582 / 863
582:比喩的な表現
しおりを挟む
館の前で待っていたテルマに連れられ、
結局家に。
ライガーは軍の鍛錬に参加しているそうだ。
「記憶がな、ないんだ。」
「おじい様、そんなものですよ?気にしないほうがいいって!
そんなこともあるって!笑っときましょう!」
「・・・・わたしではない。」
「・・・・失礼しました。」
「シリーヌだ。緑の目で長寿のことを研究していたことを
すべて忘れている。」
「・・・それは、わざと?」
「いや、石を使った。取り寄せたな。
エデトと結婚し、子供を産み、育てる。
日常的なことは覚えている。
眠りについたことも病だと思っている。
緑の目で研究した事の記憶がない。」
「忘れているということは?本人は?
思い出せないといってる?そもそもそんなことはなかったと?」
「何もかもすっかりだ。緑の目だったこともだ。」
「それはなにか困るの?テルマのとーちゃんは?」
「父は幽閉したといったな?
死ぬまでこの部屋にいなければならないとわかったとたん、
眠りについた。シリーヌが眠っていたように。
気配もなく、息もしていない。脈もないが死んではいないのだ。」
「それで?コクに起こしてもらうの?」
「シリーヌがなにも覚えていないのならそれはそれでいい。
父が眠りについたのも。起こす気もない。」
「・・・テルマ、先に用件を。」
「すまん!!エデトの頼みを聞いてやってくれ!!」
親バカなのだ。
目のことを気付かなかったことを悔やんでいる。
これから先、2人で幸せに過ごしてほしい。
そのためには親としてできることはしてやりたい。
「わたしじゃないとダメなこと?
他の人には相談した?
石使い的なことなら断るよ?内容によらずね。
頼り過ぎたらダメだよ?」
「石使いではない。
まずはわたしに相談してきたんだ。
豆屋に来た時な、わたしは顔を見に行っただけなんだが、
エデトは相談があると言ってな。その時は内容を聞かなかった。
帰りに聞いたんだよ。
わたしではどうしようもなかった。
他の人に相談するには、かなりの抵抗があった。
だから、エデトに、モウが来た時に相談しようと。」
「だからその内容は?」
さっきから堂々巡りだ。
エデトに聞いたほうが速いとは思ったが、
よかった。先に聞いておいて。
「・・・・なるほど。
子供がどうのという時に、わたしが元気だなっていったから?
どうすれば元気になるか知ってるっておもったと?」
「そうだ。そういうからには可能なんだと。」
「それさ、男の人に聞けば?」
「伴侶がいればできる。できないのはいないからだ。
エデトの場合はいるのにできない。それがどうしてかわからない。」
「いや、一般に年齢のせいじゃないの?」
「年を取るとできないと?」
「ん?マティス?そうだよね?」
「タロスはしてたぞ?」
「いや、実際どうかわかんないでしょ?こういう話はしないんでしょ?
お話でだけで過ごしてたかもしれないでしょ?」
「では何のために娼婦の家に通う?」
「お話すだけだけでも楽しいでしょ?」
「?」
「マティスだって、一緒にごろごろするだけでいい時もあるでしょ?」
「それはあなただからだ。伴侶だからだ。
娼婦とは違う。」
「んー、わからん。」
デリケートな話だ。
170歳の方々でも、伴侶がいればすると。
女性の方も問題は無いが、妊娠はしない。
レスっていうのあるよ?と言えば、おかしいということになるのだろうか?
かなりなご年配の方は伴侶がいれば当然すると。
できないというのはかなり否定されることなのか?
