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ラスボスが
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「このっ――クソ野郎がっ!」
身体が勝手に動いていた。
頭を後ろに引いて、そのまま轟の顔面に叩きつける。
「がはっ!?」
俺の胸倉を離し、自分の鼻を押さえたその手の隙間からは、真っ赤な血が零れ落ちていた。
身体が自由になった俺は、轟の腹目掛けて前蹴りをぶち込んだ。
「なっ!? 夜見! 待て!」
「お、おい! やめろ!」
うずくまる轟に、尚も向かっていく俺の身体を周囲の奴らが押さえる。
「うるせぇ! 離せ! テメエぶっ殺してやる!」
がむしゃらに手足を振り回し、ひたすらに暴れた。
「お前ら! 何してんだ!」
野太い声が響いた。明らかに大人であろうその声に、俺を押さえつけていた奴らも、蜘蛛の子を散らすように逃げていく。
腐っても進学校。暴力沙汰となれば色々と面倒なのだろう。
まぁ、成績も悪く、部活やってない俺にはあまり関係ないが。
振り向いてみると、そこには真と、もう一人見覚えのある顔があった。
「あ、ガンさん」
LサイズのTシャツが窮屈そうに張り付いた、筋肉で覆われた身体。
その上に薄汚い白のエプロンを纏った、ハゲ頭のおっさん。
定食屋『ガンコ軒』の主人だった。ちなみに本名は知らない。
「ったく、人ン家の裏で騒いでんじゃねーぞ」
言われて気づいた。ああ、ここはガンコ軒の裏だったのか。
って事は、真がガンさんを連れてきたのか。
「えっと――わざわざすいませんね」
「なぁに、それよりも――」
怪しげな笑みを浮かべて俺に近づくやいなや、丸太のような二の腕でガッチリとヘッドロックをかます。
「最近ハンバーガーだなんてこじゃれたモンばっか食ってるって噂じゃねぇか? ああん? 最後にウチの店に来たのはいつだコラァ?」
「いてえええええええええええええええ! ちょ、死ぬって! マジで死ぬ! 行きますから! 近いうちに必ず!」
ギリギリとしめあげるその力は万力もかくや。
脇から香る獣臭もすごい!
「おっと、そういえば客がいたんだった。じゃあな小僧共」
思い出したように腕を外すと、そのままスタスタと消えていった。
「ったく。今のが一番痛かったっての。ってか真、お前怪我は無いか?」
「あ、うん。大丈夫。その、ありがとね」
「礼を言うのはこっちの方だよ。流石にあのままだったら俺がやられてただろうしな。まぁこれで済むとは思えないけど。休み明けが憂鬱だぜ」
面倒な事にならなきゃいいが。
そう思いながら、地面に転がったバッグを拾い上げ、さて帰ろうかと足を進めたとき――。
「雅さんと一緒に登校って、僕初耳なんだけど。詳しく聞かせてくれる?」
ラスボスが――いた。
そう笑った友人の笑顔は、今日一番俺に身の危険を感じさせた。
身体が勝手に動いていた。
頭を後ろに引いて、そのまま轟の顔面に叩きつける。
「がはっ!?」
俺の胸倉を離し、自分の鼻を押さえたその手の隙間からは、真っ赤な血が零れ落ちていた。
身体が自由になった俺は、轟の腹目掛けて前蹴りをぶち込んだ。
「なっ!? 夜見! 待て!」
「お、おい! やめろ!」
うずくまる轟に、尚も向かっていく俺の身体を周囲の奴らが押さえる。
「うるせぇ! 離せ! テメエぶっ殺してやる!」
がむしゃらに手足を振り回し、ひたすらに暴れた。
「お前ら! 何してんだ!」
野太い声が響いた。明らかに大人であろうその声に、俺を押さえつけていた奴らも、蜘蛛の子を散らすように逃げていく。
腐っても進学校。暴力沙汰となれば色々と面倒なのだろう。
まぁ、成績も悪く、部活やってない俺にはあまり関係ないが。
振り向いてみると、そこには真と、もう一人見覚えのある顔があった。
「あ、ガンさん」
LサイズのTシャツが窮屈そうに張り付いた、筋肉で覆われた身体。
その上に薄汚い白のエプロンを纏った、ハゲ頭のおっさん。
定食屋『ガンコ軒』の主人だった。ちなみに本名は知らない。
「ったく、人ン家の裏で騒いでんじゃねーぞ」
言われて気づいた。ああ、ここはガンコ軒の裏だったのか。
って事は、真がガンさんを連れてきたのか。
「えっと――わざわざすいませんね」
「なぁに、それよりも――」
怪しげな笑みを浮かべて俺に近づくやいなや、丸太のような二の腕でガッチリとヘッドロックをかます。
「最近ハンバーガーだなんてこじゃれたモンばっか食ってるって噂じゃねぇか? ああん? 最後にウチの店に来たのはいつだコラァ?」
「いてえええええええええええええええ! ちょ、死ぬって! マジで死ぬ! 行きますから! 近いうちに必ず!」
ギリギリとしめあげるその力は万力もかくや。
脇から香る獣臭もすごい!
「おっと、そういえば客がいたんだった。じゃあな小僧共」
思い出したように腕を外すと、そのままスタスタと消えていった。
「ったく。今のが一番痛かったっての。ってか真、お前怪我は無いか?」
「あ、うん。大丈夫。その、ありがとね」
「礼を言うのはこっちの方だよ。流石にあのままだったら俺がやられてただろうしな。まぁこれで済むとは思えないけど。休み明けが憂鬱だぜ」
面倒な事にならなきゃいいが。
そう思いながら、地面に転がったバッグを拾い上げ、さて帰ろうかと足を進めたとき――。
「雅さんと一緒に登校って、僕初耳なんだけど。詳しく聞かせてくれる?」
ラスボスが――いた。
そう笑った友人の笑顔は、今日一番俺に身の危険を感じさせた。
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