので、国王陛下へお知らせに参りました」
「おお!陛下はすでにお待ちです!お通りください!」
「────勇者たちよ。我が名はナキリセス王国国王、ギルグス・ロッテ・ナキリセスじゃ。突然このような世界に来て困惑していることじゃろう。召喚に関しては、本当に申し訳ない。我が国の、いや───この世界の事情を聞いてはくれぬか?」
国王が4人の高校生を見ると、1人の少女が手を挙げた。
「どうして事情を聞かないといけないんですか⁉私達を元の世界に帰らせてください!」
「まあまあ、緑里。話聞いてから考えようぜ」
緑里と呼ばれた少女の肩にポンポンと手を置く1人の少年。
「だって、さっきまでコンビニに居たんだよ?光太は良いかもしれないけど⁉『テンプレきたー!』って叫んでたもんね⁉」
肩にポンポンと手を置いた少年が光太と呼ばれる。
「そりゃそうだけどよ⁉この状況で何か打開策有るわけ⁉」
「ストーップ!言い合いしてる場合じゃないよー?ちゃんと王様の話聞こうよ!
」
もう1人の少女が止めに入ると、今まで口を開かなかった少年が、王様の方を見る。
「すみません。こんな世界初めてなので、礼儀がなっていませんが、お話をお願いします。自己紹介を忘れていました。自分は、南川宗と言います。宜しくお願いします」
「アタシはー、花木美空でーす!」
「俺は荒川光太です」
「………………渡来緑里よ」
各々頭を下げると、ナキリセスの国王は静かに頷いた。
「……うむ。此方こそ、手間をとらせて済まぬ。─────この世界の事情を聞いてほしいと言うのは、この世界の調査と魔獣の討伐と発生源となる場所の特定を頼みたいのだ。ここ20年のうちにマナが大幅に乱れ、魔獣の異常発生が各国で起きている。世界中の冒険者や貴族たちが調査・発見・殲滅や浄化を続けているにも関わらず、同じ速度で別の場所にマナの乱れと魔獣の群が発生する。この発生源となる場所の特定が、何故か我々では出来ない。
今回は我が国と同盟を組んでいる他国と連絡を取り合い、会議で吟味した結果、勇者召喚する方向で話が纏まったのだ。我が国は、召喚を担当することになった。我々の身勝手なのは承知しておる。本当に申し訳無い。許してくれとは言わぬ。世界各地の情勢や戦闘訓練等の出来うる限りの援助をするつもりじゃ。請け負ってはくれないだろうか?この通りだ」
ギルグスが、4人の少年少女に向けて頭を下げる。
4人は驚いて顔を見合わせ、頷いた。
「国王陛下、頭を上げてください。自分達が何処まで出来るか分かりませんけど……やってみます」
代表して言葉を発したのは、南川宗。
「そうだねー。私も頑張ってみるよー」
「俺も!」
「私は一緒に行動するけど、優先的に帰還方法探すんだから!」
各々の意気込みを聞きながら、ギルグスが安堵の表情を一瞬見せる。
「すまぬ…………感謝する。これから準備に───」
バタン!と大きな音とともに謁見の間の扉が勢い良く開く。
「無礼を承知で申し上げます!」
1人の神官が叫びながら飛び込んで来た。かなり急いで来たのか、息を切らせている。
「…………何事じゃ」
話の腰を折られたギルグスは、神官に冷ややかな視線を送る。
「もっ、申し上げます!先程の召喚についてですが、後2人一緒に召喚された者が居ます!」
「何!?真か!?」
「は、はい!リエナ第1王女殿下は緊張のあまり気付かなかったため、そのお二人は神殿の1室へと案内して休んでもらっています。どうやら召喚に巻き込まれたようなのです」
膝を付き、頭を垂れた神官が発した言葉に、驚愕の表情でギルグスは聞いていた。
「リエナよ…………。緊張しすぎだ。例え緊張していたとしても、全体の把握を冷静に行うように言っておる筈だ。何故、気付かなかった?」
「も、申し訳ありません!その…………存在する気配を感じ取れませんでした」
リエナが慌てて答えると、ギルグスが眉間にシワを寄せて深い溜め息を吐いた。
「────こうなっては仕方がない。それで、2人には会えそうか?」
「それは大丈夫かと。食事をされたらお休みになると言っておりましたし、6階に案内致しましたから」
神官の言葉に、ギルグスは少々不安を感じたが、頷いた。
「何もなければ良いが。逃げていたとしても責は問わぬ。6階から抜けるのは無理だろう?」
「はい。窓から出ない限りは……。扉は見張りを付けてありますので」
「うむ。では、これより、勇者達を部屋に案内せよ。明日から訓練等の準備にかかってくれ」
「かしこまりました。神殿におります2人はどうなさいますか?」
「……フム。では、明日の朝にでも神殿へ向かおう」
「────かしこまりました」
神官が膝を付き頭を垂れた。
既に逃走していると気付くのは、翌朝。
──────神官の叫びと共に。
0
お気に入りに追加
92
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
【全話挿絵】発情✕転生 〜何あれ……誘ってるのかしら?〜【毎日更新】
墨笑
ファンタジー
『エロ×ギャグ×バトル+雑学』をテーマにした異世界ファンタジー小説です。
主人公はごく普通(?)の『むっつりすけべ』な女の子。
異世界転生に伴って召喚士としての才能を強化されたまでは良かったのですが、なぜか発情体質まで付与されていて……?
召喚士として様々な依頼をこなしながら、無駄にドキドキムラムラハァハァしてしまう日々を描きます。
明るく、楽しく読んでいただけることを目指して書きました。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
妻がエロくて死にそうです
菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。
美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。
こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。
それは……
限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第二章シャーカ王国編
異世界で勇者をやって帰ってきましたが、隣の四姉妹の様子がおかしいんですけど?
レオナール D
ファンタジー
異世界に召喚されて魔王を倒す……そんなありふれた冒険を終えた主人公・八雲勇治は日本へと帰還した。
異世界に残って英雄として暮らし、お姫様と結婚したり、ハーレムを築くことだってできたというのに、あえて日本に帰ることを選択した。その理由は家族同然に付き合っている隣の四姉妹と再会するためである。
隣に住んでいる日下部家の四姉妹には子供の頃から世話になっており、恩返しがしたい、これからも見守ってあげたいと思っていたのだ。
だが……帰還した勇治に次々と襲いかかってくるのは四姉妹のハニートラップ? 奇跡としか思えないようなラッキースケベの連続だった。
おまけに、四姉妹は勇治と同じようにおかしな事情を抱えているようで……? はたして、勇治と四姉妹はこれからも平穏な日常を送ることができるのだろうか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる