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 (※マーシー視点)

 今日は、あの女とエリオット様が婚約破棄するまでの期日だった。
 しかし、あの女には今日ここへ来るように言っていたのに、現れなかった。
 なるほど、そういう態度に出るわけね。
 それならば、こちらにも考えがあるわ……。

 そうそう、最近嬉しいことがあったのだ。
 それは、エリオット様が私を医務室まで運んでくれたことだ。
 医務室の先生がそう言っていた。
 もしかして、彼は私のことが好きなのかしら……。

 それに、もうひとつ。
 エリオット様と一緒に、ハワード様も私のことを医務室まで運んでくれたそうだ。
 彼ら二人は、この学園でも女子から人気の二人である。
 そんな彼らに医務室まで運んでもらえるなんて、なんて幸せなのだろう。
 気を失っていたことが悔やまれる。
 エリオット様もいいけど、ハワード様も素敵だわ。

 ハワード様とはお話したことがないけど、医務室まで運んでくれたことのお礼を言って、それを機に、お近づきになろうかしら。

 そんなことを思いながら下校していると、数十メートル前を、ハワード様が歩いているのを発見した。
 私は、すぐに彼に駆け寄ろうとした。
 しかし、彼の隣を歩いている女生徒が目に入った。

「はあ!? どうして、あの女がハワード様と並んで一緒に帰っているの? どこまで私の恋路を邪魔するのよ!」

 ハワード様の隣を楽しそうに歩いているカトリーに、私は怒りの視線を向けていた。

     *

「あの、本当に、お家にお邪魔してもいいんですか?」

「ええ、もちろんです。妹もカトリーさんに会いたがっています。あなたのことを、心配していましたよ」

 あぁ、同じマーシーの被害者として心配してくれているのか。
 なんとお優しい……。
 ハワードの家に到着した。
 立派な屋敷である。
 私はハワードについて行き、彼の部屋に入った。
 数分すると、彼の妹もやってきた。

「あなたがカトリーね。私はシンシアよ。よろしくね」

「あ、どうも、こちらこそ、よろしくお願いします」

「マーシーに虐められているんでしょう? あなたも大変よね。あの人、自分のことしか考えてないから、質が悪いのよね」

「そうなんですよね。こちらの話は全く聞いてくれませんし……」

「マーシーは私が所属しているクラブの先輩なんだけど、そのクラブの男子に私が色目を使っているとか、そんな難癖をつけてきて、もう、最悪だった。クラブもやめちゃったわ」

「そうなんですか。それは、大変でしたね。どうにか、彼女の横暴を防ぐことはできないでしょうか」

「まあ、マーシーは馬鹿だけど、人目につくようなところでは手を出してこないからね。先生たちにはバレないのよ。彼女が墓穴を掘ってくれればいいんだけれど……」

「そうなんですよねぇ。そんな機会が訪れたらいいのですけれど……」

 あるはずもないと思いながらも、私は思わず呟いていた。

 しかし、意外にも、その機会はすぐに訪れることになるのだった……。
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