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婚約編
閑話:理想の女性像を変えてみようか?
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サフィール侯爵家でのお茶会に参加した翌日、学園にマリアと登校するとリリウム嬢とジェリク様がいた。
他愛ない話しをしながらマリアたちのクラスへ向かっていると、宰相子息のジョージ・サルファーがこちらに向かって歩いてきた。
どうやら、昨日の侯爵家のお茶会にジェリク様が参加したことに苦言を呈しにきたようだ。
同じクラスにいる友人であり王太子殿下でもあるアストル様に聞いたことがある。
学園に入学した王家の王子・王女は少しづつ公務を担うことが伝統となっていると。
その際に、側近候補の貴族子息たちも一緒に王宮で教育を受け、公務を手伝うという。
ちなみに僕は王太子殿下の友人ではあるが、側近候補ではない。
辺境伯家の跡継ぎだからね。それに父上が学園以外で王族と接するのを極端にイヤがっている。
恐らく、学園時代に何かイヤな思い出でもあったのだろうと僕は考えている。
案の定、ジョージ殿がジェリク様にお小言を言っている。
ジェリク様がリリウム様にベタ惚れなのは周知の事実。
もっともご本人は周囲にバレていないと思っているが・・・
はっきり言って周囲の人たちはその様子を微笑ましく見ている。
リリウム嬢を王宮へ一時避難させる原因となった令嬢の話しになった。
とういか・・・アノ令嬢まだ王都にいたのか。
アストル様にその後の対応と進捗状況を聞いてはいたが、アノ令嬢については僕の機嫌が悪くなるからと、教えてもらっていなかったんだよな。
リナライト男爵家の跡取りとなる養子の選定と手続きは終了したらしいが。
するとジェリク様が、修道院選定に難航している陛下に提案をすると言った。
ジョージ殿にはなにやら心当たりがあるみたいだが、若干顔色が悪い。
厳しい修道院の方が、あの非常識な令嬢には良い薬になるんじゃないか?
しかし・・・エピドート夫人とはどなただ?聞いたことがないが・・・
すると、隣でマリアがリリウム嬢にエピドート夫人を知っているか聞いていた。
王宮で礼儀作法・マナーを教える教師、しかも主任教師をしていたなんて凄いな。
陛下が王妃様以外で唯一頭の上がらないご夫人というのも凄いが・・・
話している間に、授業開始の時間が迫ってきてしまった。
いつもはクラスまでマリアを送り届けるのだが、今日はジェリク様もいるしジョージ殿もいるから大丈夫だろう。
この二人とリリウム嬢がいて、マリアに声をかけてくる強者はいないだろう。
それに婚約が決まったからなおさらだ。
帰りに迎えに行くからとマリアに伝えて、僕は自分のクラスへと向かった。
学園からの帰り道、マリアとは朝の話しに出てきたエピドート夫人について知っているかと聞かれたが、僕も初めて聞く名前だったんだよな。
しかも、マリアと同じクラスにいるアラン殿もエピドート夫人のいる修道院を選定の候補に入れるよう陛下に提案するというジェリク様の話しに大変驚いていたそうだ。
まぁ、イルバイト公爵も陛下と一緒に指導を受けていた可能性は大きいよな。
とりあえず、帰宅したら母上にエピドート夫人を知っているか聞いてみようということになった。
そういうやいなや、マリアの歩く速度が若干上がったのには笑いを堪えるのが大変だった。
屋敷に到着すると、母上と弟のマリエルが出迎えてくれた。
マリアは早速、母上に聞きたいことがあるから時間を作って欲しいとお願いしている。
母上はマリアのお願いを快く聞き入れ、マリエルと一緒にサロンで待つと言ってサロンへと向かった。
僕とマリアは各自自室へ戻り、制服から着替えることにした。
着替え終わると、マリアの部屋へ迎えに行った。
着替え終わったマリアと一緒にサロンへ行き、マリアが気になっていたエピドート夫人のことを母上に聞いていた。
最初に驚いたのは、エピドート夫人ではなく『カトレア様』と母上が呼んでいたことだった。
お知り合いなのだろうか?知りたいけど、話しの腰を折るのは良くないと思い僕は黙ってマリアと母上の話しを聞いていた。
リリウム嬢から、王宮で主任教師をしていたとは聞いていたが、実際はもっと凄い経歴のご夫人だった。
現エピドート侯爵が跡目を継ぐまでのあいだとはいえ、女侯爵としてお家を守っていたとは。
それに、修道院へ入ると決めていた夫人を前国王陛下が拝み倒して教師として王宮で勤めてもらっていたとは・・・
それよりも、現在の陛下がやんちゃしていたなんて・・・ギャップが凄い。
ルピリア様の破天荒な性格は絶対に陛下に似たんだな。ロベリア様も若干陛下似だし。
アストル様とジェリク様の性格は王妃様譲りということか。
僕はどんな表情をすれば良いのか分からなくなった。
マリアは僕の方を見て、笑いを堪えているみたいだ。
そんなに変な顔してたかな?
