いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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389:団員募集中

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とにかく、砂漠に出ることになった。
あ、検問を通っていない!

守衛さんに気付かれぬように気配を落としていこう。
ライガーと師匠に目が行くだろう。
この荷の搬出許可書は作ってもらっている。

砂漠の検問所までテルマさんがついてきている。
皆に慕われているのがわかる。
エデトさんの具合はどうだと皆が聞く。
もう大丈夫だ、心配かけたと。
その話しぶりで親子だとわかる。

師匠が先に守衛さんと話をつけてくれたので、
問題なく砂漠に出ることが出来た。さすがです。
砂漠に出て、荷車に付いた車をそりに変える。
これで、砂地でも大丈夫だそうな。


次回討伐に参加しろとテルマさんが、
しつこくマティスに言っていた。
それは、このクジラが食べれるかどうかにかかっている。
そのときにならないとわからんと、返事するが、
必ずだと念を押して帰っていった。


「さ、師匠?
ここから、ルカリアまでどれくらい?歩きなんですよね?」

スーとホーは来ていなかった。
一人ならいいだろうが、ライガー同伴でどうするんだろう?


「ワイプ殿?歩きになるのですか?
てっきり、馬がここで待機しているのだと。」

あまいよ、歩きじゃなくて走って帰る気なんだ。

「歩きだなんてとんでもない。走るんですよ?」

ほら。

「な!!砂漠を、夜の砂漠をわたるのか?しかも馬無しで?」
「砂漠の端、砂漠石の出ないここだから影響はあんりませんよ?
と、言いたいですがね。先ほど赤い塊殿が連絡をくれましてね。
わたしの自宅まで飛ばしてくれると。
いやーありがたい。」
「師匠!ずるい!!」

やられた。
マティスを見るとキュンキュンする悪い顔だ。なんで?

「ああ、その話はわたしも聞いている。
10リングだ。それはモウに渡せとな。」

うまい!

「ええ、もちろん。これで。」

・・・屁でもねーって奴だ。

10リングが入った袋をもらった。

マティスがガルルルルと威嚇している。
それもかわいいな。

「え?飛ばす?」
「そうですよ?ここから、ルカリアまでは俊足馬を寝ずに走らせても3日。
5日ですね。普通は。
その間に調整しないと。時間が欲しいのです。」


「はいはい。さすが、我が師匠です。
じゃ、じいちゃんを呼びますんで、
ライガーはちょっと寝ててもらおうかな?」
「え?」

師匠の手刀が炸裂。
ひでー。言霊で寝てもらうつもりだったのに。
丸一日は寝てるな。
念のため師匠が起こすまで寝ておくように言霊を掛けた。


「師匠、そんなに心配しなくても。
わたしはマティスと常に一緒です。」
「そうなんですが、わたしの持っている情報以上のことが起きていた。
ライガーの話も本当のことですよ。
ここに来てからのこと、すべて話してください。」

デッキを展開。
チキン南蛮をつくろう。

ざっと説明して、3人で。
といってもわたしと師匠はタルタルソース作りだ。

マティスは鳥モモ肉を揚げ焼にしながら、
横で大蒜の効いた唐揚げも作っている。お土産だろう。
さらご飯も炊いている。

作りながら、砂漠で馬のアザレのことから報告した。
4人の話がそこかしこで合わないこと、
なのに、元首の治療には嘘はないこと、
心から心配していること、
女官のこと。
クジラの肉、うまうま。
葡萄の甘露煮。

あとはお局様、そのご主人のこと。

「アデラ殿ですね。彼がドルガナ公国の正当な大公ですよ。
それがバラベンとやらを嫁にもらってから、全権を譲ったんですよ。
10年ほど話ですね。」
「へー、反対はなかったの?身内から。」
「ありませんでした。いえ、外には聞こえてこなかった。
外部としてはなんとも。それで、クジラの肉!!
これはわたしも1回しかないのですよ。あれはうまい。
サイ、カニ、クジラ!いいですね。」
「今日の鳥もおいしいですよ。」
「ええ、いい匂いです。それで?あの荷物は?
クジラの残骸ですよね?食べれるのですか?」
「いや、わかんないです。とりあえずで。」
「なんだ。それはちょっとがっかりです。」
「なにごともダメもとですよ。うまくいったら儲けものです。」
「いい言葉だ。トウミギは?」
「それは9割は大丈夫。また持っていくか、送ります。」
「それは楽しみだ。では最後。砂漠石、どうして?」
「くふふふふふ。」
「おや?教えてはくれないんですか?」
「できたぞ!ワイプ!運べ。」

お味噌汁もどきも作った。
改良の余地ありまくりだが、ほっとするおいしさだ。

カンランの千切りの上に、チキン南蛮。身は小さいから一人3枚だ。
もちろんおかわりも作ってある。
一口でご飯一膳はいける。

「うまい!!」
「食べ過ぎますね。鍛錬、鍛錬。」
「腰を浮かせて食べれば?」
「いや、ご飯時はご飯に集中したいです。」
「それもそうですね。」

アッと今に完食。


食後はコーヒーと葡萄の甘露煮。
今日は食べすぎた気がする。


「はー、大満足です。
テオブロマの甘味。教えたんですか?」
「皮から甘味が取れるということだけですね。
そこからチョコまで行けばいいのですが。」
「無理でしょう。
しかし、この甘味が砂糖と同じように買えることになればいいですね。」
「ええ。」
「モウ?それで?」
「もう!内緒にしようとしてたのに!!」
「無理に教えることはないぞ?むしろワイプだけには教えたくない。」
「なんですかそれ?ダメですよ?」
「コットワッツとマトグラーサの砂漠石。
これって同じですよね?」
「もちろん。あなたが言うのは砂の色だ。
確かにドルガナに近い砂漠は少し黒い。しかし、砂漠石は同じですよ。」
「そうなんですが、粗悪品?
かなり大きな石を使っても、防音、気配消しはできていなかった。
それをルポイドは疑問に思っていない。そんなもんだろうと。
しかも、砂となって全部消えなかった。少しだけ残ったんです。」
「砂漠石が?それは初めて聞いた話ですね。
いま、見せてもらえますか?」

コットワッツ、マトグラーサ、交換してもらったドルガナの石。

小指の爪ほどの小さいものを3つ並べて、言霊ではなく、石に願う。

『己の力だけで、光輝いて』

コットワッツ、マトグラーサが大きく光る。ドルガナの石も。
あれ?おんなじ?
そう思ってみていると、ドルガナの石の光が消え、砂になり半分だけ消えていった。

「おや?」

残った砂を手に取り確かめるが、砂だ。
そして、2つの光が消え、砂も残らずなくなった。


「これは、そういうもの?」
「砂漠石だという括りです。月無し石の話では。
でも、彼らは大雑把だから。」

「・・・これ、働く時間が少し短く、後の掃除が大変だっていうこと?」
「そういうことってあるんですか?」
「ないとは言い切れませんね。塊だと思っていたのに、中が空洞ってこともありますから。」
「そうか!それか!」
「それを確認するため?違いますね?」
「くふふふふ。師匠?マティスとわたしのことどう思ってます?」

『覚えて』
石を握りながら言う。

「?素晴らしい弟子だと思っていますよ。
師として自慢の弟子ですし、その成長の一端を担うことが出来るというのは
師匠冥利に尽きるというものです。あなたも、マティス君もね。」

『いいよ。聞かせて?』


素晴らしい弟子だと思っていますよ
師として自慢の弟子ですし
その成長の一端を担うことが出来るというのは
師匠冥利に尽きるというものです
あなたも、マティス君もね


「え?声真似?わたしもできますよ?」
「え?誰の?」

「オート院長ですね。

ワイプ?あなた、また休むんですか?
ツイミとわたしの負担を考えてくださいよ?

毎回言われます。」

「あははは!似てる!!」
「不憫なオートだ。」
「で?いまのはマティス君?」

石を師匠の目の前に持っていく。

『もう一度、聞かせて?』



素晴らしい弟子だと思っていますよ
師として自慢の弟子ですし
その成長の一端を担うことが出来るというのは
師匠冥利に尽きるというものです
あなたも、マティス君もね




「これ?あなただから?」
「ああ、そうか、それはどうだろう?
マティス?」

『今のは忘れろ。新たにこれを。

ワイプ死ね死ね団は団員募集中だ


以上。』


『もう一度』

ワイプ死ね死ね団は団員募集中だ



「!!」

「師匠もどうぞ?」


『今のは忘れて。新たにこれを。

次回はどんぶりものが食べたいです。


以上。』



『もう一度』

次回はどんぶりものが食べたいです


「すごい!!」

「音を記憶してくれるんですよ。で、もう一度聞かせてくれる。
防音ができるんだから、逆もしかり。
音も調整できるかな?
これはわたしたちが晩餐会に行ってる間に、
部屋の音を覚えててってお願いした石です。」

『もう一度聞かせて?大きな音で。』


コットワッツに関連することをさぐれ
金目の物は
それはすこしくらいもらってもいいだろ

お前は向こうに


何もないな


なにこれ 布

静かに


金も砂漠石もない
持ち歩いてるの


仕方がないな
砂漠を移動すると言っていた
月が沈めば後を追う
そうしよう






どう
そうだな




「ありゃ、狙われてるのか?
マティス?なにやらかしたの?」
「私にはないな。愛しい人は?」
「ありすぎて、どれがどれやら。」
「そうだな。」
「「あはははははは!!」」
「黙って!!笑い事じゃないでしょ!」
「んー、でも、わたしたち、師匠を送ったらイリアスに飛びますよ?」
「ああ、そうですか。
これ、男と女ですね。だれだ?2人組?」
「お知合いですか?」
「・・・なんとも。これ、もちろんいただけますね?」
「これ?ええ。音付きで?消さないんですか?」
「いえ、このままで。それと、3つほど別でください。」
「確かめて下さいよ?全部が全部できると限らない。」
「わかりました。これ、大きさに寄るんですか?」
「それもなんとも。もっと小さくしましょうか?
丸いのと、細長いのと、平べったいの。」
「できるんですか?ああ、やはり我が弟子たちは素晴らしい。
マティス君?あなた、モウに実戦経験をさそうとしてます?」
「もちろんだ。愛しい人、もう一日延長だ。」
「え?お風呂入りたい。」
「そうだな。月が沈んだら来るんだ。今から入ろう。
ワイプ、お前は帰れ。」
「え?見ておきたいんですが、仕方がないですね。
こっちに飛ばせますか?ああ、殺しても構いませんから。」
「え?そこまで極悪人?」
「あなた方をどうするかですね。探りだけなら、殺すのに躊躇します?
向こうがそう出たら容赦なく。」
「はい、師匠。」
「愛しい人の最初は極悪人と決めているからな。
その最終力候補はお前だ。」
「そうですか、それは気を付けないと。
では、その音を記憶できる石と、唐揚げ、なにか甘味は?
チョコクッキー!!それで。」
「あ、スーとホーに、トウミギ、そのままでもって帰ってください。」
「これは我々も食べれるようになるんですね?」
「ええ。」
「では、さきに渡しておきましょう。」
「たぶん、クーちゃんもビャクも食べると思います。
クーちゃんの糸、元首に渡しましたよ?」
「ええ、かまいません。おかしいと思ったら渡してください。
それが噂になる。操りの糸が効かないというね。
クーが出した物を渡しておきます。出かけに出してくれましたから。」
「ありがとうと言っておいてください。」
「では、送るぞ?」
「ええ、家の外でいいですよ?」
「わかった。」
「あ!」
「なんだ?」
「あの焼き鳥もまた食べたいです。」
「わかったから!!」
「モウ、棒術でやりなさいよ?」
「はーい。」


『ワイプ、ライガー、ワイプの家の前に』



さ、お風呂に入って少し寝ようね。

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