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(※執事ロイ視点)
今日は、久しぶりにお暇をいただき、最近巷で話題になっている雑技団のショーを見るため、会場にやって来ていた。
観客は、それなりにたくさんいた。
巷で話題になっているだけはあるようだ。
本当なら、お暇をいただくようなことがあっても、私は屋敷に残ったまま、キャサリンお嬢様のお世話をさせていただくのだが、お嬢様は最近よくどこかへ出掛けている。
だから私も気晴らしとして、こうして雑技団のショーを見に来たというわけだ。
私は舞台から少しだけ離れた位置にある客席に座った。
そして、しばらく待っていると、いよいよショーが始まった。
この雑技団は、一つのことに拘らず、様々な芸を披露した。
飼い慣らされた虎が火の輪を潜ったり、落ちたらただでは済まないという高さにロープを張り、そこを逆立ちで渡ったりした。
もちろん、逆立ちでロープを渡ったのは人間である。
ほかにも彼らは、様々な芸を披露した。
そして、その度に驚きの声や拍手が会場中に鳴り響いた。
私も気づけば拍手を送っていた。
それくらい完成度も高く、どれも素晴らしいものだった。
ぜひとも、キャサリンお嬢様にもお見せしたかった。
最近は婚約破棄のこともあり、少し落ち込んでいる様子だったから、このショーを見れば少しは元気になっていたかもしれない。
……いや、奥手である私に、彼女をショーに誘い出す勇気なんてないか。
しかし、これでいい。
私は執事だ。
彼女への思いは、一生うちに秘めたままにしておくべきだ。
しかし、やはり、それでもいつかは……。
「さあ! いよいよ、最後の演目となりました!」
進行役の男が、よく通る大きな声でそう言った。
そして、紹介された男の名前を聞いて、その姿を見た瞬間、私は思わず客席から立ち上がりそうになった。
なんと、舞台に立ったのは、あのジャックだったのだ……。
キャサリンお嬢様の元婚約者であり、彼女を裏切って他の女性と結婚した人物である。
私は気づけば拳を握りしめていた。
まさか、最後に舞台に立つ人物が、あのジャックだなんて……。
それまでは純粋にショーを楽しめていたが、今ではそんな気分はどこかへ消えてしまっていた。
お嬢様を傷つけた彼を、私は許すつもりなどない。
私なら、絶対にお嬢様を幸せにしてみせるのに……。
その気持ちを圧し殺して、あの男にお嬢様を任せようと思っていた。
彼が、羨ましいとさえ思った。
しかし、彼はお嬢様を裏切り、大きく傷つけた。
帰ろうかとも思ったが、すでに演目は始まってしまった。
帰る機会を失ってしまった私は、不機嫌になりながらも舞台に注目した。
進行役の説明によると、ジャックは今回が初めて自身が主役となる舞台だそうだ。
きっとそのせいで緊張しているのだろう。
彼の顔色は悪かった。
あの様子では、演目も失敗に終わってしまうのではないか……。
そんな彼が、舞台の上に用意された透明のボックスの中に入った。
彼が入った扉には、外側から鍵がかけられた。
これで、彼は透明なボックスの中から出られないというわけだ。
そして、彼が入ったボックスが、突然発生した煙に包まれた。
完全に彼の姿も、ボックスも見えなくなった。
「さあ、皆さん! いよいよですよ! 舞台の上のボックスに注目していてください! 彼がボックスの中に入り、鍵をかけられたことは、皆さん見ていましたね? このボックスは、力自慢の大男が殴っても、銃で撃っても壊れないほど頑丈なものです。しかし、この煙が消えてボックスが現れたとき、皆さんは驚きの光景を目の当たりにすることになるでしょう!!」
進行役の男がそう言うと、離れた客席にいる我々は息を呑んだ。
驚きの光景……、それはいったい……。
あのジャックが主役だというのに、気づけば私はその事を気にもせずに、舞台に注目していた。
しかし、その時会場のどこかで、一発の銃声が鳴り響いた……。
「え……」
突然のことだったので、私は驚いた。
これも、演出の一部なのだろうか……。
そんなことを思っていると、煙が少しずつ晴れて、先ほどジャックが入ったボックスが姿を現した。
そして、私は信じられない状況を目の当たりにするのだった……。
