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(※シルビア視点)
様子見をして問題なかったので、私は退院することができた。
医者からは、しばらくのあいだは、あまり胃に負担のかからないものを食べるように言われた。
洗浄をして毒は全て取り除かれたけれど、念のためにしばらくは負担がかからないように心がけた方がいいらしい。
「シルビア、退院祝いに、どこかに食べに行こう」
お父様がそう提案してくれた。
もちろん、私はその提案を喜んで受け入れた。
早速お店に入り、メニューを見てから料理を注文した。
私は胃に優しそうなものを選んだ。
すると両親も、私に合わせて同じものを注文した。
私だけあっさりしたものを食べている中、両親が分厚い肉などを食べていると、確かに気分は良くなかっただろう。
だから両親は私を気遣ってくれたのだ。
その心遣いは、とても嬉しかった。
しばらく待っていると、料理が運ばれてきた。
私は立ちは早速食べることにした。
いつもよりはあっさりとしているけれど、それでも美味しかった。
病院で食べていたものに比べると、差は歴然だった。
病院食は味が薄くて、どうしてこんな美味しくないものを食べなければいけないのかと思っていたけれど、そのあと食べる料理が美味しく感じるという効果があったので、我慢して食べていたかいがあった。
食べていても、特に苦しいということはなかった。
わずかとはいえ、死ぬ可能性があった毒を摂取したのに、後遺症も残らなくてよかった。
私は、お父様とお母様と話しつつ、料理を堪能していた。
しかし、そんな楽しい時間を邪魔する人物が現れた。
「お久しぶりですね。少し、用があって来ました」
私たちのものに現れたのは、お姉さまだった。
あまりにも突然のことだったので、私は驚いた。
それは、両親も同じだったみたいだ。
「いったい、何の用だ。せっかくの家族の楽しい時間の邪魔をしに来たのか? 目障りだから帰れ」
お父様は鋭い目つきでお姉様を見ながら言った。
さすがに公共の場なので、いつものように殴ったりはしなかった。
「あなたに用はありません。私が用があるのは、シルビア、あなたです」
お姉さまが、私の方を向きながら言った。
「……私? いったい私に、何の用があるのよ?」
私には、全く心当たりがなかった。
「場所を移しませんか? そのほうが、あなたのためです」
「話があるなら、ここで言って。わざわざ場所を移すなんて面倒なことはしないわ」
私はお姉様の提案を断った。
「そうですか……。彼らは騒ぎを大きくしたくないようでしたが、仕方がありませんね」
お姉様はそう言うと、店の外に視線を送った。
そして、こちらに手招きをした。
「え……」
私は突然のことで驚いていた。
なんと、数人の憲兵がお店に入ってきたのだ。
そして、彼らは私たちの席のところまでやってきた。
「シルビアさん、あなたを、逮捕します」
憲兵が告げたその言葉に、私は動揺した。
「どうして、私が逮捕されなくてはいけないのよ!」
私は声を上げた。
動揺して、声が震えてしまった。
「あなたがお店で毒を摂取して倒れたとき、私も偶然その店にいて、その様子を見ていました。最初はジェイソンがあなたに毒を盛ったのだろうと思いましたが、それが間違いだと気づきました」
「な、何を言っているのよ……。毒を盛ったのは、ジェイソンでしょう!? だから彼は、逮捕されたのよ!」
私は必死に動揺を隠そうとしたが、それは無理だった。
いきなりのことで、心の準備が出来ていなかった。
「私はジェイソンが逮捕されたあと知ったのですが、彼は、事前に高級なケーキを注文していたのです」
「え……」
そんなこと、私は知らなかった。
まさか、仲直りをするために、サプライズで用意していたの?
