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番外4(アリシアの回想)
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それから、ステフとは遊ぶことが多くなった。
理由は、ステフが家によく来るから。
そう、あの日もステフが遊びに来た日だった。
雨が降った翌日で、雲はどこかへ消え去り、晴天だった。
窓から差し込む陽の光に眩しい思いをしながら、クリスのスカートにぎゅっと掴まり、立つ練習をしていた。
「…うぅ…」
「お姉さま、その調子です。」
クリスはそんな私を優しく支えてくれている。
だけど、だんだんと辛くなってきて、座りたいなと思い始めた頃…。
「ごきげんよう!あそびにきましたわ!」
元気に声を出しながらステフがやってきた。
その後は、仲良くお菓子の時間になった。
いつも通りそこで終わるかと思ったけれど、
誰が言い出したのか…外でお茶をする流れになった。
クリスに抱き上げられ、お庭の一角へ移動する。
移動中、ずっとステフが自分の護衛のことをすごく褒めていたのが印象に残っている。
なぜ、あの時移動したお庭の一角が、森との境目だったのか…覚えていない。
ただ、クリスに向かって飛んできた矢を、代わりに受けたのだけはよく覚えている。
クリスに怪我が無くて良かった。
矢の衝撃で地面に仰向けになった時、クリスの泣きそうな顔に少し、謝らないと…って思ったんだ。
「…リス…ごめ…」
「いや、いやいや!お姉さま、お姉さま!」
目が覚めると、私はベッドの上で、クリスが隣にいた。
やっぱり、上手く声が出ないけど、痛いところは無いし、きっとまたすぐに良くなる。
だから、大丈夫。
泣かないで…私はここにいるよ。
もう、危ないことはしないから。
でも、君が傷つきそうな時は、また私が庇ってしまうだろう。
あの時も、これからも、身体が勝手に動いてしまうから。
だから、どうか、君も怪我をしないで。
危ないところにいかないで。
私と君は、二人で一つなんだから。
それから、気がつけば、私は随分と大きくなった。
クリスはよく、私の頭を膝に乗せてくれるようになった。膝枕というやつだ。
柔らかくて、あったかくて、きもちいい…。
思わず眠たくなって、欠伸が出てしまうのは仕方のないことだと思う。
「ふふ、お姉様。お休みになっても良いですよ?」
「…ん………おやすみ…」
「はい。お休みなさいませ。」
意識が途切れ途切れになって、周りの音が聞こえたり消えたり、そんなふわふわとした状態が日常で、時々、クリスが食事だと教えてくれて、たまにステフが会いに来てくれる。
そういえば、クリスが言っていた。
そろそろ入学式が有るって。
入学式はよくわからないけれど、クリスはとても張り切っていたから、きっと良いことなのだろう。
どこへ行こうと、私はクリスと一緒だ。
だけど、やっぱり想いはなかなか叶わないものだ。
発端はそう……確か…あの男が教室に会いにきたことだったと思う。
理由は、ステフが家によく来るから。
そう、あの日もステフが遊びに来た日だった。
雨が降った翌日で、雲はどこかへ消え去り、晴天だった。
窓から差し込む陽の光に眩しい思いをしながら、クリスのスカートにぎゅっと掴まり、立つ練習をしていた。
「…うぅ…」
「お姉さま、その調子です。」
クリスはそんな私を優しく支えてくれている。
だけど、だんだんと辛くなってきて、座りたいなと思い始めた頃…。
「ごきげんよう!あそびにきましたわ!」
元気に声を出しながらステフがやってきた。
その後は、仲良くお菓子の時間になった。
いつも通りそこで終わるかと思ったけれど、
誰が言い出したのか…外でお茶をする流れになった。
クリスに抱き上げられ、お庭の一角へ移動する。
移動中、ずっとステフが自分の護衛のことをすごく褒めていたのが印象に残っている。
なぜ、あの時移動したお庭の一角が、森との境目だったのか…覚えていない。
ただ、クリスに向かって飛んできた矢を、代わりに受けたのだけはよく覚えている。
クリスに怪我が無くて良かった。
矢の衝撃で地面に仰向けになった時、クリスの泣きそうな顔に少し、謝らないと…って思ったんだ。
「…リス…ごめ…」
「いや、いやいや!お姉さま、お姉さま!」
目が覚めると、私はベッドの上で、クリスが隣にいた。
やっぱり、上手く声が出ないけど、痛いところは無いし、きっとまたすぐに良くなる。
だから、大丈夫。
泣かないで…私はここにいるよ。
もう、危ないことはしないから。
でも、君が傷つきそうな時は、また私が庇ってしまうだろう。
あの時も、これからも、身体が勝手に動いてしまうから。
だから、どうか、君も怪我をしないで。
危ないところにいかないで。
私と君は、二人で一つなんだから。
それから、気がつけば、私は随分と大きくなった。
クリスはよく、私の頭を膝に乗せてくれるようになった。膝枕というやつだ。
柔らかくて、あったかくて、きもちいい…。
思わず眠たくなって、欠伸が出てしまうのは仕方のないことだと思う。
「ふふ、お姉様。お休みになっても良いですよ?」
「…ん………おやすみ…」
「はい。お休みなさいませ。」
意識が途切れ途切れになって、周りの音が聞こえたり消えたり、そんなふわふわとした状態が日常で、時々、クリスが食事だと教えてくれて、たまにステフが会いに来てくれる。
そういえば、クリスが言っていた。
そろそろ入学式が有るって。
入学式はよくわからないけれど、クリスはとても張り切っていたから、きっと良いことなのだろう。
どこへ行こうと、私はクリスと一緒だ。
だけど、やっぱり想いはなかなか叶わないものだ。
発端はそう……確か…あの男が教室に会いにきたことだったと思う。
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