何の変哲もない違和感

遊楽部八雲

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遭難

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 ある日、A氏・B氏・C氏・D氏の四人の男で山登りに来ていた。
 麓から登り始め、山頂を踏破し、現在八合目を下山中だ。
「なんか、あっという間に終わってしまってつまらないな」
「これを完全に下りきってしまったらなんとも言えぬ喪失感を味わってしまうではないか」
「どうしたものだろうか」
 B氏・C氏・D氏がそれぞれそんなことを話していると、A氏が突然こんなことを言った。
「みんな、ここでひとつ、あるゲームをしないか」
「どんなゲームだ。しりとりや古今東西などは登山中に終えてしまっているだろ」
「違うんだ。おれたちこの山の中で遭難するんだ」
「なんだって」
 A氏以外の三人は耳を疑った。
 なんでも、A氏によると、今からこの四人でわざと深い森の中に入ってまず遭難する。それから四人の中でそれぞれ救助に来るまでの時間を予想し合う。それで一番遠かった者が下山してからの四人分の飯をおごる、というものだそうで、題して『遭難ゲーム』というらしい。

 それから四人は途中で深い深い森の中に入り、帰り道が分からなくなったところで、四人それぞれ予想を立てた。
 A氏は三時間、B氏は一日、C氏は六時間、D氏は十四時間、といった具合だ。
 それから四人は談笑などをしながら救助を待ち続けた。
 しかし、最長の予想である一日が経っても救助が来ることは無かった。

 そしてそれから六日、遭難してからおよそ一週間ほど経ったある時、遠くから誰かを呼ぶような声が森の中でこだました。
「お~い……お~い……お~~い………」
 その声はどんどん四人のいる場所へと近づいていった。
 とうとう声の主たちが姿を現した。
「大丈夫か?生きてるか?」
 五人の男女だった。救助に来てくれたらしい。
「えぇ…なんとか……」
 助かった…と四人は思った。
「人数は?全部で何人だ?」
 走ってきたのだろうか、五人とも息が上がっているようだった。そして顔からはまるでこちらに何かを急かしているような表情がうかがえた。
「全部で…四人です」
 A氏は最後の力を振り絞り、五人に向かって答えた。
「なんだって」
 すると五人は互いに顔を見合わせ、深くため息をついた。
だって」
の五人を満たしていませんよ」
「参ったなこりゃ」
「どうします?隊長」
「また別の遭難者たちを探すしかないな」
 この五人の会話に四人はただただ困惑する他なかった。
 何を言ってるんだこの人たちは。助けてくれないのか。
「くそ、こいつらはほっといて他を探すぞ。でないと、我々の方が『救助ゲーム』をクリアできずに遭難してしまう」
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