いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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戦争が始まる。
確実にだ。
それまでに産業の安定化、及び人材確保。
今だからできること。

モウ様の考えは金を産む。
だからといってそれを自分では行なわない。
行商人としての範囲だ。
セサミナ様だからだ、提案するのは。
セサミナ様もコットワッツの領民の為に行なう。
その一端を担うことができる。
コットワッツ領民になれてよかった。

「うまいですね。」
「ほんとうに。」
「もっとしっかりおなかにいれるなら、おにぎりがいいですよ?
焼きおにぎりとツナにぎり。
これはコム茶かな?はいりますか?」
「「ええ!!」」

そんなに詰め込めないといわれたが、なんとか入れてもらった。
食べながら聞かれるままに話していく。

やはり俺がナソニールにいたことも把握しているな。
そこでは本当に給金が出なかった。
食事もギリギリだった。
そんな話。

「マトグラーサの田舎で、
村ではリンゴの実を取るぐらいしか仕事がなかったんです。
それで、ぼく、隠匿ができるんですよ。
知ってるから引き抜きのお話を持ってきてくれたんですよね?
村にやって来たツイミ殿も、それができるのならと、
仕事を紹介してもらったんですよ。
そのナソニールでツイミ殿も頑張っていたんですけど、
どうにもならなくて。
ワイプ様が尋ねて来た時に、そのまま辞めました。
あとは、ワイプ様のところで。弟、2人はそのまま資産院に。
ぼくは、セサミナ様がお声を掛けてくださって。
そのときのセサミナ様とワイプ様の応酬が面白かったですよ?」
「?どのような?」
「ワイプ様はコットワッツの資産の流れを全て報告するようにっていうし、
セサミナ様は報告以外のもがあるわけがないって。
2人とも笑顔でにらみ合ってました。
ワイプ様に恩もありますし、あれば報告かな?
でも、ぼく、結婚したんですよ!雨の日前の契です!
だから、コットワッツで、セサミナ様の為に
頑張らないとって思ってるんで!
だから、引き抜きっていうのはお受けできませんね!」

だれも何も言っていないのに引き抜きだと決めつけ、
そして己のことばかり話し、あげく断る。

今、俺は間抜けの何者でもないな。

「その、セサミナ殿だ。おかしいと思わないか?」

「え?」

天文院のフーサカが話始める。
マトグラーサ、ラートは黙って聞いておくようだ。


「変動の時期は2年後のはずだった。
なのに、今年起きた。
読み間違えと言われている話は知っているな?
2年後というのは、天文院のフーサカの名において間違いがない!
詳しくは言えないが、視えるんだよ。雨の日の長さも視える。
それが天文院だ。
天秤院に虚実が視えるのと同じだ。
3日、いや、10日ぐらいのずれはあるだろうが、2年はおかしい。」

変動のことは聞いている。
800年周期でそのことを領主は引き継ぐと。
次にコットワッツの砂漠で砂漠石が取れるのは600年後。



─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘

「それ、結構大事おおごとよね。
てか、800年ってやっぱり長い。
引き継ぐ領主の力っていうのは、あと何年後にあるよーってこと?」
「少し違いますね。
800年周期で来る。その日時は天文院が把握しているということ。
問い合わせれば、必ず返答がもらえるということ。
天文院はなんというのでしょうか、
姉さんがいう自然現象を視るところなんですよ。」
「見る?」
「ええ。視るですね。」
「んー。じゃぁさ、月が左右で大きさが違うとか、
色が違うとか知ってるってこと?」
「?なんですそれ?」
「ちがうんよ、よく見ればね。」
「その目に見えるということではなく、なんだろ?読み取る?」
「説明できる?」
「・・・できません。」
「内緒だとか、極秘とかではなく、知らない?疑問にも思わない?」
「はい。」
「うん。じゃ、このことはいいや。
世界は誰かが廻してくれている。
そのことに感謝。
国王、領主もその一端をになっている。
それにはそれぞれの分がある。
必要なければそれでいい。」
「姉さんはおかしいと思うんですね?」
「おもうけど、それ止まりだよ?
故郷でもそういうのがたくさんあった。
で、それを面白おかしく創造の物語にする。
それで満足するんだ。
嘘でも自分の中で納得できるものが有ればそれ以上は欲しない。
大抵はね。
そこから、いや、おかしいって探求していく人もいる。
自分の考えを押し付けていく人もいる。
自分で納得、理解できればいいのにね。
きっと本当は納得できてないんだね。
だから廻りを巻き込む。
廻りもそう考えてる!間違いじゃないって!
ここではそれが王様だ。
王がおっしゃること、間違いはないってね。
いいことだとは思うよ?間違いがなければね。」
「・・・・。」
「おかしい?」
「いえ。そうなのだとは思いますが、
そこ止まりですね。」
「だったらそれでいい。セサミンは領主だ。
領国を、領民の暮らしを豊かにする。
それに反しない限り動けない。」
「動けない?ですか。」
「そう。そう考えればいい。
セサミンがニバーセル王都に従順じゃないのは、
従えば領民に不利益を被るからだ。
だから、会合の出席率もダントツで悪い。
いかんよ?チミ~。
これからはきちんと出るように。
でだ、
ファンファンのことを例えにするとね、
彼は良かれと思って領民の為に動いている。
それを領民も受け入れてる。半分の確率だけど。
彼は決して私利私欲のためではない。
ま、弱冠、娘に弱いところもあったけどね。
それは、家族、父親だ、仕方がないね。
それは領民にも受け入れられている。
なぜか?領主の仕事をしているからだ。
あー、歌声のことをうまく説明しないと。
ラルトルガ領民に嫌われちゃう。
会合の後、ちょっと話しできるようにしてくれる?」
「それはもちろん。
しかし、その考えはすべての領主に当てはまるでしょ?
だったら、ナソニールはああはならない。」
「うふふふふ。
そりゃ、考え方、物事のとらえ方は人それぞれだよ。
領主のわたしが豊かになることが領民の為だって
考えれば、私利私欲に走れるよね?」
「ああ。」
「物は言いよう、捉えようだよね?
セサミンが馬車の中でテール君にいってたでしょ?