わたしと出会う前のマティスのように、
不慮の事故でならなくなることもあるだろうに。
精神的でもだ。
それは、かなりのやさしくない話だ。
それをどうにかできないかなんて相談にわたしは応えることができない。
本人を前に、わからんと言えば、さらにショックを受けるかもしれない。
「お医者様とか、そういうのは?」
「?医者が治せるのか?」
「どこか調子悪いところは?」
「そんなことはない。モウが何もかも治してくれている。
昔の傷もなくなったと言っていた。」
「何か悩みは?」
「それが悩みだ。」
「奥方は?こう、2人で頑張りましょう的な?」
「あれは緑の目だったから、息子だけだ。
後は知らないそうだ。」
「・・・それ、聞いたの?」
「聞かされた。これも問題だ。2人してその、こういうことに関する
羞恥心がない。わたしに、最初にわたしに相談してくれてよかったと思う。」
「・・・そうだね。それをわたしに聞くというのはどうかと思うけど?」
「しかし!」
「うん。相談しにくいのもあるよね。他の人に。
そのなんだ?こう、精力剤的なのは?媚薬的なものとか?」
「何もかも試した。それでだめらしい。
興奮するが、ダメだと。熱が残るので、その、自分で。」
「では、体に問題は無いんだ。私はそれすらもなかったぞ?」
「マティスさんや?こういう話は恥ずかしくないの?」
「自分のことだからな。人の話は恥ずかしいがな。」
「わからん。じゃ、いざってことになって、ダメで、
奥さんがため息ついちゃうとか?そういうのってダメらしいよ?」
「そうなのか?エデトは匂いで相手の気持ちが分かるから。
悲しんでいるのは分かるそうだ。」
「それで、焦っちゃうとか?悪循環?」
「なにか原因があると思うんだが。」
「こうさ、ゆったりした気持ちでさ、香を焚いてさ、
軽くお酒飲んで、いい雰囲気で。
出来なくてもいいじゃんて気持ちで。
甘味とかくだものとか食べて、お風呂一緒に入ってさ。」
「風呂?ダメだろう!!」
「え?他人はダメだけど、夫婦なんだから。
コットワッツの領主館は大浴場があって、
予約で家族が入れるよ?」
「そ、それはすごいな。しかし、丸見えではないか?」
「いや、見たっていいでしょ?夫婦なんだから。それ以上のことするんだから。」
「愛しい人、それは恥ずかしい。」
「もう!基準が分からん!あ!わかった!!」
「え?」
「もしかして眼鏡かけてる?見え過ぎるんだよ!外して!
明かりも小さく。服を脱ぐ前からね。」
いきなり女性の裸体はインパクトがありすぎるだろう。
マティスの絵を見ているなら、なおさらだ。
あれはきれいすぎた。
いや、奥方がきれいじゃないとかそうじゃない。
絵では毛穴とか、そういうのは書かないから。
マティスが絵を見せなければよかったのか?
いや、少しずつ段階を踏むには良かったとしよう。うん。
「それだけ?」
「いや、わからんよ。眼鏡かけてもいいけど、暗くはしてみ?
それしか言えんよ?」
「わかった。伝えておこう。」
「うん、本人前にはわたしもさすがに恥ずかしいよ。
奥さんにはちょっと聞きたいことあったんだけど、
記憶がないなら仕方がないな。」
「・・・なにを聞きたかったんだ?」
「あははは!警戒しないで。目になにかを入れて緑にしていたと言ってたでしょ?
なにを入れてたんだろって?緑のなんだろって?」
「ああ、それは、外したのを見た。
自分が目に入れていたのに、覚えていなかったからな。
エデトと話をした後、泣いたそうだ。
それで、取れたらしい。なんでこれが目に入っていたのか。
エデトは元から瞳の色なんぞわかっていない。
館の者も、緑の目だと知っているものはいないんだよ。
これが目に入っていたと持ってきたんだ。
どこに置いたか?ん?いや待て!わかっているから!!」
きれいに整理しているが
どこに何があるか覚えていないというのは致命的だ。
わたしは散らかっていたけど、覚えていたよ?
そもそも、あるということを忘れるから。
「ほら、これだ。緑の目が薄くなったから入れていたんだろと、
聞いてもわかっていなかったからな。孫たちは、覚えていないそうだ。
いつも薄暗い部屋にいたからな。」
「これ、なんですか?」
「ガラスだと思い込んでいたんだがな、
よく見れば違った、蚕の羽根だな。」
「ん?比喩的な表現?」
「そうだ。
ああ、ニバーセルなら妖精の羽根というかもしれんな。
緑のきれいなものは大抵、妖精のとか、蚕のとかが付くな。
それだろう。それを自分の目に入れるとは思わなかったが。」
確かにコンタクトレンズっぽい。
彼女たちが付けていたものと同じだろうか?
