いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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835:お断りの手紙

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モウ様が無事とわかって帰るものもいたが、
まだ残っている暇な人たちもいる。
それは、善良だがただ騒ぎたいものたちだ。
これをうまく誘導することが一番良い方法で、
みなで勉強したトックス方式だ。

「ありがたい!さすがタレンテ家!!
うちの3軒隣の爺さんが寝込んでる!
見てやってくれ!」
「こっちが先ですよ!それは下町だろ?
都下の住人が先だ!」
「聞いてなかったのか!都下、下町と言ったじゃないか!」
「そうか!じゃ、近い順にまわってもらおう!」
「そうだ!そうだ!!」

あわててタレンテ家の一行は馬車に乗り込み走り出していった。
それについていく馬車、人。
かなりの見物人がいなくなった。


あとは?

(ドーガー?あの端にいる、こちらをみないで、
早く入れろと騒いでいる奴だ。それを)
(けっこう年配の方ですよ?)
(ここでなにか手柄を持って帰らないと首なんだろな?
武に長けてるような体系ではないし、事務方?
この時期、計算ができる者は何処でも重宝される。
それでもないのだろう。残っているものの中で一番焦っているだろ?
病人を抱えているのか?医家の馬車を睨みつけていた)
(その方を?)
(必死そうだろ?)
(なるほど!)

「そこの方?どうぞ?」
「え?わ、わたし?あ、わ、わかった!」

武人という気配はまったくない。
これが隠されているということなら、かなりの腕だ。



「えーでは、従者募集をしている話を聞いたと?」
「そうだ。」
「それはどちら様から?」
「え?」
「えーとですね。正式に募集している話は出していないんですよ。
で、うちの筆頭がここで話したんですね。
その方たちから?名前は控えています。どなたです?」
「・・・・。」
「その方ではない、その方がはなした誰かかな?」
「そうだ!」
「では、その方のお名前を。」
「・・・・。」
「名前も知らない方が話していたのを聞いて、とりあえず来てくださったとか?」
「そうだ!」
「なるほど!では、お名前と今現在の所属部署。
えー、お仕事はされている?されていない?
採用されてから退職の予定?」

ここ王都で無職というのは少ない。
なぜなら、職がないと都下を出ていかないといけないし、
下町のものはここまで入ってくることはできない。
ここまで来るには誰かしらの保証人、もしくは証明書がいる。


とにかく中に入って様子を見てこいと言われた者たちは、
職探しという名目で来ている。
それを本当に面談という形で己の身分を明かすことはできない。
なぜなら、所属部署をいい、名を明かせば、
コットワッツからの問い合わせに所属部署が答えないといけない。
探りを行かせたものをかばうことはない。
本当に転職希望なら、そんな奴はいらない。
やめていなくても退職扱いだろう。
その連絡が来た時点で切られる。
ルグさんが聞いた11人には丁寧にお断りの手紙を出した。
その院長充てにだ。
わざわざ来ていただいたが申し訳ないが不採用だと。
今後のご活躍お祈りします、というお祈り手紙。
モウ様の故郷は遠まわしな嫌味をいう、それだ。
退職してきましたといってしまえば、採用されない限り
下町落ちか、王都追放だ。

このやり取りの方法は、確保しておこうかと、
モウ様に言われたときに教わった。


「まじめでなくてもいいんよ?
なんだろうか、焦りかな?必死さ?わたしが見るのは。
ここで決めないと後がないとか?
あの3人組、あの街道で襲ってきた人たちね。
襲ってくるまでは必死さがあったんだよ?
つかまってからは安堵してたでしょ?
つかまるのが目的だったから。
ああ、聞いたの?うん。
もっと、どうしてって聞かないといけないよね?
必死さがあって、焦っていて、
どうしてか、それを話せる人かな?今欲しいのは。」


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