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番外編 元妻とストーカーの馴れ初め。
第二王子と書いて奇行種と読む
しおりを挟む「ご機嫌麗しゅう、兄上。」
何がご機嫌麗しゅうだよ、気色の悪い。
「姉上も息災で何よりです。」
ペコリと頭を下げる第二王子に、私顔を顰めるのを堪えて、静かにドレスの裾を掴んだ。
「お会いできて光栄です。結婚式以来でしょうか。」
「はい、あの日の姉上はどの御令嬢が霞んで見えるほどでしたね。」
ぐっと下唇を噛みしめて、先走りそうになる舌を止めた。
お世辞以上のなにものでもない。
なんのようだと私が口を開くよりも先に、王子が私を隠すように立ちはだかった。
「なんのようだ。」
「兄上達が珍しく出かけたと聞いたので、是非僕もお供したいなと思いまして。」
「夫婦水入らずにか?無粋だな。」
鼻で笑い飛ばす王子に、第二王子は嬉しそうに微笑んで相変わらずだなと呟いた。
「冗談ですよ。僕も長居するつもりはありませんから。」
見え透いた嘘に私は小さく疑念を抱く。
私が一歩王子の前に出れば、それを遮るように大きな手が私の肩を掴んだ。
「悪いが、妻は身体が弱くてな。」
「……そうですか、では姉上またお茶でもしましょうね。」
私が返事するより先に、王子は掴んだ肩を引き寄せると踵を返した。
肩越しにチラリと、置いてきぼりの第二王子を盗み見る。
ギラリと強い眼差しが私を刺して、静かに心を震わせながら前を向いた。
長居する気はないと言っていたが、まさか玉璽絡みだろうか……。
可能性はないことはないが、態々第二王子が出向くだろうか……。
いや、リスクが大きすぎる。
ではなぜ、あの奇行者はここまできたのか……。
うーんと、俯き気味に頭を悩ませていると、肩の手に力が込められた。
あまりの力に身体を硬くすると、頭上で機嫌の悪そうな顔が私を見下ろす。
「何考えてんだ。」
「……今日の晩御飯のこと?」
「ちっ、どうだかな。」
?何を怒ることがあるのか。
ぎろりと私を見下ろすと、長い金色の髪に指を通した。
「あれは何を考えてるか分からん。」
「実の弟でしょう?」
「腹の底が見えん。良くない噂も聞く。」
「良くない噂?」
度々城下に出ては、良からぬ輩と連んでいるらしい。
そう言った王子は、ジトリとこちらを用心しろよと前を向き直した。
いえ王子、用心すべきはあなたです。
そう心の中で思いながら、私はため息をついた。
どうか、私が無事明日を迎えられます様に……。
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