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商会の会計士

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「やっぱり、元王族のお屋敷はすごいもんね。」


 ほとんど修復も必要とせず、安くついた。
 あとは、問題なく王都での商売が軌道に乗れば商会の益々の繁栄が望める。
 グッと拳を作り、意気込むように鼻息を荒くすれば、大公が薄く笑って見下ろしている。


「何よ。」
「いや、ホント貴族の面影のカケラもないなと。」
「いいでしょ、私らしくて。」


 ふんと鼻を鳴らして、マントを翻して歩けば少し裾が宙を舞う。
 すると大公が、今度はなんとも形容しがたい顔で私を見ている。
 言葉を紡ぐのが憚られて、すぐにどこかにいるであろうハジメに声をかけた。


「お疲れ様です。……早かったですね。」
「大公が馬車を出してくれたからね。」
「新商品を先に見せてくれるそうだからな。」


 いつもの悪どい顔付きで笑って見せた大公に、ふっと息を吐いた。
 早速、大公を個室にとハジメに顔を向けると、その本人は眉に皺を寄せている。


「何よ、なんかトラブル?」


 私がそう声を掛ければ、大公は察したのか少し首を傾げて、部屋の隅にあるソファーへと足を伸ばした。
 ……この部屋内の会話くらいなら、全部彼に筒抜けてそうだけれど。


「会計士様が来られて、新店舗の詳細を確認したいと……。」
「マジ?」


 聞いてないんだけど?
 そう続けようとして、ハジメが私の口を手で塞いだ。
 大公に聞かれては不味いと踏んだのか、グイグイと私の腕を引っ張り受付の小部屋に押し込めた。


「あの方、よもや耳まで良いなんてことないですよね?」
「知らないわよ。」


 どうするんですか?と、ハジメは声を荒げて私のことを指差した。


「今はビャクが引き止めてますが、ここに来るのも時間の問題ですよ。」
「面倒ね。鉢合わせるのは予定になかった。」


 あの子は、スラムの店舗を任せていたし、特に王都に興味もないから近寄らないと思っていたけど……。
 どういう風の吹き回しかしら……。
 顎に手を当て、小さく息を吐いた。

 いずれ対面は避けられないとは思っていたが、今このタイミングは都合が悪い。
 支えにする態勢も整っていない中、あの子を表に出すのは非常に面倒が多いのだ。
 何より、ハロルドが気付けば、何がなんでもあの子を取りに来るだろう。
 どうしたものかと、さらに思考を巡らせるため目を閉じる。


「モモラさん。」
「もうちょっと待って、なんとか方法を。」
「もう手遅れです。」


 へ?
 ハジメが、呆れたようにため息を吐いて、やれやれと頭を振った。
 部屋から顔を出して見えるのは、私と同じ黒い髪の少女が大公の隣に座って笑っている光景。
 なにやってんの!?
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