マティスは手に取ってかざしてみている。
「緑じゃないな。普通だ。」
マティスが持つ丸い物から部屋を見る。
ほんとだ、別に色が付くわけでないんだ。
おもしろいな。
壊しそうなので、小さな虫眼鏡のように加工した。
銅の針金を加工しただけだが。
「気に入ったのか?では、もらってくれるか?
シリーヌが緑の目だったことはもう誰も知らないからな。
ここにはないほうがいい。」
「頂けるのならうれしいですが、緑の目というのは迫害の対象だからですか?」
「いいや。そうではない。
その対象が今回は問題だったのだ。
あの研究内容はもう誰も知らない。
これもいらないものだ。もらってくれ。どこから手に入れたかは言うなよ?」
「それはもちろん。
これ、ほかにもあるんでしょうか?」
「蚕の羽根だといったが、実際はどうかは知らない。
あることはあるんだろうな。そこまで珍しいものでもないのだろう。
お蚕様の羽根は緑だそうだからな。こういうものをありがたがるだけではないか?」
「テルマおじい様は見たことはないんですか?そのお蚕さまを。」
「ないさ。ナルーザ人でもほとんどいないだろう。」
「けど、美しもののたとえで使うんですよね?お蚕様とか妖精とか?」
「そうだな。妖精はある。あるだろ?
あれと同じなんだろうな。」
「美しいと?」
「ん?美しいな。・・・・いや、この前見たときは、
そうは思わなかったな。」
あとは行商だ。
カンターウォーマーはカンターさんのところで買ってほしい。
あとは冷蔵庫、冷凍庫代の回収。
大型はコットワッツに。
「エデトが館で待っているんだが?」
「いや、いま、本人に会うのは恥ずかしいから、
テルマおじい様が、それとなくね。
奥方によろしく。」
「あの、シリーヌだけが食べていたものは?食べたい。」
「ああ、ご家族でどうぞ。館の人たち分はさすがにないですから。」
「雨の夜会に呼ばれているな?」
「ええ。まさか、ここでも愛しい人問題がでてるとか?」
「なんだ?それは?」
よかった、ここでは起きていないようだ。
貴族とか、豪族とかないものね。
3世代で統治しているから。
テルマやエデトの兄弟はいないようだ。
「あはははは!
いつもはエデトだけだったが、今年はシリーヌも参加する。
わたしも出席しよう。楽しみだな。」
「今年はその話は置いといて、華やかだと思いますよ?
刺繍布が持ち出しできるようになったし、
コットワッツの宝石類が販売されますから。」
「あれな!そうか。その方面に明るいものに伝えておこう。
香水を扱っているからな、その専門の者たちがいる。
もっぱら売る方だがな。」
「テルマおじい様?あの頂いた香水のお値段ききました。
ほんとに、ありがとうございます。
その、あの金額で売れるのですか?」
「数はでないが売れる。あの香だけではないんだよ?鹿からとれるのは。
詳しくは話せないがな。」
「いや、よそ様の産業のことはいいんですが、
香産業は当たれば大きいのだなと。」
「ん?参入するのか?」
「あはははは!困ります?」
「なんの!みながみなあの香を身にまとうよりも、
別の香りの中にあれがあるほうがより好まれるだろう。」
「なるほど。身にまとうことはできないのですが、香産業と言えばそうですね。
混合いはじめに王都でお披露目があると思います。宝石類も。」
「臨時会合だな?軍部の隊長が決まる?」
「ええ。館も変わりました、コットワッツのね。
庭が広い中々のもになりましたよ。ぜひいらしてくださいと、ご招待したいんですが、
一国の元首を辺境領国は招待できないですよね。
前回は香木と砂漠石のことがったからいらしたんですもの。
砂漠石は結局どこで買うことに?」
「リリクだ。大きいものから合わさりの月のものまで
一手に揃う。ニバーセルよりも、2割ほど安ったからな。」
「値上がりしてるみたいですね、砂漠石。」
「そのようだな。が、先に金額は締結している。
向こう3年は値上がりしても今の価格で買える。
値下がりしたら大損だがな。」
「先物取引?賭けですね。」
「下がることはないな。」
折角譲ってもらった砂漠石の検証もしていないな。
しかし、砂漠石が無くなるということは考えていないんだな。
どこか、ほかで買えばいいとだけ。
石油が無くなるのは分かっているから他のエネルギーを探していた。
まだ、探している段階だといっていいだろう。
ここでは?砂漠石が一斉に空に上がったら、
明日から火種はどうするのだろうか?