マリアと母上の話しが一段落したので、僕は気になっていたことを母上に質問してみた。
「母上はエピドート夫人とお知り合いなのですか?夫人をお名前でお呼びしていたようですが」
「そうね。カトレア様に礼儀作法とマナーを教えて頂いたのよ」
「そうなのですか?」
「えぇ。あなたたちのお祖父様が、私を当時王太子だった陛下の妃にしたいと考えていたのは知っているかしら?」
「はい。以前アスター伯父様から少し聞いたことがあります」
「前陛下が、カトレア様を王宮の教師として招聘される前に、お祖父様がカトレア様に私が王太子妃になった時に王宮で恥をかかないよう礼儀作法とマナーを教えて欲しいとお願いしたのよ。まぁ最初はカトレア様にお断りされていたけど」
「では、母上はエピドート夫人の教え子ということですか?」
「そうなるわね。マリアも言ったけど、カトレア様に教えて欲しいという令嬢はゴマンといたのよ。お祖父様は王太子妃云々を別にしても、なんといって口説き落としたのかは分からないけど、幸いにも私はカトレア様に教えて頂くことができたの」
お祖父様の力の入れように、母上を王太子妃からいずれは王妃にしたいという執念が見て取れる。
父上はよく母上と結婚できたよな。
「では、私たちが領地で母上から教えて頂いたことというのはもしや・・・」
「サリエルの考えている通りよ。カトレア様から教えて頂いた内容よ。教え方もそっくりそのままカトレア様流よ。今は修道院の院長をされているけど、礼儀作法やマナーを令嬢たちに教えているそうよ」
母上はにっこりと笑っているが・・・正直笑い事ではないくらい厳しかった。
実子ということもあり、手加減されているとは思うが・・・
もう一度、母上からの礼儀作法・マナー講座を受けろと言われたらお断りしたい。
それくらい半端なかった。
エピドート夫人本人から指導を受けた母上の礼儀作法・マナーは完璧だ。
夫人から教えを受けた令嬢が良縁に恵まれるのもうなずける。
・・・最近、マリアに僕の理想の女性のタイプについて質問が殺到していると言っていたな。
母上が理想の女性像だと言ったけど、さらにプラスしようか。
『カトレア・エピドート夫人の礼儀作法・マナー教育を受けて夫人に認められた令嬢』と。
現在は修道院で院長をしている傍ら、行儀見習いの令嬢たちを受け入れて礼儀作法やマナーを教えているらしい。
「なるほど。だから母上のマナーは完璧なのですね」
「お世辞でも嬉しいわ。ありがとうサリエル」
いや・・・お世辞でもなんでもない。本音なんだけど。
僕よりも、厳しく母上から礼儀作法・マナーを教えられたマリアは若干遠い目をしている。
教えられていた時のことを思い出しているのだろう。
同席しているマリエルは、何のことなのか分からないからか、キョトンとしている。
・・・・・・マリエルも母上から僕と同じことを教えられているはずなのだが、まるで他人事のように聞いているのはなぜだろう?
「マリエルは母上から礼儀作法やマナーを教えてもらっているのかい?」
「はい。兄上。王都の屋敷だと、母上が中々時間がとれないのですが、領地の屋敷では教えてもらっています」
「そうか。頑張るんだぞ。覚えておいて困ることはないからな」
「はい。母上からも同じことを言われました。僕、頑張ってお勉強します。いずれ兄上を支えられるようになります」
「そうか。ありがとうなマリエル」
天使のようなマリエルの笑顔に癒された。僕もマリアも。
マリエルの言葉に母上も嬉しそうだし。
父上が聞いたら、涙を流して喜ぶんじゃなかろうか?
