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663:定番
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焦げくさい匂いの中でするガーデンカフェはもはや定番になっている。
ここの敷地は我らが王の物。
その土地を借りているということだ。
月が沈めばそれこそ不敬だが、
火事の後始末に駆り出された人を労ってもいいだろう。
スクレール家は廃家。
資産はほぼすべて息子に。
資産というのは鉱山や土地。
それらを活用できる権利だ。
その使用料が故郷で言うところの不動産屋に入る仕組み。
それが3割。残りは資産院預かりで権利者に。
が、いまは全くと言っていいほど無収入。
着服することはない。
ばれると不動産屋の資産が
一切合切資産院の物になるからだ。
不動産屋もへたなことはしない。
ただ、今回32番地が50年間の長期で売れた形だ。
その代金はそのままスクレール家に。
不動産屋もスクレール家とリーニング家の話は把握している。
スクレール家に渡すほうがリーニング家にいい顔ができるとでも思ったのだろうな。
売れたということをリーニング家に話したのはその不動産屋。
これからはそのような売り出しはできない。
本人の承諾がいるからだ。
ニックさんが交渉したときもトリヘビを飛ばしていたそうな。
なので、現時点での不良物件はみなタンダートにものになるのだが、
いまは行方不明扱い。
はっきりと死亡が確認されるまで召し上げはない。
石の色でわかるそうだ、引継ぎ不可なら。
さすが砂漠石先生だ。
その他の資産はすべてリガーナが資産院に譲渡した。
リーニング家をはじめ、他の貴族、王族に貸付たもの。
スクレール家相手ならほっとけばいいとしていたものが、今度は資産院だ。
きっちり回収される。
月が沈み、スクレール廃家の一報は
少なからず一部のものたちにとっては大騒ぎだろう。
襲ってきた者たちはそのまま拘束。
もちろんリーニング家との関係は出てこなかった。
オート院長の彼女さん、タミナはリガーナの世話をしていたとか。
ハニカもリガーナも元気なのだが、高齢といえば高齢。
師匠が出入りしていたのも彼女の話を聞いたオート君の話からだ。
「もちろん、その前から把握はしていましたよ?
大っぴらに出入りできたのはオート院長の指示があればこそですからね。」
とのこと。
そんな話をしていたら、うわさの彼女さんがやって来た。
火はすぐ消したが、煙はあがる。
心配でやって来たのだろう。
「リガーナ様!オートも!
ご無事でしたか!よかった!!」
おお!かわいい。
あの参戦者たちよりよっぽど気品があるよ。
「タミナ。先に話を。」
スクレール家のリガーナは焼死。
ハニカの奥さんは下町に行く。
「奥様!良かった!ほんとうによかった!」
「タミナ?心配かけたわね。
でも、ね?わたしの言った通りでしょう?ちゃんとうまくいくのよ。
そうだ、夫と息子を紹介させてね。
あら!言葉遣いも気を付けなくてはね。
是非に、タミナ様に紹介させてください。」
「奥様!」
「こういうのはきちんとしないと。
ハニカ!タンダート!
とてもお世話になった方なの。
この方のおかげで、1人でもちっともさみしくなかったのよ。」
「タミナ様。ハニカです。
ぜひ、うちの白馬車にお乗りください。オート様と一緒に。」
「タンダートです。あなたに感謝を。」
エエハナシヤー。
と、そんなにまったりしているわけにもいかない。
タフトに戻ってカリクさんのところでごちそうにならなくては。
「モウ殿!」
「お疲れ様です、オート院長。
あれよね、即座に動かないといけない部署なのね。
ほんと、お疲れ様です。」
「いえ、それが仕事なので。」
「おお!フランはどうしてます?」
「ええ。このまま資産院にいてくれないでしょうか?」
「あー、それはちょっと難しいけど、
本人が望めばですね。」
「本人はもっと他のことをしてみたいと。」
「若いよねー。最終的に落ち着くところが資産院だといいですね。」
「ええ。あの、それで、わたしの妻を紹介させてください。」
「おお!雨の日前に妻!いいですなー。」
「ははは!タミナ!この方が、
ワイプの一番弟子のモウ殿だ。」
「あなたが?」
ん?敵意むき出しなんですけど?
師匠め、うまくわたしのことを説明していないな。
「タミナ?」
「初めまして、モウさん。
いつもオートになにかと差し入れを持ってきてくださってありがとうございます。
オートとは合わさりの月以降に一緒に暮らしますので、
今後一切お気遣い不要です。」
「なるほど。オート院長殿?
