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王立魔法学園……我らがデリーノ王国が運営する全寮制の学園。
14歳の男女で、検査にて一定量以上の魔力を保有する者が入学できる。
そして、入学した者は14歳から17歳の計4年間を、この学園で過ごすのだ。

デリーノ王国は北にわたくし達吸血鬼、南に人間が分布しており、学園には両種族が入り混じっている。

一応、種族別の科目もあるが、殆どが種族問わず受けることができる科目だ。

しかし、剣術などの運動科目は、より力の強い吸血鬼の方が有利だったりする。




やはり、人間と吸血鬼の格差というのは、今なお王国内で、こびりついている長年の問題点であると言えよう。もちろん、吸血鬼が優位だ。

しかも、人間が住む南方領土は、後から併合されたものだという歴史があり、そのことも無関係ではあるまい。


学園は、そんな王国の縮図のようなもの。
学園内でも、見下す吸血鬼と、それが気に食わない人間という構図が出来上がっている。





そもそも、入学式の時点で、吸血鬼と人間の座る席が綺麗に二分割されているのだから、学園側は対策する気がないのでは無いかと思ってしまう。





………なんでこんな真面目なことを考えてるんだろうわたくしは…。




ああ、そうだ。想像通りのギスギスした式場である講堂で、隣の姉妹が空気をぶち壊したからだった。




きっかけは少し遡る。














「お姉様、あれが学園ですわ!」


「…おっきいね。」


「そういえば、今年は何人くらい入るのです?」


「えーっと…確か1000人と少し?だったかしら。」


「それは多いのですか?」


「まあ例年通りといったところでしょう。あ、ちなみに今年はわたくし達が多いですわ。」


「なるほど、なら…少し彼らは肩身が狭いでしょうね。」


「不憫でなりませんわ。」


「ねぇ、いかないの?」


「そうですわね!いつまでも門の前で話しているわけにはまいりませんわ。」


…正直、この時はお姉様のことしか視界に入らなかったので気がつかなかった。

…そう。そもそも女の子が女の子を抱き上げて歩いているのは異常。そしてその両者とも学園の制服を着ている。



気がついたのは、講堂に入った途端、新入生全員がこちらを見てギョッとした時だった。



…扇を広げて渇いた笑いを誤魔化すくらいしかできませんでした。



でも、その状況で、お姉様が「おぉ!」と感嘆していたので悔いは無い。


その後は、ヒソヒソとどこからでもフランチェス姉妹のことを囁く声が絶えなかった。まあ、その殆どが、「あの方は誰かしら?」程度のものだったが。



そこから、わたくしは冒頭の様に真面目なことを考え続けることになったのですわ。








「新入生代表、ステファニー・アードラー。壇上へどうぞ。」



現実逃避していると、わたくしの名前が呼ばれる。

あ、挨拶か。


「はい。」


軽く声を上げて、立ち上がる。

これでも公爵令嬢。人前なんて慣れている。メイドと何度も練習した歩き方で、優雅に壇上へ上がる。




「本日はこの様に立派な式を開いて頂き、感謝致しますわ。わたくし達は今日、この日、この王立魔法学園へ入学致します。これから4年間、種族問わず、切磋琢磨し、また沢山の友人を作り、皆で愛で…コホン。卒業できるよう努力してまいります。どうか、先生方や先輩の方々、よろしくお願い致しますわ!」


一瞬お姉様の方に意識がいってしまい危なかったですわぁ。でもやはり、お姉様を愛で隊は結成すべきだと思うのです。ふふふ。



その後、事前に知らされていたクラスに分かれて、自己紹介などが行われる。


ああ、もちろんわたくし達3人は同じクラスですわよ?

基本的に、初めのクラスは爵位とちょっとした成績のみで振り分けられますから。



なので、わたくし達のクラスは、高位貴族ばかり。

男子はどうでも良いですが、女子は猫被りばっかりですわ。ご友人になって下さりそうな方は居るのかしら…。




一物の不安を覚えながら、わたくし達は教室に到着した。
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