37 / 45
37.
しおりを挟む
(※オリバー視点)
「お、おれが偽装工作をした証拠が、まだあるだと!? 出鱈目を言うな! そんなもの、あるはずがない!」
おれの口からでたその言葉は、震えていた。
それは、怒りのせいではなく、恐怖のためだ。
まだなにか、おれを追い込む材料があるというのか?
さっきの踏み台のことは、確かにおれの落ち度だ。
認めたくはないが、浅はかな証言をしてしまった。
もしイザベルがいた部屋が一階だったなら、あるいは踏み台も見えたかもしれない。
しかし、憲兵のいう通り、彼女がいたのは四階だ。
そして、踏み台は膝くらいの高さで、窓がある位置は、底辺が腰くらいの高さだ。
つまり、彼女が踏み台に乗っている姿を、地上から見ることなど絶対に不可能なのだ。
完全に矛盾している。
おれが嘘の証言をしたという証拠には、充分すぎるほどだ。
そして、嘘をついたのは、その証言者が犯人だからだと考えるのは、自然な流れだ。
そのうえ、まだ何か証拠があると言われて、平常心を保つなど、無理な話だ。
おれは完全に動揺していた。
そのことを隠す余裕もないので、目の前にいる憲兵にも悟られているに違いない。
おれは震えながら、彼の次の言葉を待っていた。
「イザベル様が意識を失ったのは、ロープで首を絞められたせいではなく、頭部を激しく打ったせいだと判明しました。血が出ていなかったので最初は気づきませんでしたが、詳しく調べた結果、先程判明しました」
「首を絞められたせいではない……」
そう呟いたおれの声は、震えていた。
つまりそれは、首をつったように見せかけるというおれの偽装工作が、見破られたということだ。
しかし、どうしてわかったんだ?
たとえ頭部にコブなどの痕があったとしても、首にロープが巻かれていたら、普通は自殺と判断するのではないのか?
「はっきりと言いますが、あなたの偽装工作は、お粗末なものでした。彼女の首に巻かれていたロープが偽装だというのは、実は最初から気づいていました」
「さ、最初からだと!?」
おれは憲兵の言葉に驚いた。
どうして、そんなに簡単に見破れたんだ?
「私は偽装工作に気づきましたが、それをしたのが誰かは断定できませんでした。それが、先程の踏み台の件で、偽装工作をしたのがあなただとわかったのです」
相変わらず、冷静な態度で憲兵は説明している。
それに比べて、おれは完全に取り乱していた。
「ど……、どうしてだ!? どうして最初から、ロープが偽装だと気づいたんだ!?」
おれはその疑問を、憲兵にぶつけた。
「ああ、それはですね……」
「お、おれが偽装工作をした証拠が、まだあるだと!? 出鱈目を言うな! そんなもの、あるはずがない!」
おれの口からでたその言葉は、震えていた。
それは、怒りのせいではなく、恐怖のためだ。
まだなにか、おれを追い込む材料があるというのか?
さっきの踏み台のことは、確かにおれの落ち度だ。
認めたくはないが、浅はかな証言をしてしまった。
もしイザベルがいた部屋が一階だったなら、あるいは踏み台も見えたかもしれない。
しかし、憲兵のいう通り、彼女がいたのは四階だ。
そして、踏み台は膝くらいの高さで、窓がある位置は、底辺が腰くらいの高さだ。
つまり、彼女が踏み台に乗っている姿を、地上から見ることなど絶対に不可能なのだ。
完全に矛盾している。
おれが嘘の証言をしたという証拠には、充分すぎるほどだ。
そして、嘘をついたのは、その証言者が犯人だからだと考えるのは、自然な流れだ。
そのうえ、まだ何か証拠があると言われて、平常心を保つなど、無理な話だ。
おれは完全に動揺していた。
そのことを隠す余裕もないので、目の前にいる憲兵にも悟られているに違いない。
おれは震えながら、彼の次の言葉を待っていた。
「イザベル様が意識を失ったのは、ロープで首を絞められたせいではなく、頭部を激しく打ったせいだと判明しました。血が出ていなかったので最初は気づきませんでしたが、詳しく調べた結果、先程判明しました」
「首を絞められたせいではない……」
そう呟いたおれの声は、震えていた。
つまりそれは、首をつったように見せかけるというおれの偽装工作が、見破られたということだ。
しかし、どうしてわかったんだ?
たとえ頭部にコブなどの痕があったとしても、首にロープが巻かれていたら、普通は自殺と判断するのではないのか?
「はっきりと言いますが、あなたの偽装工作は、お粗末なものでした。彼女の首に巻かれていたロープが偽装だというのは、実は最初から気づいていました」
「さ、最初からだと!?」
おれは憲兵の言葉に驚いた。
どうして、そんなに簡単に見破れたんだ?