どのように説明を?」
「え?え?その、問題ないものはワイプの一番弟子からもらったと。
焼き菓子とかですが。あとのは、、、、」
「師匠!残念ですね。今後一切いらないって。」
「ちょっと!オート院長!何言わせてるんですか!!
モウの差し入れがないと資産院は機能しませんよ?」
「師匠?それはそれで問題ですよ?」
「わたしが動けない。」
「うふふふ。それはダメですね。」
「タ、タミナ。ちょっと!」
「ああ、オート院長?説明は不要ですよ。
今後わたしからはなにもしないほうがいいでしょう。
奥方に甘えてくださいな。」
「あなたに一々言われたくないんですが?
それにあなた、平民ですよね?
ここにいるだけで不敬ですよ?」
「ああ、本当だ。ではわたしたちはこれで。」
「タミナ!」
「オート院長殿?これが普通なんですよ。
お立場を思えば。では。」
「・・・・。」
おお、すごいすごい。睨んでるよ。
「愛しい人?
あなたに殺気を向けているぞ。少し系統が違うが。」
「ね。怖いねー。あれはね、オート君を守るためなんよ。
いや、違うな。自分を守りたいのかな?
あの年齢層には嫌われるのよ。
他人なんだからほっときゃいいのに。
気持ちは分からんでもないけどね。
他人はそこまで自分を意識してないってことにはやく気付くことだね。
ま、どうでもいいけどね。
さ、今日はガイライんとこに泊まらせてもらおうか?
いい?」
「ええ。根回し後戻るつもりでしたが、
この状況、このまま残ります。それと、ルカリの鍛錬相手で。
その後モウと手合わせしてもらえますか?」
「おお!それはまたルカリさんが強くなるね。うん。わかりました。」
「では、先に槍を渡しておこう。
鍛錬するならそれでしてくれ。」
「それは喜びますね。
タンダート。予定が変わった。
混合いはじめに合流しよう。」
「わかった。モウ、さん。
あんたの話は両方とも違っていた。」
「うふふふ。そうみたいね。
ハニカさんが父上だったんだね。
ほんとうにお世話になってるんだ。
あの話、どうする?続ける?
こっちは、別の手も考えれるから。
母様も一緒に下町に住むみたいだし、しばらくは
ここにいたら?」
「いや。予定通りに。」
「そう?」
「混合いはじめに資産院に行く。」
「わかりました。」
「モウ?悪いんですが、わたしもこのままここに。」
「そうだね。
戻るのって、カリクさんちのご飯を食べに行くだけだからね。」
「あ、そのときは呼んでください。」
「なるほど。じゃ、わたしたちもそうする?」
「ああ、ニック殿と、18~20番門は見て来てくれますか?」
「そっか!わたしも見たい。裏街道も。ニックさんいい?」
「もちろんだ。ワイプ!金寄こせ。
これはお前の仕事にも絡んでる。軍資金がいる。」
「はいはい。
リングでなく、これでね。」
謎の袋をもらう。
信用手形?小切手?これを見せれば
資産院にあるお金が自動的に移動するのか?
わからん。
金融システムが。
コットワッツの資金受け取りはコットワッツが資産院に
お金を預けていなかったからだ。
資産院というより、王都に信用無いものね。
「上限ってあるんですか?」
「あなた、どれだけ散財するつもりなんですか?」
「いや、念のため。」
「それなりに有りますよ。」
「だいたい誰の資金なんだ?」
「・・・・わたしですよ。」
「「「よっしゃー!!!」」」
ニックさん、マティス、わたしの雄たけびだ。
「まずはうまい酒を呑みまくろう。
買ってもいいが、そこは遠慮しておくのがやさしさだな。」
「保存のきく食材もあるんじゃないの?
