いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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「サリア!なんだいこの品の並べ方は!
色で並べりゃいいってもんじゃないよ!」
「ドロイン!え?来れたの?連れてきてもらったの?」
「お間抜けなことを言うんじゃないよ!言っただろ?この店には自分の脚で来ると。
それができないようなら来ないとね。
もちろん、歩いてさ!だが、座らせてもらうよ。」


3人、トックス、マティス、ソヤで椅子をセッティングする。
座高は一般の高さだが、プカプカクッション付きのオットマンを用意。
もちろん、樹石入り。
椅子も親方に作ってもらったものだ。
マティスにドロインさんの身長等、特徴を伝えてもらって作ってもらった。
1脚だけだったので、店に置いてほしいということになった。
杖の方は満足してもらったようだ。
なぜに、杖を持ったご老人はこんだけ早く歩けるのだろうか?


ドロインが店に来たということで、
この店に働いている人、奥からゾロゾロと出てきて恐縮?
いや、ものすごく喜んでいる。
だが、商品の展示の仕方が問題らしい。
次々と指示を出していく。
孫娘のサリア、その娘、アルミントには夜会のドレスを持ってくるように言う。

「まだ仮縫いだよ?」
「かまわないよ。トックスに見せてやんな。」


それはそれは刺繍布をこれでもかというくらい使ったものだった。
派手である。好みの問題だろうな。
わたしよりも大柄な姐さんたちなら着こなせるだろな。

「あいよ。了解した。」
「じゃ、帰りましょうか?あ!お土産買っていかないと!
香辛料と布。椅子の張地!」
「トックスは先に帰りたいだろ?
ソヤはどうする?トックスと先に帰るか、私たちとバザールを廻るか?」
「バサールがいいな!」
「もう戻るのかい?」
「ああ。いい仕事もらったからな。
200のコートも売りだすんなら作らないとな。」
「そうかい。ソヤは?バザールを廻るのかい?」
「うん。こんなにいっぱい布見たの初めてだよ。きれいだね。」
「ああ、あんたは素直だね。それで?あんたたちはどこにいるんだい?」
「ん?コットワッツだ。」
「いや、それは知ってるよ。今だよ。タトートにいるんだろ?
その話がちっとも入ってこないからね。
事情があるんだろうけど、ここではそんな心配はいらないよ?
もっと、気軽に来てくれればいい。」
「ん?いや、さすがに頻繁には来れんさ。
俺はコットワッツに工房を持ったって言ってなかったか?」
「いや、知ってるさ。今だよ、今。
刺繍布でドレスを作ってるんだろ?タトートのどこにいるんだって話だ。」
「コットワッツだ。
やっぱり耄碌してるんじゃないのか?」
「?ああ!わかった!ドロインさん!刺繍布の持ち出しに成功したんですよ。
で、鋏も入れれるし、加工もできる。」
「!!!」

話してなかったかな?

そこから騒然となった。
会合が終わってから出発したであろうタフトの人間もまだこっちに来ていないようだ。

布のバザールは会合を開くようなので、
他の店も閉店となる。慌てて、椅子の張地をこの店で買った。
高いよねーと思うが、息子へのお土産だ。
赤紫の厚めの布地にした。
毛足が長いのがいい。
布というより絨毯?の軽め?
毛の長さをもう少し短くしようか。それで、長いのと短いので模様を付けよう。
金襴緞子だね。
薄く砂漠石の膜も張っておこう。

「ソヤは?どれか欲しいのない?」
「見るのはいいけど、いらない。」
「そう?小さな端切れがあればいろんなことを思いつくよ?」
「そうなの?」
「ここにあるの買っていこうか?ひと籠1リングだって。
2つね。わたしも欲しい。」