そんなことを考えるのは杞憂というのか?
テルマおじい様と別れて、ルポイドの砂漠口から、
サボテンの森に帰った。
残り180セットの組み立て。
明日は朝から先にグリクさんのところに寄って、
それからソヤを連れて王都入りだ。
そこで、予約分を師匠に渡す。
その後ハンバーグ屋にステーキ皿の営業。
次の日に、師匠とセサミンとでタトートだ。
そんな予定を考えながら袋詰め。
「愛しい人?砂漠石のことを聞いていたが気になるのか?」
「ん?砂漠石ってどこでも貯えがあるみたいだけど、
コットワッツの砂漠みたいに一辺になくなったらって考えてないんだよね?
セサミンもだ。
セサミンが考えていたのは砂漠石が自分のところでは取れなくなるから
他所から買う、そのために他の産業を考えないとって思っていただけだ。
それは大事なことなんだけどね。この大陸から砂漠石がすべてなくなるって思っていない。
月無し石の話ではそれはないんだろうけど、
時間の感覚が違うんだよ。なくなる期間が1年でもあれば大事だよね?
火種って砂漠石以外になんかある?」
「火種?樹石は?」
「火をつけるには砂漠石がいる。紙が燃える温度まで温度上げる?
その温度になるには、そこまで熱くなってるものがいる。
樹石以外で。」
「・・・ないな。」
「ね。スパイルも砂漠石に頼っていないと言われても、
火種は砂漠石みたいだもの。絶対になくならないって思ってるんだよね。」
「なくなりはしないだろ?コットワッツの砂漠の者だけがなくなっただけだ。
他の砂漠にはある。」
「そうだよね。ここでの絶対なんだ、砂漠石は。」
「そうなるな。」
電気が無くなることはないけど、
一時的に、いや、長い場合は1か月以上も供給されないことがあった。
備えを用意していなくても、
火をおこす方法はなんとなく皆知っている。
ここではそれがないんだ。
時間があるときに火起こしを試してみよう。
これは試そうリストの上位に書いておこう。
結局家に。
ライガーは軍の鍛錬に参加しているそうだ。
「記憶がな、ないんだ。」
「おじい様、そんなものですよ?気にしないほうがいいって!
そんなこともあるって!笑っときましょう!」
「・・・・わたしではない。」
「・・・・失礼しました。」
「シリーヌだ。緑の目で長寿のことを研究していたことを
すべて忘れている。」
「・・・それは、わざと?」
「いや、石を使った。取り寄せたな。
エデトと結婚し、子供を産み、育てる。
日常的なことは覚えている。
眠りについたことも病だと思っている。
緑の目で研究した事の記憶がない。」
「忘れているということは?本人は?
思い出せないといってる?そもそもそんなことはなかったと?」
「何もかもすっかりだ。緑の目だったこともだ。」
「それはなにか困るの?テルマのとーちゃんは?」
「父は幽閉したといったな?
死ぬまでこの部屋にいなければならないとわかったとたん、
眠りについた。シリーヌが眠っていたように。
気配もなく、息もしていない。脈もないが死んではいないのだ。」
「それで?コクに起こしてもらうの?」
「シリーヌがなにも覚えていないのならそれはそれでいい。
父が眠りについたのも。起こす気もない。」
「・・・テルマ、先に用件を。」
「すまん!!エデトの頼みを聞いてやってくれ!!」
親バカなのだ。
目のことを気付かなかったことを悔やんでいる。
これから先、2人で幸せに過ごしてほしい。
そのためには親としてできることはしてやりたい。
「わたしじゃないとダメなこと?
他の人には相談した?
石使い的なことなら断るよ?内容によらずね。
頼り過ぎたらダメだよ?」
「石使いではない。
まずはわたしに相談してきたんだ。
豆屋に来た時な、わたしは顔を見に行っただけなんだが、
エデトは相談があると言ってな。その時は内容を聞かなかった。
帰りに聞いたんだよ。
わたしではどうしようもなかった。
他の人に相談するには、かなりの抵抗があった。
だから、エデトに、モウが来た時に相談しようと。」
「だからその内容は?」
さっきから堂々巡りだ。
エデトに聞いたほうが速いとは思ったが、
よかった。先に聞いておいて。
「・・・・なるほど。
子供がどうのという時に、わたしが元気だなっていったから?
どうすれば元気になるか知ってるっておもったと?」
「そうだ。そういうからには可能なんだと。」
「それさ、男の人に聞けば?」
「伴侶がいればできる。できないのはいないからだ。
エデトの場合はいるのにできない。それがどうしてかわからない。」
「いや、一般に年齢のせいじゃないの?」
「年を取るとできないと?」
「ん?マティス?そうだよね?」
「タロスはしてたぞ?」
「いや、実際どうかわかんないでしょ?こういう話はしないんでしょ?
お話でだけで過ごしてたかもしれないでしょ?」
「では何のために娼婦の家に通う?」
「お話すだけだけでも楽しいでしょ?」
「?」
「マティスだって、一緒にごろごろするだけでいい時もあるでしょ?」
「それはあなただからだ。伴侶だからだ。
娼婦とは違う。」
「んー、わからん。」
デリケートな話だ。
170歳の方々でも、伴侶がいればすると。
女性の方も問題は無いが、妊娠はしない。
レスっていうのあるよ?と言えば、おかしいということになるのだろうか?
かなりなご年配の方は伴侶がいれば当然すると。
できないというのはかなり否定されることなのか?
わたしと出会う前のマティスのように、
不慮の事故でならなくなることもあるだろうに。
精神的でもだ。
それは、かなりのやさしくない話だ。
それをどうにかできないかなんて相談にわたしは応えることができない。
本人を前に、わからんと言えば、さらにショックを受けるかもしれない。
「お医者様とか、そういうのは?」
「?医者が治せるのか?」
「どこか調子悪いところは?」
「そんなことはない。モウが何もかも治してくれている。
昔の傷もなくなったと言っていた。」
「何か悩みは?」
「それが悩みだ。」
「奥方は?こう、2人で頑張りましょう的な?」
「あれは緑の目だったから、息子だけだ。
後は知らないそうだ。」
「・・・それ、聞いたの?」
「聞かされた。これも問題だ。2人してその、こういうことに関する
羞恥心がない。わたしに、最初にわたしに相談してくれてよかったと思う。」
「・・・そうだね。それをわたしに聞くというのはどうかと思うけど?」
「しかし!」
「うん。相談しにくいのもあるよね。他の人に。
そのなんだ?こう、精力剤的なのは?媚薬的なものとか?」
「何もかも試した。それでだめらしい。
興奮するが、ダメだと。熱が残るので、その、自分で。」
「では、体に問題は無いんだ。私はそれすらもなかったぞ?」
「マティスさんや?こういう話は恥ずかしくないの?」
「自分のことだからな。人の話は恥ずかしいがな。」
「わからん。じゃ、いざってことになって、ダメで、
奥さんがため息ついちゃうとか?そういうのってダメらしいよ?」
「そうなのか?エデトは匂いで相手の気持ちが分かるから。
悲しんでいるのは分かるそうだ。」
「それで、焦っちゃうとか?悪循環?」
「なにか原因があると思うんだが。」
「こうさ、ゆったりした気持ちでさ、香を焚いてさ、
軽くお酒飲んで、いい雰囲気で。
出来なくてもいいじゃんて気持ちで。
甘味とかくだものとか食べて、お風呂一緒に入ってさ。」
「風呂?ダメだろう!!」
「え?他人はダメだけど、夫婦なんだから。
コットワッツの領主館は大浴場があって、
予約で家族が入れるよ?」
「そ、それはすごいな。しかし、丸見えではないか?」
「いや、見たっていいでしょ?夫婦なんだから。それ以上のことするんだから。」
「愛しい人、それは恥ずかしい。」
「もう!基準が分からん!あ!わかった!!」
「え?」
「もしかして眼鏡かけてる?見え過ぎるんだよ!外して!
明かりも小さく。服を脱ぐ前からね。」
いきなり女性の裸体はインパクトがありすぎるだろう。
マティスの絵を見ているなら、なおさらだ。
あれはきれいすぎた。
いや、奥方がきれいじゃないとかそうじゃない。
絵では毛穴とか、そういうのは書かないから。
マティスが絵を見せなければよかったのか?
いや、少しずつ段階を踏むには良かったとしよう。うん。
「それだけ?」
「いや、わからんよ。眼鏡かけてもいいけど、暗くはしてみ?