それを。それでやっぱり甘味かな?」
「フレシアのヤツマに聞いたが、
やはりレース布の大判があるという。それがほしいな。」
「ガイライはまたお土産買ってくるよ。
なにがいい?」
「そうですね、トリヘビに関するものがいいですね。」
「そうだね。なにか探してくるよ。」
「ええ。楽しみにしています。」
「ん。」
「よし、早く帰って、月が沈めばすぐに出発だ。」
「「おーーー!!」」
「・・・・ガイライ殿?同行するわけにはいかないんですか?」
「行ったところで止めれんぞ?」
「そうですか。」
ハニカさんたちは下町に抜ける小道に。
後始末に駆り出された者たちは、拘束された自称盗賊と天秤院に。
オート君と彼女さんはまだ話をしているが、師匠に促されて資産院に。
わたしたちも、下町に抜けるふりをしてガイライの館に戻ることとなった。
─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘
ガイライが買ってくれたお野菜たちを引き取り、
朝ごはんを作る。
野菜たっぷりのスープとルカリさんも食べるだろうから、
白おにぎりを大量に。
茎野菜の肉巻きも作っておこう。
マティスはルカリさんに送る槍を仕上げていた。
刃先は消耗品なので、棒のところだけね。
マティスが作るから装飾が素晴らしい。
もちろん、芯材に砂漠石が入っている。
しなるし、折れることもないだろう。
長さは前回のものと同じで、重さは調整できるとか。
「どうやって?」
「手に取るだろ?それで、もう少し軽いほうがいいとか、
重いほうがいいとか考えればそうなる。」
「それは、ルカリさんにどうやって説明するの?」
「そうか。」
「わたしがやったようにしておこう。」
「そうなるね。
でも、ルカリさんの鍛錬?急だね?
なんかあったの?」
「モウ、母さん。その。」
「ん?」
「相談事があるのです。」
「うん。そういうのはいつでもいいんよ?ルカリさん関連なの?
それと鍛錬と関係あるの?」
「なにもかもモウ頼みなのが。
せめて、ニックの鍛練とわたしが指導したルカリを見ていただきたい。」
「ん?よくわかんないけど。
ルカリさんが勝ったら頼みを聞くとかじゃないんでしょ?
できることはするし、できんことは出来んのよ?」
「そうなんですが。」
「いいじゃん、モウちゃんよ。
これは指導者としての力量を計りたいんだよ。
ガイライよ、ちなみに、モウちゃん俺から1本とったぞ? 」
「ああ、やはり。」
「しかも泣いた、2人で。」
「え?」
「あはははは!ルカリの甘さを取り除くことだな。」
「もちろんだ。」
「ん?ルカリさんの鍛錬内容はいいとして、
頼み事は、その後に聞くの?そのほうがいいの? 」
「ええ。」
「ん。急ぎじゃないってことだね。
それなら、終わった後にね。
ルビス君たちの分と師匠たちの分もおにぎり作ったから、
渡してくれる?」
「モウ?オート殿の奥方といっていいのか?
あれはどうしてあなたに敵意を?」
「どうしてって言われると説明は難しいな。
あの人はきっと真面目な人なんだよ。
努力もしてる。でも余裕がないのかな?」
ぱっと見、お気楽マンボな人が嫌いなんだよ。」
「まんぼ?」
「そうそう。これはうまく説明できんよ。
だって、どうでもいいもの。」
「あなたがそう言うのでしたら。」
「でも、忠告はありがたく。
わたしは平民だ。
オート院長殿と気楽にお話しすることも、
王都の館廻りっていうの?
あのあたりをうろついてはいけないと。
気を付けようってことだね。」
「愛しい人?では、資産院に、ワイプに差し入れはしないということだな。」
「資産院にはね。
師匠にはするよ。ツイミ兄弟やソヤがいるからね。
オート君はきちんとわたしとの約束を守ってたんだよ。
入手先は言ってないのね。
でも、簡単なものはワイプ師匠からの一番弟子からだっていってたんでしょ。
それも気に入らないんだろうね。
嫌なんだよ、筋が通らないものは。
なんとなくわかるけどね。」
「わからんな。」
「わかんなくていいよ、だって、好かれたいとはおもったけど、
向こうが嫌いだって拒絶するんならそれまでだ。
万人に好かれることはあり得ない。」
「私はあなたに好かれているだけでいい。」
「もちろん、わたしもだよ。
ただ、2人の廻りの人たちと楽しく生きていきたいだけだ。
誰かに嫌われたって、月は昇るし、生きてるもの。
なんてことはないんだよ。」
「それもそうだ。」
ここの敷地は我らが王の物。
その土地を借りているということだ。
月が沈めばそれこそ不敬だが、
火事の後始末に駆り出された人を労ってもいいだろう。
スクレール家は廃家。
資産はほぼすべて息子に。
資産というのは鉱山や土地。
