いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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749:退職願

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「なにがおかしい?」
「何もかもだよ!お前たちのことを笑ったんだよ!」
「お前は本当に何も知らないんだな!」
「それは自他ともに認めるところだが、どの辺だ?聞いてもいいか?」


どれだろう?
世間知らずはどれがそれに相当するかを知らないから、世間知らずなんだ。
言ってくれないとわからんよ?
ん?お前たち?

「緑の目のくせに!!」


緑の目は隠すことはないというリーズナ先生の考え方に納得したので、
マティス共々なにもしないことにした。
が、護衛の時は面布をしている。公式ユニフォームになっている。
石使いはそのようにするという話が独り歩きしているらしいから。

なので、今は面布をしている。

「緑の目?誰が?」
「お前だ!気付いていたんだろ?俺たちが見ていたことを!」
「あらら。自分で言っちゃうの?なんで、そんなことを白状しちゃうかな。
だとしたら、お前たちは自分の仕事をしていなかったことになるんだぞ?
セサミナ様を侵入者から守ることをしなかったんだから。
ああ、護衛のわたしがいたからっていうなよ?
わたしがいく前だ。
あの侵入者とドーガー、ルグがやり合っていた時だ。」

そのことはセサミンから聞いている。

「悪意がなければ入れないんだろ?だったら、
俺たちがすることなぞないだろ!」
「いや、それは間違いで、対処出来れば入れるっぽいって
さっき言ったよね?」
「入って来た時点でどうにでもなるということは同じなんだろ?」

そういう話は素直に信じちゃうんだね。

「ああ、なるほど。で?
自分たちが行動を起こす必要がないと、様子見していたと?」
「そうだ。」
「ふーん。それをとやかく言う権利があるのはセサミナ様だけだな。
で?話は戻るけど、なんでおかしいの?」

緑の目だということ笑ったわけじゃないよね?

「緑の目は迫害の対象だ!そんな奴と一緒に仕事はできない!」
「迷惑なんだよ!生きているだけで!
お前は異国の人間だから知らないだけだ!」
「だったら、さっき言えばいいだろ?
聞きたいことはなんで笑ったかってことだ。なんで?」
「緑の目が対象以外のことを興味を持つことはない!
緑の目が護衛の仕事なんかできない!いや、しない!
ただ、領主の傍でふんぞり返っているだけだ!
いざとなったら何もせずに殺されるのを見ているだけだ!
マティスなんだろ?対象は!
マティスがマティスでいる世界?嘘つけ!!
それを信じた間抜けさを笑ったんだ!
そんな奴の傍付きになることはないし、鍛錬してもらうこともない!」
「ん?わたしとわたしの話を信じた輩を笑ったということか?
ああ、名は出さなくていい。出せばその時点で不敬罪だ。
斬り捨てるぞ?」
「あははは!だから!そんなことをお前はしない!
なのに、俺たちを排除する?
できるものならしてみろよ!」
「ああ!できもしないこと言ったから笑ったと?」
「「そうだ!!」」
「出ていくことは出ていくのね?」
「そうだ!辞めるなんて言えば、聞こえが悪いだろ?
賢領主様の!だからだまって出て言ってやるんだよ!
金をくれたのは当然だ!出さなきゃこっちから請求したよ!
道中、働いた分をな!
それを向こうから出すなんて!コットワッツ領主の甘さは大陸一だ!」
「なるほど納得だ。
しかし、黙って出ていく方が聞こえが悪い。
どこに行ったと聞かれたら出ていったと言うしな。
ここで離職届?退職願?どっちだ?
なんせ、仕事を辞めると書いていけ。
今後一切、コットワッツとは関わりはないと。
紙とペンはあるから。
つけペンね。
石の契約で署名しろ。
コットワッツにも戻らないんだろ?
そりゃそうだな。間抜けと笑ったんだから。
仕事をやめれば、
次の仕事を探すまでの準備金として金ももらえるんだろ?
わたしが立て替えておくよ。いくらだ?」
「100リングだ!」
「はははは!100か!そこまで出すの?すごいな、コットワッツ!
ほれ、2人で200リングだ。
書いたか?石はこれでいいのかな?」

