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二章
ハイレグと言う名の神装備
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しばらく経つと、何やら奥の方が騒がしくなってきた。
どうやら風呂を出たらしいが、ニーヤの怒声が聞こえる。
理由は何となく分かるが、とりあえず笑わないであげよう。
そう思っていたが――。
「お、おぅふ……」
普段から軽装で、すっかり見慣れたはずの彼女の肢体。
肌に吸い付くような、純白シルクのハイレグ。
それがニーヤの、鍛え抜かれているが、女性らしさをも兼ね備えた、適度に日に焼けた体型をかなり引き立てている。
そして、真っ赤な髪の毛から突き出た二本の耳。
赤という挑戦的な色の持つ威圧感を全て吸収し、その白さはまるで光が差しているようでもある。
「ちょ、ちょっと何なのよアンタ! だ、黙って見てないで何か言いなさいよ!」
僅かに顔を赤らめているのは風呂上りだからか、それとも羞恥心からか。
「ご、ごめん。う、うん。悪くない――と思うよ」
悪くないどころか――とてもいい!
でも、正直な感想を口に出すのは若干の抵抗を覚える。
多分、ニーヤにはこれくらいでいいんだ。
「あの……私は……おかしくありませんか……?」
恥らうように身体をよじりながら、それでも勇気を振り絞るようなモミさんを見て、思わず声が漏れた。もしかしたら、僕の魂だったかもしれない。
普段は露出度の低い彼女。ふわりとした二の腕も、太ももの黄金比があるなら間違いなく該当するであろうその絶妙なムッチリとしたおみ足も。
今は全てが解き放たれている。
大きな胸を隠しきれない真っ黒なハイレグは、彼女の金髪と合わさることで不可侵な高級感――いや、神々しささえ感じる。
頭から伸びたうさぎの耳が、その神々しさによって下々の僕らが目を潰さないように何とかバランスをとっているような感じだ。
「おかしくなんかありません! 最高です! 世界一です!」
「まぁ。ケンセイさんったら……」
照れくさそうにはにかんだモミさんも、中々の破壊力だった。
「なんかアタシの時と反応が全然違う気がするんだけど」
「え。き、気のせいだよ気のせい。でも、まさかワーワルツにもこんな服があるなんてなぁ」
「何か最近一部の貴族の間で流行ってるみたいでさー。聞いた話だと猫とか狐なんてのもあるらしいし。あ、ちなみにソレ、着て分かると思うけど最高級の絹だから絶っ対傷つけないでね」
女性の言葉に、ニーヤとモミさんの背筋がピンと伸びた気がした。
「ってかさ、まさかこの格好で町を歩かせるわけじゃないよね?」
「ハハッ。いくら何でもそんな事しないよ、そろそろ迎えが来る頃だと――あ、ほらほら」
馬車の止まる音が聞こえ、酒場の扉が開く。
入ってきたのは、いかにも従者然とした初老の男性だ。
「準備はできていますかな? おお、これは何とも美しい! 町にこんな美しい娘さんがおるとは、まだまだデカフグリも捨てたものではありませんな」
「違うよー。この人達は旅の人。それと――まぁ面倒事はないと思うけど、おまけで護衛の剣士様ね」
ってかおまけって……まぁおまけなんだろうが。
どちらかと言えば護衛される側だし――だが切ない。
「ほう、これはこれは、美女二人と幼子を連れて旅をしているとは、さぞ名の在る剣士様なのでしょう。何も無いとは思いますが、どうかよろしくお願いします」
深々と頭を下げるその姿は、何とも自然で板についていた。
「さて――」
と顔を上げた老人が、トートさんに気づき言葉を止めた。
その表情から、どんな言葉をかければいいのか悩んでいる様子。
まぁ従者なら知っていて当然だろう。
「何も言わんでくれ。アンタに文句はないが、八つ当たりしてしまいそうだ」
顔を背けるようにそう言うと、老人は悲痛な表情で再び頭を下げた。
「で、では行きましょうか。表に馬車を用意してありますゆえ」
僕達を先導するように歩き出す。
幌馬車に乗り、馬が歩き出すと、ふと疑問が湧いた。
――あれ? 僕のお風呂タイムは?
どうやら風呂を出たらしいが、ニーヤの怒声が聞こえる。
理由は何となく分かるが、とりあえず笑わないであげよう。
そう思っていたが――。
「お、おぅふ……」
普段から軽装で、すっかり見慣れたはずの彼女の肢体。
肌に吸い付くような、純白シルクのハイレグ。
それがニーヤの、鍛え抜かれているが、女性らしさをも兼ね備えた、適度に日に焼けた体型をかなり引き立てている。
そして、真っ赤な髪の毛から突き出た二本の耳。
赤という挑戦的な色の持つ威圧感を全て吸収し、その白さはまるで光が差しているようでもある。
「ちょ、ちょっと何なのよアンタ! だ、黙って見てないで何か言いなさいよ!」
僅かに顔を赤らめているのは風呂上りだからか、それとも羞恥心からか。
「ご、ごめん。う、うん。悪くない――と思うよ」
悪くないどころか――とてもいい!
でも、正直な感想を口に出すのは若干の抵抗を覚える。
多分、ニーヤにはこれくらいでいいんだ。
「あの……私は……おかしくありませんか……?」
恥らうように身体をよじりながら、それでも勇気を振り絞るようなモミさんを見て、思わず声が漏れた。もしかしたら、僕の魂だったかもしれない。
普段は露出度の低い彼女。ふわりとした二の腕も、太ももの黄金比があるなら間違いなく該当するであろうその絶妙なムッチリとしたおみ足も。
今は全てが解き放たれている。
大きな胸を隠しきれない真っ黒なハイレグは、彼女の金髪と合わさることで不可侵な高級感――いや、神々しささえ感じる。
頭から伸びたうさぎの耳が、その神々しさによって下々の僕らが目を潰さないように何とかバランスをとっているような感じだ。
「おかしくなんかありません! 最高です! 世界一です!」
「まぁ。ケンセイさんったら……」
照れくさそうにはにかんだモミさんも、中々の破壊力だった。
「なんかアタシの時と反応が全然違う気がするんだけど」
「え。き、気のせいだよ気のせい。でも、まさかワーワルツにもこんな服があるなんてなぁ」
「何か最近一部の貴族の間で流行ってるみたいでさー。聞いた話だと猫とか狐なんてのもあるらしいし。あ、ちなみにソレ、着て分かると思うけど最高級の絹だから絶っ対傷つけないでね」
女性の言葉に、ニーヤとモミさんの背筋がピンと伸びた気がした。
「ってかさ、まさかこの格好で町を歩かせるわけじゃないよね?」
「ハハッ。いくら何でもそんな事しないよ、そろそろ迎えが来る頃だと――あ、ほらほら」
馬車の止まる音が聞こえ、酒場の扉が開く。
入ってきたのは、いかにも従者然とした初老の男性だ。
「準備はできていますかな? おお、これは何とも美しい! 町にこんな美しい娘さんがおるとは、まだまだデカフグリも捨てたものではありませんな」
「違うよー。この人達は旅の人。それと――まぁ面倒事はないと思うけど、おまけで護衛の剣士様ね」
ってかおまけって……まぁおまけなんだろうが。
どちらかと言えば護衛される側だし――だが切ない。
「ほう、これはこれは、美女二人と幼子を連れて旅をしているとは、さぞ名の在る剣士様なのでしょう。何も無いとは思いますが、どうかよろしくお願いします」
深々と頭を下げるその姿は、何とも自然で板についていた。
「さて――」
と顔を上げた老人が、トートさんに気づき言葉を止めた。
その表情から、どんな言葉をかければいいのか悩んでいる様子。
まぁ従者なら知っていて当然だろう。
「何も言わんでくれ。アンタに文句はないが、八つ当たりしてしまいそうだ」
顔を背けるようにそう言うと、老人は悲痛な表情で再び頭を下げた。
「で、では行きましょうか。表に馬車を用意してありますゆえ」
僕達を先導するように歩き出す。
幌馬車に乗り、馬が歩き出すと、ふと疑問が湧いた。
――あれ? 僕のお風呂タイムは?
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