いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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558:大先輩

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「愛しい人?あとでゆっくり話をしような。」
「くふふふふ。うん。じゃ、出発しようか?
あ!飴とガムと香りの違う石鹸も買っていこうね。
ティータイの石鹸が一番いいような気がする。」


なんの油脂を使ってるんだろうね。

「街に行きますか?兄さん、申し訳ないのですけど、今回の話、
先にゼムにしておいてもらえますか?」
「わかった。」



月が昇ってまだ半分にもなっていない。
1日は短いから、一日まるまる営業、翌日休みというスタイルなようだ。
今日は営業日。よかった。


「あら!いらっしゃい!奥方だね?
祭りの時は顔もわからなかったけど、かわいらしいじゃないの!」
「えへへ。ありがとうございます。
公衆浴場での石鹸販売順調だって聞きましたよ?」
「そうなの!小さいのがよかったみたい。で、気にいれば、
大きのをかっていくわ。そのほうがお得だから。」
「これ、なにでできてるんですか?」
「あら?知らないの?石鹸の実よ。脂分を多く含んでいるの。
それを煮詰めて、香を付けるのよ。東諸国から入るの。」
「東なんだ。」
「そうね。ガムの原料もそうよ。」
「へー。」
「それで?石鹸かい?あれがもうなくなったの?
あの香はあんたしか買わなかったから作ってないのよ。」
「いや、私たち2人は行商をしているからな。
ここの石鹸が一番いいから、仕入れて売ろうかと。」
「行商?えっと?セサミナ様の護衛だと聞いたけど?」
「それもだ。ここにいるときに護衛はいらないだろ?その時は各地を回るんだ。」
 「あ!それもそうね。
大量に買ってくれるなら、1割引くよ?で、ここの売り値より、高く売ってくれればいい。」
「わかった。」

各種大きいものと小さいもの。
テムローサに似合いそうな香りも見つけた。
食の祭で来たときは結局回れなかったといっていたから。

ついでに本屋さんもよる。


「学校のおかげで教科書は売れる。イスナペンと消しゴムもここで扱ってるんだ。
売れるよ?だが、それなりにってところだ。」
「ノートは?」
「なに?」
「イスナペンは紙に書くでしょ?
その紙を束ねたものですね。
本みたいに糸で結わえてもいいし、小口を糊で固めてもいい。
白紙の本だと思っていただければ。
もちろん、一番お安い紙でね。」

パラパラ漫画の絵のない状態を見せる。

「買うかな?」
「んー、あれば使うかな?」
「ダメもとで作ってみようか。これ、売ってくれるか?」
「ああ、どうぞ。あの本!サイの生態が書いているの役に立ちましたから、お礼です。」
「へー。そりゃよかった。」
「あんな本他にないですか?動物とか植物のこととか書いてる?」
「そや、研究院預かりだろ?」
「そうですか。」
やっぱりないんだな。

「これをくれ。」
「何の本?」
「・・・歴史だな。さぼった時の。」
「あははは!それは大事だ。わたしも勉強するよ。」
「奥さんのいうものは、ま、探しておくよ。」
「お願いします。」




「いよ!今日は何がいるんだ?樽100個か?」
「そんなにいらん。飴とガムと。
あー、愛しい人?ちょっと向こうのものを見ておいで?」
「?うん。」

なんだろ?内緒の話?
うふふ。きっと楽しいことだね。


言われた通り、向こうの棚を見ていく。
なんだろ?
畑仕事の道具かな?鍬とか?
これ系は砂漠石で作るからいらないかな。
鋏はあるし、爪切りもあると。
笊も竹で組むしね。
特殊なのはナソニールで作ってもらっているし。
あ、鉛筆削り!いまナイフで削ってるから。
んー、そのほうがいいのかな?ネタとして持っておこう。
あとは?
紐とか、ロープとか。ロープは何かと使うから。
そうだ!船!帆船!
麻布がいいかな?これね!


「愛しい人?それを買うのか?」
「あれ?お話終わったの?うん。これほしい!」
「麻か?これは、そんなにいいものではないぞ?」
「なんだと!」
「服には使えないということだ。」
「ああ、そりゃそうだ。日よけに使うんだよ。今はいいが、暑い時期は影が欲しいからな。」