それらを活用できる権利だ。
その使用料が故郷で言うところの不動産屋に入る仕組み。
それが3割。残りは資産院預かりで権利者に。
が、いまは全くと言っていいほど無収入。
着服することはない。
ばれると不動産屋の資産が
一切合切資産院の物になるからだ。
不動産屋もへたなことはしない。
ただ、今回32番地が50年間の長期で売れた形だ。
その代金はそのままスクレール家に。
不動産屋もスクレール家とリーニング家の話は把握している。
スクレール家に渡すほうがリーニング家にいい顔ができるとでも思ったのだろうな。
売れたということをリーニング家に話したのはその不動産屋。
これからはそのような売り出しはできない。
本人の承諾がいるからだ。
ニックさんが交渉したときもトリヘビを飛ばしていたそうな。
なので、現時点での不良物件はみなタンダートにものになるのだが、
いまは行方不明扱い。
はっきりと死亡が確認されるまで召し上げはない。
石の色でわかるそうだ、引継ぎ不可なら。
さすが砂漠石先生だ。
その他の資産はすべてリガーナが資産院に譲渡した。
リーニング家をはじめ、他の貴族、王族に貸付たもの。
スクレール家相手ならほっとけばいいとしていたものが、今度は資産院だ。
きっちり回収される。
月が沈み、スクレール廃家の一報は
少なからず一部のものたちにとっては大騒ぎだろう。
襲ってきた者たちはそのまま拘束。
もちろんリーニング家との関係は出てこなかった。
オート院長の彼女さん、タミナはリガーナの世話をしていたとか。
ハニカもリガーナも元気なのだが、高齢といえば高齢。
師匠が出入りしていたのも彼女の話を聞いたオート君の話からだ。
「もちろん、その前から把握はしていましたよ?
大っぴらに出入りできたのはオート院長の指示があればこそですからね。」
とのこと。
そんな話をしていたら、うわさの彼女さんがやって来た。
火はすぐ消したが、煙はあがる。
心配でやって来たのだろう。
「リガーナ様!オートも!
ご無事でしたか!よかった!!」
おお!かわいい。
あの参戦者たちよりよっぽど気品があるよ。
「タミナ。先に話を。」
スクレール家のリガーナは焼死。
ハニカの奥さんは下町に行く。
「奥様!良かった!ほんとうによかった!」
「タミナ?心配かけたわね。
でも、ね?わたしの言った通りでしょう?ちゃんとうまくいくのよ。
そうだ、夫と息子を紹介させてね。
あら!言葉遣いも気を付けなくてはね。
是非に、タミナ様に紹介させてください。」
「奥様!」
「こういうのはきちんとしないと。
ハニカ!タンダート!
とてもお世話になった方なの。
この方のおかげで、1人でもちっともさみしくなかったのよ。」
「タミナ様。ハニカです。
ぜひ、うちの白馬車にお乗りください。オート様と一緒に。」
「タンダートです。あなたに感謝を。」
エエハナシヤー。
と、そんなにまったりしているわけにもいかない。
タフトに戻ってカリクさんのところでごちそうにならなくては。
「モウ殿!」
「お疲れ様です、オート院長。
あれよね、即座に動かないといけない部署なのね。
ほんと、お疲れ様です。」
「いえ、それが仕事なので。」
「おお!フランはどうしてます?」
「ええ。このまま資産院にいてくれないでしょうか?」
「あー、それはちょっと難しいけど、
本人が望めばですね。」
「本人はもっと他のことをしてみたいと。」
「若いよねー。最終的に落ち着くところが資産院だといいですね。」
「ええ。あの、それで、わたしの妻を紹介させてください。」
「おお!雨の日前に妻!いいですなー。」
「ははは!タミナ!この方が、
ワイプの一番弟子のモウ殿だ。」
「あなたが?」
ん?敵意むき出しなんですけど?
師匠め、うまくわたしのことを説明していないな。
「タミナ?」
「初めまして、モウさん。
いつもオートになにかと差し入れを持ってきてくださってありがとうございます。
オートとは合わさりの月以降に一緒に暮らしますので、
今後一切お気遣い不要です。」
「なるほど。オート院長殿?
どのように説明を?」
「え?え?その、問題ないものはワイプの一番弟子からもらったと。
焼き菓子とかですが。あとのは、、、、」
「師匠!残念ですね。今後一切いらないって。」
「ちょっと!オート院長!何言わせてるんですか!!
モウの差し入れがないと資産院は機能しませんよ?」
「師匠?それはそれで問題ですよ?」
「わたしが動けない。」
「うふふふ。それはダメですね。」
「タ、タミナ。ちょっと!」
「ああ、オート院長?説明は不要ですよ。
今後わたしからはなにもしないほうがいいでしょう。
奥方に甘えてくださいな。」
「あなたに一々言われたくないんですが?
