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610:限定品
しおりを挟む「10番門街は一番宿屋の多いところです。
明後日あたりからあなたがいう参戦者たちが集まるそうです。
7から9は飛ばして10番まで行きたいですね。」
「師匠?お金の流れをつかむのが資産院だとは思いますが、
別にそこまで調べなくていんじゃないですか?
コットワッツの館に買い物に来てくれるのならそれでいいし、
んー、なにが欲しいかがわかればそれなりに用意しますけど、
その下調べじゃないですよね?」
「あなた、何もコットワッツの物だけを買いに来るわけじゃないでしょ?
あの3人娘と自称次期軍部隊長の娘たちもいますしね。
あれが欲しい、これが欲しいと言われて、なければそれだけで人間が動くんですよ?
金も。それを用意するのは当然その家々ですが、
上位王族だと、中央院事務部です。金を出すのは資産院です。
参戦者は皆そうなんですよ。
あー、いやだいやだ!適正価格を把握しておかないと、ここぞとばかり吹っ掛けてくる。
事前に把握しておきたい。」
「それはお前の仕事か?」
「ここにいるんでしたらね。近くの者が動くのが一番効率的でしょ?」
「だったら、お前だけが働けばいい!」
「そこはあれですよ。なにごとも勉強ですよ?
ガイライ殿とニック殿も異論はないでしょ?」
「なるほど。でも、かち合いたくないなー。
なんというか、神経が磨り減る。笑うのを我慢するから。
泊まる宿は分かるんですか?
じゃ、行商を装って、月無し君と音石君に出張ってもらいますか?
で、あとで回収。」
「素晴らしい!」
「仕事だぞ!金払え!!」
「もちろん!ちゃんと払えますよ?あー、よかった。
雨の日前なのに予算があるというのがなんと素晴らしいことか!
モウ、ありがとうございます。」
「いえ、あの情報はまさに足の裏の米粒だったんで。」
「?」
「あ、いわないですか?
落ちたお米粒を踏んでもとって食べないでしょ?
だから、とっても無駄なことを言うんですよ。
でも取らないといけないというか、そういう時にね。
役にはたたないと。
そういえば、師匠に渡したコールオリンはどうしたんですか?
あれも売ればそれなりになったんでは?」
「あれは最終手段ですよ。最悪はあれを売ろうかと。
それでも到底足りませんがね。
裏街道に売れる場所があるとおっしゃっていたんで。
わたしもこのあたりのことは詳しくないんでね。」
先に10番門街に行き、行商しもって宿屋に月無し石隊を派遣。
では、売り物は何にするか?
これでもめた。
「シナイだよ!
ほら、モウちゃんの話をもとに作った!
素振りにちょうどいい。重さは中に鉄棒を入れればいい!」
ニックさんはブンブンと竹刀を振る。
ガイライとニックさんイは専用の小袋を渡している。
そんなの入れてたの?
「これは?
なかなかに頭を使う。」
ガイライに教えた竹細工のパズルだ。
ここのブラスは肉厚なのでこんな細工も簡単にできる。
これはひとひねりというもの。遠心力で中の芯材を外す。
ガイライに先に教えたので、後の3人は知らない。
マティスたちはこういうものが苦手なようだ。
うん、うんうなっている。
力任せに分解しないで!!
「土蜜は?これを使った甘味はザバスが作った。
愛しい人とセサミナしかまだ食べていないな。
先に完成品を売ると、今度、館で出すときに価値が下がるので、
蜜のみだ。
この樽で30リング。王都でも100リングになると言っていた。
ここでは200?ワイプ?500!
帳簿は相手方に頼む方式だ。」
「身元が分かる商品ばかりですね。」
師匠は帳簿記帳の指導もしてくれるそうな。
ガイライ達も行商だからだ。
「モウは?なにを売りたいですか?」
「コットワッツ商品はあえて外してるの?
ここで売るのは一つか二つランク、質を落とそうか?
