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 (※父親視点)

「どうして、こんなことに……」

 私は妻と共に、オリバーのもとへ駆けつけている最中だった。
 どうやら、オリバーが憲兵に逮捕されそうになっているみたいだ。
 噂程度の不確かな情報だが、確かめないわけにはいかなかった。

 どうしてそんな事態になっているんだ?
 いや、理由なんてどうだっていい。
 ただ一つ言えることは、そんなこと、あってはならないということだ。

 オリバーは今や、我が家の要なのだ。
 彼に何かあれば、婚約は白紙となり、当然ながら、金銭的援助も断たれてしまう。

 そうなれば今度こそ、我々はおしまいだ……。

「どうか、何かの間違いであってくれ……」

 私は祈りながら、不安な気持ちを押さえ込むように、彼のもとへと急いだ。
 もし、本当にオリバーが逮捕されそうになっているなら、必ず阻止しなければならない。

 たとえ、どんな手を使ってでも……。

     *

 (※オリバー視点)

「ああ、それはですね……」

 憲兵が説明を始める。
 どうして最初から、イザベルの首に巻かれていたロープが偽装だと気づいていたのか。

「彼女の首に、絞められたあとがなかったなかったからですよ」

「……え?」

 それは、意外な答えだった。
 痕が、なかった?
 そんなはずはない。
 おれは確かに、彼女に首にロープを巻き付け、その首を絞めたのに……。

「あとが長時間残るほど首を絞めるには、かなりの力が必要です。しかし、それは以外と難しい。本当に梁などにロープをつって絞めた場合は別ですが、あなたのようにただ手でロープを巻き付け引っ張ったくらいでは、そんなに簡単にあとはつきませんよ。ついたとしても、すぐに消える程度のものです。それは、無意識のうちに、力を緩めてしまうからです。あなたのように、人を殺したこともないような人間は、特にそうですね。本能的に嫌だと感じるのが普通です」

「そんな……」

 確かに憲兵のいう通り、偽装工作のためとはいえ、人の首をロープで絞めるなんて、気持ちのいいものではなかった。
 しかしそれでも、自分が罪から逃れたい一心でなんとか実行した。
 首を絞めたあとに彼女の首にあとがついているのを確認したが、あれはすぐに消えてしまっていたということか……。

「そして最後にもうひとつ、あなたに伝えることがあります。あなたは、とても大きな勘違いをしています」

「か、勘違いだと!?」

 いったい、なんのことだ?
 心当たりがないだけに、その不安は一層大きくなっていた。

「あなたは勘違いしているようですが、そもそもですね……」

 このあと憲兵は、意外すぎる言葉を口にしたのだった……。
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