上 下
17 / 37
【第4章】議論! チーム名と決めゼリフ‼

第2話

しおりを挟む
「ハァ、ハァ、ハァ……それで、なんでアンタはすぐにミーティングしたいだなんて言い出したのよ……」

 言葉による死闘がひと段落し、ようやく話の本題へと入れる。

「そうだった! 二人とも無視するからつい熱くなっちまったじゃねぇか。今日二人に話したいことはこれだ!」

 バンッ!

 待合室にある掲示板に、あることが書かれた紙を力強く貼り付ける。
 そこには、

『チーム名および決めゼリフ求む!(超かっこいいの!)』

 と書いてる。

「なに? チーム名と決めゼリフって?」

 杏沙は、いかにもめんどくさそうな顔である。
 一方の一葉はちょっとワクワクしてる?ようである。
 約一名がいつも通り乗り気じゃないが、これは超重要事項。そんなんじゃ俺の心は砕けねぇぜ。

「そう! チーム名と決めゼリフ! 俺たちは幼女戦隊だ! ヒーローだ! しかし、我々を一言で表す言葉がないじゃないか! それがチーム名!」
「えっ? チーム名って、幼女戦隊じゃダメなの?」
「かぁ~。これだから素人は……。いいかい杏沙隊員」
「ムカつくからその喋り方やめれ」
「……コホン。えと、つまりですね、こういう戦隊ヒーローっていうのは、『〇〇戦隊〇〇レンジャー』とか『〇〇ズ』とかそういうかっこいいチーム名がついてるじゃないですか? ついてるのとついてないとじゃ一体感が違うと思うんです。だから僕は、それをここにいる皆さんと考えたいなって。そうすれば、敵と対峙したときに、高らかに宣言することで威圧できるかなって思ってます。はい」

 これでもかってくらい恐縮の意を示す俺。
 杏沙を怒らせたら母さん並みに怖いし。

「別にチーム名を決めるのはいいんだけど、わざわざ敵の前で言うの恥ずかしくない?」
「いやいやいや! チーム名を高らかに宣言するのってかっこいいじゃん! 絶対相手もビビるよ! チームの士気も上がるって! 一葉もそう思わない?」
「えと……あと……、チームが一丸になる気は……します」
「一葉ちゃんも賛成なんだ……」

 賛成票の方が多い状態だが、いまだに杏沙は否定的な模様。
 しかし、ダピルから助舟を出してくれた。

「新斗の言うことも一理あるピ。チーム名を宣言することも、決めゼリフを唱えることも、実は、君たちにとって多大なるメリットがあるピ。そういうチームが一丸になるようなことを言うことにより、内にあるYOJOパワーをさらに呼び起こせる可能性があるダピ」
「マジか⁉」

 本当に意味があったんだ。かっこいいから言いたいだけだったんだけど、これは黙っておこう。
 それを聞いた杏沙は、

「え~、恥ずかしいけど、強くなれるなら仕方ない……のかな。それで? 決めゼリフって何を言うの?」
「それも戦隊モノでよくあるやつだよ。たとえば……『炎の力を授かりしピュアピュアキュートガール・幼女レッド!』とかさ、そういうかっちょいいやつ!」
「あははははっ! なにそれ⁉ ギャグ? あはははっ! あー、お腹いたいっ!」
「ぷっ、ふふふっ!」
「人がせっかく考えた決めゼリフを……。一葉まで笑うなんてひどいよ……」
「ぷっ、ごめんなさい……ふふっ。素敵な決めゼリフだと思います」

 天使の笑顔だ……。
 いや、見惚れてる場合じゃない!

「とにかく、チーム名と決めゼリフをみんなで考えようぜ! 決めゼリフは、三人に統一感がでるように一つ核となる言い回しを決めて、そこから各々の属性に当てはめていけば問題ない。じぁあ紙とペンを渡すから二人ともかっちょいいのを書いてくれ。書き終わったらこのBOXに入れて、引き当てたもので決定とする!」

