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ストーカーが公式になりました

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 私の叫びも虚しく、宰相の首めがけて振り下ろされる鋭い剣。
 その鋭さは、一振りで男の首を落としてしまいそうだ。


「やめなさいって!」


 近くの燭台を持って降りかかる剣を食い止めると、大公が驚いたように眉をしかめた。


「こんなとこで何してる。」
「知らないよ!急にあなたの部下が来て、連れてこられたの!」


 ギロリと睨んだ先には、私を連れてきたババロくんが……。


「彼は悪くないからね。」
「そんな格好で連れてこられて何言ってんだ。」
「これは寝巻きにしてるけど、最近アインで発売した部屋着と言うやつよ。」


 楽でいいと、巷で有名なんだからと続けようとして、身体が宙に浮く感じがして口を閉じた。
 いわゆるお姫様抱っこである。


「ちょちょ!何やってるの!」
「宰相、今回の件はこいつに免じて水に流す。これ以降、その話でこの領地に来るな。皇帝にも伝えろ。」


 なぜ私が関係するのと問いかけようとして、大公の最初を見る鋭い眼光にまた口を閉じた。
 相当ご立腹のようだ。
 身長差であまり拝むことのなかった目が、珍しく揺れていた。


「かなり酷いこと言われた?」
「別に、身の程を弁えない発言だったからな。」
「せっかく悪名もなくなってきてるんだから、あまり派手なことしたら台無しだよ。」


 戯けたように言えば、彼もつられてハッと笑った。
 ところで、私を抱っこしたままどこへ向かっているのだろう。
 私がいた頃と、何ら変わりない廊下。
 塗り替えや、季節によって模様替えするのは貴族の嗜みだと聞いていたけれど、この屋敷の物は細部まで変わっていない。
 家具の位置も、絵画や絨毯の柄まで全て同じ。
 少し、気味が悪いぐらいだ。


「もしかして、温室に向かってる?」
「あそこはこの屋敷で一番暖かいだろ。」
「そう言えば、この屋敷は随分寒いね。暖炉は使ってないの?」


 大公領は、夏でも寒さを感じる日が多い。
 だから、暖炉は最も多く使われる。


「この屋敷は仕事と寝る時にしか来ないからな。」
「だから、掃除されてる割に何も変わってないのね。」


 棚や、床にはホコリやチリ一つない。
 きっと、部下の人たちが掃除をしてはいるのだろう。
 大公は住むところに執着しないから、私が色々物の配置を決めていたんだっけ。


「私がいた頃と、ほとんど変わらない。」
「……そうだな。」


 着いたぞと、下されたのは私がかつて一番手をかけていた温室だった。
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