ガイライのお土産と端切れを買って、ドロインさんに声をかけた。

「これ、端切れと布代です。
わたしたちはこれで帰りますね。また、寄りますよ。」
「ああ、すまないね。持ち出しの話はここでは一大事なんだよ。
また来ておくれ。ん?じゃ、コットワッツから来てくれたのかい?」
「ええ。だから、急いで戻ります。」
「そうかい。気を付けてお帰りよ。」
「ええ。」
「ドロイン。次は、雨の夜会前だ。」
「ああ、それでいいよ。楽しみしているよ。
招待状もコットワッツに送ればいいんだね?」
「そうなるな。領主さん宛てで届くから。」
「わかったよ。」
「ウォーマーは出来上がり次第お持ちしますね。」
「無理はしないでいいから。会合の後寄ったんだろ?
ついでの時でいいさ。」
「ええ。こちらにも回りますから。」

マティスが移動できるということまで伝わっていないようだ。
でも、いずれ伝わるだろうな。
雨の後に必ず砂漠石の取引に制限がかかるはずだ。
その時にできなくなったと持っていこうか。
できるということにあまり疑問を持たずに受け入れるのと同時に、
出来なくなったというのも受け入れる。
なんで?というのが少ないな。
いいのか、悪いのか。




それから、建物の陰に入って、トックスさんとトラの皮、
そのままのトラを2頭送り届けた。
香辛料を一通り仕入れて、ここで、ソヤとクーちゃんたちと別れた。
クーたちは酔ってご機嫌なのか、袋の中から、
あれを買え、これがいいと言ってきた。
んー、見事に虫が原料の物ばかりだった。

ソヤは店の人、皆に好かれていた。
あれか、天然コマシか?

「わたしたちは?」
「もう一度荒野に行こう。
色の濃いトラがいると思う。それを狩りたい。」
「あ、個別にいるのね。」
「強い個体だとトックスが教えてくれた。」
「そりゃそうだね。派手だと擬態も何もないものね。強いってことか。
故郷でもね、色が濃いっていうか、色がない動物が生まれることがあるのよ。
白いんだけどね。それはめったに自然界では生き残れない。
運がいいか、強いかだよね。
ああ、あと神様のお使いだって敬うことがあるとか、
逆に排除するとかって聞いたことあるよ。
自分と違うものは受け入れられない。
そう思うとさ、石使いっていう括りが寛大だよね。」
「?」
「石使いだけが偉いみたいになって支配するわけでなく、
石使いを奴隷のようにいいように使うわけでなく、
職業として認めてるところがさ。」
「支配?奴隷?・・・愛しい人?」
「物語ね、そういうのあるよ。力があるものは支配するってこと。
逆もね。」
「・・・。
ここには王がいる。それが絶対だ。疑問に思わないほどに。
私にはあなたが絶対になったからなんとも以前ほどの感覚はないな。
が、あれの名前は言わなくていいぞ?」
「あはははは!あれね。
あー、あれにその色の濃いトラの毛皮は似合いそうだ。
売りつけようか?100万で!」
「いいな!やはり金は必要だ。
私は腕試しができればいい。
トックスは毛皮の加工ができれば満足するからな。」
「おう!!」



ガイライ達と狩りをしたところよりもさらに奥。
荒野の中央あたり。
これから南に下れば、ベリアバトラスの砂漠ある。
この国の人たちが住まうのはその砂漠の廻りだ。


「どう?いるよね?5?」
「いるな。ああ、5だ。」
「5頭とも同じぐらい?
群れ?これさ、リーダーを狙うの?あの中で一番弱いものを狙うの?」
「はは!愛しい人!慢心しているぞ?
あのトラたちとは違う。一番弱いであろうトラもどうだろうか?
5頭すべてで来られたら撤収だ。」
「おお!そうだね。まったりしている状態でこれだから、うん。
気合を入れていこう!」


近づくとまさしく赤と黒。
マティスはこれだという。記憶の中のトラの毛皮というのはこれだと。
それをいま思い出すこともない。
強い気なのだが、小柄なのだ。
いや、それでも、サイぐらいだろうか?
どちらにしろ下に潜り込むこむことはできない。

「少し離れたところに降りる。
愛しい人は見ていてくれ。」
「まずいと思ったらすぐに引き上げるよ。」
「ああ、頼む。」


・・・・写真撮れるかな。
ん?ムービーとか?



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