それしか言えんよ?」
「わかった。伝えておこう。」
「うん、本人前にはわたしもさすがに恥ずかしいよ。
奥さんにはちょっと聞きたいことあったんだけど、
記憶がないなら仕方がないな。」
「・・・なにを聞きたかったんだ?」
「あははは!警戒しないで。目になにかを入れて緑にしていたと言ってたでしょ?
なにを入れてたんだろって?緑のなんだろって?」
「ああ、それは、外したのを見た。
自分が目に入れていたのに、覚えていなかったからな。
エデトと話をした後、泣いたそうだ。
それで、取れたらしい。なんでこれが目に入っていたのか。
エデトは元から瞳の色なんぞわかっていない。
館の者も、緑の目だと知っているものはいないんだよ。
これが目に入っていたと持ってきたんだ。
どこに置いたか?ん?いや待て!わかっているから!!」
きれいに整理しているが
どこに何があるか覚えていないというのは致命的だ。
わたしは散らかっていたけど、覚えていたよ?
そもそも、あるということを忘れるから。
「ほら、これだ。緑の目が薄くなったから入れていたんだろと、
聞いてもわかっていなかったからな。孫たちは、覚えていないそうだ。
いつも薄暗い部屋にいたからな。」
「これ、なんですか?」
「ガラスだと思い込んでいたんだがな、
よく見れば違った、蚕の羽根だな。」
「ん?比喩的な表現?」
「そうだ。
ああ、ニバーセルなら妖精の羽根というかもしれんな。
緑のきれいなものは大抵、妖精のとか、蚕のとかが付くな。
それだろう。それを自分の目に入れるとは思わなかったが。」
確かにコンタクトレンズっぽい。
彼女たちが付けていたものと同じだろうか?
マティスは手に取ってかざしてみている。
「緑じゃないな。普通だ。」
マティスが持つ丸い物から部屋を見る。
ほんとだ、別に色が付くわけでないんだ。
おもしろいな。
壊しそうなので、小さな虫眼鏡のように加工した。
銅の針金を加工しただけだが。
「気に入ったのか?では、もらってくれるか?
シリーヌが緑の目だったことはもう誰も知らないからな。
ここにはないほうがいい。」
「頂けるのならうれしいですが、緑の目というのは迫害の対象だからですか?」
「いいや。そうではない。
その対象が今回は問題だったのだ。
あの研究内容はもう誰も知らない。
これもいらないものだ。もらってくれ。どこから手に入れたかは言うなよ?」
「それはもちろん。
これ、ほかにもあるんでしょうか?」
「蚕の羽根だといったが、実際はどうかは知らない。
あることはあるんだろうな。そこまで珍しいものでもないのだろう。
お蚕様の羽根は緑だそうだからな。こういうものをありがたがるだけではないか?」
「テルマおじい様は見たことはないんですか?そのお蚕さまを。」
「ないさ。ナルーザ人でもほとんどいないだろう。」
「けど、美しもののたとえで使うんですよね?お蚕様とか妖精とか?」
「そうだな。妖精はある。あるだろ?
あれと同じなんだろうな。」
「美しいと?」
「ん?美しいな。・・・・いや、この前見たときは、
そうは思わなかったな。」
あとは行商だ。
カンターウォーマーはカンターさんのところで買ってほしい。
あとは冷蔵庫、冷凍庫代の回収。
大型はコットワッツに。
「エデトが館で待っているんだが?」
「いや、いま、本人に会うのは恥ずかしいから、
テルマおじい様が、それとなくね。
奥方によろしく。」
「あの、シリーヌだけが食べていたものは?食べたい。」
「ああ、ご家族でどうぞ。館の人たち分はさすがにないですから。」
「雨の夜会に呼ばれているな?」
「ええ。まさか、ここでも愛しい人問題がでてるとか?」
「なんだ?それは?」
よかった、ここでは起きていないようだ。
貴族とか、豪族とかないものね。
3世代で統治しているから。
テルマやエデトの兄弟はいないようだ。
「あはははは!
いつもはエデトだけだったが、今年はシリーヌも参加する。
わたしも出席しよう。楽しみだな。」
「今年はその話は置いといて、華やかだと思いますよ?
