いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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「では、ニック殿はあらゆることを調べ把握していたってことですか?」

ニック殿との鍛錬は一対一だ。
ルグさんやカップの鍛錬内容を見ることはできない。
講堂で砂漠石を使っての極秘鍛錬となる。

セサミナ様の傍に誰かがついているので、同時に鍛錬をするというのは
あり得ないのだが、
本当に個人の為だけの鍛錬なので、
ルグさんの鍛錬内容はわたしには役に立たないし、
取り入れることはよろしくないとのことだ。


ニック殿はわたしがいまだ習得できない2本槍だ。
両腕が伸びたように使いこなす。
わたしも2本槍。
これでお願いしますと言った時は、大笑いされた。
若いな、と。


「問題ですか?」
「いや、いいと思うよ?
ただ、こだわるな。
2本目はいつでも捨てるつもりでやればいい。
相手も油断する。」
「あ!わたし、こういうの出来ます!!」

移動で懐にある短い棒と、槍を交換する技を見せた。

「おお!!いいなそれ!!
こうか?ん?こうだな?」

すぐに習得されてしまった。
しかも浮いる?あ!そうか!!

自分自身もできるよな?
モウ様は浮いていた!え?ちょと待って!!

「ははは!
自分だけができると思うなよ?
自分でできることは相手もできる。自分以上にだ。
俺も浮ける。で、動ける。たぶん、飛べる。
これ、俺も練習中だ。内緒だぞ?」

あああ!!!
後で鍛錬だ!
いまは、槍!!


1本でも不利なのに、2本ではさらに不利。
相手も2本なら益々不利である。



ニック殿は鍛錬中にどんどん話していけというのだ。
話す内容もうわべだけではなく、かなり込み入った話だ。
なので、ニック殿の暗部時代の話を聞いたのだ。

「そんなわけないだろ?
だれかが、どこかを、それも一部分を把握しているだけだ。
お前たちもそうだろ?
ルグが把握していること、お前が把握していること、
スビヤンが把握していること、全て違う。
それをお前だって知らないだろ?
全て把握しているのはセサミナ殿だけだろ?
それもお前たちが報告すべきだと判断したものだけな。
何もかも把握しているものなんていないよ?
もしいてるとするならば、我らが王であってほしいがな。
だが、そんなことはないって、思うだろ?」
「それはそうですね。」
「みながそれぞれ、どこからか自分に必要な話を仕入れているんだよ。」
「自分で調べていたということですよね?」
「それをしているとほかのことができないだろ?
もちろん、自分でしらべるよ?基本は。それ以外でだ。仕入れるんだよ。」
「隠密ですか?」
「ははは!隠密というのは主がいる。雇い主だな。
俺は雇い主になったことはないな。」
「密偵?」
「そうだな、金で買うことはあったな。仕入れの1割もないがな。」
「ではあとは?」
「ん?ほれ、足元がお留守だぞ?」

ぐはっ!!

1本はじかれ、2本目で踏ん張ったが、
足払いされ、崩れると同時に、腹に一撃をもらった。
もっと深く刺されば補給したオダシを吐き出しまうところだ。

「意識せずに飲み食いしながら戦えるんだ、
あとは、おなじように話せるようにな?」
「はい!ありがとうございました!」
「おう!それと、お前は話を仕入れる手立てを作っておけ。集めるんだよ。」
「集める?ですか?」
「そうだ。大体、この鍛練で普通は自分のことを話していくもんだ。
相手のことを聞いてくるものないし、ましてや答えないもんだよ?
なのにお前は俺の暗部時代のことを聞いてきた。
それに答えるか?普通?
俺が耄碌しているわけではないぞ?先に言っとくがな!
俺は酒だ。お前は?お前はお前で考えろ。わかるか?」
「!はい!!」


話しを聞く。
探るために話すのではなく、
疑問に思ったことを素直に聞けばいい。

モウ様もそうだ。
銃のことを最初にわたしに話したから、
セサミナ様にも話すとおっしゃった。
話していなければ、話さない。
それだけ重要な話だった。
かなりお悩みになっての話だった。
わたしの時は?
うれしそうに、どんどん話してくれた。
実演付きで。
わたしが聞いたからだ。
・・・・。
ルタネも同じか?

これも報告だ。

─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘

「お帰りになるのですか?
わかりました。
えっと、なにもお持ちでないそちらのお二方?
あなた方ですよ?壁際にお立ちのお二人様。」

みなが、壁際を見た。
この人数に認識されれば、気配消しもなにもできない。
見えているんだから。

「お気に召したものがなかったのですね?残念です。
どうぞ、これは詫びの品です。
せっかく来ていただいたのに申し訳ないです。
他の皆さまは精算に時間がかかると思いますので、先にお渡しいたします。
どうぞ?
お受け取りください。
なかは、小さいものですがタオルが入っております。
また、機会ありましたらどうぞ、コットワッツ製品を
よろしくお願いいたします。」


今は話をすべきではない。
それぐらいわかるよ。
邪魔なだけだ。
先にお帰り願おう。

入ってきた扉と反対側の扉。
そちらを開いて出るように促す。

何も言わず、黙って受取り出ていった。
懐に忍ばせたかなりおきめの宝石類も戻ったことだろう。

また、ここに潜り込めばいいとでも思ったのだろうな。

できるわけがない。
この部屋から出れるよ?そして、直接外に出る。
正確には外に飛ばされる。
滞在館から外に出るんだ。旧王都の敷地の外。

「さ、次の方は?
こちらの袋に入れましょうか?
そのコートは50リング。3着で150ですね。
後タオルと、ガラス食器。
ああ、ダイヤの飾りと?えっと、、ん?こうだよな?
合計、1200リングです。
で、お買い上げくださった方にこれを。
焼き菓子とタオルです。」



にやりと笑って、リングが入った袋を投げてよこした。
1000リングも入っていないだろう。
すぐに袋を箱にぶちまけ、ゆする。
きちんとそろうようになっている箱だ。
ほら、986だ。


「申し訳ないです。たりません。あと、214リングか、
お手持ちがないようでしたら、その、飾りをお返し願えますか?
財政が苦しいなんてことは口外しませんよ!!」

怒りに打ち震えて、きっちり、214リングを出してきた。
素直に出せばいいのに。

それでも、怒鳴り散らさないのは、懐に入れた小物の方が
多いからだろうな。
情けない。

金がないなんて仮にも貴族、王族、王都に住まうものには
恥さらしもいいところだ。
相手が田舎領国だけならいいが、同じような地位の貴族たちがいる。
こんな話はあっという間に広まるんだ。
集めなくても。

同じような恥はごめんだと、次々に金を掘り投げていく。
慌てて、懐に隠す者たちも。そんなに膨らんだポッケをみたら、
トックス師匠が卒倒するだろう。不格好だもの。
売れたものは、大きめの商品。
主に毛皮だ。
30リングのものを50リングで。
かなり良心的だ。
王都は10倍価格でもいいのに。

あと、残り3人か?

ん?
モウ様の言霊!!

え?どういうこと?


「おい!お前!!!」
「静かに!!!」
「なに!!!無礼だぞ!!」

わめく輩を睨みつけ、声に集中する

「重さ?」

あ!!背筋に寒気が!!

・・・・。

うん。大丈夫だ。
オダシはきちんと飲めた。
あー、びっくりした。

「え?」

目の前に銃が突き付けられていた。

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