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注目の的となった私は、困惑していた。
いったい、どうして私がマーシーをいじめなければいけないのか。
そんなことをする理由がない。
私はいじめなんてやっていないのに、彼女はどうして、いじめられているなんて言ったのだろう。
考えられる理由が二つある。
まず一つ目。
それは、彼女の頭がおかしくなった場合である。
ありもしない幻覚でも見ているのか、それとも単なる被害妄想なのかは知らないが、要は、彼女の勝手な思い込みである。
まあ、この可能性は、限りなく低いだろう。
そして二つ目の可能性。
こちらが本命である。
マーシーは大勢の前で私を陥れるために、嘘を言っているという可能性。
まあ、十中八九これだろう。
と、そんなことを考えていると、壇上に立っているマーシーが話し始めた。
「見てください、私の頬を! 右手の手のひらの跡が、くっきりと残っています! これは、今日の朝、カトリーに叩かれた時についた痕です! 彼女は、私を陰でいじめてよろこんでいる悪人なんです!」
マーシーの涙の訴えに、全生徒の視線は再び私に集まった。
なるほど、うまいやり方である。
私は彼女を叩いてなんていないけれど、確かに掌の痕が、マーシーの頬にはある。
まあ、自分で思いっきり叩いてつけた痕なのだろう。
しかし、それを証明する方法はない。
周りの人たちは明らかに、私を疑っている視線を向けている。
私はいったい、どうすればいいの……。
私は、弁解の言葉を述べようとした。
しかし、震えて声が出なかった。
周りの人たちに疑いの視線を向けられて、委縮してしまっていたのである。
もう、どうしようもないかもしれない。
そう思っていた時、一人の人物が声をあげたのだった。
*
(※マーシー視点)
まったく、いい気味だわ。
カトリーはうつむいて、何も反論できずにいた。
これで彼女は全生徒に、いじめをしている悪者という印象を与えた。
さらに、これから学校から処分が下されるだろう。
退学になれば申し分ないが、停学処分でも問題はない。
既に彼女には、悪者の烙印が押されているのだから。
停学が明けて学校に来ても、そこに彼女の居場所はない。
当然、エリオット様とハワード様からも嫌われることになるだろう。
あの二人は、彼女に失望したはずである。
すべて、私の計画通り。
これで、エリオット様とハワード様に引っ付いていたお邪魔虫は消える。
私の恋路を邪魔するから、こんなことになったのよ。
私の言う通り、早々に婚約破棄していれば、こんなことにはならなかったのに、馬鹿な女ね。
これであの二人は、私のものよ。
私は、勝利を確信していた。
完全に生徒は、私の言い分を信じている。
しかし、一人の生徒が声をあげた。
それは、私の完璧な策略によってカトリーに失望したはずの、エリオット様だったのである……。
いったい、どうして私がマーシーをいじめなければいけないのか。
そんなことをする理由がない。
私はいじめなんてやっていないのに、彼女はどうして、いじめられているなんて言ったのだろう。
考えられる理由が二つある。
まず一つ目。
それは、彼女の頭がおかしくなった場合である。
ありもしない幻覚でも見ているのか、それとも単なる被害妄想なのかは知らないが、要は、彼女の勝手な思い込みである。
まあ、この可能性は、限りなく低いだろう。
そして二つ目の可能性。
こちらが本命である。
マーシーは大勢の前で私を陥れるために、嘘を言っているという可能性。
まあ、十中八九これだろう。
と、そんなことを考えていると、壇上に立っているマーシーが話し始めた。
「見てください、私の頬を! 右手の手のひらの跡が、くっきりと残っています! これは、今日の朝、カトリーに叩かれた時についた痕です! 彼女は、私を陰でいじめてよろこんでいる悪人なんです!」
マーシーの涙の訴えに、全生徒の視線は再び私に集まった。
なるほど、うまいやり方である。
私は彼女を叩いてなんていないけれど、確かに掌の痕が、マーシーの頬にはある。
まあ、自分で思いっきり叩いてつけた痕なのだろう。
しかし、それを証明する方法はない。
周りの人たちは明らかに、私を疑っている視線を向けている。
私はいったい、どうすればいいの……。
私は、弁解の言葉を述べようとした。
しかし、震えて声が出なかった。
周りの人たちに疑いの視線を向けられて、委縮してしまっていたのである。
もう、どうしようもないかもしれない。
そう思っていた時、一人の人物が声をあげたのだった。
*
(※マーシー視点)
まったく、いい気味だわ。
カトリーはうつむいて、何も反論できずにいた。
これで彼女は全生徒に、いじめをしている悪者という印象を与えた。
さらに、これから学校から処分が下されるだろう。
退学になれば申し分ないが、停学処分でも問題はない。
既に彼女には、悪者の烙印が押されているのだから。
停学が明けて学校に来ても、そこに彼女の居場所はない。
当然、エリオット様とハワード様からも嫌われることになるだろう。
あの二人は、彼女に失望したはずである。
すべて、私の計画通り。
これで、エリオット様とハワード様に引っ付いていたお邪魔虫は消える。
私の恋路を邪魔するから、こんなことになったのよ。
私の言う通り、早々に婚約破棄していれば、こんなことにはならなかったのに、馬鹿な女ね。
これであの二人は、私のものよ。
私は、勝利を確信していた。
完全に生徒は、私の言い分を信じている。
しかし、一人の生徒が声をあげた。
それは、私の完璧な策略によってカトリーに失望したはずの、エリオット様だったのである……。
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