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 (※父親視点)

 ここまでくるのに、苦労した。

 政略結婚をきっかけに援助を求め、没落寸前の我がベルモント家を立て直す。
 それが、私の唯一とれる策だった。
 しかし、シルビアは牢獄の中なので、縁談なんて到底無理だ。
 そこで私は、ソフィアに頼った。

 しかし、彼女にはあっさりと頼みを断られてしまった。
 この私が、恥を忍んで頭まで下げたのに……。
 プライドを傷つけられ、怒りがわいてきたが、なんとか理性を保った。

 自らの権力や富を失いたくないという思いがあったからだ。

 我がベルモント家を立て直すことが、何よりも優先される。
 ソフィアへの怒りをいつまでも引きずるのは建設的ではない。
 私はなんとか気持ちを切り替え、次の一手を考え始めた。

 そこで思い付いたのが、養子をとるという方法だ。

 跡取りがいないなら、跡取りを用意すればいいだけの話だ。
 年齢的に考えて、今から子供を作ろうとは思わなかった。
 それに、たとえ子供を作ったとしても、そこからが大変だ。

 生まれた子を、ベルモント家次期当主として教育しなければならない。
 それには、莫大な金が必要だった。
 いや、金だけではない。
 子供が成長するまでの時間も必要だ。
 しかし、今の私にはそんなものを待っている時間はない。
 その間に没落してしまえば、元も子もないからだ。

 そして、それは養子に対しても同じことが言えた。

 幼子であれば、成長を待たなければならない。
 だから自ずと、候補の年齢は高くなる。
 しかし、成人近くまで成長している養子候補は、親に見放された札付きの悪など、訳ありが多かった。
 それに、成長を待たなくてよくても、教育する期間がある程度は必要だった。

 どこかに、結婚できる年齢で、なおかつ貴族としての教育を受けた者はいないだろうか……。

 手詰まりになった私は、そんな都合のいいことはあるはずもないと思いながらも、そんな考えが頭をよぎっていた。
 あまりにもバカらしい考えに自分でも苦笑いしたほどだ。


 しかし、奇跡は起きた。
 
 なんと、そんな都合のいい人物がいたのである。
 それが、オリバーだ。
 私には、彼のことが救世主のように見えた。
 神様はまだ、私を見放していなかったのだ。
 きっと、ベルモント家再建のために苦労し、頑張って努力している私を見ていてくださったのに違いない。

 ただ、彼も訳ありと言えば訳ありだった。

 なんでも、女性関係で度々問題を起こし、ついには庇いきれなくなると悟った両親から見放されたらしい。
 確かに彼は、品行方正な人物ではない。
 しかし、裏を返せば彼の欠点は、ベルモント家再建の利点にもなると思えた。

 女性関係で度々問題を起こしたということは、それだけ、女性との関係を築けていたということだ。
 確かに彼は、見た目だけで言えば、かなり上位の部類に属する。

 すぐに女性との関係を築ける彼の力があれば、短期間で貴族の令嬢との婚約までたどり着けるのではないか……。

 突然目の前に現れた一縷の望みに、私はかけてみることにした。
 そうして私は、オリバーを我がベルモント家に迎えたのだった。

 彼には、私の望みを伝えてある。
 彼は、私の望みを叶えるのは簡単だと言った。

「ちょうど、貴族が集まるパーティがあるので、あとはお任せください、お父様」

 オリバーのその言葉を聞いて、私は彼が頼もしく思えた。
 そして、パーティの当日になった。
 あとは、彼に任せておけば大丈夫だと思っていた。

 だから、まさかあんなことになるなんて、このときの私は想像すらしていなかった……。 
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