太陽はないのに光を遮れば影ができるって認識してるのね。

「うん。できるだけ大きいものと、これを縫い合わすのは?おなじ材質がいい。
それ用の針も。」
「ああ、あるぞ。」

「あと水をはじく塗料みたいなの?膠?」
「当然あるさ。どれくらい?」
「保存が効くなら、たくさんかな?」
「乾燥を防ぐ砂漠石が付いている。毎度あり!!」


結構な買い物をして、最後はザムさんところに。

「海苔か?海苔を持ってきてくれたのか?」
「ああ、それもあるな。愛しい人?これはどうする?」
「生産院が決めるまで自由なんじゃないかな?
1枚5銅貨ぐらい?値上がりするかもしれないけどね。」
「そんなものなのか?今は?生産院が絡むのか。
そうだな。じゃ、それなりの値段で売っておこう。
あるだけ買うよ。」
「あ、これ、箱に入れとかないと湿気ます。
箱に、小さな砂漠石を入れて、乾燥させてください。適度に。膠と逆です。」
「ん?膠と逆?それなら簡単だ。」
「売った後で、よれってなるなら、樹石で炙ればいいですよ?
その時に豆のソースを塗ってもいい。」
 「豆のソース!いいね!まだ、数が入らないから、あっという間に売れるんだよ。」
 「それはいいですね!」
「豆のソースと乳酪の組み合わせがいい。
ラーゼムの奴らはほんと損をしてるぜ。」
「ゼム?草原の話は聞いているか?」
「話?サイだろ?」
「いや、ラーゼム草原はコットワッツから独立した。」
「!」
「月が昇ったばかりの話だ。
王都の後押しがあったからな。サイの家畜化の。
領主はあんたのいとこではなく、いとこの息子、玉子屋の嫁だ。
先に宣言した。揉めるだろうな。」
「それは、そんな。
・・・セサミナ様は、完全に草原を手放したんだな。」
「手放したというのは言葉が悪いな。
サイの儲けで皆が浮足たっていた。メーウーの世話も誰もしていない。
残ったものを100リングで引き取ったよ。
いきなり独立は何かと苦労するから、まずは王都直轄になったほうがいいと
助言はした。無視されたがな。」
「しかし、コットワッツから切り離すことは許可したんだろ?」
「草原の民が承諾すればだ。」
「あいつらが反対するわけないだろ!!」
「そうだ。この話が王都から出た時点で、セサミナができることは何もないんだ。
サイの家畜化の権利をラーゼムにだけとするように
契約時に助言するしかなかったんだ。」
「ああ、そうか、そうだな。いや、しかし・・・。」
「セサミナが拒否したところで、草原の民は勝手に承諾するだろう。
あの土地に何百年と住んでいるんだ、権利は向こうにある。
どうにもならん。」
「・・・。」
「近いうちに皆を集めて話があるだろう。お前には先にな。
セサミナからも頼まれている。」
「ああ、そうか。いや、そうだな。それ以上何もできないか。
で?嫁が?それは大丈夫なのか?」
「そこまでは何とも。明日にでも教育係が来るそうだ。」
「俺は、どうすればいい?」
「何も。」
「お祝いは?」
「?」
「だって、いとこの息子のお嫁さんが領主になったんですよ?
その過程はおいといて、めでたいことでしょ?
それに今度は、きっちり商売ができるんですよ?
いままで、物々交換だったんでしょ?それがリングで取引できる。
今、ラーゼムはちょっとお金持ちですよ?
メーウーを手放したから、こっちからチーズと乳を買わないと。
コットワッツとの取引が向こうが嫌だったら、ラルトルガとだ。
そうなると少し割高になる。距離があるからね。
他国との取引のように、税金を取られるけど、それはね、仕方がない。
お互い様だ。先に、出入りの業者に納まるのもいいんじゃないですか?」
「あんた、商売人だな。」
「ゼムさんはその大先輩ですよ?」
「そうだとも!早速準備だ!」



バタバタと奥に引っ込んでいった。
代わりに、奥さんが出てきた。

「ま!久しぶり!奥さんも!」
「お久しぶりです。
あの、結婚のお祝いの品、とても高価なものだと後で知りました。
改めて、いいものをありがとうございます。」
「ま!そんなのいいのよ。」
「いえ、ガラスも、レースも。あのレース布はどちらで?」
「うふふ。タフトでね。」
「え?あのタフト!」
「そう!奮発してもらったのよ。うちの人に!」
「それはすごい。」
「ああ、そんなに高くないのよ?時々、いきなり安くなる時があるの。
その時にね。」
「それはいつなんですか!!」
「だから、いきなりなの!それを待っていたら、何日もいないといけないの。
たまたまだったのよ!」
「すごい!あやかりたいです!」
「みながそういうわね。」

拝んでおこうか?
とりあえず握手してもらった。


おしゃべりしている間に、マティスは適当に商品を買っていた。
手ぶらで帰るわけにもいかないから。


半分はとうに過ぎている。
サボテンの森に帰って、少し寝たら出発だ。
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