今は王宮へ呼び出されているから、この屋敷に父上はいないが。
「それにしても、リナライト男爵の非常識令嬢をカトレア様のいらっしゃる修道院にとは・・・ジェリク様も思い切ったことをお考えになるのね」
「陛下と宰相様が、エピドート夫人のいらっしゃる修道院を候補に入れていなかったようで、送り先の修道院の選定に時間がかかっていると。恐らく陛下の御前での所業について聞き及んで、今までの修道院は受け入れを拒否したのでしょう。リナライト男爵家の跡取りとなる養子の選定と手続きは既に終了しているみたいですし」
「あら。そうなの?」
「はい。アストル様からそのように聞いています。アノ令嬢のことについては、私も聞きたくなかったので、あえて質問しなかったのです。まさかまだ王都にいるとは思いもよりませんでした」
「そうねぇ。ジェリク様はリリウム様が王宮に一時避難しているから、一緒にいられる時間が長くなって喜んでいるのでしょうけど・・・リナライト男爵家の監視にいつまでも騎士団を派遣するのもねぇ」
「そうですね。エピドート夫人のいらっしゃる修道院が受け入れてくれると良いのですが」
「あら。サリエルの中ではカトレア様の修道院が候補に入ることは確定なの?」
母上・・・なんでそんなに楽しそうなのですか?
まぁ、ご自分がエピドート夫人から受けた指導(という名の扱き)を非常識の塊みたいな令嬢が受けることになれば、面白いだろうと考えているのだろうな。
だって母上の笑顔が若干黒い・・・
「そうですね。母上のお話しを聞く限り、エピドート夫人は問題児の扱いに長けているみたいですし、情に厚い方のようですから。昔、散々手を焼いた陛下と陛下の見本となるべく努力した宰相様からのお願いなら断らないのではないかと思います。それに・・・出来の悪い子ほど指導にも熱が入るでしょう?」
「そうねぇ。確かに手のかかる令嬢への指導はもの凄かったわ・・・」
そういう母上の顔色は悪かった。
きっとその【もの凄い指導】を運悪く見てしまったのだろうな。
母上は侯爵家の令嬢だったから、夫人から教えを受ける前に一通りの教育は受けていたはず。
お祖父様の執念というか、妄執?で夫人から追加指導を受けただけだしね。
・・・・・・そう考えると母上って凄いな。
やっぱり僕の理想の女性像は母上だな。
そして、カトレア・エピドート夫人の指導を受けて、夫人に認められた女性。
それが僕の理想の女性像。
他愛ない話しをしながらマリアたちのクラスへ向かっていると、宰相子息のジョージ・サルファーがこちらに向かって歩いてきた。
どうやら、昨日の侯爵家のお茶会にジェリク様が参加したことに苦言を呈しにきたようだ。
同じクラスにいる友人であり王太子殿下でもあるアストル様に聞いたことがある。
学園に入学した王家の王子・王女は少しづつ公務を担うことが伝統となっていると。
その際に、側近候補の貴族子息たちも一緒に王宮で教育を受け、公務を手伝うという。
ちなみに僕は王太子殿下の友人ではあるが、側近候補ではない。
辺境伯家の跡継ぎだからね。それに父上が学園以外で王族と接するのを極端にイヤがっている。
恐らく、学園時代に何かイヤな思い出でもあったのだろうと僕は考えている。
案の定、ジョージ殿がジェリク様にお小言を言っている。
ジェリク様がリリウム様にベタ惚れなのは周知の事実。
もっともご本人は周囲にバレていないと思っているが・・・
はっきり言って周囲の人たちはその様子を微笑ましく見ている。
リリウム嬢を王宮へ一時避難させる原因となった令嬢の話しになった。
とういか・・・アノ令嬢まだ王都にいたのか。
アストル様にその後の対応と進捗状況を聞いてはいたが、アノ令嬢については僕の機嫌が悪くなるからと、教えてもらっていなかったんだよな。
リナライト男爵家の跡取りとなる養子の選定と手続きは終了したらしいが。
するとジェリク様が、修道院選定に難航している陛下に提案をすると言った。
ジョージ殿にはなにやら心当たりがあるみたいだが、若干顔色が悪い。
厳しい修道院の方が、あの非常識な令嬢には良い薬になるんじゃないか?