今日は、久しぶりにお暇をいただき、最近巷で話題になっている雑技団のショーを見るため、会場にやって来ていた。
観客は、それなりにたくさんいた。
巷で話題になっているだけはあるようだ。
本当なら、お暇をいただくようなことがあっても、私は屋敷に残ったまま、キャサリンお嬢様のお世話をさせていただくのだが、お嬢様は最近よくどこかへ出掛けている。
だから私も気晴らしとして、こうして雑技団のショーを見に来たというわけだ。
私は舞台から少しだけ離れた位置にある客席に座った。
そして、しばらく待っていると、いよいよショーが始まった。
この雑技団は、一つのことに拘らず、様々な芸を披露した。
飼い慣らされた虎が火の輪を潜ったり、落ちたらただでは済まないという高さにロープを張り、そこを逆立ちで渡ったりした。
もちろん、逆立ちでロープを渡ったのは人間である。
ほかにも彼らは、様々な芸を披露した。
そして、その度に驚きの声や拍手が会場中に鳴り響いた。
私も気づけば拍手を送っていた。
それくらい完成度も高く、どれも素晴らしいものだった。
ぜひとも、キャサリンお嬢様にもお見せしたかった。
最近は婚約破棄のこともあり、少し落ち込んでいる様子だったから、このショーを見れば少しは元気になっていたかもしれない。
……いや、奥手である私に、彼女をショーに誘い出す勇気なんてないか。
しかし、これでいい。
私は執事だ。
彼女への思いは、一生うちに秘めたままにしておくべきだ。
しかし、やはり、それでもいつかは……。
「さあ! いよいよ、最後の演目となりました!」
進行役の男が、よく通る大きな声でそう言った。
そして、紹介された男の名前を聞いて、その姿を見た瞬間、私は思わず客席から立ち上がりそうになった。
なんと、舞台に立ったのは、あのジャックだったのだ……。
キャサリンお嬢様の元婚約者であり、彼女を裏切って他の女性と結婚した人物である。
私は気づけば拳を握りしめていた。
まさか、最後に舞台に立つ人物が、あのジャックだなんて……。
それまでは純粋にショーを楽しめていたが、今ではそんな気分はどこかへ消えてしまっていた。
お嬢様を傷つけた彼を、私は許すつもりなどない。
私なら、絶対にお嬢様を幸せにしてみせるのに……。
その気持ちを圧し殺して、あの男にお嬢様を任せようと思っていた。
彼が、羨ましいとさえ思った。
しかし、彼はお嬢様を裏切り、大きく傷つけた。
帰ろうかとも思ったが、すでに演目は始まってしまった。
帰る機会を失ってしまった私は、不機嫌になりながらも舞台に注目した。
進行役の説明によると、ジャックは今回が初めて自身が主役となる舞台だそうだ。
きっとそのせいで緊張しているのだろう。
彼の顔色は悪かった。
あの様子では、演目も失敗に終わってしまうのではないか……。
そんな彼が、舞台の上に用意された透明のボックスの中に入った。
彼が入った扉には、外側から鍵がかけられた。
これで、彼は透明なボックスの中から出られないというわけだ。
そして、彼が入ったボックスが、突然発生した煙に包まれた。
完全に彼の姿も、ボックスも見えなくなった。
「さあ、皆さん! いよいよですよ! 舞台の上のボックスに注目していてください! 彼がボックスの中に入り、鍵をかけられたことは、皆さん見ていましたね? このボックスは、力自慢の大男が殴っても、銃で撃っても壊れないほど頑丈なものです。しかし、この煙が消えてボックスが現れたとき、皆さんは驚きの光景を目の当たりにすることになるでしょう!!」
進行役の男がそう言うと、離れた客席にいる我々は息を呑んだ。
驚きの光景……、それはいったい……。
あのジャックが主役だというのに、気づけば私はその事を気にもせずに、舞台に注目していた。
しかし、その時会場のどこかで、一発の銃声が鳴り響いた……。
「え……」
突然のことだったので、私は驚いた。
これも、演出の一部なのだろうか……。
そんなことを思っていると、煙が少しずつ晴れて、先ほどジャックが入ったボックスが姿を現した。
そして、私は信じられない状況を目の当たりにするのだった……。
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