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 (※オリバー視点)

 どうやらおれは、幸運の女神に愛されているらしい。

 度重なる今までの強運は、それ以外では説明がつかない。
 
 まず、生まれもったこの優れた容姿が、おれの人生を豊かにしてくれている。
 この容姿のお陰で、女性に誘いを断られたことはないし、逆に女性から誘ってくることも、数えきれないほどあった。

 そして、二つ目の強運は、貴族の生まれだということだ。

 このお陰で、おれは何でも思い通りにできた。
 もしおれが平民だったら、こんなに人生うまくはいかなかっただろう。

 常に複数の女性と関係を持つのは、想像以上に難しいものだ。
 その状況を維持する上では、様々な問題が発生する。
 しかし、貴族の権力と金さえあれば、そんな問題も揉み消すことができた。
 こんな芸当は、平民には到底不可能だ。
 そうやっておれは、自分の思うがままに、好き勝手に生きてきた。

 しかし、順調だった人生で、おれは初めての挫折を味わうことになった。

 両親に見放され、家から追放されたのだ。
 問題を揉み消していた権力や金は、おれのものではなく、両親のものだった。
 おれは彼らに、遊びはほどほどにするようにと、何度も釘を刺されていた。
 しかし、おれはそんなこと、たいした問題ではないと思っていた。

 どんな問題を何度起こしても、権力と金で揉み消すことができる。
 そう思っていたが、どうやら違っていたようだ。
 それらにも、限界があった。
 そして、ついにその限界が訪れ、おれのことを庇いきれなくなった両親から家を追い出された。

 こんな絶望を味わったのは、初めてだった。

 幸運の女神に見放されたのだと思った。
 しかし、神はまだ、おれの味方だった。
 おれに、第三の幸運が訪れてきた。

 なんと、捨てられていたおれのことを、ベルモント家が拾ってくれたのだ。

 これでまた、優れた容姿と、権力と金を持っているという、最高の状態になれた。
 いつまでも味方をしてくれる幸運の女神と、拾ってくれたベルモント家当主には本当に感謝している。
 一度は挫折し、絶望を味わったが、これから始まる第二の人生では、もうあんな思いはしたくない。

 大きな恩があるベルモント家当主、否、お父様のためになら、おれは何でもするつもりだ。
 今までは自分の好き勝手に生きてきたが、お父様の思い通りに動く駒になることも、受け入れるつもりだ。
 迷惑や負担をかけるわけにもいかないので、おれは問題になるような行動を控えるようにした。

 もちろん、、の話なのだが……。

     *

 (※シルビア視点)

 マーガレットがいなくなったことにより、私には平穏が訪れる。

 そのはずだった。
 それがまさか、こんなことになるなんて……。

 いや、なることは必然だったのに、私はマーガレットがいなくなる嬉しさのあまり、見逃してしまっていたのだ……。
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