それにあなた、平民ですよね?
ここにいるだけで不敬ですよ?」
「ああ、本当だ。ではわたしたちはこれで。」
「タミナ!」
「オート院長殿?これが普通なんですよ。
お立場を思えば。では。」
「・・・・。」
おお、すごいすごい。睨んでるよ。
「愛しい人?
あなたに殺気を向けているぞ。少し系統が違うが。」
「ね。怖いねー。あれはね、オート君を守るためなんよ。
いや、違うな。自分を守りたいのかな?
あの年齢層には嫌われるのよ。
他人なんだからほっときゃいいのに。
気持ちは分からんでもないけどね。
他人はそこまで自分を意識してないってことにはやく気付くことだね。
ま、どうでもいいけどね。
さ、今日はガイライんとこに泊まらせてもらおうか?
いい?」
「ええ。根回し後戻るつもりでしたが、
この状況、このまま残ります。それと、ルカリの鍛錬相手で。
その後モウと手合わせしてもらえますか?」
「おお!それはまたルカリさんが強くなるね。うん。わかりました。」
「では、先に槍を渡しておこう。
鍛錬するならそれでしてくれ。」
「それは喜びますね。
タンダート。予定が変わった。
混合いはじめに合流しよう。」
「わかった。モウ、さん。
あんたの話は両方とも違っていた。」
「うふふふ。そうみたいね。
ハニカさんが父上だったんだね。
ほんとうにお世話になってるんだ。
あの話、どうする?続ける?
こっちは、別の手も考えれるから。
母様も一緒に下町に住むみたいだし、しばらくは
ここにいたら?」
「いや。予定通りに。」
「そう?」
「混合いはじめに資産院に行く。」
「わかりました。」
「モウ?悪いんですが、わたしもこのままここに。」
「そうだね。
戻るのって、カリクさんちのご飯を食べに行くだけだからね。」
「あ、そのときは呼んでください。」
「なるほど。じゃ、わたしたちもそうする?」
「ああ、ニック殿と、18~20番門は見て来てくれますか?」
「そっか!わたしも見たい。裏街道も。ニックさんいい?」
「もちろんだ。ワイプ!金寄こせ。
これはお前の仕事にも絡んでる。軍資金がいる。」
「はいはい。
リングでなく、これでね。」
謎の袋をもらう。
信用手形?小切手?これを見せれば
資産院にあるお金が自動的に移動するのか?
わからん。
金融システムが。
コットワッツの資金受け取りはコットワッツが資産院に
お金を預けていなかったからだ。
資産院というより、王都に信用無いものね。
「上限ってあるんですか?」
「あなた、どれだけ散財するつもりなんですか?」
「いや、念のため。」
「それなりに有りますよ。」
「だいたい誰の資金なんだ?」
「・・・・わたしですよ。」
「「「よっしゃー!!!」」」
ニックさん、マティス、わたしの雄たけびだ。
「まずはうまい酒を呑みまくろう。
買ってもいいが、そこは遠慮しておくのがやさしさだな。」
「保存のきく食材もあるんじゃないの?
それを。それでやっぱり甘味かな?」
「フレシアのヤツマに聞いたが、
やはりレース布の大判があるという。それがほしいな。」
「ガイライはまたお土産買ってくるよ。
なにがいい?」
「そうですね、トリヘビに関するものがいいですね。」
「そうだね。なにか探してくるよ。」
「ええ。楽しみにしています。」
「ん。」
「よし、早く帰って、月が沈めばすぐに出発だ。」
「「おーーー!!」」
「・・・・ガイライ殿?同行するわけにはいかないんですか?」
「行ったところで止めれんぞ?」
「そうですか。」
ハニカさんたちは下町に抜ける小道に。
後始末に駆り出された者たちは、拘束された自称盗賊と天秤院に。
オート君と彼女さんはまだ話をしているが、師匠に促されて資産院に。
わたしたちも、下町に抜けるふりをしてガイライの館に戻ることとなった。
─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘
ガイライが買ってくれたお野菜たちを引き取り、
朝ごはんを作る。
野菜たっぷりのスープとルカリさんも食べるだろうから、
白おにぎりを大量に。
茎野菜の肉巻きも作っておこう。
マティスはルカリさんに送る槍を仕上げていた。
刃先は消耗品なので、棒のところだけね。
マティスが作るから装飾が素晴らしい。
もちろん、芯材に砂漠石が入っている。
しなるし、折れることもないだろう。
長さは前回のものと同じで、重さは調整できるとか。
「どうやって?」
「手に取るだろ?それで、もう少し軽いほうがいいとか、
重いほうがいいとか考えればそうなる。」
「それは、ルカリさんにどうやって説明するの?」
「そうか。」
「わたしがやったようにしておこう。」
「そうなるね。
でも、ルカリさんの鍛錬?急だね?
