いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

文字の大きさ
上 下
633 / 863

633:屋台

しおりを挟む
24人。すべて縛り上げて馬車に積んでいく。
ガイライ殿の相手をしたタンダートと元カリク殿の配下以外は
全てオヒルネ状態。
お嬢関連、6人はそのまま置いてきている。音石と月無し付きでだ。

カリク殿とニック殿、ムムロズ、縛り上げた者たち。
ガイライ殿、タンダートとカリク殿の元配下、
それとわたしで馬車に乗り込んだ。

「東に?国仕えか?」
「その様ですよ?腰飾りはエルトナガ独特のものだ。」

ムムロズがそう言っていたが違うだろう。
どこの世界に身元が分かるようなものを身に付けるか。

「エルトナガがニバーセルを?」
「痛み止めの原料となるものが取れなくなったと
うわさで聞こえてくるくらいですから。
砂漠石が豊富なニバーセルを欲してると?」
「コットワッツの砂漠が枯渇したのにか?」
 「マトグラーサは豊富ですからね。銃の話も行っているんでしょうね。
それをわたしたちがどうのこうのできるもんでもない。
カリク殿にお任せしましょう。」

元配下は完全に怯え切って、御者を務めている。
ムムロズ殿がここまで強いとは知らなかったのか、
戻れば始末されるからなのか。

タンダートが殺気を未だ出しているのが不思議だな。

(ガイライ殿?)
(タンダートのことか?殺気だろ?)
(ええ。どうしてここまで?)
(見張りがいるんだろうな。この3人の中か、
あの前の馬車にいるのか。手合わせ中もそこに意識を置いていた)
(ニック殿?)
オヒルネ中の者はみな寝てますか?)
(いや、3人ほど寝たふりだな)
(ガイライ殿にもつなげて)
(その中の1人だろ。呼吸が安定している。
残りの2人はまさしく息を殺しているぞ?)
(タンダートの見張りか?)
(そのようですね)
(モウちゃんが気付いたら面倒だぞ?)
(マティス君に向かってるもんでもないので、即殺はないでしょうが、
ガイライ殿ですから、どうでしょうか?
これも修行です。威嚇か本気か見極めないと)
(だけど、これ、隙あらばだろ?)
(それに気付けるかどうかですね)
(ワイプ師匠は厳しいねー)
(モウが出した課題のほうが厳しいですよ?)
(そりゃそうだ)



─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘


「ニック殿はずっとお一人で?ご家族は?」
「一人だな。国に帰って、のんびりしてたよ?」
「・・・・・なんで戻ってきたんだ?」
「ガイライがな、戻って来いって。俺もいいかなーて。」
「臣の腕も持たずにか?」
「ああ、返してもらったよ?で、ガイライに捧げた。」
「なに?ご存命だったのか?会えたのか?え?」
「そうだ。で?嫁は何人で、子供は何人で孫が何人なんだ?」
「嫁は一人だ!子は12人、孫は9人だ。
雨の日に子供はもう一人増える。」
「おお!カリク殿!素晴らしいな。
息子もいたよな?それに跡を譲らないのか?」
「残念ながらみな亡くなりましてね。
後は娘のテンレのみです。引継ぎをしたいのですが、
子供が生まれますのでね。
また5年は先ですよ。
引継ぎしようとすると、子供ができる。」
「じゃ、孫は?」
「その一人が、クインタといいます。ムムロズとテンレの子です。
なんともお恥ずかしい。」
「あはははははは!そりゃ問題だな!ムムロズの躾が悪いんじゃないの?」
「子育てをしたことがないものがいうことじゃねぇ!」
「そりゃそうだ。なにがダメなんだろうな?」
「・・・・数字と武がダメな父親はダメなんだと。」
「え?隠してたの?」
「それはわたしがそうさせていたんですよ。それがこんなことになるとは。
やはり、年ですね。」
「ま、そうだな。この頃の若いもんは、って話になるな。
うちのところでもな、戻った直後に若いもんともめてな。
えらいお叱りを受けてたよ、ガイライが、モウちゃんに。」
「モウ殿に?ガイライ殿が?」
「そうよ。お前がふがいないからだって。
俺も後から聞いて、何というか、気を引き締めたよ?」
「ニック殿?よくわからないんですが?」
「ニックの話は分からん、昔から。」
「それはマティスだろ?あいつの話の方がもっと分からんぞ?」
「・・・剣のマティスだよな?あれ?で、赤い塊のモウ?」
「そう、モウちゃん。マティスの料理はうまいだろ?
モウちゃんも俺の好みを突いてくるからな。
まただしてくる酒がうまくてな!
そうだ、ピクト近くに酒を造ってるところがあるだろ?
そこにも行くつもりなんだよ。ムムロズ、知ってる?」
「・・・・残念だが、酒はないぞ。水が枯れた。」
「そうなのか。でも、ま、案内する約束だからな。場所教えてくれ。」
「そこまで行くと、王都の戻りが間に合いませんよ?
わたしとの時間も一日は作っていただきたい。」
「だから場所を先に聞いておきたいんだ。
無理ならすぐに戻るから。」
「俊足馬でないと間に合いませんよ?」
「ん?それは大丈夫だ。で?どこ?」

