いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

文字の大きさ
上 下
748 / 862

748:見送り

しおりを挟む



月が沈んで半分の半分。
感覚的には始業時間前?

それくらいにあの2人はしれっと起きてきた。

軽く食べるものを用意して今日の予定を打合せ。
朝食会議という奴か?


「カップは故郷に戻った。」
「それは、昨日の?
俺たちは完全に寝入っていて知らないんですが、
どうなったんですか?」


気絶させられたってことに疑問を持って質問することもない。

ドーガーたちに気絶させられて、そのまま寝入ったということらしい。
なんでそんな嘘を言うのだろうか?

自分たちが盗み見していたことを気付かれないとでも思っているのか?
こちらの出方を探っているのか?
いや、カップ君のことは知らないか。



なるほど、嘘は言っていないということだな。


「カップを引き抜きと言うより、コットワッツのことが知りたかったようだな。
コットワッツはいいも悪いも注目されている。
聞かれるままに、コットワッツの話と、故郷の話をしたようだ。
里心でもでたのだろうな、結婚もきまったこともあって、
故郷に報告をしに戻った。
早馬を借りたので、滞在中には戻るだろう。」
「それでルグさんが?」
「そうだ。」
「そ、その、セサミナ様が呼寄せたと?」
「ん?そうだ。領主の力の一つだな。
だれでも呼寄せができるということはないぞ?
お互いの信頼関係が重要なのだろうな。」
「スビヤンさんは?」
「ああ。あれはわたしに忠誠を、心からの忠誠心はある。
だが、本人が頑なに拒否しているからな。
ほら、高いところがダメとか、暗闇がダメとかそういうものだろうな。
傍付きだからできる、忠誠心があるからできるということでもない。
口外するなよ?王都も把握はしているが、詳しくは知らんはずだ。
コットワッツ内でも知っているものは傍付きとお前たちだけだからな。」
「カップにも呼寄せができるのですか?」
「ああ、確かに傍付きになったが、今はダメだ。」
「今?」
「そうだ。浮かれすぎてる。それもあるから、故郷に戻ったんだよ。
母君に報告もすれば、落ち着くだろう?」
「「ああ!」」
「ルグに来てもらったからな。
逆に忙しくなる。事務仕事をここでするからな。
お前たちも傍付きがどういったものかよくわかるだろう。」
「「・・・・。」」
「どうした?」
「あの!カップが故郷に戻ったのはいわば、休暇のようなものでしょ?
俺たちもここで休暇が欲しい!」
「コットワッツから出て、野盗と蹴散らして、王都まで来ました。
その褒美としてここで、休暇をください!」
「なるほど。それもそうだな。
ルグもいるしな。護衛もいるからかまわないかな?
モウ?どう思う?」
「いいんじゃないですか?
わたしも休暇が欲しいな。
ドーガーを借りてもいいですか?」
「え?モウ様?何用ですか?」

『ん?胸に手を中て考えろ。
許しはしたが忘れはしないということだ。
分かるな?』

ここは赤い塊の声で威嚇する。

「は、はい!」
「はははは!いいでしょう。マティスは?
なにかあるか?」
「私も休暇が欲しいな。」
 「「え?なんで?」」

マティスがそんなことを言うなんて。
驚きで、セサミンと2人聞き返してしまった。

「ん?愛しい人はドーガーとする用事だろ?
その間、少し料理を仕込んでおきたい。
材料調達もしたいからな。」
「そちらですか。
そうなると皆、休暇ということだな。
が、月が昇る前までだ。それまで自由に。
2人は外に出るのか?だったら、少しリングを渡しておこうか。
ここの物価はコットワッツの10倍だと思えばいい。
臨時手当だ。」

2人に200リングほどだろうか?
袋に入れて渡している。
臨時手当と言うより餞別になるんじゃないのかな?



「何度も言うが、コットワッツの従者として
いろんな誘いがあるかもしれない。
それは自分で判断してほしい。
相談はいつでもいいからな。
そして、コットワッツに少しでも悪意があるものは、この敷地には入れん。
なにかあったら、逃げてこい。
悪意があれば入れないから。」
「ああ、セサミナ様?それちょっと違うようですね。
悪意があってもこちらが対応できれば入れるようです。」

シクロスちゃんが入れたのはそういうことだ。

「ん?では、対応できれば、だれでも入ってくる?」
「そうなりますね。
わたしか、マティスがいれば、ほぼ皆入ってこれるでしょう。
セサミナ様だけだと、力押しの輩は入ってこれないですが、
頭脳戦ではほぼ入ってくるのでは?」
「そうなるのか。」
「油断だけはしないでください。」
「あれ関係は?」
「勝手には来ないですね。来るなら正式にでしょうし、その場合は
わたしたちは何もできません。逆にわたしに用事で、
こっちに直接来ることはないです。
そんなことをすれば、どうなるかあれは理解しているから。」
「わかりました。
なんにせよ、あからさまにお前たちに何かしようということはないだろう。
ここは王都だからな。その辺は問題ない。
が、お前たちが少しでも同意すれば、助けようがない。
言葉巧みに騙そうとするかもしれない。
それだけは気を付けろ。
カップにしたように話がしたい、話を聞きたいというのなら、
ここに連れてこい。それを向こうが嫌がったら、
そんな奴の話を聞く必要はない。
いいな?」
「「・・・はい。」」


2人はリングが入った袋をもらうと、さっそく身支度をして出ていった。
持ってきた荷物を全てを持って。


見送りはしておこうか。


「なんですか?」
「ん?見送りだ。」

2人にそういうと鼻で笑われた。


「不思議か?うちの故郷の風習なんだ。
わたしの一族は、赤い塊と言うのだが、まじないごとに長けているんだ。
3日殺し、望郷の呪い、知ってるだろ?
そういう物騒なものだけでなく、
常に行なっているものなんだよ。挨拶とかな。」
「?それもまじないなんですか?」
「そうだろ?行ってらっしゃいって言う言葉の後には、
気を付けて、無事にお戻りくださいって思って言っている。
それは相手のことを思ってのまじないだ。
だから、出かける人には声をかける。
行ってらっしゃいってな。」
「・・・・。」
「お前たちは言わないよ?だって、戻ってこないだろ?」
「「!」」
「お前たちがコットワッツを見限ったんだ。
それを引き留めることはしない。余計なお世話だろ?
が、セサミナ様は常に逃げ道を作ってくれている。
何かあれば、相談しろ、何かあれば、ここに逃げてこいってな。
領主で、お前たちはまだ、領民だからだ。
だが、わたしは違う。護衛だ。
セサミナ様に降りかかる煩わしいことは事前に排除したい。」



「「あはははははは!!!!!」」



2人は大爆笑だ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】「父に毒殺され母の葬儀までタイムリープしたので、親戚の集まる前で父にやり返してやった」

まほりろ
恋愛
十八歳の私は異母妹に婚約者を奪われ、父と継母に毒殺された。 気がついたら十歳まで時間が巻き戻っていて、母の葬儀の最中だった。 私に毒を飲ませた父と継母が、虫の息の私の耳元で得意げに母を毒殺した経緯を話していたことを思い出した。 母の葬儀が終われば私は屋敷に幽閉され、外部との連絡手段を失ってしまう。 父を断罪できるチャンスは今しかない。 「お父様は悪くないの!  お父様は愛する人と一緒になりたかっただけなの!  だからお父様はお母様に毒をもったの!  お願いお父様を捕まえないで!」 私は声の限りに叫んでいた。 心の奥にほんの少し芽生えた父への殺意とともに。 ※他サイトにも投稿しています。 ※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。 ※「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」 ※タイトル変更しました。 旧タイトル「父に殺されタイムリープしたので『お父様は悪くないの!お父様は愛する人と一緒になりたくてお母様の食事に毒をもっただけなの!』と叫んでみた」

英雄になった夫が妻子と帰還するそうです

白野佑奈
恋愛
初夜もなく戦場へ向かった夫。それから5年。 愛する彼の為に必死に留守を守ってきたけれど、戦場で『英雄』になった彼には、すでに妻子がいて、王命により離婚することに。 好きだからこそ王命に従うしかない。大人しく離縁して、実家の領地で暮らすことになったのに。 今、目の前にいる人は誰なのだろう? ヤンデレ激愛系ヒーローと、周囲に翻弄される流され系ヒロインです。 珍しくもちょっとだけ切ない系を目指してみました(恥) ざまぁが少々キツイので、※がついています。苦手な方はご注意下さい。

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

召喚されたけど要らないと言われたので旅に出ます。探さないでください。

udonlevel2
ファンタジー
修学旅行中に異世界召喚された教師、中園アツシと中園の生徒の姫島カナエと他3名の生徒達。 他の三人には国が欲しがる力があったようだが、中園と姫島のスキルは文字化けして読めなかった。 その為、城を追い出されるように金貨一人50枚を渡され外の世界に放り出されてしまう。 教え子であるカナエを守りながら異世界を生き抜かねばならないが、まずは見た目をこの世界の物に替えて二人は慎重に話し合いをし、冒険者を雇うか、奴隷を買うか悩む。 まずはこの世界を知らねばならないとして、奴隷市場に行き、明日殺処分だった虎獣人のシュウと、妹のナノを購入。 シュウとナノを購入した二人は、国を出て別の国へと移動する事となる。 ★他サイトにも連載中です(カクヨム・なろう・ピクシブ) 中国でコピーされていたので自衛です。 「天安門事件」

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

森だった 確かに自宅近くで犬のお散歩してたのに。。ここ  どこーーーー

ポチ
ファンタジー
何か 私的には好きな場所だけど 安全が確保されてたらの話だよそれは 犬のお散歩してたはずなのに 何故か寝ていた。。おばちゃんはどうすれば良いのか。。 何だか10歳になったっぽいし あらら 初めて書くので拙いですがよろしくお願いします あと、こうだったら良いなー だらけなので、ご都合主義でしかありません。。

悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。

三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。 何度も断罪を回避しようとしたのに! では、こんな国など出ていきます!

異世界に召喚されたけど、聖女じゃないから用はない? それじゃあ、好き勝手させてもらいます!

明衣令央
ファンタジー
 糸井織絵は、ある日、オブルリヒト王国が行った聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界ルリアルークへと飛ばされてしまう。  一緒に召喚された、若く美しい女が聖女――織絵は召喚の儀に巻き込まれた年増の豚女として不遇な扱いを受けたが、元スマホケースのハリネズミのぬいぐるみであるサーチートと共に、オブルリヒト王女ユリアナに保護され、聖女の力を開花させる。  だが、オブルリヒト王国の王子ジュニアスは、追い出した織絵にも聖女の可能性があるとして、織絵を連れ戻しに来た。  そして、異世界転移状態から正式に異世界転生した織絵は、若く美しい姿へと生まれ変わる。  この物語は、聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界転移後、新たに転生した一人の元おばさんの聖女が、相棒の元スマホケースのハリネズミと楽しく無双していく、恋と冒険の物語。 2022.9.7 話が少し進みましたので、内容紹介を変更しました。その都度変更していきます。

処理中です...