なんかあったの?」
「モウ、母さん。その。」
「ん?」
「相談事があるのです。」
「うん。そういうのはいつでもいいんよ?ルカリさん関連なの?
それと鍛錬と関係あるの?」
「なにもかもモウ頼みなのが。
せめて、ニックの鍛練とわたしが指導したルカリを見ていただきたい。」
「ん?よくわかんないけど。
ルカリさんが勝ったら頼みを聞くとかじゃないんでしょ?
できることはするし、できんことは出来んのよ?」
「そうなんですが。」
「いいじゃん、モウちゃんよ。
これは指導者としての力量を計りたいんだよ。
ガイライよ、ちなみに、モウちゃん俺から1本とったぞ? 」
「ああ、やはり。」
「しかも泣いた、2人で。」
「え?」
「あはははは!ルカリの甘さを取り除くことだな。」
「もちろんだ。」
「ん?ルカリさんの鍛錬内容はいいとして、
頼み事は、その後に聞くの?そのほうがいいの? 」
「ええ。」
「ん。急ぎじゃないってことだね。
それなら、終わった後にね。
ルビス君たちの分と師匠たちの分もおにぎり作ったから、
渡してくれる?」
「モウ?オート殿の奥方といっていいのか?
あれはどうしてあなたに敵意を?」
「どうしてって言われると説明は難しいな。
あの人はきっと真面目な人なんだよ。
努力もしてる。でも余裕がないのかな?」
ぱっと見、お気楽マンボな人が嫌いなんだよ。」
「まんぼ?」
「そうそう。これはうまく説明できんよ。
だって、どうでもいいもの。」
「あなたがそう言うのでしたら。」
「でも、忠告はありがたく。
わたしは平民だ。
オート院長殿と気楽にお話しすることも、
王都の館廻りっていうの?
あのあたりをうろついてはいけないと。
気を付けようってことだね。」
「愛しい人?では、資産院に、ワイプに差し入れはしないということだな。」
「資産院にはね。
師匠にはするよ。ツイミ兄弟やソヤがいるからね。
オート君はきちんとわたしとの約束を守ってたんだよ。
入手先は言ってないのね。
でも、簡単なものはワイプ師匠からの一番弟子からだっていってたんでしょ。
それも気に入らないんだろうね。
嫌なんだよ、筋が通らないものは。
なんとなくわかるけどね。」
「わからんな。」
「わかんなくていいよ、だって、好かれたいとはおもったけど、
向こうが嫌いだって拒絶するんならそれまでだ。
万人に好かれることはあり得ない。」
「私はあなたに好かれているだけでいい。」
「もちろん、わたしもだよ。
ただ、2人の廻りの人たちと楽しく生きていきたいだけだ。
誰かに嫌われたって、月は昇るし、生きてるもの。
なんてことはないんだよ。」
「それもそうだ。」
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そう思いながらやっとの思いで階段を上りきり、自分の部屋の方へ目を向けると、そこには見知らぬ男がいた。
「優様、おかえりなさいませ。本日付けで雇われた、優様の執事でございます。」
「はい?どちら様で…?」
「私、優様の執事の佐川と申します。この度はお嬢様体験プランご当選おめでとうございます」
(あぁ…!)
今の今まで忘れていたが、2ヶ月ほど前に「お嬢様体験プラン」というのに応募していた。それは無料で自分だけの執事がつき、身の回りの世話をしてくれるという画期的なプランだった。執事を雇用する会社はまだ新米の執事に実際にお嬢様をつけ、3ヶ月無料でご奉仕しながら執事業を学ばせるのが目的のようだった。
「え、私当たったの?この私が?」
「さようでございます。本日から3ヶ月間よろしくお願い致します。」
尿・便表現あり
アダルトな表現あり
【リクエスト作品】邪神のしもべ 異世界での守護神に邪神を選びました…だって俺には凄く気高く綺麗に見えたから!
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第16回ファンタジー大賞奨励賞受賞作です。
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