しかし・・・エピドート夫人とはどなただ?聞いたことがないが・・・
すると、隣でマリアがリリウム嬢にエピドート夫人を知っているか聞いていた。
王宮で礼儀作法・マナーを教える教師、しかも主任教師をしていたなんて凄いな。
陛下が王妃様以外で唯一頭の上がらないご夫人というのも凄いが・・・
話している間に、授業開始の時間が迫ってきてしまった。
いつもはクラスまでマリアを送り届けるのだが、今日はジェリク様もいるしジョージ殿もいるから大丈夫だろう。
この二人とリリウム嬢がいて、マリアに声をかけてくる強者はいないだろう。
それに婚約が決まったからなおさらだ。
帰りに迎えに行くからとマリアに伝えて、僕は自分のクラスへと向かった。
学園からの帰り道、マリアとは朝の話しに出てきたエピドート夫人について知っているかと聞かれたが、僕も初めて聞く名前だったんだよな。
しかも、マリアと同じクラスにいるアラン殿もエピドート夫人のいる修道院を選定の候補に入れるよう陛下に提案するというジェリク様の話しに大変驚いていたそうだ。
まぁ、イルバイト公爵も陛下と一緒に指導を受けていた可能性は大きいよな。
とりあえず、帰宅したら母上にエピドート夫人を知っているか聞いてみようということになった。
そういうやいなや、マリアの歩く速度が若干上がったのには笑いを堪えるのが大変だった。
屋敷に到着すると、母上と弟のマリエルが出迎えてくれた。
マリアは早速、母上に聞きたいことがあるから時間を作って欲しいとお願いしている。
母上はマリアのお願いを快く聞き入れ、マリエルと一緒にサロンで待つと言ってサロンへと向かった。
僕とマリアは各自自室へ戻り、制服から着替えることにした。
着替え終わると、マリアの部屋へ迎えに行った。
着替え終わったマリアと一緒にサロンへ行き、マリアが気になっていたエピドート夫人のことを母上に聞いていた。
最初に驚いたのは、エピドート夫人ではなく『カトレア様』と母上が呼んでいたことだった。
お知り合いなのだろうか?知りたいけど、話しの腰を折るのは良くないと思い僕は黙ってマリアと母上の話しを聞いていた。
リリウム嬢から、王宮で主任教師をしていたとは聞いていたが、実際はもっと凄い経歴のご夫人だった。
現エピドート侯爵が跡目を継ぐまでのあいだとはいえ、女侯爵としてお家を守っていたとは。
それに、修道院へ入ると決めていた夫人を前国王陛下が拝み倒して教師として王宮で勤めてもらっていたとは・・・
それよりも、現在の陛下がやんちゃしていたなんて・・・ギャップが凄い。
ルピリア様の破天荒な性格は絶対に陛下に似たんだな。ロベリア様も若干陛下似だし。
アストル様とジェリク様の性格は王妃様譲りということか。
僕はどんな表情をすれば良いのか分からなくなった。
マリアは僕の方を見て、笑いを堪えているみたいだ。
そんなに変な顔してたかな?
マリアと母上の話しが一段落したので、僕は気になっていたことを母上に質問してみた。
「母上はエピドート夫人とお知り合いなのですか?夫人をお名前でお呼びしていたようですが」
「そうね。カトレア様に礼儀作法とマナーを教えて頂いたのよ」
「そうなのですか?」
「えぇ。あなたたちのお祖父様が、私を当時王太子だった陛下の妃にしたいと考えていたのは知っているかしら?」
「はい。以前アスター伯父様から少し聞いたことがあります」
「前陛下が、カトレア様を王宮の教師として招聘される前に、お祖父様がカトレア様に私が王太子妃になった時に王宮で恥をかかないよう礼儀作法とマナーを教えて欲しいとお願いしたのよ。まぁ最初はカトレア様にお断りされていたけど」
「では、母上はエピドート夫人の教え子ということですか?」
「そうなるわね。マリアも言ったけど、カトレア様に教えて欲しいという令嬢はゴマンといたのよ。お祖父様は王太子妃云々を別にしても、なんといって口説き落としたのかは分からないけど、幸いにも私はカトレア様に教えて頂くことができたの」
お祖父様の力の入れように、母上を王太子妃からいずれは王妃にしたいという執念が見て取れる。
父上はよく母上と結婚できたよな。
「では、私たちが領地で母上から教えて頂いたことというのはもしや・・・」
「サリエルの考えている通りよ。カトレア様から教えて頂いた内容よ。教え方もそっくりそのままカトレア様流よ。今は修道院の院長をされているけど、礼儀作法やマナーを令嬢たちに教えているそうよ」
母上はにっこりと笑っているが・・・正直笑い事ではないくらい厳しかった。
実子ということもあり、手加減されているとは思うが・・・
もう一度、母上からの礼儀作法・マナー講座を受けろと言われたらお断りしたい。
それくらい半端なかった。
エピドート夫人本人から指導を受けた母上の礼儀作法・マナーは完璧だ。
夫人から教えを受けた令嬢が良縁に恵まれるのもうなずける。
・・・最近、マリアに僕の理想の女性のタイプについて質問が殺到していると言っていたな。
母上が理想の女性像だと言ったけど、さらにプラスしようか。
『カトレア・エピドート夫人の礼儀作法・マナー教育を受けて夫人に認められた令嬢』と。
現在は修道院で院長をしている傍ら、行儀見習いの令嬢たちを受け入れて礼儀作法やマナーを教えているらしい。
「なるほど。だから母上のマナーは完璧なのですね」
「お世辞でも嬉しいわ。ありがとうサリエル」
いや・・・お世辞でもなんでもない。本音なんだけど。
僕よりも、厳しく母上から礼儀作法・マナーを教えられたマリアは若干遠い目をしている。
教えられていた時のことを思い出しているのだろう。
同席しているマリエルは、何のことなのか分からないからか、キョトンとしている。
・・・・・・マリエルも母上から僕と同じことを教えられているはずなのだが、まるで他人事のように聞いているのはなぜだろう?