「毒を盛るつもりなら、わざわざそんなものを用意はしませんよね? 食べないと分かっているのなら、お金の無駄使いです。それも、安くはありません。だから私は、毒を盛ったのはジェイソンではないと考えました。すると、毒を盛ることができた人物が、もう一人いることに気づきました。それは、シルビア、あなた自身です」
「そ、そんなの、ただの憶測でしょう!? その可能性は確かに少しはあるかもしれないけれど、証拠なんてないわ! 私に今までひどい目に合わされてきたから、仕返しのつもりでこんなことをしているのね!?」
私は声を上げた。
目には、いつの間にか涙が溜まっていた。
「仕返しのつもりなんてありません。私はただ、無実の罪で囚われたジェイソンが哀れだと思っただけです。それと、証拠がないなんてことはありませんよ?」
「……え?」
もう一人、憲兵がやってきた。
彼は、一人の人物を拘束していた。
それはなんと、私が薬の調合を頼んだ医師だった。
私は驚きのあまり、言葉を失っていた。
「彼が全ては自白してくれました。あなたに協力したことを、認めたのです」
「そんな……」
「お金の動きを調べましたが、あなたから彼に、大金が流れています。それと彼の証言があるので、証拠としては充分です」
お姉様の言葉を聞いて、私は震えていた。
まさか、バレるなんて思っていなかった。
あれだけの大金を渡したのに……。
証言すれば、自分だって逮捕されるのに……。
「う、嘘だと言ってくれ……」
「シルビア、これはなにかの間違いよね?」
両親が、私の方を見ていた。
しかし私は、何も言葉を返すことができなかった。
「あなたを逮捕します」
憲兵の一人が、私に近づいてきた。
そして、私に手に、手錠をかけた。
「どうして喋ったのよ! あれだけ大金を渡したのに! あとは仕事をしなくても、優雅な生活が遅れたでしょう!?」
私は医師に怒鳴り声を上げた。
彼さえ喋らなければ、こんなことにはならなかったのに……。
「も、申し訳ありません、お嬢様。最初は大金を見て喜んで協力したのですが、段々と罪の重さに耐えられなくなって……」
「この役たたず!」
私の怒鳴り声が、店内に響き渡った。
周りの者たちは、眉をひそめながら私の方を見ている。
まさかこんなことになるなんて、思わなかった。
「離して! 逮捕なんて、嫌よ!」
私は暴れていたが、拘束されてうまく身動きが取れない。
逃げることは不可能だった。
お姉さまと視線がぶつかる。
お姉様が気づかなかったら、私の計画通りだったのに……。
私は、憲兵に連行されていった。
そしてここから、地獄のような日々が始まるのだった……。
様子見をして問題なかったので、私は退院することができた。
医者からは、しばらくのあいだは、あまり胃に負担のかからないものを食べるように言われた。
洗浄をして毒は全て取り除かれたけれど、念のためにしばらくは負担がかからないように心がけた方がいいらしい。
「シルビア、退院祝いに、どこかに食べに行こう」
お父様がそう提案してくれた。
もちろん、私はその提案を喜んで受け入れた。
早速お店に入り、メニューを見てから料理を注文した。
私は胃に優しそうなものを選んだ。
すると両親も、私に合わせて同じものを注文した。
私だけあっさりしたものを食べている中、両親が分厚い肉などを食べていると、確かに気分は良くなかっただろう。
だから両親は私を気遣ってくれたのだ。
その心遣いは、とても嬉しかった。
しばらく待っていると、料理が運ばれてきた。
私は立ちは早速食べることにした。
いつもよりはあっさりとしているけれど、それでも美味しかった。
病院で食べていたものに比べると、差は歴然だった。
病院食は味が薄くて、どうしてこんな美味しくないものを食べなければいけないのかと思っていたけれど、そのあと食べる料理が美味しく感じるという効果があったので、我慢して食べていたかいがあった。
食べていても、特に苦しいということはなかった。
わずかとはいえ、死ぬ可能性があった毒を摂取したのに、後遺症も残らなくてよかった。
私は、お父様とお母様と話しつつ、料理を堪能していた。
しかし、そんな楽しい時間を邪魔する人物が現れた。
「お久しぶりですね。少し、用があって来ました」
私たちのものに現れたのは、お姉さまだった。
あまりにも突然のことだったので、私は驚いた。
それは、両親も同じだったみたいだ。
「いったい、何の用だ。せっかくの家族の楽しい時間の邪魔をしに来たのか? 目障りだから帰れ」