握りこぶし大の大きさの石を出す。


『この契約は石の契約をもってなされた
不履行はない
なぜなら金輪際関係がないからだ』

「?」
「だってそうだろ?お前たちは敷地外に出ているしな。
さ、戻らないと。」



わたしはそれ以上は何も言わずに館に戻った。
少し離れたところに気配が2つあったが、入ってこれないだろうな。


悪意があるものでもこちらで対処できるのなら入ってこれる


対処できればだ。
したくない、めんどくさい、する価値もないのなら入ってこれない。
当たり前だろ?

悪意がなくてもだ。
外の気配2つは入ってこれない。
相手をする意味がないからだ。
言葉巧みに出ていった2人に話かけるだろう。
そして利用済みになれば、処分するだろうか?
あの2人はここに逃げてくる?
入れないだろうな。

金輪際、コットワッツと関係がないのだから。
石の契約だ。


しかし、緑の目と言うのは問題なのだな。
やはり隠しておいたほうがいいのか?
対象がわかればいいのか?

ルポイド、エデトの奥さんも長寿の研究ということで受け入れていたはずだ。
マティスの緑の目を最初に見たセサミンも対象がわたしと知って安心していた。
ルグとドーガーはわからなかったから警戒、違うな排除しようとしたんだ。

わかればいいのか?
どうやって知らしめる?


のぼりでも作るか?

・・・恥ずかしいな!もう!!



─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘


「姉さん?2人は?」
「うん、辞めるって。緑目と仕事は一緒にしたくないってさ。
これ、退職願?で、退職金?100渡したよ?すごいね、コットワッツは。」
「100!確かに退職すれば次の仕事の準備金として渡してますよ?
それは10リングです!!」
「あ、やっぱり?多いなって思ったけど。ここは王都だ、10倍でいいでしょ?」
「戻ってこないことを承知で200渡したんですよ!」
「だろうね。」
「・・・嫌な仕事をさせました。」
「ん?なんで?護衛の仕事だよ?問題ありは排除するのが。」
「ええ。」
「ん?また不安がってるね?どうした?」
「・・・姉さんは、姉さんですよね?」
「緑の目ってそんなに不安?
マティスが緑目でも対象がわたしだと知って
そんなに不安がらなかったのになんで?」
「マティ兄さんが兄さんであるべき世界を維持しようと無理をしていませんか?
その世界はわたしがコットワッツ領主である世界だ。
わたしの為に無理をさせていませんか?」
「ん?セサミン?あなたはマティスの弟だ。
そしてわたしの弟、わたしたちの家族でもある。
その仕事が領主であろうとリュート弾きであろうと、職業は関係ないよ?
さっきのはあくまで護衛の仕事だ。
仕事してるんだよ?ねーちゃんは?
家族としても排除するけどね、ああいう輩は。
なに?悪の組織の総帥の為に無理してると思ったの?」

黙ってこくんと頷いた。


「あははははは!!
そもそも論だ。わたし、そんなことするような性格?
緑目になっても基本の性格は変わんないと思うよ?
マティスもそうでしょ?
いってなかった?わたしが興味を持たなければここまで関わらなかったけど、
セサミンは可愛い弟で、味方だって。」
「!はい。」
「だから、緑目になろうとそうでなかったとしても何も変わらないよ?
んー、パンツのゴム普及委員会は立ちあげてもいいかな?」
「ふふふふ。そうですね!!」
「さ、月が昇るまで休暇なんだから、セサミンも一緒に遊ぼう?」
「え?遊ぶんですか?」
「そうだよ?4階を案内するよ?」
「あ!うれしい!ん?兄さんは?」
「んー、たぶん、師匠のところに行くんじゃないの?たぶんね。」
「ああ。」
「よし!じゃ、とりあえずお弁当作ってもらおうか!」
「ええ!」





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