そうすると、コットワッツで見るもののほうがいい、
尚且安いってことになる?」
「安いというのに利点は余りないんですよ。
自分のお金じゃないんでね。」
「そうかー。
お金はお金だけど、なんか嫌だな。
中央院事務部資産経由以外からせしめたいな。
宿屋さんに商品を売っても、参戦者たちに売るときは、
ものすごく高くなって、それの請求が資産院に来るんでしょ?
資産院に請求が来るってことは後払い?
即金でもしくは個人のお金を資産院経由で払ってくれってことに出来ますか?」
「できなくはないですが、そこまでして買いたい商品を
名前も知らない行商から買うでしょうか?」
「限定品、今だけ。
これほどの商品は私どもでもめったに扱うことはできないでしょう、
残念です。
もしかして、手持ちがない?ああ、そういうことですか?
いえ、皆まで言わなくても。
そうか、王族と言えど、ないものはないんだ。そうか。
良い品は良いお人に流れると思っていたのですが、
ご縁はなかったということで。
で、買わないんならべつにいいや。」
師匠はしばし考え込む。
マティスたちもだ。
「・・・モウ、それで買う人がいますか?」
「・・・・わたしなら買う。ほしいなっておもって、お金があるなら買う。」
「申し訳ない。それに関しては何とも言えない。
しかし、その方法なら、相手と会話しなければいけませんよ?」
「あ!そうか!じゃだめだな。」
「カリクに話をつけてみようか?」
「誰ぞ?」
「裏街道で商売やってる奴だよ。今回いろいろ売り込むつもりだった奴。」
「おお!」
「ただし、ワイプ。へたに税のことを持ち出すな?
あれはタフトの領民だ。税は払っている。表向きはな。
裏での商売は突っ込むな?」
「ええ。そのあたりは。そういう方はきちんと表稼業で払ってくれるので、
問題ないですよ?モウのようにね。」
「え?なんか、それ、どうなの?」
「高額納税者ってことですよ。」
表できちんと払ってくれいるなら、
多少のことは目を瞑ると。
予算問題時はそれもすべて洗いなおすつもりだったらしい。
その前に高位王族の買い物を資産院が払うというのが問題だと思うが、
そういうシステムなら仕方がない。
では、あの、自称マティスの許嫁のお嬢は高位ではないのか?
「エルティー殿ですか?
そうですね、高位には入らない、ちょっと下ですね。
なので、予算は少ないですね。
高位と同じように散財していればあっという間に破産でしょうね。」
「じゃ、予算が足らない王族ってどうやって稼いでいるの?」
「大体が高位の王族のおこぼれをもらうか、
事業を起こしているか。予算内で生活しているか。
大抵は予算内で十分なんですけどね。」
ちなみに、我らがオート君の彼女さんは王族だが、
遠い、遠い血筋ということだが、ちんと予算内で生活しているそうだ。
雨の日前にコットワッツに指輪を買いに行くことを
ものすごく楽しみにしているとか。
かわいいなー。
ウェルカムスイートを用意しよう。
今日はこのまま、荒野に泊り、
明日は月入りと同時に再び陸鳥を捕獲しに行く。
10番門街に、月無し偵察隊を派遣後、
15番門街にいるカリクさんを訪ねる。
そうなると、やは陸鳥での移動がいいだろうということになったからだ。
ちなみに、月無し石たちの報酬は、
炭酸風呂と蒸しタオルとオイルパックに、高級タオルでの磨き。
どこのエステサロンなんだ?
しかし、実際に働いていただくのだ、当然の要求であろう。
砂漠石と音石は意思の疎通はできないので感謝のみ。
「また、あの陸鳥たちを捕まえるんですか?」
「そうなるな。」
「ついでといっちゃあれだけど、
卵と砂がほしい。」
「じゃ、明日の半分で捕獲、採取かな?」
そういう予定で就寝です。
もちろん、露天風呂は堪能しました。
あとは個別にテントね。
プカプカシートとマティスが抱えてくれれば、
どこでも寝れます。
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