 事前に準備していた2つの投票BOXをかかげて見せる。片方がチーム名用、もう片方が決めゼリフ用だ。

「そんなので決めるの? 仮にも大事なことなんじゃないの? それを懸賞の当選発表みたいにやっちゃっていいの?」

 と、杏沙は心配するが、それには及ばない。

「引き当てたものでとりあえず一回やってみて、嫌だったり、しっくりこなかったりしたら、そのときは変えればよくね?」
「軽っ!」
「とりあえずやってみる。それが俺の正義」
「あんたの正義は行きあたりばったりなうえに軽すぎるわよ。でもいいわ。さっきのあんたみたいな壊滅的にダサいものになっても、後々変えられるってことだものね」

 少し引っかかる言い方だったが、杏沙もようやく了承してくれた。
 それぞれがペンを握りしめ、思い浮かべたチーム名と決めゼリフを書き記していく。
 こんなに真剣に紙とペンに向き合ったのはいつ以来だろうか……。
 もっと真剣に勉強してたら、今とは違う人生が待っていたのだろうか……。
 過去のことをしみじみと思い浮かべながら、自分のボキャブラリーをフル稼働させたのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜

なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」  静寂をかき消す、衛兵の報告。  瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。  コリウス王国の国王––レオン・コリウス。  彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。 「構わん」……と。  周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。  これは……彼が望んだ結末であるからだ。  しかし彼は知らない。  この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。  王妃セレリナ。  彼女に消えて欲しかったのは……  いったい誰か?    ◇◇◇  序盤はシリアスです。  楽しんでいただけるとうれしいです。    

元ゲーマーのオタクが悪役令嬢? ごめん、そのゲーム全然知らない。とりま異世界ライフは普通に楽しめそうなので、設定無視して自分らしく生きます

みなみ抄花
ファンタジー
前世で死んだ自分は、どうやらやったこともないゲームの悪役令嬢に転生させられたようです。 女子力皆無の私が令嬢なんてそもそもが無理だから、設定無視して自分らしく生きますね。 勝手に転生させたどっかの神さま、ヒロインいじめとか勇者とか物語の盛り上げ役とかほんっと心底どうでも良いんで、そんなことよりチート能力もっとよこしてください。

魔力吸収体質が厄介すぎて追放されたけど、創造スキルに進化したので、もふもふライフを送ることにしました

うみ
ファンタジー
魔力吸収能力を持つリヒトは、魔力が枯渇して「魔法が使えなくなる」という理由で街はずれでひっそりと暮らしていた。 そんな折、どす黒い魔力である魔素溢れる魔境が拡大してきていたため、領主から魔境へ向かえと追い出されてしまう。 魔境の入り口に差し掛かった時、全ての魔素が主人公に向けて流れ込み、魔力吸収能力がオーバーフローし覚醒する。 その結果、リヒトは有り余る魔力を使って妄想を形にする力「創造スキル」を手に入れたのだった。 魔素の無くなった魔境は元の大自然に戻り、街に戻れない彼はここでノンビリ生きていく決意をする。 手に入れた力で高さ333メートルもある建物を作りご満悦の彼の元へ、邪神と名乗る白猫にのった小動物や、獣人の少女が訪れ、更には豊富な食糧を嗅ぎつけたゴブリンの大軍が迫って来て……。 いつしかリヒトは魔物たちから魔王と呼ばるようになる。それに伴い、333メートルの建物は魔王城として畏怖されるようになっていく。

異世界転生したらよくわからない騎士の家に生まれたので、とりあえず死なないように気をつけていたら無双してしまった件。

星の国のマジシャン
ファンタジー
 引きこもりニート、40歳の俺が、皇帝に騎士として支える分家の貴族に転生。  そして魔法剣術学校の剣術科に通うことなるが、そこには波瀾万丈な物語が生まれる程の過酷な「必須科目」の数々が。  本家VS分家の「決闘」や、卒業と命を懸け必死で戦い抜く「魔物サバイバル」、さらには40年の弱男人生で味わったことのない甘酸っぱい青春群像劇やモテ期も…。  この世界を動かす、最大の敵にご注目ください!

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

来訪神に転生させてもらえました。石長姫には不老長寿、宇迦之御魂神には豊穣を授かりました。

克全
ファンタジー
ほのぼのスローライフを目指します。賽銭泥棒を取り押さえようとした氏子の田中一郎は、事もあろうに神域である境内の、それも神殿前で殺されてしまった。情けなく申し訳なく思った氏神様は、田中一郎を異世界に転生させて第二の人生を生きられるようにした。

処理中です...