刺繍布が持ち出しできるようになったし、
コットワッツの宝石類が販売されますから。」
「あれな!そうか。その方面に明るいものに伝えておこう。
香水を扱っているからな、その専門の者たちがいる。
もっぱら売る方だがな。」
「テルマおじい様?あの頂いた香水のお値段ききました。
ほんとに、ありがとうございます。
その、あの金額で売れるのですか?」
「数はでないが売れる。あの香だけではないんだよ?鹿からとれるのは。
詳しくは話せないがな。」
「いや、よそ様の産業のことはいいんですが、
香産業は当たれば大きいのだなと。」
「ん?参入するのか?」
「あはははは!困ります?」
「なんの!みながみなあの香を身にまとうよりも、
別の香りの中にあれがあるほうがより好まれるだろう。」
「なるほど。身にまとうことはできないのですが、香産業と言えばそうですね。
混合いはじめに王都でお披露目があると思います。宝石類も。」
「臨時会合だな?軍部の隊長が決まる?」
「ええ。館も変わりました、コットワッツのね。
庭が広い中々のもになりましたよ。ぜひいらしてくださいと、ご招待したいんですが、
一国の元首を辺境領国は招待できないですよね。
前回は香木と砂漠石のことがったからいらしたんですもの。
砂漠石は結局どこで買うことに?」
「リリクだ。大きいものから合わさりの月のものまで
一手に揃う。ニバーセルよりも、2割ほど安ったからな。」
「値上がりしてるみたいですね、砂漠石。」
「そのようだな。が、先に金額は締結している。
向こう3年は値上がりしても今の価格で買える。
値下がりしたら大損だがな。」
「先物取引?賭けですね。」
「下がることはないな。」
折角譲ってもらった砂漠石の検証もしていないな。
しかし、砂漠石が無くなるということは考えていないんだな。
どこか、ほかで買えばいいとだけ。
石油が無くなるのは分かっているから他のエネルギーを探していた。
まだ、探している段階だといっていいだろう。
ここでは?砂漠石が一斉に空に上がったら、
明日から火種はどうするのだろうか?
そんなことを考えるのは杞憂というのか?
テルマおじい様と別れて、ルポイドの砂漠口から、
サボテンの森に帰った。
残り180セットの組み立て。
明日は朝から先にグリクさんのところに寄って、
それからソヤを連れて王都入りだ。
そこで、予約分を師匠に渡す。
その後ハンバーグ屋にステーキ皿の営業。
次の日に、師匠とセサミンとでタトートだ。
そんな予定を考えながら袋詰め。
「愛しい人?砂漠石のことを聞いていたが気になるのか?」
「ん?砂漠石ってどこでも貯えがあるみたいだけど、
コットワッツの砂漠みたいに一辺になくなったらって考えてないんだよね?
セサミンもだ。
セサミンが考えていたのは砂漠石が自分のところでは取れなくなるから
他所から買う、そのために他の産業を考えないとって思っていただけだ。
それは大事なことなんだけどね。この大陸から砂漠石がすべてなくなるって思っていない。
月無し石の話ではそれはないんだろうけど、
時間の感覚が違うんだよ。なくなる期間が1年でもあれば大事だよね?
火種って砂漠石以外になんかある?」
「火種?樹石は?」
「火をつけるには砂漠石がいる。紙が燃える温度まで温度上げる?
