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番外編 元妻とストーカーの馴れ初め。

女と書いて、不信と読む

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 夜、女は昨日の一件があったからか、まるで見せつけるように、椅子に腰掛けて俺に微笑んだ。
 今日は送れませんでしたわと言いたげな目に、一瞥をくれてから料理を口に運ぶ。

 昨日から野菜多めのスープや、鳥や豚の肉も増えた。
 今まではこれ見よがしに肉肉肉だったが、やっとあの料理長は仕事をする気になったらしい。
 
 戦場時代は、こう言ったまともな食事にありつけることもなかった。
 正直、ここで出される食事を些末だと思うことはない。
 まぁ、しかし嫁に来たのは一応どこぞのお嬢だ。
 王妃としても、そこは配慮しているのかも知れん。

 あの性悪がと、内心笑い飛ばしてスープを啜った。
 それよりも会話なく食事を食べ進める女は、いったいいつ王妃に連絡をとっているのか。
 俺が調べた限り、この女が王妃に手紙を送った形跡も、誰かを送った形跡も、まして自ら出向いた片鱗すらない。
 召使に尋ねても、一日中本を読んでいるか、庭園を見ているの二つだった。

 気味悪いほどの大人しさに、団員のババロやビーも顔をしかめていた。
 きっと何かあると、二人に色々調べさせたが、それも空回りに終わる。
 そもそも、この女が公式の場に出た記録も、友人もいなかった。
 ますます眉を寄せて、俺が見張りますと手を挙げたのはビーだった。

 ちょうど、もう時期伝統の竜狩りの儀式がある。
 長年この国の森に住みついている龍、この季節になると食い物を求めて、町の近くまでやってくるのだ。
 それを毎年狩ろうとして、追い払うに留まっている。
 そろそろ狩らなければ、国民に顔が立たない。
 そのため騎士団や近衛隊が、一挙に駆り出されるのだ。

 俺の不在の間、ビーにこの女を監視させる。
 きっと何か、動きがあるはずだ。
 女は黙々と料理を食べ進めていて、俺のことなど眼中にない。
 

「明後日から、しばらく留守にする。俺の代わりに団員の男が来る。」


 俺の言葉にうんともすんとも言わない女は、黙って俺をまっすぐ見ている。
 新婚早々、家を開ける俺を咎めているのかと睨み返せば、何がおかしいのかクスクス笑って、置いてあったワインに口をつけた。


「そんなに心配しなくても、いい子にしていますよ。」


 ご馳走様と呟いて、自分の食べた分の食器を纏めると、それを持って部屋を出て行った。
 疑われることに不信感を見せると思ったが、予想外の反応に俺は呆気に取られる。
 どうやら、なかなか骨のある女のようだと、俺は口の端をあげた。
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