過去

ぱぱら

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過去の話

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--------スイの義眼の話聞かせてあげる。

彗と私がまだ小さい頃。私たちはとても貧しくて、村の周りの子からもとっても軽蔑された目でみられてたの。
学費がかからない村の初等学校に通っていたけど、そのなかで私と彗に向けられる幼いながらのいじめというものはとても酷いものだった。教師もそれを知りながら無視、親には心配されたくないから伝えなかった。

毎日毎日、ギリギリ一日が過ごせるぐらいの金を手にしながら汗水垂らして働く親に私は迷惑をかけたくなかったから。

だから私もいじめになんか負けたくなかった。そういう面からもあの頃の私はすごい攻撃的で色んなものに刃向かっては喧嘩を繰り返していた。
そんな私を後ろから服を掴んで何も言わずに毎日くっついて回ってたのが彗。ある意味内向的な静かな男の子だったのかもね。
私は姉として絶対に彗を守り、他の子にも魔法で負けたくなかった。
だから毎日魔法攻撃の本について村の図書館で勉強をするのが日課になった。スイはその間ずっと隣で一緒に本を眺めるだけで特に実践として魔法を使おうとしなかった。
私は同級生のいじめっ子との喧嘩で、経験を積んだと勘違いして「私は強いから」なんて言ってたっけ。
そんな私がいけなかった。強くなった、なんでも出来ると思い込んでたの。

ある日の夕方、私が家の仕事を手伝っている帰りに彗の姿を見つけた。
ああ、誰かが彗を虐めている。あの子なんにも言わないし戦わないからいっつも標的にされるんだよね……ちょっと痛い目見せてあげようと思った。
「ちょっとやめてくれない?彗に何してんの。」
そう冷たく言い放ち相手を見ると、相手は知らない上級生だった。魔法のレベルは歴然に違う。そう思った私は、私たちの歳ではそうそう成功しないであろう上級の魔法を相手に使ってやろうとして魔力を指に込めた。
バチバチっと音がして魔力が指をつたい相手に飛ぶ、
「やった!私やっぱり強いんだ。」
魔法は一直線に相手に飛んでゆく。相手が焦りながらも必死になにか呟いたと思うと気づいた時には私たちの目の前に緑の閃光のような光が広がり、やばい。当たる。と身構える私の目の前にスっと黒い人影が見えた。その刹那、私と彗はすごい勢いで後ろに飛ばされてそのまま意識を失った。

どれぐらいの時間が経ったのだろうか目を覚ますと家のベッドに寝かされていた。
私は飛ばされた時の擦り傷や打撲は多少特に大きな怪我はしていなかった。ふと隣をみると彗の姿が見えなかった。
ベッドから起き上がりリビングまで行くと、
母親がないており、父も何も言わずにずっと母をさすっていた。
親に彗は?と聞くと、すすり泣きながら母が
私の近くに来た。そして少しの間を置いて、母は震えた声で私の肩を抱いて下を向きながら話した。
「彗はね、お顔にね、魔法が当たったの。そして左目が、目が、もしかしたらもうずっと左目がみえないかもしれないって、、」
と言いながらまた泣き出してしまった。
今は村長の家で治療をしともらっているそうだ。貧しい家が当然高い治癒魔法薬を買ったり、街の整備が揃った病院までも行けるはずがなく、一般人の魔法治癒能力ではそれが精一杯だった。
私は途中から話が入ってこなかった。
彗の左目が?みえない?
あの時確かに私に魔法は当たったはず、何故彗が重症なの?私が彗を守ってあげないといけないのに。グルグル幼い子の頭の中を回る
まだ理解出来ていない私はボーッと抜け殻のような状態でその日は眠り、
次の日朝早く私は村長の家に彗に会いに行った。
彗は包帯を巻かれたまま静かに眠っていた。
私はどうしても彗が怪我をしたのが腑に落ちず村長にあの時あった出来事を全て話した。
すると村長は少し考え、もし彗の目が見えなくても、困難なことがあってもこれから彗と2人でちゃんと協力しながら乗り越えていくことを誓えるかい?と聞いてきた。
私も今まで見た事のない厳しい表情の村長を見て。こくりと頷き姿勢を質した。

君が魔法を使って相手に攻撃をしたね?
そして相手は防御魔法で君が出した魔法をそっくりそのまま君達に跳ね返したんだよ。
そう、君がうった魔法が自分達に当たったってことだね。分かるかい?
同じ魔法を受けた君は軽傷、しかし彗くんは重症。
恐らくだけどね、君らが発見された時彗くんは君を守るように上に乗って倒れていたんだよ。
スイは君を咄嗟に前に出て護ろうとした。
まだ子供の君には少々言葉がきついかもしれないが、君が出した魔法を彗くんは顔に受けてしまったんだよ。
君は確かに強いし、魔法も上手く扱う。
でも魔法は安易に人を傷つけるためだけにあるものじゃないことを分かってくれ。
節度を守り、魔法を簡単に扱わない
そういう事ができる人間が真の魔法使いになれる。
君も今回の事で身に染みて感じたんじゃないかな。

そうか。私が出した魔法が。私のせいで。彗は。そう思うと自分のしてきた行動思考が全て愚かなものだったと気づいた。まだ目を覚ましていない彗に何度もごめんなさいと叫び涙はずっと止まらなかった。
村長は何も言わずに泣きじゃくる私をずっと見守ってくれていた。
気づいたら泣き疲れて彗の布団に突っ伏せて眠っていた。



姉ちゃん?っていう声に目を覚ました。
私より少し先に目を覚ました彗はボーッとした表情で私をみつめ、なんで悲しそうなの?
と漏らした。
私はもう何も言えずにただごめんねと泣きじゃくってしまった。
何も言わずにただ私が落ち着くのを待ってから彗は小さな声で呟いた
「あのね、お姉ちゃんは僕をずっと守ってくれてたから、ずっと僕も強くならなきゃって思ってたんだ。だからあの時ちゃーんと姉ちゃんを守れてよかったぁ。」

「姉ちゃんがまだ眠ってる間に村長さんから聞いたんだ、多分左目がもう戻らないかもって。
でも、左目見えなくったって、僕は僕でしょ?
なんにも変わらないよ。それよりね、僕もっと魔法勉強して、強くなるよ。
こんな泣き虫姉ちゃんは今の弱い僕じゃ守れないもんねぇ?兄弟とはいえ数時間違いで生まれた姉ちゃんにずっと僕のお守りさせるなんて嫌だもん。一緒に強くなろ姉ちゃん。」

そう言ってふにゃりとわらう彗をみて
私は変に強くないといけないという重荷がふっと外れた気がした。もう守ってあげないといけないと思ってた私が馬鹿だった。彗もちゃんと私と同じように強くあったんだ。
「私もちゃんとサポートする。一緒に魔法の練習しよう。だから早くまた一緒に学校行こう。」
そう言って2人で約束をして
その後は日が暮れるまでたわいも無い会話をして、私はは家にかえった。

数日後スイは家に戻り、私たちと同じ生活を送れるようになった。
左目の眼帯はまだ取れていないものの視覚の感覚は無いかもしれないと本人は話していた。それでも彗は今まで以上に勉強をするようになり沢山言葉を発してくれるようになった。

眼帯をとっての視力検査が行われたが、やはり左目はきのうしていなかった。
村長が気を利かせて義眼というものを作るお店に連れていってくれた。色んな色の綺麗な義眼が置いてあり好きなものを買ってあげると伝え、2人で選んだのが、イチョウの葉っぱのような深い黄色の義眼。

彗の一番好きな義眼である。
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