いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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566:サイレント

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「あれはあなたが経験したこと?」
「ん?まっさかー。一般論とそういう話は一杯聞くよ?
紅茶屋の娘さんはしっかり自分の仕事が大好きみたいだったからね、
仕事に理解がある人がいいと思う。
待ってる彼女は、この乾季の間にいい人が見つかれば
結婚すると思うよ?間に合えばいいけどね。」
「聞こえていただろ?ルンバとの話?」
「大食いと金にがめついは事実です。」
「ああ、それはそうだろ?」
「そうね。でも、それを面とむかって女性に言うなと言われてなかった?」
「ああ、そういうことだな。・・・すまない。」
「うふふふ。いいよ!それが事実だもの。で?」
「その、こういうことも習っていたんだろうかと。」
「いや、それはどうなんだろ?
ほんとに一つの考え方だからね。
わかんないなー。こっちの女性の心理もいまいちわたしもわかってないし。
娼婦システムがどうもね。」
「システム?仕組み?そう言ってたな。」
「いろいろだよ、いろいろ。わたしに助言を求めたから、
わたしの考えを言っただけ。それでだめな場合も当然ある。
そのときは、己で考えるか、また違う人に助言を求めればいい。
別の意見を聞いて、なるほどって思ったから行動に出てるんでしょ?
なにか、自分の考えと融合するところがあったんだよ。
全く別方向で共感できなければ動かないよ。」

2人は、急いで馬に乗って帰った。
うまくいけばいいけどね。
別の男と鉢合わせがないことを祈る。


片して、草原をジグザグ進んでいく。
植物群の採取。
採取場所と写真と、便利です。
マティス専用のカメラも作ったので、パシャパシャ撮っている。
今!っていうのはリモコン状態で、
手元で操作できるときは、やはりシャッターを切って、
パシャリという音が鳴るほうがいい。
音の再現をどうするか考て、砂漠石の紙状のものを避けるときの音を
音石君に覚えてもらった。
なので、カメラには小さな音石君が付いている。
音が鳴っていれば、マティスが写真を撮ってるということが分かるのだ。
わたし?わたしのものはサイレントにしたかったが、
却下された。
2人とも、望めば音は消せるしね。


「そろそろ月が沈むな。
海側から観察しよう。」


絨毯に乗って、観察。
風がきついので、ものすごく踏ん張った。


ーーーーーー。

風が止む。凪だ。


ざわざわと草も花も動き出す。
砂漠に出した花が動いたのは風を感じなかったからか?

あの香が漂い出す。
それに向かって草が伸び、ブチンブチンと食いちぎられた。
よく見ると、花に向かう草と、向かわない草がある。
受粉ではないのか?栄養とか?

草原の方も香る。こっちはあの清々しい良い香り。
草が動いている。が、草同士で受粉しているようだ。
それで、種ができている。
こっちか!
あの花は香りの擬態なんだ。
それで、あの種は栄養!食植植物だ!!


「マティス!花じゃなくてこっちの草の方!
受粉した種をもらおう!!」
「どれだ?少し大きい?」
「色がちょっと違うかな?1つの葉から全部取らないで、数個ずつ!」

急いで採った。
風が止めば、香もしなくなるかもしれない。




採った先から収納。
時間が立てば香りが飛ぶのは通り。長持ちさせないと。
絞って原液みたいなのにする方法もある。
ルポイドの香水はどうしているんだろうな。
作り方を教えてくれないかな?

この採取方法が間違いだったら問題なので、
ある程度の量で終了だ。どちらにしても10分ほど。

これはこの時期だけかもしれないね。
雨の日前のこの時期だけ。

絶壁の家に戻ったがこの研究は後だ。
先に熊の皮を張って、風を効率よく充てる研究をする。
麻布も仕入れたし、膠もある。


「船に乗った時に話したでしょ?動力の話。
凧と一緒で海の船でも風を使って進むの。」
「?風邪が吹く方向しか進まないのでは?」
「うん、だから凧と一緒。風を横から受ければ進むでしょ?
その風の方向は凧は風神で制御したけど、
海の上では、帆を動かして進む、らしい。」
「らしいか。」
「うん。しかも、たぶん。」
「あははは!それは実験しないとな!オベントウを作って砂浜に降りよう!」
「うん!!」

これが難儀した。
船は、鉄で作る。逆に簡単なのだ。お願いだから。
帆も、記憶のままに再現した。
が、操縦方法がわからん。


「ん?そうか。愛しい人?ああ、眠いんだな?そこに。
少し眠っておけ。」
マティスが、ブラスで作ったベンチを出してくれる。
ニックさんが露天風呂で作った腹筋マシーンだ。
が、お昼寝にはもってこい。
これに、ふんわりと綿毛布を掛けてくれた。寝る。もれなく寝る。

マティスはもう少しで理屈が分かると、研究を続行だ。
波の音が子守歌だ。



「愛しい人?起きて?月が昇った。」


目覚めれば、絶壁の家だった。

マティスもベットに入っている。
なんだ、あったかかったのはマティスと一緒だったんだ。
ぐりぐりとマティスにすり寄ってしまう。

ん?お風呂に入ったのかな?磯の匂いはしない。
あら、私もだ。
また、フルオートですか?申し分けない。


が、出るものは出ます。
おトイレにいって、身支度を。

「服はそれを着てくれ。」

これはお化粧もしたほうがいいのか?



「食事にしよう。今日は管理地習得の祝いだからな。」



鼻血がでそうだ。
マティスがかっこよく正装している。いつ作ったんだ?
わたしのドレスも新作だ。


「トックスにな。熊の毛皮の話をしておいた。
ルンバの鞣した毛皮も預けて、土蜜も。
ザバスにも売ってきた。あのプニカの樽1つで、30リングだそうだ。
これは、ザバスが値段を付けたんだぞ?普通はもっと高いらしいが、
十分だろ?ザバスはかなり悪い顔をしていたがな。それはいいんだ。」

おそらく市場価格はもっと高いはず。
でも、30リングならわたしたちには十分だ。


「が、これから、この地での生産品の売り上げは記帳していかないといけない。」
「あー!!とうとう!とうとうそんなことをしないといけないのか!」
「あははは!愛しい人はそれが嫌だと言っていたからな。
ザバスに教えてもらってきた。
セサミナは回収するほうだからな。手抜きの方法は言わないだろ?
この地での生産品はザムかザバス、トックスにのみ売る。
卸だ。記帳は彼らに付けてもらう。その代わり商品はかなりの安値だ。
しかし、それは今まで変わらないだろう?
その売値に1割分の税も含まれている。納税もザムとザバスがする。
私たちは、年末に、その帳簿を出すだけだ。もちろん確認はするがな。
不正はできない。石を使ったから。そういう仕組みがあるそうだ。」
「すごいよ!!先払いだね!マティス!じゃ、行商は?ウダーの村みたいに
売った分の売り上げはこっちで書くの?」
「1割はその時に払ってるだろ?帳簿を付けるのはそれをとった奴らだ。
こちらが金を受け取った時に、コットワッツに納める内容を書けばいい。
だから、売る相手を限定するんだ。
そうすれば、値引きを引き換えに相手が帳簿をかく。」
「はー、素敵!店相手に売ればいいと。
実際今までもそうだものね。あー、安心した!
うちの旦那様はなんて商売上手なんだ。」
「そうか?ふふふふ。」


食事は本格的ディナー。セサミンとミクナとの会食を参考にしているらしい。
が、出ているものはこちらの方がおいしいだろう。
エビのビスクはまだコットワッツでは出せないから。

満足の食事の最後は土蜜をつかったザバス作のスイートだ。
紅茶と一緒にとのこと。


「あー、なんておいしいの!ほかの男の人を褒めるのを許してね。
ザバスさんはもしや天才なのでは?」
「あはは!今度言ってやればいい。が、こうしてほしいと言ったのは私だぞ?」
 「やっぱり!マティスが天才なのね!」


暖炉の上にセサミンから土地贈与時の写真。
そしてわたしたちの正装した写真。
あとは熊の着ぐるみの写真。


「船は?」
「風があれば思う方向に進めるようにはなった。
が、風がないと進まない。風神を使うこともできるが、あっという間に石はなくなるな。」
「帆じゃなくて、海に向けてみようか?ジェット推進?」
「?」
「明日試そう。うまくいったら漁をしよう。
海の資源も砂漠と同じ?誰が取ってもいいの?」
「そう聞いている。が、海に出て戻ってくとを考えれば、
近くの海のみだ。
夜に海には出ない。そうなっているからな。」
「そうだね。故郷ではね、夜の方が魚が集まるんだって。種類にもよるけど。
船を出して、そこで光を出すの。
そうしたら、魚が何?ってことで集まってそこをバサリと獲ると。」
「あつまるのか?」
「これはどうかな?習性が違うからね。物は試しで。」


今日はこのまま、まったり過ごそう。



─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘



船の操作は、なるほど理屈が分かれば簡単だ。
愛しい人?寝ているな?


部屋に戻り、かるく風呂に入った。
ムニュムニュいって私に身を任せてくるのがかわいい。
月無し石に留守番を頼む。


「ザバス!土蜜だ!」
「え?ピクトに行ってきて戻った?いや、俺は聞かないよ?
どれだけ?大量だな!こんなに一度買えないぞ!」
「いくらで買う?」
「お前だから言うが、この樽で100はする。しかも薄めている。
そんなのはあの菓子には使えない。そして100以上なら買えない。」
「いくらなら買える?あの菓子、1ついくらで売る?」
「いくら高くても1つ5銀貨がいいところだろ?
そうなると、そうだな、この樽で30で売ってもらわないと、その分菓子の値が上がる。」
「そうか。これな、私の管理地で獲れた蜜だ。あとで、コットワッツに税を納めないといけない。」
「え?独立?贈与?そうか!めでたいじゃないか!
ああ、ラーゼム絡みか?ゼムがここの商品、片っ端から持っていった。
ラーゼムで売るってよ。売れた分の金が入る。奴は上乗せして売るだろうがな。
ラーゼムの奴らがこっちに来て買うことはないだろ?
入国税を払うのを惜しむんだよ。払ってここで買うほうが種類もあるし、安いのにな。」
「はは!だろうな。でな、帳簿を付けないといけない。」
「それはそうだ。」
「何とかならないか?」
「お前もたいがい物知らずだな?そんな面倒なことを行商たちがしてるとでも思っているのか?」
「税を払っていないと?」
「それはない、あのな?・・・・」


「トックス!熊の毛皮だ!」
「艶が違う!どうやった!?」
「土蜜だ、それを薄めたもので洗うそうだ。
聞いた話ではそいつの好物で艶を出すのがいい方法らしい。」
「豚は砂トカゲが好物?」
「いや、全部が当てはまらないが、試す価値はあるだろ?
トラはあの木をマンザスの葉を食べる生き物が好きなんだ。
だからマンザスの葉を噛んでいた人間を襲ったと。
これは愛しい人の仮説だがな。
が、あのマンザスを煮出してトラの皮を洗えばいいかもしれん。」
「すごいぞ!」
「失敗するかもしれんから、先に普通のトラ皮でな。マンザスの枝は、後で届けておこう。
トラにも土蜜がいいかも知らないしな。両方がいいかもしれん。」
「ああ、試して見るさ。もちろん、土蜜もあるんだろ?」
「そうだ、これが一樽30リングだ。ザバスの店でも同じ金額で卸している。
土地の管理者になった。帳簿を付けないといけない。
値引きをするから、帳簿はそっちで付けてくれ。」
「ああ、それはかまわんよ。旦那と奥さんは苦手なようだ。
土地の管理者か!いいな!どこだ?ラーゼムの話は聞いたよ?」
「ここからは遠いがドロンですぐだからな。落ち着いたら皆を招待するだろう。」
「それは楽しみだ。じゃ、30?旦那?これ、薄めてないもんだろ?100出しても
王都で売ってないぞ?」
「その分帳簿を付けてくれればいい。
で、熊と蛇も持ってくる。買ってくれるか?」
「もちろんだ。」
「そうだ、熊の皮の特性を知っているか?」
「?」
「風に強いんだ。これを着れば、風が避ける。
だから袖を通してボタンを留めてこれを着こめるようにしたんだ。」
「え?それはいいとして、これ、えらい雑だな。」
「簡単にな。外で作ったから。」
「ちょっと手直ししてやるよ。」
「ああ、頼む。それと、痛み止めのルロイドって知っているか?」
「ああ、東、エルトナガの薬だな。痛みより、よりしみて痛いという奴だろ?」
「そうだ。それの原材料知ってるか?」
「ははは!それは、誰も知らないよ。エルトナガの収入源だからな。
砂漠石が取れないエルトナガが国家で秘密にしているはずだぞ?」
「そうか。」
「最近ではかなり高くなっていると聞くがな。
ソヤの話では植物から作ってるそうだ。ああ、指をけがした時の話の流れでな。
で、その植物が枯れたらしいと。ま、塩の湖の噂話だがな。」
「いや、植物からできてるってわかっただけでもいいさ。」
「旦那?国を挙げて隠していることにかかわらないほうがいいぞ?」
「だから先に聞いたんだ。セサミナに聞けば心配するだろ? 」
「それはそうだ。」
「あと、頼んでいる服は?」
「ああ、出来てるよ。また言ってくれよ。」
「忙しいんだろ?」
「こういうのはいいんだよ。それが息抜きになるからな。」 
「いくらだ?」
「祝いだよ。管理者になった。」
「ありがとう!食料庫はまた埋めているからな。蛇鍋もある。」
「ああ、助かるよ。」


家に戻り、すぐに食事の下準備を。
セサミナの会食を参考に。酒も葡萄酒を出そう。
ドレスと同じ色だ。


あの2人に話したことで、一番大事なのは、愛を伝えることだ。
彼女に愛を伝えたい。それを受けて喜んでもらえればうれしい。

「愛しい人?起きて?月が昇った。」
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