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余計なフラグ。
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硬い地面が隆起していき、瓦礫と化したソレを掻き分けるように現れる。
血や溶岩を連想させる紅蓮の体躯。額から突き出た野太い一角。
人間と比べ物にならないほど巨大さ。
まさに地の底の底、地獄から現れた災厄。
「あれが――魔王かよ……」
正直逃げたかった。勝てる勝てないとかの話ではない。多分負ける。
ミサイルの一発ニ発ぶつけてもケロッとしてそうな存在感。
「魔王というよりは――鬼ですけどね」
少女がさらりと言った。
まぁ魔王か鬼かと聞かれると鬼なんだろうけど、鬼は鬼でも突然変異種だ。
俺はあんな強そうな鬼は知らない。
今現在ここ日本に現存する鬼は、豆をぶつけられて逃げ帰るほどに弱体化しているのだ。
時の流れは残酷である。
「どうやら取り巻きもいるみたいですね」
地面から這い出したのは魔王だけではなかった。
現れたのはゾンビなどではなく、黒いローブを羽織り、手に大鎌を持った死神風のモンスター。
それが三体。
コンセプトがバラバラでカオス感が凄い。眩暈がした。
「あの死神モンスターに剣は効かないよ。魔法も効かない。そして全部即死攻撃」
得意気に説明する雅の顔を見て、頭痛がした。
「何でそんな設定にするんだよ!?」
「だってあんまり弱いと緊迫感がでないじゃない? あ、でもその代わり、魔王はそんなに強くないんだ。あっちからは攻めてこないし」
向こうに目をやると、魔王はやる気なさげに寝転んでいる。おい、それでいいのか。
「てか、剣も魔法も効かないんだったらどうやって倒すんだよ」
「へへーん。ちゃんとアイテムがあるのです。えっと――どこかな」
言うや否や、雅は自分の胸元に手を突っ込んだ。
タイトなローブの何処に収納スペースがあるのか疑問しか沸いて来ない。
少しだけ隙間が空いた胸元から覗く膨らみが、目のやり場に困らせる。
「あった! これぞ冒険七つ道具の二つ目、『ポイズンニードル』です!」
パパラパッパラー。
気の抜けた効果音が鳴り響いた気がする。
出てきたのは、何の変哲も無い普通のアイスピックだった。
「この武器でブスっとすれば、どんな敵でも一撃です!」
「どんな敵でも一撃で殺す武器を何処にいれてんだよ……。ってかそんな武器があるならあのスライムも倒せたんじゃないのか?」
「……さぁ! これが最後の戦いだ!」
話をそらしやがった。
「まぁいいや、もう深く考えるのはやめた。ほら、それよこせ」
「え? 残念ながらこれは魔法使い専用アイテムなので、童て――いや、勇者の夜見くんには装備できないよ」
「おい! 今何て言った!? 何て言いかけた!?」
「ま、まぁ、そういう事だから、取り巻きは私に任せて! 夜見くんは魔王をお願い」
そう言うと雅は、アイスピックを逆手で握った。無駄にカッコよく。
「私ね、この戦いが終わったら――」
「いらんフラグを立てるな!」
雅はクスリと微笑むと、モンスターに向かって走り出した。
血や溶岩を連想させる紅蓮の体躯。額から突き出た野太い一角。
人間と比べ物にならないほど巨大さ。
まさに地の底の底、地獄から現れた災厄。
「あれが――魔王かよ……」
正直逃げたかった。勝てる勝てないとかの話ではない。多分負ける。
ミサイルの一発ニ発ぶつけてもケロッとしてそうな存在感。
「魔王というよりは――鬼ですけどね」
少女がさらりと言った。
まぁ魔王か鬼かと聞かれると鬼なんだろうけど、鬼は鬼でも突然変異種だ。
俺はあんな強そうな鬼は知らない。
今現在ここ日本に現存する鬼は、豆をぶつけられて逃げ帰るほどに弱体化しているのだ。
時の流れは残酷である。
「どうやら取り巻きもいるみたいですね」
地面から這い出したのは魔王だけではなかった。
現れたのはゾンビなどではなく、黒いローブを羽織り、手に大鎌を持った死神風のモンスター。
それが三体。
コンセプトがバラバラでカオス感が凄い。眩暈がした。
「あの死神モンスターに剣は効かないよ。魔法も効かない。そして全部即死攻撃」
得意気に説明する雅の顔を見て、頭痛がした。
「何でそんな設定にするんだよ!?」
「だってあんまり弱いと緊迫感がでないじゃない? あ、でもその代わり、魔王はそんなに強くないんだ。あっちからは攻めてこないし」
向こうに目をやると、魔王はやる気なさげに寝転んでいる。おい、それでいいのか。
「てか、剣も魔法も効かないんだったらどうやって倒すんだよ」
「へへーん。ちゃんとアイテムがあるのです。えっと――どこかな」
言うや否や、雅は自分の胸元に手を突っ込んだ。
タイトなローブの何処に収納スペースがあるのか疑問しか沸いて来ない。
少しだけ隙間が空いた胸元から覗く膨らみが、目のやり場に困らせる。
「あった! これぞ冒険七つ道具の二つ目、『ポイズンニードル』です!」
パパラパッパラー。
気の抜けた効果音が鳴り響いた気がする。
出てきたのは、何の変哲も無い普通のアイスピックだった。
「この武器でブスっとすれば、どんな敵でも一撃です!」
「どんな敵でも一撃で殺す武器を何処にいれてんだよ……。ってかそんな武器があるならあのスライムも倒せたんじゃないのか?」
「……さぁ! これが最後の戦いだ!」
話をそらしやがった。
「まぁいいや、もう深く考えるのはやめた。ほら、それよこせ」
「え? 残念ながらこれは魔法使い専用アイテムなので、童て――いや、勇者の夜見くんには装備できないよ」
「おい! 今何て言った!? 何て言いかけた!?」
「ま、まぁ、そういう事だから、取り巻きは私に任せて! 夜見くんは魔王をお願い」
そう言うと雅は、アイスピックを逆手で握った。無駄にカッコよく。
「私ね、この戦いが終わったら――」
「いらんフラグを立てるな!」
雅はクスリと微笑むと、モンスターに向かって走り出した。
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