いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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「楽しかったのか?」
「もちろん!くふふふふふ。けど眠い。」
「そうだろうな。少し寝ておけ。」
「マティスは?それにみんなは?」
「私もさっきまで飲んでいたからな。みな同じだ。
オートたちは王都に送ったし、ガイライ達も戻った。
休みに入る準備もあるはずだからな。
明後日に、王都大門前に集合だ。
私も少し寝よう。」
「んー、一緒ね。おやすみー。」

今日は会わずの月の日。
このまま、少し寝て、会わずの月の日を楽しもう。


─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘


月が沈んで呑み会は解散となり、
オート、ツイミ、チュラルたちとソヤ、ルカリも送り、
ガイライ達も帰っていった。
ドーガーの件は今回だけだと言って許していたが、
月が沈む前に戻ってきたルグに話して、またどやされていた。
当たり前だろう。
箝口令を破ったこともそうだが、
今の腕前では守れないからと強い武器を要求、しかもあれだけ忌み嫌っていた銃を
愛しい人に頼んだのだから。

カップのことは本人を交えて話をしていた。
ワイプも同席した。
セサミナは資産院に筒抜けになるようなことはないと、
それに関しては心配していない。
カップが隠密として来てくれるなら歓迎すると言い、
ワイプはあくまでも自分の配下、緊急時は来てもらうし、
コットワッツの金の出入りを報告するようにとカップに厳命。

「あはははは!おかしなことを言いますね?ワイプ殿?
報告書通りですよ?」
「あはははは!それはそれは!
メディングの資産譲渡に税はかかりませんが、
それを運営すれば税はかかります。その報告を楽しみにしていますよ?」
「ええ。もちろん。」


メディングの資産は主に私たちの商品を買うのに使っている。
そしてそれは、香玉だったり、黒塗料だったり。
売り上げに対して税は払うが、資産を使ったかどかはわからんだろうな。
私たちが報告するわけではないしな。


2人とも笑顔でけん制し合っている。


「カップ?お前はどうしたいのだ?
誰にも遠慮はいらないぞ?」
「ありがたいお誘いです。もう少し考えてもいいですか?
こちらには雨の日が終わるまでいることにはなっていますので。
返事はそれ以降で。」


結婚できるか出来ないかで違うのだろうか?


「あの!まだ自信がないということですよ?
ニック殿鍛錬項目をやり遂げてからということです!」


顔に出ていたか?


「では、戻ったら私と手合わせをしよう。
セサミナの傍に付くというなら腕を確かめておきたいからな。」
「はい!お願いいたします。」
「ドーガーは?
お前に対しては、セサミナと違った甘さがあるからな、愛しい人は。
なにを叫んでいたのだ?チョコをもらっただけではないだろう?」
「マティス様!今回のことは大変申し訳なく思っております。
ただ、モウ様を悲しませただけでした。
わたしの心はモウ様に捧げているのに。」
「いや、それはいい。今回のことは、別に悲しんでいない。
ある程度想定出来たことだ。愛しい人の力?力ではないか、考え方が金を生むと。
ドロインが考慮していることだ。が、それを、たとえセサミナの為とは言え、
近いものでも断ることができるとわかっただけよかったよ。
先に言うが、少しでも悲しんでいれば、すでにここにはお前はいないし、
この館もなくなっているぞ?」
 「兄さん!館はやめて!!ドーガーはかまわないですが!!」
「セサミナ様!ひどい!」
「ひどいのはお前だ!だいたい・・・・」

そこからセサミナの説教が始まったので、
結局何がしたかったのかわからずだ。
愛しい人に聞こう。


「では、わたしも一度王都に戻ります。
会わずの月が終われば、タフトに行きますから。その準備を。」
「オートに迷惑をかけるなよ?」
「もちろんですよ。オート院長あっての資産院ですから。」
「これをオートたちに持たせておけ。緊急時は連絡が来るだろう。
言わなくてもいい。これらには言い含めている。」

月無し石をワイプに持たせた。
どうしてもという時だけ、呼んでくれるように頼んでいる。


「これは助かります。では、明後日に。」







半分すぎれば、2人とも目が覚めた。
ゆっくり扉君の家で風呂に入り、
とりあえず、すぐに食べれる食料を作っていく。
鍛練中は作ることもできないだろうから。

「トックスさんのところにも持っていっておこうか?
トラの仕上げにかかりっきりなんでしょ?」
「そうだな。ミーキのように、箱に入ったものの方がいいかもしれにないな。」
「宅配弁当、仕出し弁当だ!作ろう作ろう。」


浅い箱をいくつかに区切って、米と、色とりどりの食材を入れていく。
魚、肉、野菜と。
サシミ、天ぷら、小さな入れものにはうどんもいれる。

「豪華だ!これ、わたしたちの分も作ろう!」

トックスのところで食べて、そのまま、会わずの月の日の砂漠巡りに行くという。
・・・・これだけでは足りないだろうから、もう少しいろいろ作る必要があるな。


月が昇るであろう少し前にトックスの家に。

「お疲れ様ー!先にご飯食べましょう!!」
「おう!ちょうどキリが付いたんだ。昨日のもうまかったよ!」


「おお!いろいろ入ってるのがいいな!」
「それで、どうですか?トラのコートは?」
「艶は出たよ?すごいよな?土蜜にあのマンザスを入れて煮たんだよ。
で、それで洗った。見るか?」
「見る!!けど、先に食べよう!!」

食事が優先なのだ。


これはいいな。少しずついろいろなものが食べられる。
が、やはりすこし足りないか?