-己を領主だと名乗るたびに、いろいろなものが肩にのしかかる。
-だけど、我々は領主です。領国、領民をよりよく豊かにする。
-それが仕事で本能だ。
-そう思えばなんのことはない。
-力が湧いてくるのですよ。





いい言葉だった。
ファンファンも頷いていたでしょ?
あの言葉に何人の領主が頷いただろうか?
テール君は良き先輩の言葉をもらえたね。

だからわたしたちは主の為に動くことができる。
我が主、どうぞそのお心、志のままに。」

その後セサミナ様は姉さん!姉さんとモウ様に抱き付いていた。
もちろん、すぐにマティス様にはがされていたが。

「話が戻るけど、800年周期で訪れる砂漠の変動。
そのことをコットワッツ領主だけが天文院に問い合わせることができる?
ということ?」
「そうです。」
「御父上はしていた?」
「もちろん。次世代に当たるということにこころを痛めていました。
なので、コットワッツ領ではめずらしく子だくさんです。
上の兄2人にも話していたはずですが、
逆に別の産業に従事することに反対はしていなかったはず。
そのおかげで、タオル、ゴムと生産ができています。
しかし、捉え方は違いますね。
どこか、楽観視していたと思います。
そうですね。捉え方が違う。」
「前回の、800年前の様子を描いた記録とかはないの?」
「多少はありますよ?
ただ、砂漠に変動があり砂漠石が取れなくなると。
だからできるだけ確保するのが領主の務めと。」
「それもさ、とーちゃんはどれだけ確保してた?
とーちゃんのとーちゃんは?
皆が問題先送りタイプ?」
「それ、兄さんにも聞かれたのですが、
あの20年分は、わたしが領主になってからですね。
わたしの代で変動が起こるのだから、
極秘に集めることができるのはわたしだけだと。」
「それは、そういう決まり?思い込み?」
「姉さんにそう聞かれれば、思い込みだったと思います。」
「なるほど。上の2人の兄さんズは集めていることは知っている。
見たのか?聞いたのか?思い込まされているか?
あれだけの量と言っていた。情報は駄々洩れだったからね。
ドーガー?」
「おそらくは、わたしからだと思います。」
「見たの?聞いたの?」
「聞きました。セサミナ様から。」
「なんて?」
「集めた石は20年分、と。」
「姉さん?」
「うん。一度このあたりの話をさせてもらってもいい?
わたしが疑問に思っていることを聞いておきたい。」
「ええ。それはいつでも。
姉さんはおかしいと思うのですね?」
「うん、ちょっとね。」
「わたしも兄さんに聞かれておかしいとは思ったのです。
200年の間なにをしていたかということ。
わたしが領主として集めたにしても20年分。
もっと集められたはずなんです。
しかし、聞かれたときは疑問に思いました。
が、他に気が行けば、なにも思わなくなっている。
いままた、姉さんに聞かれて、疑問におもいます。
これ、おそらく、疑問に思っているひと、この場合姉さんと兄さんですね。
そこから聞かれない限り、話は進まない。
あとで、必ず時間を作ってもらえますか?」
「うん、そうしよう。師匠のことと、カップ君の話が終わったらね。
カップ君?天文院が変動の話が出たら、
2年の誤差って常識?って聞いといてくれる?」
「わかりました。」



「けど、やっぱりさ・・・




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