結構遠いな。
移動で近くまでいったとしても、時間がかかる。
気配は探れるか。手繰り寄せる?
鍛錬だ、鍛錬。
しかし、ガイライに中てるタンダートの殺気がうっとしい。


─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘

「これはうまい!!」
「ね!でも、冷蔵庫で、寝かしたものはもっとおいしいの。
冷蔵庫、いかがですか?」
「20リング?そうだな。どうしようかなー。」
「お客様!なんて買い物上手なんだ!
いまなら冷凍庫とセットなら40リング。そこに!
この窯もつきます!」
「燃料は?」
「燃料は樹石です。これもバケツ3杯分!お付けします!
これであなたは今日から荒野のパン屋さん!!」
「買った!!」


あははははは!!!!

カンターウォーマーはジェフェニさんがいったん家に帰っている間に
各地を回って調達。
皆驚いていたが、急ぎだということで。
さっくりお願いで組み立て。
みながみな、いつでもいからゆっくり来てくれと言われた。
いつの間にかマティスが、真綿の布団の注文を受けている。
在庫分全部でお布団づくり。
ジェフェニさんは小麦と卵、乳を仕入れて帰ってくる。
そこからパン作りとキャムロンの調理だ。

蓄えは本当にあるようで、冷蔵庫と冷凍庫、
カンターウォーマーをお買い上げ。
これは帳簿をつける。仕方なし。
タフトに税を納めるわけではないからだ。
コットワッツに納めるんならいいよね。

窯を荷車に設置して、屋台でパンを焼く。
燃料は樹石だからと移動も簡単。

この方法はいいよねと、
マティスと3人でいろいろ考えていく。


「特定の場所に同じ時間にいるっていうのが重要だと思う。」
「それは私たちにはむりだな。」
「うん、だから、こっちはそのときに遭遇できたお客様だけ買える。
ジェフェニさんは固定客を確保しないとダメですよ。」
「そうなるよな。」
「で、清潔に。ここで、食べてもらってもいいけど、お客さんが買ったら、
ゴミとか残しちゃダメなんだ。きちんと片付けてね。」
「いや、ここで暢気にたべることは少ないかな?持って帰ってもらう?」
「そうだね!じゃ、冷めてもおいしいものね。
飲み物も、保温性がいい容器に入れる?」
「小さな砂漠石を入れたりするぞ?」
「じゃ、こぼれないような容器だ。
ブラスとゴムで栓をする感じ?」
「それを毎回売るのか?高くつくぞ?」
「そうかー。ま、各自の入れ物に入れるほうがいいかな?
専用の入れ物も売るとか?」
「専用?」
「それ専用の。コーヒーいれて、ぴってすれば、
砂漠石が温めてくれるような。
砂漠石込みで売る。それこそ高くない?」
「小指の先より小さな砂漠石でいい。1銅貨もしないな。」
「じゃ、コーヒーいれて、専用の容器を買ってもらって、
それに入れるんだったら、
砂漠石はおまけとか?」
「いま、砂漠石は値上がりしているから、どうだろう?」
「そうだねぇ。ま、値上がりしたらやめちゃえばいい。
無理することないもん。」
それより、あの人、またきて嫌がらせとかするかな?
他の人は?」
 「この商売の仕方は誰もしていないから文句は出ないとおもう。
が、すぐに真似されるかな?」
「それも考え物だね。いいお隣さんだと、今日はこっち、明日はあっちって
毎日通ってくれる人もいるかもしれないし、
そうやって集まったら、それはそれでいいんだけどね。
邪魔されたり、嫌がらせがあったらだめだよね。
えーと、ここの顔役ってカリクさんて方だと聞いたんだけど?
さっきの人はカリクさんよりえらいさん?」
「まさか!カリク様は本当に偉い方ですよ?
卵採りはそのカリク様のお孫様の配下なんですよ。」
「ああ、お家騒動なんだ。
が、カリク殿も孫1人押さえられないっていうのはどうなの?
やっぱりもうお年だから?」
「いえいえ。若い方には誘惑が多いですからね。」
「ああ、そうなんだ。」