「マリエルは母上から礼儀作法やマナーを教えてもらっているのかい?」
「はい。兄上。王都の屋敷だと、母上が中々時間がとれないのですが、領地の屋敷では教えてもらっています」
「そうか。頑張るんだぞ。覚えておいて困ることはないからな」
「はい。母上からも同じことを言われました。僕、頑張ってお勉強します。いずれ兄上を支えられるようになります」
「そうか。ありがとうなマリエル」
天使のようなマリエルの笑顔に癒された。僕もマリアも。
マリエルの言葉に母上も嬉しそうだし。
父上が聞いたら、涙を流して喜ぶんじゃなかろうか?
今は王宮へ呼び出されているから、この屋敷に父上はいないが。
「それにしても、リナライト男爵の非常識令嬢をカトレア様のいらっしゃる修道院にとは・・・ジェリク様も思い切ったことをお考えになるのね」
「陛下と宰相様が、エピドート夫人のいらっしゃる修道院を候補に入れていなかったようで、送り先の修道院の選定に時間がかかっていると。恐らく陛下の御前での所業について聞き及んで、今までの修道院は受け入れを拒否したのでしょう。リナライト男爵家の跡取りとなる養子の選定と手続きは既に終了しているみたいですし」
「あら。そうなの?」
「はい。アストル様からそのように聞いています。アノ令嬢のことについては、私も聞きたくなかったので、あえて質問しなかったのです。まさかまだ王都にいるとは思いもよりませんでした」
「そうねぇ。ジェリク様はリリウム様が王宮に一時避難しているから、一緒にいられる時間が長くなって喜んでいるのでしょうけど・・・リナライト男爵家の監視にいつまでも騎士団を派遣するのもねぇ」
「そうですね。エピドート夫人のいらっしゃる修道院が受け入れてくれると良いのですが」
「あら。サリエルの中ではカトレア様の修道院が候補に入ることは確定なの?」
母上・・・なんでそんなに楽しそうなのですか?
まぁ、ご自分がエピドート夫人から受けた指導(という名の扱き)を非常識の塊みたいな令嬢が受けることになれば、面白いだろうと考えているのだろうな。
だって母上の笑顔が若干黒い・・・
「そうですね。母上のお話しを聞く限り、エピドート夫人は問題児の扱いに長けているみたいですし、情に厚い方のようですから。昔、散々手を焼いた陛下と陛下の見本となるべく努力した宰相様からのお願いなら断らないのではないかと思います。それに・・・出来の悪い子ほど指導にも熱が入るでしょう?」
「そうねぇ。確かに手のかかる令嬢への指導はもの凄かったわ・・・」
そういう母上の顔色は悪かった。
きっとその【もの凄い指導】を運悪く見てしまったのだろうな。
母上は侯爵家の令嬢だったから、夫人から教えを受ける前に一通りの教育は受けていたはず。
お祖父様の執念というか、妄執?で夫人から追加指導を受けただけだしね。
・・・・・・そう考えると母上って凄いな。
やっぱり僕の理想の女性像は母上だな。
そして、カトレア・エピドート夫人の指導を受けて、夫人に認められた女性。
それが僕の理想の女性像。
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