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 (※マーシー視点)

「君は今、なんて言ったんだ?」

 というのが、私の告白に対するエリオット様の返答だった。
 もしかして、聞こえなかったのかしら。
 それとも、こんな大勢の前で告白されて、恥ずかしかったのかしら。
 照れているエリオット様もいいわね。

「では、もう一度言ってあげましょう。私は──」

「君は自分が何を言っているのか、わかっているのかと聞いたんだ!」

 私の言葉は、エリオット様の声でかき消された。
 こんなに怒っているエリオット様は、初めて見た。
 私は驚いて、言葉が出てこなかった。

「君は、僕の妹を傷つけたんだぞ! 大勢の前で、陥れようとしたんだぞ! そんな君と、付き合う? 冗談じゃない! そんなことはお断りだ! 僕が愛しているのは、世界で最も美しい女性、カトリーだけなのだから!」

 講堂内が、異様な静けさに包まれた。

「そんな……」

 私は、振られてしまったの?
 どうして?
 どうして、こんなことになったの?
 
 私はただ、エリオット様に振り向いてもらいたかっただけなのに。
 そのために、邪魔者であるカトリーを排除しようとしただけなのに。
 私のこの一途な思いは、エリオット様には伝わらなかったの?

 まさか、こんなことになるなんて……。

「もう、気は済んだでしょう。別室へ行って、君の処分について話しましょう」

 私は先生に手を引かれて、講堂から連れ出された。
 私が出て行く間、大勢の生徒から、批判の声を浴びせられていた。
 ……こんなの、間違っているわ。
 
 批判の声を浴びせされるのは、私ではなくカトリーのはずだったのに。
 エリオット様から愛していると言われるのは、カトリーではなく私のはずだったのに。
 こんな現実、私は受け入れられない。

 先生に連れられ、応接室に着いた。
 先生と一緒にしばらく待っていると、母がやってきた。

「あなたいったい、何を考えているのよ! 自分が何をしたか、わかっているの!?」

 ビンタと共に浴びせられた母の言葉に、私は何も言うことができなかった。

「まあまあ……、お母さん、少し落ち着いてください」

 先生が母を制止した。
 私はよろめきながら、床から立ち上がった。
 今朝叩かれたのと同じ場所だから、かなりの激痛が走った。
 目からは涙が出てくる。
 それは、痛みのせいだけではなかった。
 エリオット様に振られたことが、受け入れられなかったせいもある。

「ええ、お母さんも来たのでマーシーさんの処遇について話します。彼女は、退学処分とします」

「そんな……、退学?」

 絶望していた私に、さらなる絶望が襲い掛かってきた。
 私はただ、エリオット様に振り向いてもらおうと頑張っただけなのに。
 恋する乙女の行き過ぎた行動として、せめて停学処分くらいだと思っていたのに……。

 退学になったら、私の学園生活はどうなるの?
 いきなり今日で最後だなんて言われても、受け入れられないわ。
 いったい、どうすれば……。
 そうか……、その手があったわ。
 私はまだ、退学にならずに済む方法がある。

 そして退学処分を逃れた暁には、カトリー、あなたにしかるべき報いを受けてもらうわ……。
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