その温度になるには、そこまで熱くなってるものがいる。
樹石以外で。」
「・・・ないな。」
「ね。スパイルも砂漠石に頼っていないと言われても、
火種は砂漠石みたいだもの。絶対になくならないって思ってるんだよね。」
「なくなりはしないだろ?コットワッツの砂漠の者だけがなくなっただけだ。
他の砂漠にはある。」
「そうだよね。ここでの絶対なんだ、砂漠石は。」
「そうなるな。」
電気が無くなることはないけど、
一時的に、いや、長い場合は1か月以上も供給されないことがあった。
備えを用意していなくても、
火をおこす方法はなんとなく皆知っている。
ここではそれがないんだ。
時間があるときに火起こしを試してみよう。
これは試そうリストの上位に書いておこう。
11
お気に入りに追加
368
あなたにおすすめの小説
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
異世界隠密冒険記
リュース
ファンタジー
ごく普通の人間だと自認している高校生の少年、御影黒斗。
人と違うところといえばほんの少し影が薄いことと、頭の回転が少し速いことくらい。
ある日、唐突に真っ白な空間に飛ばされる。そこにいた老人の管理者が言うには、この空間は世界の狭間であり、元の世界に戻るための路は、すでに閉じているとのこと。
黒斗は老人から色々説明を受けた後、現在開いている路から続いている世界へ旅立つことを決める。
その世界はステータスというものが存在しており、黒斗は自らのステータスを確認するのだが、そこには、とんでもない隠密系の才能が表示されており・・・。
冷静沈着で中性的な容姿を持つ主人公の、バトルあり、恋愛ありの、気ままな異世界隠密生活が、今、始まる。
現在、1日に2回は投稿します。それ以外の投稿は適当に。
改稿を始めました。
以前より読みやすくなっているはずです。
第一部完結しました。第二部完結しました。
30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。
レベルカンストとユニークスキルで異世界満喫致します
風白春音
ファンタジー
俺、猫屋敷出雲《ねこやしきいずも》は新卒で入社した会社がブラック過ぎてある日自宅で意識を失い倒れてしまう。誰も見舞いなど来てくれずそのまま孤独死という悲惨な死を遂げる。
そんな悲惨な死に方に女神は同情したのか、頼んでもいないのに俺、猫屋敷出雲《ねこやしきいずも》を勝手に転生させる。転生後の世界はレベルという概念がある世界だった。
しかし女神の手違いか俺のレベルはカンスト状態であった。さらに唯一無二のユニークスキル視認強奪《ストック》というチートスキルを持って転生する。
これはレベルの概念を超越しさらにはユニークスキルを持って転生した少年の物語である。
※俺TUEEEEEEEE要素、ハーレム要素、チート要素、ロリ要素などテンプレ満載です。
※小説家になろうでも投稿しています。
エラーから始まる異世界生活
KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。
本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。
高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。
冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。
その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。
某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。
実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。
勇者として活躍するのかしないのか?
能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。
多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。
初めての作品にお付き合い下さい。
ちょっとエッチな執事の体調管理
mm
ファンタジー
私は小川優。大学生になり上京して来て1ヶ月。今はバイトをしながら一人暮らしをしている。
住んでいるのはそこらへんのマンション。
変わりばえない生活に飽き飽きしている今日この頃である。
「はぁ…疲れた」
連勤のバイトを終え、独り言を呟きながらいつものようにマンションへ向かった。
(エレベーターのあるマンションに引っ越したい)
そう思いながらやっとの思いで階段を上りきり、自分の部屋の方へ目を向けると、そこには見知らぬ男がいた。
「優様、おかえりなさいませ。本日付けで雇われた、優様の執事でございます。」
「はい?どちら様で…?」
「私、優様の執事の佐川と申します。この度はお嬢様体験プランご当選おめでとうございます」
(あぁ…!)
今の今まで忘れていたが、2ヶ月ほど前に「お嬢様体験プラン」というのに応募していた。それは無料で自分だけの執事がつき、身の回りの世話をしてくれるという画期的なプランだった。執事を雇用する会社はまだ新米の執事に実際にお嬢様をつけ、3ヶ月無料でご奉仕しながら執事業を学ばせるのが目的のようだった。
「え、私当たったの?この私が?」
「さようでございます。本日から3ヶ月間よろしくお願い致します。」
尿・便表現あり
アダルトな表現あり
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
【完結】神スキル拡大解釈で底辺パーティから成り上がります!
まにゅまにゅ
ファンタジー
平均レベルの低い底辺パーティ『龍炎光牙《りゅうえんこうが》』はオーク一匹倒すのにも命懸けで注目もされていないどこにでもでもいる冒険者たちのチームだった。
そんなある日ようやく資金も貯まり、神殿でお金を払って恩恵《ギフト》を授かるとその恩恵《ギフト》スキルは『拡大解釈』というもの。
その効果は魔法やスキルの内容を拡大解釈し、別の効果を引き起こせる、という神スキルだった。その拡大解釈により色んなものを回復《ヒール》で治したり強化《ブースト》で獲得経験値を増やしたりととんでもない効果を発揮する!
底辺パーティ『龍炎光牙』の大躍進が始まる!
第16回ファンタジー大賞奨励賞受賞作です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる