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 (※オリバー視点)

 お父様に拾われてからは、おれは一度も女遊びをしていない。

 まるで生まれ変わったかのように、真面目に過ごしてきた。
 おれがそのようにしていたのには、理由がある。

 それは、お父様のためだ。
 お父様にはベルモント家再建という目標があった。
 そして、おれを拾ってくれたという大きな恩があるお父様の役に立つことを、何よりも優先してきた。
 
 イザベルと婚約してからも、彼女を裏切るような行為はしていない。

 もしそんなことをしていると発覚すれば、婚約は破棄となり、金銭的援助も断たれることになる。 
 そうなればまた、ベルモント家は没落の危機を迎えてしまう。
 そんなこと、お父様は望んでいない。

 お父様が悲しんだり絶望したりするところなんて、おれは見たくない。
 それに、イザベルもきっと悲しむだろう。
 おれは彼女を愛している。
 当然、彼女の悲しむ姿も見たくなんてない。
 
 だからおれは、これまでの自分を改めて、真面目に生きることを決意したのだ。
 しかし、そんな毎日を過ごしているうちに、ある考えが頭をよぎった。

 本当に、このままでいいのか?

 本当は女遊びをしたくてたまらないのだろうと、おれは何度も自問した。
 そして、その答えはイエスだ。
 これが、嘘偽りのない答えだ。
 しかし、お父様やイザベルも悲しませたくないという気持ちも、本物だった。

 だからおれは、二人を裏切るような行為は一切していないのだ。
 二人のことを思えば、なんとか 我慢することができた。

 しかしある日、とんでもない発想をしてしまった。

 これなら、二人を悲しませることもなく、おれも我慢しなくていい。
 もっと早く思い至るべきだった。
 
 要は、二人にバレなければいいのだ。

 これなら、みんな幸せだ。
 誰一人、悲しむことはない。
 我慢してばかりいて、はたして幸せと言えるだろうか?
 一度きりの人生、楽しまなければ損だ。

 ……というような思考の末、おれは屋敷からかなり離れたところにある街に来ていた。

 不安はまったくなかった。
 むしろ、久しぶりの楽しみにワクワクしていた。

 バレさえしなければ、何も問題はないのだ……。
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