「愛しい人?なにか作ろうか?」
「うん!ラーメンがいい!!」
「あ!俺も!」

なるほど。ラーメンを食べればちょうどいいか。





「これな。どうだ?こっちは最初に鞣したものだ。
で、これが、土蜜で洗ったもの。これはマンザスを煮出したもの。
これが、両方だ。」
「すごい!まったく違う!
んー、土蜜は艶出し、マンザスは艶消し?両方が一番いい感じだ!
トゥルントゥルンだ!ミンク越えだね!!」
「そうだろ?それで、ミンクもこれで洗ってみた。それがこれだ!!」
「うわ!さらさら!すっごいサラサラ!!ティモテだ!!」

ん?サラサラという意味なのか?
なるほど、愛しい人の髪のようだ。

「が、こうなると、また別物なんだ。コートには使えない。」
「そうだねー。もう少し短くカットして椅子の張地とかは?
色はちょっと寂しいから染めたり?」
「なるほどな。染める工程で、毛は短く少し太くなるか。
これは、タナトと相談だな。」

タナトというのは親方の名前だ。


「それで、これは一般のトラでしょ?本番の方は?
100万のコート!売りつける相手も楽しみにしてるんだよ!」
「それな、こっちの一般な方もつけたほうがいいな。
誰に売るのかは大体想像がつく。ティスよ、俺が知らないと思ったか?」
「さすが、博識だな!」

聞けば、尋ねた国の衣裳は庶民から王族、その頂点まで調べているそうだ。

「じゃ、あれに売るのは知ってるんだね?
だったらなんで?どーんと派手で良くない?」
「雨の夜会だろ?それだったら、こっちでいい。それ以上のものを着るときの
とっておきに置いておいたほうがいいな。
中央に集まるだろ?各国のお偉いさんが。そのときに着る機会があるはずだ。
その時にな。これは格が違いすぎる。」


そう言って見せてくれたものはいつかどこかで見たトラの毛皮よりも
輝かしいと言っていいほどの艶と色だった。

「ド派手!大阪のおばちゃんでも着ない!!」

愛しい人は大喜びだ。
これから上着に仕上げていくので、毛皮のみを見せてもらたのだが、
彼女が肩に掛けろというのでマントのように羽織った。


「あはははは!!写真撮っていい?
えーとね、こういうポーズ!ヤンキー座りで!!」

何枚かシャシンを撮られた。
しゃがんだり、背を向けたり、
指示通りの体勢で。


「愛しい人のシャシンも取りたい。」
「なんだ?そのシャシンてのは?」

トックスに話してもいいと目で愛しい人が言うので、
説明をする。


「その時見たままを砂漠石に覚えてもらうんだ。
それを拡大する。ああ、愛しい人問題で集まった、女たちの姿もあるぞ?」

愛しい人の姿は私だけが見るものだ。
見てもらいたいというのもあるが、
やはり見るのは私だけでいい。

ワイプに渡したものと同じものを出してもらった。


「ドレスの参考になるかなって。」
「すごいな!これで、今度モウが来たドレス姿を見せてくれよ。」
「それはダメだ。愛しい人のシャシンを見てもいいのは私だけだから。」
「・・・・あっそ。」
「トックスさんの良心があれば、ここで着て見せますから。」
「そうなるな。わかったよ。あの、以前に作ったのはさすがに見せれんからな。」

白のレースのことか?当たり前だ。


「で、これがその愛しい人問題の参戦者か?
どれも参考にもならんな。流行りなのか?この袖口は?
全くに似合ってないな!!」

そこから、愛しい人のシャシンをたくさん取った。
白のレースドレス以外の物を着て、トラの毛皮を羽織ってだ。

マトグラーサの夜会に出たときの赤のドレスにぴったりだ。

「いや、これに合うドレスはまた違うぜ?
これは俺が作りたい。いいか?」
「かまわないが、トラの上着はないだろ?
もう一頭とかいうなよ?さすがに今は無理だ。」
「それは言わないよ。大型だから、あれで数着は作れる。
全部使うわけじゃないさ。」
「え?それはうれしいけど、わたしのはリバーシブルにして!
トラもポイント使いで!さすがにあれを来て外を歩くのは、
その、いいものだとは思うけど、抵抗がある!」
「りばーしぶる?裏表??」
「こう、表も裏も使えるようなの。あの風呂敷鞄みたいな。」
「ああ!!なるほど。あははははは!面白いな!!」


そういって、スケッチに没頭し始めたので、
帰ることにした。

会わずの月が始まる。


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