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ストーカーの弟
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レイはきっと、ハロルドに直接抗議に行くつもりなのだろう。
私もできるならそうしたい。
よくも私を騙して、こんな危ない場所におびき寄せてくれたわねと。
だが、うだうだ言ったところで始まらない。
もとより、不安な手紙を送ってきたのはハロルドとは言え、私の意思でこの場に来たのだ。
それに、もうすでに引けぬところまで顔は突っ込んである。
眺めていた花に、同意を求めるように溜め息を吐いた。
「ただいま戻りました。」
そう言って温室の入り口から入ってきたハジメは、いつものムスッとした顔のまま私のそばに歩み寄る。
ハジメは宰相の取調べへの立ち合い、アダムは大公たちと伯父様逮捕へ、ビャクは最後の診察へと出ていた。
「どうやら宰相の掴んだ情報では、ルイール卿はこの領地で何か探し物をしているようです。」
「私ではなくて?」
もちろんあなたにも接触するつもりのようですと、答えたハジメ。
長年の経験曰く、宰相は何かまだ隠していると推察ハジメは、強ちハズレていないだろう。
探し物、かつて母もそう言っては自宅の地下に行って何やら探してた。
その時母が持って出てきた、金の棒の輝きを私は今も覚えている。
「私の実家には地下があってね、レンガ造りだったんだけど、いくつかのレンガの奥には母が隠した宝物が沢山あったわ。」
「お宝とは?」
「文字通り金銀財宝よ。母が王妃様から賜った宝飾品やら宝石。きっと父には言えなかったからでしょうね。」
父は没落しかけの男爵だったが、外面は名誉や誇りにうるさい人だった。
内面はとても優しい人だったから、最後は母のことを見捨てられず一緒に逃げたのだろう。
今更亡くなった人のことをどうこう言うつもりはないが、もっとやり方はあっただろうに。
私が別の思考に走る中、ハジメは黙って私を見ている。
「ルイール卿が探しているのは、きっとそれでしょうね。」
「売って軍資金にでもするつもりでしょうか。」
「お金には困ってないんじゃない?」
調べた限り、何人か腕の立つ人間を雇っている。
つまり金には困っていない。
誰かの援助があるはずだ。
そんな人間一人しかいない。
「皇帝の伯父、シュバイン伯爵。王妃の兄ではあるものの、反逆罪から唯一逃れた人よ。」
「では、その者が今回の主犯ですか?」
「おそらくね。後ろ盾のないハロルドが、利用するからと生かしておいたみたいだけど。」
足元掬われてたら目も当てられないわ。
まぁ、ハロルドのことだからそんなヘマしてないんでしょうけど。
きっとこれもまた、彼の策略の内だ。
ハロルドは人の心を読むのが得意だ。
私がこれからやる行動も、彼にはお見通しのはず。
私もできるならそうしたい。
よくも私を騙して、こんな危ない場所におびき寄せてくれたわねと。
だが、うだうだ言ったところで始まらない。
もとより、不安な手紙を送ってきたのはハロルドとは言え、私の意思でこの場に来たのだ。
それに、もうすでに引けぬところまで顔は突っ込んである。
眺めていた花に、同意を求めるように溜め息を吐いた。
「ただいま戻りました。」
そう言って温室の入り口から入ってきたハジメは、いつものムスッとした顔のまま私のそばに歩み寄る。
ハジメは宰相の取調べへの立ち合い、アダムは大公たちと伯父様逮捕へ、ビャクは最後の診察へと出ていた。
「どうやら宰相の掴んだ情報では、ルイール卿はこの領地で何か探し物をしているようです。」
「私ではなくて?」
もちろんあなたにも接触するつもりのようですと、答えたハジメ。
長年の経験曰く、宰相は何かまだ隠していると推察ハジメは、強ちハズレていないだろう。
探し物、かつて母もそう言っては自宅の地下に行って何やら探してた。
その時母が持って出てきた、金の棒の輝きを私は今も覚えている。
「私の実家には地下があってね、レンガ造りだったんだけど、いくつかのレンガの奥には母が隠した宝物が沢山あったわ。」
「お宝とは?」
「文字通り金銀財宝よ。母が王妃様から賜った宝飾品やら宝石。きっと父には言えなかったからでしょうね。」
父は没落しかけの男爵だったが、外面は名誉や誇りにうるさい人だった。
内面はとても優しい人だったから、最後は母のことを見捨てられず一緒に逃げたのだろう。
今更亡くなった人のことをどうこう言うつもりはないが、もっとやり方はあっただろうに。
私が別の思考に走る中、ハジメは黙って私を見ている。
「ルイール卿が探しているのは、きっとそれでしょうね。」
「売って軍資金にでもするつもりでしょうか。」
「お金には困ってないんじゃない?」
調べた限り、何人か腕の立つ人間を雇っている。
つまり金には困っていない。
誰かの援助があるはずだ。
そんな人間一人しかいない。
「皇帝の伯父、シュバイン伯爵。王妃の兄ではあるものの、反逆罪から唯一逃れた人よ。」
「では、その者が今回の主犯ですか?」
「おそらくね。後ろ盾のないハロルドが、利用するからと生かしておいたみたいだけど。」
足元掬われてたら目も当てられないわ。
まぁ、ハロルドのことだからそんなヘマしてないんでしょうけど。
きっとこれもまた、彼の策略の内だ。
ハロルドは人の心を読むのが得意だ。
私がこれからやる行動も、彼にはお見通しのはず。
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