「私は偽装工作に気づきましたが、それをしたのが誰かは断定できませんでした。それが、先程の踏み台の件で、偽装工作をしたのがあなただとわかったのです」
相変わらず、冷静な態度で憲兵は説明している。
それに比べて、おれは完全に取り乱していた。
「ど……、どうしてだ!? どうして最初から、ロープが偽装だと気づいたんだ!?」
おれはその疑問を、憲兵にぶつけた。
「ああ、それはですね……」
43
お気に入りに追加
2,501
あなたにおすすめの小説
【完結】我儘で何でも欲しがる元病弱な妹の末路。私は王太子殿下と幸せに過ごしていますのでどうぞご勝手に。
白井ライス
恋愛
シャーリー・レインズ子爵令嬢には、1つ下の妹ラウラが居た。
ブラウンの髪と目をしている地味なシャーリーに比べてラウラは金髪に青い目という美しい見た目をしていた。
ラウラは幼少期身体が弱く両親はいつもラウラを優先していた。
それは大人になった今でも変わらなかった。
そのせいかラウラはとんでもなく我儘な女に成長してしまう。
そして、ラウラはとうとうシャーリーの婚約者ジェイク・カールソン子爵令息にまで手を出してしまう。
彼の子を宿してーー
妹に婚約者を奪われ、聖女の座まで譲れと言ってきたので潔く譲る事にしました。〜あなたに聖女が務まるといいですね?〜
雪島 由
恋愛
聖女として国を守ってきたマリア。
だが、突然妹ミアとともに現れた婚約者である第一王子に婚約を破棄され、ミアに聖女の座まで譲れと言われてしまう。
国を頑張って守ってきたことが馬鹿馬鹿しくなったマリアは潔くミアに聖女の座を譲って国を離れることを決意した。
「あ、そういえばミアの魔力量じゃ国を守護するの難しそうだけど……まぁなんとかするよね、きっと」
*この作品はなろうでも連載しています。
パーティー中に婚約破棄された私ですが、実は国王陛下の娘だったようです〜理不尽に婚約破棄した伯爵令息に陛下の雷が落ちました〜
雪島 由
恋愛
生まれた時から家族も帰る場所もお金も何もかもがない環境で生まれたセラは幸運なことにメイドを務めていた伯爵家の息子と婚約を交わしていた。
だが、貴族が集まるパーティーで高らかに宣言されたのは婚約破棄。
平民ごときでは釣り合わないらしい。
笑い者にされ、生まれた環境を馬鹿にされたセラが言い返そうとした時。パーティー会場に聞こえた声は国王陛下のもの。
何故かその声からは怒りが溢れて出ていた。
婚約者の妹が悪口を言いふらしていたために周りからは悪女扱いされ、しまいに婚約破棄されてしまいました。が、その先に幸せはありました。
四季
恋愛
王子エーデルハイムと婚約していたアイリス・メイリニアだが、彼の妹ネイルの策により悪女扱いされてしまって……。
冤罪を受けたため、隣国へ亡命します
しろねこ。
恋愛
「お父様が投獄?!」
呼び出されたレナンとミューズは驚きに顔を真っ青にする。
「冤罪よ。でも事は一刻も争うわ。申し訳ないけど、今すぐ荷づくりをして頂戴。すぐにこの国を出るわ」
突如母から言われたのは生活を一変させる言葉だった。
友人、婚約者、国、屋敷、それまでの生活をすべて捨て、令嬢達は手を差し伸べてくれた隣国へと逃げる。
冤罪を晴らすため、奮闘していく。
同名主人公にて様々な話を書いています。
立場やシチュエーションを変えたりしていますが、他作品とリンクする場所も多々あります。
サブキャラについてはスピンオフ的に書いた話もあったりします。
変わった作風かと思いますが、楽しんで頂けたらと思います。
ハピエンが好きなので、最後は必ずそこに繋げます!
小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿中。
婚約破棄されたので実家へ帰って編み物をしていたのですが……まさかの事件が起こりまして!? ~人生は大きく変わりました~
四季
恋愛
私ニーナは、婚約破棄されたので実家へ帰って編み物をしていたのですが……ある日のこと、まさかの事件が起こりまして!?
婚約破棄をしてくれた王太子殿下、ありがとうございました
hikari
恋愛
オイフィア王国の王太子グラニオン4世に婚約破棄された公爵令嬢アーデルヘイトは王国の聖女の任務も解かれる。
家に戻るも、父であり、オルウェン公爵家当主のカリオンに勘当され家から追い出される。行き場の無い中、豪商に助けられ、聖女として平民の生活を送る。
ざまぁ要素あり。
【完結】私に冷淡な態度を取る婚約者が隠れて必死に「魅了魔法」をかけようとしていたらしいので、かかったフリをしてみました
冬月光輝
恋愛
キャメルン侯爵家の長女シャルロットは政治的な戦略としてラースアクト王国の第二王子ウォルフと婚約したが、ウォルフ王子は政略結婚を嫌ってか婚約者である彼女に冷淡な態度で接し続けた。
家のためにも婚約破棄されるわけにはいかないので、何とか耐えるシャルロット。
しかし、あまりにも冷たく扱われるので婚約者と会うことに半ばうんざりしていた。
ある日のことウォルフが隠れて必死に呪術の類のようなものを使おうとしている姿を偶然見てしまう。
調べてみるとそれは「魅了魔法」というもので、かけられた者が術者に惚れてしまうという効果があるとのことだった。
日頃からの鬱憤が溜まっていたシャルロットはちょっとした復讐も兼ねて面白半分で魔法にかかったフリをする。
すると普段は冷淡だった王子がびっくりするほど優しくなって――。
「君はどうしてこんなに可憐で美しいのかい?」
『いやいや、どうしていきなりそうなるのですか? 正直に言って気味が悪いです(心の声)』
そのあまりの豹変に気持ちが追いつかないシャルロットは取り敢えずちょっとした仕返しをすることにした。
これは、素直になれない王子と令嬢のちょっと面倒なラブコメディ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる