いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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509:衣食住

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「では、先にわたしが話をさせてもらっても?」
「・・・・。」
「ワイプ様?・・・・・・・。
セサミナ殿。この話、ソヤ殿をこちらに欲しいというのは、時期が悪い。
確かに欲しい人材ですが、今はうちの3人で手一杯。
2、3日後には地方組が戻ってきます。今回は辞退したい。
が、資産院が欲しているということだけ。
それで、よろしいですね?ワイプ様?」
「・・・・。」
「ニック。我々もだ。一から育てたいがな。
分隊では彼の将来をつぶしてしまう。」
「も、もったいねぇ!!が、鍛錬はいいよな?基礎は教えても。な?」
「そうですか。ソヤ?話というのは、うち、コットワッツに来て
このオショウユと呼んでいるものを作って販売したいのです。
前回購入したものはこの身内だけにしか食べていません。
が、ソヤ自身も食べておいしいと思ったでしょ?
売り出せば皆が買ってくれると思いませんか?
それをソヤがしてくれるのなら我々が買えばいい。
が、個人でするか、村上げてするか、それで変わってきますが、
最初の投資は必要だ。コットワッツは全て出します。」
「・・・ドーガー?」
「セサミナ様?よろしいですか?」
「どうぞ?」
「彼はイリアスの国境近くマトグラーサの塩の湖の近くの村出身です。」
「!あそこか?それは、きついな。」
「ニック殿?ご存じで?」
「あの場所は、なんて言ったらいいだろうな。話が集まるんだ。
昔から。いい話も悪い話もな。俺もイリアスにいたときは
そこから買っていたこともある。
騙すより騙された方が悪いって土地柄だ。
今は豆の収穫時期だろ?終わったから来たんだよな?」
「1/3は残ってる。」 
「親は?いないんだな?一人なんだろ?あの村は大抵一人だ。
家族はいない。出入りが激しいんだ。
悪いが豆も畑も家もないぞ?」
「わかってる。豆は育ちの悪いものだけを置いてきた。
必要なものはみんな持ってきている。
村を出たんだよ、俺は。」
 「そうです。なので、まず、彼の衣食住を約束してもらわないと困ります。
それはオショウユの生産が軌道に乗る乗らない関係なしにです。」
「オショウユを作らないというのなら、引き抜く意味はないが? 」
「いいえ。現に、この館に留め置かれています。
いまさらマトグラーサの集団には戻れない。」
「なるほどな。」
「ドーガー?戻る気はないんだ。他の領地に行くつもりだったんだから。」
「わかってるよ。だけど、これは権利なんだよ。要求していいんだ。」
「そうなの?」
「そうだ。そういうことです、セサミナ様。」 
「そうだな。言われてみればそうか。でも実際はどうだ?
作ってもらえるのだろうか?」
「作るとしたらどのような契約で?先に提示してください。」
「そうだな。衣食住はもちろん保証しよう。
移住という形で。領民となれば税を納めてもらうが、オショウユを生産してもらえるのなら、
無税だ。生産が軌道に乗れば売り上げの3%、ソヤに払おう。」
「100売って3?」
「そうだ。数字に強いな。少ないか?」
「それに掛かる費用はそっちもち?」
 「もちろん。作るのに20かかって、30で売る。儲けは10だが、
ソヤには30の3%を払う。」
「0.9?」
「これはわたしが個人で欲しいですね。いまさら遅いんですが、
資産院はどうですか?」
「ツイミ殿、遅い。」
「ああ、やはり。繁盛期だけでも雇いたい。」
「それはあとで交渉してください。どうだ?ソヤ?」
「ねーちゃんの言っていた隠匿は?」
「ソヤの名前で、ソヤの権利で。作り方はソヤだけ知っている。
が、そうなると指示してくれないと作れない。
作ってくれるという条件で隠匿の手続きを行おう。
それと販売の権利はコットワッツと契約してほしい。」
「ドーガー?」
「つまり作って、最初に売るのはコットワッツだけ。
コットワッツはそれをそのまま売ったり、それをさらに加工したりして売る。」
「その加工したもの売り上げは? 」
「それはソヤには入らない。最初の段階でもらう利益のみだ。」
「だったら5%だ。」
「は!素晴らしい。」
「ソヤ?もっと要求してもいいんだぞ?」
「いや、それぐらいがちょうどいい。
こっちが多く取れば、失敗したときや、うまくいかないときに
投資をしなくなる。自分が多くとる取り分が多いほど、
力を入れてくる。だが、権利は俺が持つ。
俺をないがしろにはできない。
5%ならなおさらだ。俺をうまく使おうとするだろう?
俺は失敗しても損はない。先に衣食住は確保している。
ダメならなんでもできる。税だって払える。」
「お前、ほんとに10?」
「ドーガーが路頭に迷うかもしれんな。」
「セサミナ様!!」
「あはははは!冗談だ。では、ソヤ、5%でよろしいか?」
「うん。最初にどれぐらい作ればいいの?」
「ははは!そうだな。この瓶に1000本。
1本あたり1リングで売ろう。1000リングだ。それの5%だな。」
「すっげ!今ある分で充分1000本はあるよ?
50だ!1年遊んでいられる!!」
「あー、今ある分を全部売ってしまうことはできないよ。
研究しないと。
モウ様が求めているのはいつでも買える、いつでも作れるってことなんだ。
偶然できたものは価値がない。」
「そっか。うん。作ってみるよ。」
「そうしてくれ。が、先に隠匿は掛けておこう。
これは生産院でな。すこし向こうにもいい想いをしてもらわないとな。」
「大丈夫なのですか?」
「完成品として隠匿する。オショウユ単体の売り上げの1%だな。
そこから発生するものには払わなくていい。
皆が使うだろうな。」
「なるほど。」






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