誘惑を跳ね返さないと後継者になれないと。
試練だね。

「でも、見極めないとね、その相手を。ティス?」
「見抜けていなかったんだろうな。
愛しい人?お前はどう思う?」
「んー。これをティスに向けてたら即殺なんだけど、
向けてるのがガイライだし、そんなのは問題ないだろうし、
もちろん、ティスもそうなんだろうけど、強さの問題じゃないからね。
殺気を放つだけで許せんって思うから。
んー、ガイライの場合はかあちゃん的には許せんから、行ってきてもいい?」
「そうだな。肉を焼かねばならんからな。ここで捌かないといけないし。
ジェフェニ殿?手伝ってくれるか?ポットの丸焼きにしよう。」
「え?お嬢ちゃんは?どこに?」
「ちょっと息子を迎えに?じゃ!」


忍者走りで、土煙を揚げて、ドロンだ!!


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

異世界隠密冒険記

リュース
ファンタジー
ごく普通の人間だと自認している高校生の少年、御影黒斗。 人と違うところといえばほんの少し影が薄いことと、頭の回転が少し速いことくらい。 ある日、唐突に真っ白な空間に飛ばされる。そこにいた老人の管理者が言うには、この空間は世界の狭間であり、元の世界に戻るための路は、すでに閉じているとのこと。 黒斗は老人から色々説明を受けた後、現在開いている路から続いている世界へ旅立つことを決める。 その世界はステータスというものが存在しており、黒斗は自らのステータスを確認するのだが、そこには、とんでもない隠密系の才能が表示されており・・・。 冷静沈着で中性的な容姿を持つ主人公の、バトルあり、恋愛ありの、気ままな異世界隠密生活が、今、始まる。 現在、1日に2回は投稿します。それ以外の投稿は適当に。 改稿を始めました。 以前より読みやすくなっているはずです。 第一部完結しました。第二部完結しました。

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

レベルカンストとユニークスキルで異世界満喫致します

風白春音
ファンタジー
俺、猫屋敷出雲《ねこやしきいずも》は新卒で入社した会社がブラック過ぎてある日自宅で意識を失い倒れてしまう。誰も見舞いなど来てくれずそのまま孤独死という悲惨な死を遂げる。 そんな悲惨な死に方に女神は同情したのか、頼んでもいないのに俺、猫屋敷出雲《ねこやしきいずも》を勝手に転生させる。転生後の世界はレベルという概念がある世界だった。 しかし女神の手違いか俺のレベルはカンスト状態であった。さらに唯一無二のユニークスキル視認強奪《ストック》というチートスキルを持って転生する。 これはレベルの概念を超越しさらにはユニークスキルを持って転生した少年の物語である。 ※俺TUEEEEEEEE要素、ハーレム要素、チート要素、ロリ要素などテンプレ満載です。 ※小説家になろうでも投稿しています。

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

姫騎士様と二人旅、何も起きないはずもなく……

踊りまんぼう
ファンタジー
主人公であるセイは異世界転生者であるが、地味な生活を送っていた。 そんな中、昔パーティを組んだことのある仲間に誘われてとある依頼に参加したのだが……。 *表題の二人旅は第09話からです (カクヨム、小説家になろうでも公開中です)

【完結】神スキル拡大解釈で底辺パーティから成り上がります!

まにゅまにゅ
ファンタジー
平均レベルの低い底辺パーティ『龍炎光牙《りゅうえんこうが》』はオーク一匹倒すのにも命懸けで注目もされていないどこにでもでもいる冒険者たちのチームだった。 そんなある日ようやく資金も貯まり、神殿でお金を払って恩恵《ギフト》を授かるとその恩恵《ギフト》スキルは『拡大解釈』というもの。 その効果は魔法やスキルの内容を拡大解釈し、別の効果を引き起こせる、という神スキルだった。その拡大解釈により色んなものを回復《ヒール》で治したり強化《ブースト》で獲得経験値を増やしたりととんでもない効果を発揮する! 底辺パーティ『龍炎光牙』の大躍進が始まる! 第16回ファンタジー大賞奨励賞受賞作です。

処理中です...