お父様は鋭い目つきでお姉様を見ながら言った。
さすがに公共の場なので、いつものように殴ったりはしなかった。
「あなたに用はありません。私が用があるのは、シルビア、あなたです」
お姉さまが、私の方を向きながら言った。
「……私? いったい私に、何の用があるのよ?」
私には、全く心当たりがなかった。
「場所を移しませんか? そのほうが、あなたのためです」
「話があるなら、ここで言って。わざわざ場所を移すなんて面倒なことはしないわ」
私はお姉様の提案を断った。
「そうですか……。彼らは騒ぎを大きくしたくないようでしたが、仕方がありませんね」
お姉様はそう言うと、店の外に視線を送った。
そして、こちらに手招きをした。
「え……」
私は突然のことで驚いていた。
なんと、数人の憲兵がお店に入ってきたのだ。
そして、彼らは私たちの席のところまでやってきた。
「シルビアさん、あなたを、逮捕します」
憲兵が告げたその言葉に、私は動揺した。
「どうして、私が逮捕されなくてはいけないのよ!」
私は声を上げた。
動揺して、声が震えてしまった。
「あなたがお店で毒を摂取して倒れたとき、私も偶然その店にいて、その様子を見ていました。最初はジェイソンがあなたに毒を盛ったのだろうと思いましたが、それが間違いだと気づきました」
「な、何を言っているのよ……。毒を盛ったのは、ジェイソンでしょう!? だから彼は、逮捕されたのよ!」
私は必死に動揺を隠そうとしたが、それは無理だった。
いきなりのことで、心の準備が出来ていなかった。
「私はジェイソンが逮捕されたあと知ったのですが、彼は、事前に高級なケーキを注文していたのです」
「え……」
そんなこと、私は知らなかった。
まさか、仲直りをするために、サプライズで用意していたの?
「毒を盛るつもりなら、わざわざそんなものを用意はしませんよね? 食べないと分かっているのなら、お金の無駄使いです。それも、安くはありません。だから私は、毒を盛ったのはジェイソンではないと考えました。すると、毒を盛ることができた人物が、もう一人いることに気づきました。それは、シルビア、あなた自身です」
「そ、そんなの、ただの憶測でしょう!? その可能性は確かに少しはあるかもしれないけれど、証拠なんてないわ! 私に今までひどい目に合わされてきたから、仕返しのつもりでこんなことをしているのね!?」
私は声を上げた。
目には、いつの間にか涙が溜まっていた。
「仕返しのつもりなんてありません。私はただ、無実の罪で囚われたジェイソンが哀れだと思っただけです。それと、証拠がないなんてことはありませんよ?」
「……え?」
もう一人、憲兵がやってきた。
彼は、一人の人物を拘束していた。
それはなんと、私が薬の調合を頼んだ医師だった。
私は驚きのあまり、言葉を失っていた。
「彼が全ては自白してくれました。あなたに協力したことを、認めたのです」
「そんな……」
「お金の動きを調べましたが、あなたから彼に、大金が流れています。それと彼の証言があるので、証拠としては充分です」
お姉様の言葉を聞いて、私は震えていた。
まさか、バレるなんて思っていなかった。
あれだけの大金を渡したのに……。
証言すれば、自分だって逮捕されるのに……。
「う、嘘だと言ってくれ……」
「シルビア、これはなにかの間違いよね?」
両親が、私の方を見ていた。
しかし私は、何も言葉を返すことができなかった。
「あなたを逮捕します」
憲兵の一人が、私に近づいてきた。
そして、私に手に、手錠をかけた。
「どうして喋ったのよ! あれだけ大金を渡したのに! あとは仕事をしなくても、優雅な生活が遅れたでしょう!?」
私は医師に怒鳴り声を上げた。
彼さえ喋らなければ、こんなことにはならなかったのに……。
「も、申し訳ありません、お嬢様。最初は大金を見て喜んで協力したのですが、段々と罪の重さに耐えられなくなって……」
「この役たたず!」
私の怒鳴り声が、店内に響き渡った。
周りの者たちは、眉をひそめながら私の方を見ている。
まさかこんなことになるなんて、思わなかった。
「離して! 逮捕なんて、嫌よ!」
私は暴れていたが、拘束されてうまく身動きが取れない。
逃げることは不可能だった。
お姉さまと視線がぶつかる。
お姉様が気づかなかったら、私の計画通りだったのに……。
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